これらは、骨盤底がゆるんでおなかの中の臓器を支えきれなくなった「骨盤臓器脱」の症状と考えられます。
当院の産婦人科では、骨盤臓器脱の治療に積極的に取り組んでいます。
婦人科の症状はなかなか人にはいいにくい、という方も多いと思います。
産婦人科常勤医師、看護師はすべて女性で、同性の専門家がお話を伺います。
子宮が下がっている場合、肛門・直腸にも痔や直腸脱、便失禁などトラブルを抱えているケースが多く見受けられます。
当院では産婦人科と肛門科が連携し、骨盤底のトラブルを総合的に評価して治療することを目指しています。肛門疾患の合併を疑う場合には、肛門科受診をご案内し、術式によっては外科・肛門科と合同で手術を行いますので同時に治療を行うことが可能です。*肛門科は男性医師が担当します。
子宮脱、排尿トラブルはいのちに関わる病気ではありませんが、生活の質(QOL)を著しく低下させます。症状が気にならない場合には治療の必要はありませんが、悩みのタネという方は、適切な治療で生活が改善することが期待できます。
「どこに受診したらいいかわからない」「受診は敷居が高い」という方も、まずは婦人科でご相談ください。
気長に続ければ効果が期待できます。
排尿日誌の記録、膀胱訓練(ある程度がまんする習慣をつける)などで症状が軽快することもあります。
過活動膀胱や腹圧性尿失禁は内服薬で症状が改善することがあります。
膀胱周辺の排尿筋、骨盤底筋に弱い電気刺激をあたえ、頻尿、尿失禁を治療します。開始時は週に2回のペースで3週間、その後は2週間に1回のペースで治療を行います。1回の所要時間は20分程度、費用は1回500円を保険に応じて負担していただきます。
失禁量が多い方にはTVT手術を行っています。1泊2日の入院が必要です。
必要時には泌尿器科に紹介させていただきます。
軽度の症例や、手術を希望されない場合はリングペッサリーで子宮が落ちてこないように支えます。
手術療法は、状態(下垂部位、年齢、合併症など)に応じて術式を検討します。
腟式に手術を行いますので、腹壁には傷がのこりません。またMcCall変法を併用し、仙骨子宮靭帯と腟管を固定することで再発を防いでいます。メッシュを用いない腟壁形成術を併用することもあります。入院は1週間程度必要です。
子宮を(亜)全摘し、メッシュを用いて腟と仙骨を固定し、下がった腟を吊り上げるため再発が非常に少ないと言われています。腹腔鏡のポートのため腹壁に小孔が5か所あきますが、腟や会陰部には傷ができないため術後の痛みが少ない術式です。1週間程度の入院が必要で、退院時には日常生活にはほぼ支障がありません。手術は外科・肛門科と合同で行っています。
膀胱瘤、子宮全摘後の腟脱症、再発症例などに行っています。入院は1週間程度必要です。
再発が多い術式ですが、手術時間が短く侵襲が少ないため、高齢の方でも行うことができます。
骨盤底を支える筋肉や筋膜が脆弱になった結果、一番弱くて大きな裂孔(腟)から骨盤内の臓器が下垂し、脱出してきてくる状態です。
女性の骨盤は、そもそも出産のために骨盤底に通り道がある構造をしています。出産を経験したり、体重が増えたり、介護や立ち仕事などで骨盤底に負担がかかり続けた結果、だんだん骨盤内の臓器(子宮、膀胱、直腸)を支える力が弱くなり、ついには腟から体の外に脱出してくることがあります。この状態を骨盤臓器脱(POP: Pelvic Organ Prolapse)といい、脱出している部位により膀胱瘤、直腸瘤、子宮脱などに分けられます。出産経験がなくても起こることがありますし、手術で子宮をとった後の女性でも、腟脱として起こることがあります。
上記の症状の他にも、膀胱が脱出していると、尿閉や繰り返す膀胱炎の原因になったり、直腸脱、痔などの肛門疾患を合併したりすることがあります。