近年、薬剤耐性(AMR)に起因する全世界的な死亡者数の増加が予測されています。AMR対策が全世界的にも国内でも推し進められていますが、当院でも抗菌薬適正使用に関して様々な取り組みを行っています。2013年には世界に先駆けて器質拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生腸内細菌科の菌血症に対するセフメタゾールの有効性を報告する*など、第一線の医療機関として情報発信するべく日々対策を進めています。
多くの患者様にとって、感染症は入院治療を受けられる中で合併症として発症します。日々適切な感染対策をとることで、感染症を発症する患者様を少しでも減らす努力を続ける一方で、万が一発症してしまった場合には、各診療科からの支援要請や院内での取り決めによって、感染症による被害を最小限に食い止めるため様々な支援活動を行っています。対策や支援を進めるにあたって、看護師、臨床検査技師、薬剤師など他職種と連携して質の高い活動を目指します。重症感染症の一つである菌血症(血液の中に細菌が存在する状態)の診断に重要な血液培養検査の重要性についても啓蒙を続け、近年は年間3000件以上で推移しています(図)。
感染対策の一環として、現場のスタッフに対する教育活動や、地域の他の医療機関との合同カンファレンスにも取り組んでいます。令和4年度の診療報酬改定では感染防止対策が感染対策向上と改められましたが、当院は感染対策向上加算1を取得し、近隣の医療機関とも連携して地域の対策向上に取り組んでいきます。また、京都私立病院協会の感染症対策委員会の一員として、AMR対策をはじめとして地域の感染対策の向上に努めています。
*第87回日本感染症学会総会.山田ら「一市中病院におけるESBL産生型腸内細菌による菌血症症例の検討」
2020年以降、新型コロナウイルス感染症の流行が続いています。当院も京都市右京区の急性期病院として、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者様の受け入れに尽力してきました。総合内科や呼吸器内科と協力して、2021年度は軽症から中等症の患者様を中心に受け入れを行います。近隣の医療機関との連携もより強化され、他医療機関や介護施設、障害者施設などの患者様の受け入れや、当院で治療していた患者様が重症化した際の重症担当医療機関への転院なども、COVID-19が5類感染症へ移行した現在も活発に取り組んでいます。
外来部門においては、救急科との連携のもと発熱外来を設置しています。新型コロナウイルス感染症の病像や必要な感染対策について全病院的な学習会を繰り返し、COVID-19が疑われる患者様と、それ以外の発熱や呼吸器症状のある患者様を分け隔てなく診療できる体制を構築し、断らない救急に貢献してきました。COVID-19であっても他の疾患であっても、受診された患者様に必要とされる医療を適切に提供していきたいと考えています。
日常の診療は総合内科と共同して行い、主治医として患者様を担当することで、知識・技術を維持向上するとともに、院内の各診療科や地域の医療機関との連携に関する現場のニーズの把握に努めています。
どの診療科においても、血液や他の組織などから対策の必要な病原微生物が検出された患者様においては、担当の診療科と連携して感染症の治癒を目指します。また、ヒトの常在菌叢を撹乱するおそれのある抗菌薬(広域抗菌薬)を使用されている患者様においては、その使用を最小限にとどめ、合併症を予測し防止するための支援を担当の診療科に呼びかけています。各診療科のニーズの掘り起こしや漏れの無い支援活動を支えるシステムの構築により、年間800例程度の支援活動を行っています。現在は実働を担う常勤医師1人でありこれ以上の業務拡充は難しいですが、担当医師が増えればより積極的な支援活動を行えるものと考えています。
地域の医療機関との連携においては、なかなか熱が下がらず苦しんでおられる患者様、いつも診られている発熱の患者様とちょっと違うという方の紹介外来を担当いたします。また、長期間の抗菌薬治療を要する患者様の逆紹介を積極的に行っていきたいと考えています。
氏名 | 松原 為人 |
役職 | 院長・小児科科長 | ||||||||||
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学歴 | 昭和61年・名古屋大学卒 | 専門 | 小児科 / 感染症科 | ||||||||||
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氏名 | 山田 豊 | 役職 | 病棟医長・感染症科科長 | ||||||||||||||||||||||||||||
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学歴 | 平成17年・京都大学卒 | 専門 |
総合内科 / 感染症科
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学会 資格 |
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氏名 | 山浦 義貴 | 役職 | 出向研修中 | ||||
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学歴 | 令和3年・兵庫医科大学卒 | 専門 | 感染症科 | ||||
学会 資格 |
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