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京都民医連中央病院報

 

1.脂質の重要性

●生理作用など脂質の様々な機能


ロイコトリエンB4

もう一つ重要なものが、slow reactingsubstance of anaphylaxis (SRS-A)というもので、これは1930年代にすでに生理作用は見つかっていました。気管支の平滑筋を収縮するという薬理的な実験をすると、ヒスタミンを与えた時に非常に速やかな収縮を起こします。ところがSRS‐Aは、非常にゆっくりと、しかし持続的に気道を収縮させるとことがわかります。で、この物質がいったい何なのかというのはよく分からなかったのですが、約40年後にこれがロイコトリエン、特にこのペプチド性のロイコトリエンであるということがわかりました。これはアラキドン酸にグルタチオンとかシステインとか、アミノ酸が結合した分子であると、いう発見です。私自身も、また、世界中の研究者も新しい生理活性物質の発見に興奮していた時代です。で、気管支喘息やアナフィラキシーショックに、このペプチド性ロイコトリエンが関係しているということは、実験的にも試されています。したがって喘息治療薬では、オノン(小野薬品)が世界でいちばん最初に作られた受容体の拮抗薬で、ついでメルクがシングレアを販売し、これらの薬は喘息とかアレルギー性鼻炎の治療で臨床に使われています。

 


図18

ペプチド性のロイコトリエンというのはもう一つ、血管の透過性を亢進させます。図18はハムスターを使った実験ですが、直線的な細動脈(Y字型に見えます)、枝分かれしている細静脈で、見えないところに毛細血管がたくさんあるのですが、ロイコトリエンC4というのを非常にわずか与えますと、投与1分後に細動脈が収縮し、組織は虚血状態に陥ります。さらに、投与して10分経ちますと、一度細くなった細動脈が元の太さに 戻るのですが、この細静脈から血液成分が一斉に組織へ出てくるわけです。異物や細菌などが来た時に白血球を呼び寄せて、それを食べたり消化したりしなくてはいけないのと同じように、免疫グロブリンとか、あるいは補体などで異物を排除したいという生体防御反応のわけです。ところが、これは体にとっては浮腫、むくみという状態になるわけです。気道収縮が起こり、さらに、そこに浮腫が起きると、ひどい閉塞性の肺疾患の症状になるということは明らかなことです。

脂質というのは、このような様々な機能を持っていて、特に生理活性脂質というのは様々な病気にも関連していることがおわかりと思います。

 

 


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