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京都民医連中央病院報

病院報 2014年秋号 Vol.45

ベトナム・フエ中央病院訪問記

副看護部長
坂田 薫

 

2014年7月20日から24日までフエ中央病院の医療現場の視察のためフエ市を訪れました。フエ出身の当院研修医のクィー医師の案内で、吉中丈志院長・井上賀元科長・原奈央医師・村澤哲也医師・内田寛事務長・山口俊朗事務次長・大城春美リハビリ課課長・そして私、副看護部長坂田薫が参加しました。

フエ中央病院のあるベトナム社会主義共和国フエ市は、ベトナム中部の都市で、フエ省の省都です。19世紀から20世紀にかけてベトナムに存在していた阮(グエン)朝の首都に定められていた古都で、京都市のパートナーシティでもあります。市の中央をフオン川(香川)が流れ、北側にはボー川が流れています。大変情緒ある美しい町でした。世界遺産(文化遺産)に「フエの建造物群」、無形文化遺産に「フエの雅楽」が登録されています。

 

 

フエ中央病院訪問

ベトナムトップ3の病院

訪問の始まりは院長・副院長のご挨拶でした。フエ中央病院はベトナムの西洋医学の最初の病院として建てられ、今年で120年を迎えるそうです。ベトナムTOP3の病院の一つで、貫禄あるフー院長からは「ハノイとホーチミンでできる医療は当院でできる」と説明されました。副院長は日本の国立医療センターでマネジメントを学んだそうです。その後、吉中院長から当院の概要を説明しました。訪問を受け入れていただいた感謝を込めて、扇をプレゼントしました。

フエ中央病院は、外来年間2万人、ベッド数は2000床。実質は2500床!(病棟見学でその全容が明らかになります)で、7つのセンター病院があり、ベトナム中部の160万人の健康を支えています。スタッフは2300人、日本のODAで建てられた施設が一番大きいそうです。国立病院ですが、プライベートのオーダーメイド診療(自費診療ということだと思われます)を行う300床の国際センターも展開しています。今年はがんセンターがオープンする予定で建設中でした。

 

医療について

医師493人、特に医師教育のプログラムには大変力を注いでおり、Facebookで評判が良いために希望者が多いそうです。大学5・6年で現場医学を実践しており、初期研修制度はなく、医学部を卒業したら一般内科医となるそうです。地方の医師が足りないため、農村部の医師を増やすため家庭医療の教育プログラムを行っています。地方ではできる医療が限られるので、できないことはフエ中央病院に紹介することとなります。心臓血管センター、小児科センターに加え産婦人科センターと感染症センターの開設を計画しているとのことでした。オーストラリアやフランスとの医療交流、アメリカ留学等で最先端の医療技術を学んでいるそうです。

 

看護について

看護師は733人で、100人のベッドを日勤7人、夜間2人で看護にあたるそうです。患者には家族が付き添うことが基本のようで、家族が泊まり込む施設がありました。主な業務は薬の管理・調剤・医師の指示での処方などで、オーダリングシステムはありますが入力作業は看護師が行います。医療秘書の役割を担うことも仕事だそうです。ケアは少なく、交代勤務ですが24時間看護をつなぐことができない、しかし医療安全などチャレンジしており手は抜いていない、と熱く語っておられました。日本との大きな違いは死生観です。死期が迫ると患者は自宅に帰り、家族に看取られて「家で死ぬ」ことが当たり前だそうです。

 

リハビリテーション病棟の義肢作成。
年間300作成します。

リハビリテーションについて

80名のセラピストが働いています。リハビリテーション病棟があり入院時からの介入を行っているとのことでした。交通外傷、地雷での障害が多いとのことでした。

 

 

病棟の様子

外科病棟、リハビリテーション病棟など見学させていただきました。1病室に6〜8ベッド並んでいますが、1つのベッドに2人入院している所がありました。レントゲンフィルムは間違えないようにベッドの端に吊るしてありました。2000床に2500人入院しているのは1ベッドに2人が入っているからということでした。

 

国際センター

いわゆる自費で公的保険にはないサービスを受けることができます。外国人や富裕層がターゲットで、医師の指名も可能だそうです。受付がありクーラーが効いていました(他の棟はクーラーがなく受付も見当たりませんでした)。早朝にコンサルテーションルームに並び、問診を受け診療科を決定します。医療機器は最先端で心カテは1日16〜25件行うそうです。

   
国際センター
コンサルテーションルームです。
  フエ中央病院の模型です。   リハビリテーション病棟の入口です。

 

フエを楽しみました

川床で夕食。
一番左はクィー先生のお父様です。

町の食堂で「ブン・ボー・フェ」というフエの代表料理を頂きました。米の麺で牛肉がたっぷり乗っていますが、さっぱりして美味でした。またグエン朝王宮跡、第4代皇帝トゥドゥック帝稜、カイディン帝陵や、ティエンムー寺、フエの市場など観光しました。王宮跡には当時の建物がベトナム戦争で破壊されていたため復元された施設が立っています。とても広大で大変美しく、戦争により破壊されたことが残念でした。歴代の帝稜はどれも広大で生存している頃から建て始めるそうです。帝王の権力の象徴で大変個性的です。フエの市場は日本とは違う雰囲気でした。食料品から生活雑貨までなんでも売っており、日本にはないアジアンな雰囲気でした。マンゴスチンが大変美味しかったです。

クィー医師のご自宅でベトナム料理をごちそうになりました。お父様秘蔵のウィスキーで乾杯。ベトナムでは何度も乾杯を行います。テーブルに隙間なくお母様の手料理が並べられ、パクチーなどの香味野菜と料理の相性が抜群で、大変美味しく頂きました。「チェ」という冷たいデザートがさっぱりとして美味しく今後日本でも流行るかもしれません。最終日にもクィー先生のお宅で昼食。ふ化途中の卵を食べました。ベトナムでは日常的な食べ物だそうです。私はなんでも食べられると自負していましたが、こればかりはギブアップ。でも「おいしいよ。濃厚な卵だよ」と皆さん食べていました。

 

今後も医療交流していきます

覚え書を交して握手。
右がフー院長、左が吉中院長です。

今後のマネジメント・医師研修・医療交流を行うことを互いに合意し、覚書を交わしました。「これまで人道支援や視察などはあったが、このような形での病院間の直接の交流は経験がない」とフー院長が言われ、吉中院長からも「フエ中央病院は発展の途上にあり活力がある。フエの健康を守る情熱の賜物。アジアの同志で交流を長く続けていきたい」と話しました。

 

 

訪問して

海外の病院を見学するという大変貴重な体験をしました。医療に対する文化の違いを感じ、死生観や看護に対する考え方をもっと深く知りたいと思いました。また日本の医療費の高さを再認識し、社会保障の在り方を考える機会となりました。フエ中央病院の先端医療に対する自負を感じるとともに今後の交流が大変楽しみです。

 

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