ホーム > 当院について > 病院報 > 病院報 2005年春号 Vol.7 > 大腸がんと食物繊維
管理栄養士 安達 洋子
急激に増加している大腸がん。将来的には、がんの第一位になると予想されているといいます。
健康友の会でも検診キャンペーンが繰り広げられました。
生活習慣から大腸がんの促進因子として、運動不足・肉大食・高塩分・飲酒・喫煙等が挙げられています。そして、長らく予防すると言われてきたのが食物繊維です。
しかし、最近の研究では「サプリメント等での食物繊維過剰摂取や、特定の食物繊維を補充して長期間摂取した場合、がんの前段階と考えられる大腸腺腫が発生しやすい」との結果が出、警告が発せられています。
では、食物繊維とはどの様なものでしょうか。
食物繊維には大きく『不溶性』と『水溶性』に分類され、各々のはたらきがあります。
穀物・大豆・野菜・果物に含まれるセルロースやヘミセルロースなど。
腸の蠕動運動を盛んにして、腸の内容物の停滞時間を短くしたり糞便量を増加させる。
海藻に含まれるアルギン酸や野菜・果物に含まれるペクチンなど。
粘度の高い状態になって食物の胃内停滞時間を長くさせる為、少量でも満腹感が得られたり、小腸ではでんぷんの消化や吸収を遅らせて血糖の上昇を緩やかにしたりする。
腸内細菌のえさになって、善玉菌を増やす。
食品や胆汁酸からのコレステロールを小腸で吸着して体外に排出し、血中コレステロースを低下させる。
そしてこれらの作用から、糖尿病や虚血性心疾患、大腸がんの予防に役立つと関心が寄せられ、第六の栄養素として注目される様になりました。また、腸管免疫に対しての機能も明らかになってきました。
市場では食物繊維を含む健康食品やサプリメントが多く出回っています。厚生労働省が効果表示を許可した特定保健用食品(トクホ)もあります。
食物繊維を含む健康食品やサプリメントの有用性は認められています。が、研究結果からは一般的に、精製されたものよりも、食品の形態で摂取したほうが効果が高い様です。また、精製物は過剰摂取にならない為の配慮が要ります。
前述した通り、食物繊維には多くの種類があり、はたらきも多彩です。疾病予防として考える場合には、特定の食物繊維を長期間、大量に摂取するのではなく、他の栄養素と食生活全体を考えることが重要です。
つまりは、野菜や海藻、きのこを種類多くたっぷり、肉はほどほどで、穀類・豆類・魚・果物等をバランスよく、塩分控えめに食べる…といった常識的なこととなります。たっぷり野菜類を摂るには、目安としてメイン料理の付け合せだけではなく、中鉢の野菜料理が毎食事に必要です。
これを実践する為には…
継続が大切ですから、自分の出来る範囲でやりくりして下さい。
大腸がんは、食生活改善で予防、検診で早期発見・治療していきましょう。
グアーガム
インド原産のグアー豆からとった水溶性食物繊維を分解して粘度を下げたもの。
サイリウム
オオバコの種子からとった水溶性食物繊維。
難消化性デキストリン
トウモロコシやジャガイモのでんぷんを加水分解して取り出した水溶性食物繊維。
ポリデキストロース
水に非常に溶け易い合成の水溶性食物繊維。
小麦ふすま
小麦の外皮。約9割がリグニン等不溶性食物繊維。
低分子化アルギン酸ナトリウム
海藻類に含まれる水溶性食物繊維、アルギン酸ナトリウムを加工して粘度を下げたもの。
キトサン
カニ、エビ等の殻に含まれるキチン質を加工した動物性の不溶性食物繊維。