公益社団法人 京都保険会 京都民医連中央病院

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ホーム > 当院について > 病院報 > 病院報 2013年特集号 > アスピリンはなぜ効くか

京都民医連中央病院報

 

1.脂質の重要性

●アスピリンはなぜ効くか

いちばんわかり易い例が、アスピリンはなぜ効くのかと、ということです。アスピリンはおそらく最もよく使われる薬だと思いますし、アスピリンに限らずNSAIDS は皆様もよくお使いだと思うのですが、これらは、アラキドン酸からプロスタグランディンを生合成するシクロオキシゲナーゼという酵素を抑える作用があります。この結果から、プロスタグランディンが炎症とか発熱、痛みに関わるということが分かったわけですね。

アスピリンは、元々、大昔にヒポクラティスが柳の樹皮を使って、解熱とか鎮痛に用いたと…。で、セイヨウシロヤナギというのをラテン語でサリックスアルバと言うのですね(図13)。で、ここから取られたものがサリチル酸。そのサリチル酸をさらに加工したものがアセチルサリチル酸。それがアスピリンです。この方が分かりやすいですね。サリチル酸というのにアセチル基を付けたもの、これがアセチルサリチル酸で、これがアスピリンです。これはドイツのバイエルという会社で、ホフマン博士が1897年に作って売り出したものです(図14)。

 


図13

図14

図15

その後、インドメサシンというのが合成されたり、それからイブプロフェンとかそのような薬剤が使われたのですが、先ほど写真でパルメ首相と踊っていた女性の後姿の写真をお見せししましたが(図6)、その旦那さんのジョン・ベインというイギリス人が、アスピリンというのはプロ スタグランディンの作用を抑えるというのを1970年に見つけて、これで彼はサミュエルソンらと一緒にノーベル医学生理学賞を貰ったわけです(図13)。

一方でアスピリンの最大の副作用は胃潰瘍で(図15)、ひどい場合にはこういう穿孔性の胃潰瘍になったり、大出血を起こします。それはどうしてかと言うと、プロスタグランディンというのは通常、胃酸の分泌を抑えている作用もあるわけで(図15)、アスピリンを飲んでプロスタグランディンを減らすと胃酸が出すぎて、特に空腹時に、何も消化物がない時に、胃酸が出てペプシンが大活躍すると潰瘍ができるということになるわけです。空腹時の胃の強い酸分泌を中和する目的で作られたのが商品名バッファリンという薬です。bufferというのは緩衝作用という意味です。

ところで、このアスピリンよりステロイドの方がより強い抗炎症作用が持つことが知られています。で、アスピリンというのはシクロオキシゲナーゼ…、先ほどに申しましたように、プロスタグランディンの産生を抑えるのですけれども、他の酵素を抑えることはしないわけです。ところが、アラキドン酸が膜から出てくる時にホスホリパーゼという酵素が働くのですけれども、このホスホリパーゼという酵素をグルココロチコイドは抑えるということが知られていたわけですね。ということは、アスピリンで抑えられない、つまりプロスタグランディンではない何か別の分子がアラキドン酸より作られ、それが炎症に非常に重要な役割をしているだろうと推測され、ロイコトリエンという分子の発見のきっかけになったわけです。

 

 


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