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京都民医連中央病院報

病院報 2015年夏号 Vol.48

便失禁治療を諦めないで

新たな治療法 仙骨神経刺激療法(SNM)を紹介します

消化器外科科長
岡本 亮
外科学会専門医
消化器病学会専門医
がん治療認定医
日本大腸肛門学会専門医

ひとりで悩まないで 〜便失禁は治療ができる病気です〜

「トイレに行きたいと思ったが、間に合わなかった…」「気が付いたら下着に便がついていた…」こういった経験をされて大変ショックを受けられたことがある方もおられるのではないでしょうか。日本でもおよそ500万人以上の方が同じような悩みを抱えているとみられています。便失禁は決して珍しい病気ではないことがわかってきました。

しかし残念ながら便失禁の方の75%以上が医療機関への受診をされておらず、ひとりで悩んでおられるとの調査結果がでています。

実は便失禁の患者さまの多くはお薬の治療だけで症状が改善します。ひとりで悩まないで思い切ってぜひ一度専門の医療機関へご相談ください。

 

 

便失禁の原因は? どんな人に多い?

便失禁の原因は様々ですが、加齢や手術による肛門を締める筋肉(内・外肛門括約筋)の収縮力の低下、分娩時の肛門の損傷が主な原因といわれ全体の約7割をしめるとされます。そのため便失禁は比較的ご高齢の女性が多いと思われがちですが、ある施設の調査では半数が30歳代から60歳代の女性であったという報告もあり、決して高齢者だけの病気ではなく、活発な日常生活を送っておられる方も含め全ての方が経験する可能性のある病気であるといえます。

 

治療法は? 〜治療法の選択肢が広がっています〜

まずは詳細な問診と肛門の働きをみる検査をします。その上での判断となりますが多くの方がまずは保存的治療といって体への負担の少ない方法から治療を始めます。便失禁の方は一般に軟便または下痢気味(便秘と下痢を繰り返すなど)の方が多いため、まず便の性状をお薬で調整します。また検査により肛門を締める力が弱っていることが分かった場合には肛門の筋肉を締める訓練を行います。

これら保存的治療にて約7割の方の症状が改善します。保存的治療で改善しなかった場合には次に外科的治療を行います。緩くなった肛門を縫って締めたり、他の筋肉を肛門に巻きつけて肛門括約筋の代わりとすることもあります。また2014年4月から肛門の神経を刺激することで便失禁を治す治療(仙骨神経刺激療法:SNM)が保険適応となりました。

 

新たな治療法 〜仙骨神経刺激療法(SNM)を紹介します〜

SNMは保存的治療で十分な治療効果が得られなかった患者さまに適用されます。

おしりにペースメーカーのような小さな刺激装置を植え込んで、持続的に仙骨神経を電気刺激することで排便コントロールをします。欧米では20年ほど前から行われており、約18万人の実績がある便失禁の標準的な治療とされています。日本で行われた臨床試験でも約8割の方に治療効果がありました。大きな特徴は今までの外科治療と異なり後戻りのできる治療ということです。治療には手術が必要です。まずリードという刺激線で2週間試しに神経刺激を行います。これで効果を認めた方のみ刺激装置を植え込みます。残念ながら効果がなければリードを抜去します。この場合もお体には大きなダメージとはなりません。現状では一部の医療機関でのみ行える治療です。

 

一度ご相談を…

当院では大腸肛門病センター外来、インコンチネンス(失禁)外来などでこれまでにあげた治療を全てに対応しております。8月からは失禁・便秘を専門に扱う排泄機能外来を始めます。多くの方は保存的治療でこれまでの不快感・不安感から解放されます。ぜひ一度ご相談ください。

 

 

 

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京都民医連中央病院

代表番号:075-822-2777

 

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