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京都民医連中央病院報

病院報 2014年秋号 Vol.45

より安心をめざした 顕微鏡視下の腰椎の低侵襲手術

脊椎脊髄外科指導医
整形外科科長 中川 洋寿

 

腰の神経の通り道である脊柱管が狭くなって、下肢の神経痛や、長く歩けなくなる症状をきたす「腰部脊柱管狭窄症」。近年では増加の一途をたどり、高齢者のQOL低下の大きな原因になっています。

 

 

診断にはMRIが有効ですが、脊柱管が何カ所も狭くなっていることも多いです。そのため、どこが原因になっているのか判断がむずかしい場合があり、当院では神経根造影とブロックなど追加の検査も行い責任部位を診断していきます。治療は保存的治療法が中心で、鎮痛剤、プロスタグランジン製剤、コルセット着用などから始めます。それでも、特に圧迫の程度が強く、痛みなどが続く場合には、症状の軽減を目指して手術を検討します。

従来の手術は椎弓切除や大きな開創術といった周辺組織にもダメージの大きなものでした。しかし、最近では顕微鏡や内視鏡を使ったさまざまな低侵襲の除圧術が増えています。

当院では、世間で普及しはじめた内視鏡を用いた方法(MED法)ではなく、組織へのダメージがそれと同等かそれ以下でありながらも、立体視ができるためにより安心で確実に行えるという考え方で、顕微鏡を導入した手術を行っています。


当院の方法はMILD法といい、正中からアプローチするために必要十分な除圧を行いながらも、筋肉や椎弓をできる限り温存して体への負担が少ないマイルドなものです。1カ所であれば皮切は3〜4cm程度で、手術時間は1時間半程度です。筋肉への侵襲が少ないため機能的にも温存され、痛みもそれほど強くなく、基本的に手術の翌日に歩行が可能となり、術後10日前後で退院できます。

当院では年間100例前後の脊椎手術を行っていますが、このうち30例ほどがこの術式です。従来の手術法に勝るとも劣らない手術成績を得ています。体への負担が軽いので高齢者に適応が広がり、日常生活や歩行能力の改善に喜ばれています。また、若い世代にも仕事などへの早期の復帰が可能で好評です。ただし、術前の検査で腰椎に不安定性がある場合はこの限りではなく、スクリューを使った固定術などより大きな手術が必要になることもあります。

適切な治療を行えば、腰痛と下肢痛が軽減されるだけでも、高齢者のQOLは大幅に改善します。このような理念で私たちは全身状態が許せる範囲で高齢者の手術にも積極的に取り組んでいます。当科の脊椎・脊髄外科領域で最も多い手術症例はこのような腰椎変性疾患です。

また、近年増加している頸椎症性脊髄症に関しても、同様に顕微鏡視下に低侵襲な手術を行っています。後方法では筋肉をできる限り温存したり、最小限度を選択的に、除圧術を行っています。これにより、術後の疼痛軽減をはかるとともに、脊柱としての機能を温存し、翌日からの離床と10日前後で退院できるように目指しています。

しかしながら、すべての方にこれらの低侵襲手術が可能なわけではなく、一人ひとりの症状、検査の所見、生活状態、全身状態を判断し、手術内容を決めています。脊椎の手術は、適切な診断と術式の選択とともに、タイミングが大切です。症状があまりに進んでからでは改善が難しいケースもありますので、ぜひ早めに当科にご相談下さい。当院では私と村上純一医師が脊椎脊髄外科指導医として診療にあたっております。

 

 

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