ホーム > 当院について > 病院報 > 病院報 2016年夏号 Vol.52 >バイオフィードバック外来を始めました
皮膚排泄ケア認定看護師
看護副部長
坂田 薫
2016年4月より、京都民医連太子道診療所の外科外来の一つとして、バイオフィードバック外来を始めました。「バイオフィードバック」と聞いて、何をする外来かピンとくる方はいらっしゃらないと思っております。このような外来は近畿一円でもあまりありません。このバイオフィードバック外来の役割を、分かりにくい名前とした理由も含めてご紹介したいと思います。
体温に代表されるような意識的に動かすことができないと言われる体内反応を、機器を使って目に見える形にして意識的に動かし、治療の一環とすることをバイオフィードバック療法と言います。バイオフィードバック外来では筋電図などの機器を使用して、普段意識しない骨盤底筋(図1)の動きを目に見える形にし、意識的に動かしていきます。
便の漏れでお困りの方は日本全国に500万人いると言われており、案外ポピュラーなトラブルです。しかし「便漏れ」という人には言いにくい症状であることと、専門とする医師が少な いため、相談できない状況です。(表1)
出典:おしりの健康.jp http://oshiri-kenko.jp/about/about_01.php
漏れの要因の一つとして、出産や加齢による影響で骨盤底筋群の機能が低下していることが挙げられます。筋肉は栄養と骨盤底筋体操で鍛えることができます。筋肉は90歳になっても適度な栄養と運動で鍛えることが可能です。
骨盤底筋体操(図2)は最近メディアでも取り上げられていますので、ご存知の方もおられると思います。しかし骨盤底筋体操を行うといっても、「この方法でいいのか」と不安になって体操を辞めてしまう方が大変多くいらっしゃいます。そこで1カ月に1回外来にお越しいただき、機器を使用して骨盤底筋の動き を目に見える形にして、自信をもって体操を継続していただけるよう援助することが目的です。肛門科の医師による薬物療法とバイオフィードバック外来で3カ月をめどに通院していただき、便の漏れが改善し、日常生活への支障が減ったら終了となります。機器を使用するといっても痛みを感じるような訓練ではありません。
排便にとても時間がかかり困っている方もおられます。そのような方の中には、排便時に肛門がしまってしまう「奇異性収縮」(表2)という状態となっている方があります。この奇異性収縮は確立された治療がありません。当院では薬物療法と併用して、排便時のいきみ方を取り戻すために、バイオフィードバック療法による骨盤底筋体操をお勧めしています。治療が確立されていない分野ではありますから、効果を見極めつつ根気よく体操を行います。
体操はシンプルです。排便やおならを我慢する要領で肛門を「締める・緩める」を繰り返します。「締める・緩める」をリズミカルに行う方法と、「5秒締めて緩める」を繰り返す方法を行います。体操は寝て行っても座って行っても構いません。一番力が入りやすそうなスタイルを選びます。1日トータルで10分以上の体操が効果的です。
この外来にお越しの方は、排泄に関連したトラブルを抱えておられます。便失禁外来などわかりやすい名前にしたほうがなじみやすいのですが、あまり周囲には知られたくないという方が多くおられます。そこで直接的な表現を避け、バイオフィードバック外来と名付けました。
まずは、トラブルの原因を探ることから始めます。診断によって治療は異なりますので、外科・肛門科への受診をお勧めします。診断に基づく薬物療法と骨盤底筋体操で7割程度の方の症状が改善します。ぜひご相談ください。
TEL.075-822-2660(京都民医連太子道診療所)