肛門外来では、肛門疾患の代表である【いぼ痔(痔核)】【切れ痔(裂肛)】【穴痔(痔瘻)】はもちろんのこと、便秘や下痢、便失禁(便が漏れる)など排便機能を評価・治療する外来を兼ね備えています。直腸肛門機能は、内圧・直腸感覚閾値測定、排便造影(デフェコグラフィー)、ダイナミックMRI等で評価しています。また、便失禁の治療として仙骨神経刺激療法(SNM)も行っています。年間約200件の肛門手術と約80件の大腸癌の手術(70%は腹腔鏡下手術)を行っています。
図 SNM(仙骨神経刺激療法)
日本メドトロニック社提供
日本大腸肛門病学会認定施設
「痔(じ)」は軽い人も含めると、日本人の3人に1人がかかるといわれています。
命にはかかわらず、恥ずかしさのため放置されてしまいがちですが、トイレのたびに血がついたり、でっぱりが気になったりと生活の質を大きく落とすこともあります。
痔の治療は、「痛い」「時間がかかるので仕事が休めない、長期入院ができない」などとお考えではないですか?
そんなあなたに外科・肛門科から良いお知らせ、切らずに治す治療ALTA(アルタ)療法(ジオン注)を始めました。
ジオン注は中国で1970年代から使われていた注射薬「消痔霊」の添加物を一部変更した薬で、主成分は硫酸アルミニウムカリウムとタンニン酸(ALTA)です。
ジオン注射薬を肛門に注射することで早期に肛門への血流を減少させ出血症状を改善させるとともに、注射された部位の繊維化を起こし痔核のはれ・脱出を抑えます。
痔の御三家は、いぼ痔(内外痔核、脱肛、皮膚痔)、切れ痔(裂肛)、あな痔(痔ろう)です。
このうち過半数を占めるのが痔核です。直腸側(肛門の奥)にできる内痔核と肛門側(肛門の外)にできる外痔核があります。内痔核がひどくなると痔核が肛門から飛び出す脱肛となり、今までは切除手術治療が必要とされていました。
ところがALTA療法(ジオン注)の登場により、この「脱出を伴う内痔核」を切らずに注射することで治すことができるようになりました。なお、外痔核・裂肛・痔ろうは対象となりません。
まず、局所麻酔をして肛門の筋肉の緊張を十分にとります。その上で1つの痔核に対してジオン注を4カ所注射します(4段階注射法)。
20分程度で治療は終了です。注射後の下腹部の重苦しい感じ、一過性の発熱などがないかを見るために1~2日間の入院で行っています。食事・内服薬などは当日も含めいつもどおりで行います。排便は翌日から可能です。費用は(国保本人3割負担で)1泊2日で約3万円となります。
期待の治療薬ジオン注は2005年4月に日本でも保険適応され、治療が開始されました。
4段階注射法という高度な注射技術と知識が必要とされるため、講習を受け、手技を習得した医師しか治療を行えません。
日本人の3人に1人は痔に悩んでいるといわれますが、みな同じ悩みではありません。痔は主に3つに分類されます。
①いぼ痔(内外痔核、脱肛、皮膚痔):
過半数を占める最も多いタイプ。直腸側(肛門の奥)にできたものを内痔核、肛門側(肛門の外)にできたものを外痔核と呼びます。
②切れ痔(裂肛):
排便時に痛い、血が紙につく肛門の出口付近が切れて起こります。便秘により硬い便が通過することにより起こることもあります。排便が痛くて怖くなり、より便秘がすすむという悪循環に陥り悪化します。放っておくと潰瘍形成し肛門が狭くなる原因となります。
軽症の切れ痔は肛門の洗いすぎ、拭きすぎ、洗浄式トイレの使いすぎによって作られます。軽い切れ痔であれば肛門のスキンケアや軟膏などの局所治療、緩下剤などで排便コントロールができれば改善します。肛門狭窄を伴う慢性裂肛には手術が必要です。当院では1泊入院していただき、腰椎麻酔で治療を行います。狭窄の程度に応じて①肛門拡張術、②LSIS(内肛門括約筋切開:図参照)③SSG(皮膚弁移動術)などを行っています。
③あな痔(痔ろう):
過労、ストレス、下痢などが原因となり、肛門の奥(肛門の縁から2~3cm奥)で菌が増え、膿がたまると肛門が腫れ、痛みと熱感が出てきます。この状態を肛門周囲膿瘍といいます。当院では経肛門エコーで早期診断に努め、局所麻酔下で排膿処置を行います。
肛門周囲膿瘍の状態で痛みを我慢し続けると膿が破裂します。運悪く、膿が会陰部の方に広がると菌が全身に回り、死亡される方がいます。肛門の痛みは我慢せず、専門の医師にできるだけ早く相談しましょう。肛門周囲膿瘍を繰り返したり、肛門の縁から膿が出続けている(この場合痛みは少ない)状態を痔ろうと言います。痔ろうは長期間放置すると複雑化(便が出にくくなる場合もある)したり、癌化(痔ろう癌といいます)することもあります。心配な方は、肛門科医と相談しましょう。
痔ろうの治療:当院では1泊~3泊程度の入院治療です。麻酔は腰椎麻酔で行っています。手術はシートン法(下図参照)を基本に行います。
最も多い痔核の原因は肛門の近くの毛細血管がうっ血することで起こります。おしりに負担をかけないような生活習慣が重要となります。
痔の症状は出血、痛み、はれ、かゆみ、便が下着につく、うみが出るなど様々です。
最後に注意しておいていただきたいのは、痔の症状と「大腸がん」の症状が非常に似ているということです。がんだから痛みが出ると思いがちですが、治療が可能な大腸がんはほとんど痛みません。早期がんといわれるものはほぼ100%痛みがないのです。
痔だと思って排便時に出血しているのを放っておいて、病院を訪れた時には手遅れの状態、人工肛門が必要な状態という方が後を絶ちません。
大腸がんは非常に治りやすいがんです。早期で見つかった方は、内視鏡での治療も可能です。私達は、大腸がんで命を落とすような方がいなくなるように、大腸がん検診をお勧めしています。
痔の症状でお悩みの方にはぜひともお気軽にご相談いただけますようにと考えております。脱出を伴う内痔核(排便時に出てくる、あるいは普段から出たままになっているようないぼ痔)でお悩みの方は一度ご相談ください。
詳細は内痔核治療法研究会ホームページを参照ください。
氏名 | 川島 市郎 |
役職 | 大腸肛門病センター長・副院長・外科統括科長 | ||||||||||||||||||
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学歴 | 昭和62年・福井大学卒 | 専門 | 大腸・肛門病を中心とした消化器外科一般 | ||||||||||||||||||
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氏名 | 池田 純 | 役職 | 消化器外科科長 | ||||||||||
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学歴 | 平成5年・京都府立医科大学卒 | 専門 | 肛門外科・消化器外科 | ||||||||||
学会 資格 |
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氏名 | 岡本 亮 |
役職 | 非常勤 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学歴 | 平成14年・滋賀医科大学卒 | 専門 | 大腸・肛門・排便機能などの骨盤外科診療一般/腹腔鏡下手術 | ||||||||||||||||||||||||||||||
学会 資格 |
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