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宗教的理由による輸血拒否に関するガイドライン

宗教的理由による輸血拒否に関するガイドライン

2013年7月4日初版
2016年12月1日改定
公益社団法人京都保健会 京都民医連中央病院

 

はじめに

これは、京都民医連中央病院における「エホバの証人」信者が宗教的理由により輸血を拒否する場合の治療に関するガイドラインである。

京都民医連中央病院は、1997年に「エホバの証人」信者の方々を中心とする輸血拒否に関する基本的見解をはじめて表明した。その見解では、「医療者の救命義務」を優先することが明言され、「どうしても必要な輸血は行う」という態度表明がなされた。しかし近年、日本全体で「患者の自己決定権」を重視する潮流が高まりつつあり、当院は2003年に「患者の自己決定権を守り発展させる」ことを約束した「患者様の権利章典」を制定した。このような状況の変化に対応して、このたび当院では、「医療者の救命義務」ではなく「患者の自己決定権の尊重」を優先することとし、倫理委員会の審議を経て、新しいガイドラインを作成した。

 

Ⅰ.基本原則

(1)「エホバの証人」を信仰する患者からの宗教的理由による輸血拒否がある場合には、患者の自己決定権を優先して尊重することとし、下記に定めるルールに従って、治療を行う。

(2)このガイドラインは、「エホバの証人」の信者である可能性がある場合に適用する。「エホバの証人」の信者でないことが明らかな場合には、必要に応じて輸血を行う。

(3)無輸血で治療を行うことが患者の生命に危険を生じさせることが確実な場合であっても、患者が宗教上の理由により輸血を望まない場合には、「無輸血説明同意書」に署名を求め、輸血を行わない。

(4)輸血の可能性のある医療行為を行う必要がある場合には、説明を十分に行い、輸血同意書に署名を求める。

(5)このガイドラインを適用して輸血または無輸血の治療を行う場合は、事前または事後に病院長に報告する。

 

Ⅱ.共通事項

(1)Ⅲの対応方針に定めるいずれの場合においても、判断及び決定は、特に定める場合を除き、医師1名以上を含む医療従事者3名により行う。

(2)主治医または治療を担当する医師は、このガイドラインに従って決定される治療内容が、自らの価値観に反しており、それが耐え難いと感じる場合、他の医師と交代することができる。

(3)患者本人が「エホバの証人」の信者であることが明らかであるかまたは推定される場合には、治療を開始する前に、輸血をしないで治療を行うことが生命の危険を招く可能性があること、無輸血治療の場合には十分な治療が施せない可能性が高いこと等、輸血をしないことにより想定される結果及び輸血をした場合の可能性について、十分に患者本人及び患者を保護する立場にある者に説明し、理解を得るように努める。

(4)輸血に関する患者の意思は、教団発行の「医療に関する継続的委任状」、自筆の「事前指示書」、または患者が自己の意思を事前に明示しているその他の文書(これらを総称して以下、「事前指示文書」という)を患者が保持しているか否かによって確認する。事前指示文書を保持していない時は、以下の対応方針のそれぞれ該当する場合の条件により判断する。

(5)無輸血治療が困難と判断した場合、「エホバの証人」の医療機関連絡委員会へ連絡して協議するとともに、患者が希望するときには、転院を勧めることができる。

(6)患者本人が「エホバの証人」であることがいずれの方法によっても確認できない場合には、患者はエホバの証人の信者ではないと判断し、医療上の必要に応じて輸血を行う。

(7)輸血治療を行った後に、患者が「エホバの証人」の信者であり輸血を望んでいなかったことが明らかになった場合は、事後の精神的ケアについて十分な配慮を行う。

 

Ⅲ.対応方針

A.患者本人が18歳以上の場合

1.患者本人に意思決定能力がある場合

(1)「エホバの証人」を信仰しているために輸血を望まない場合は、本人の意思を尊重して、輸血を行わず、無輸血治療を行う。
 この判断を行うにあたり、患者の意思は、事前指示文書を保持しているか否かによって確認する。

(2)「エホバの証人」を信仰しているが、輸血による治療を許容する場合は、輸血同意書に署名を求める。

(3)患者の意思決定能力の有無に疑義がある場合には、医師1名以上を含む医療従事者3名により判断する。

 

2.患者本人に意思決定能力がない場合

(1)患者本人が「エホバの証人」を信仰しているため、宗教上の理由から輸血を望まないことが明らかな場合は、本人の意思を尊重して、輸血を行わず、無輸血治療を行う。

(2)患者本人が「エホバの証人」を信仰していることが明らかでない場合は、医療上の必要に応じて輸血を行うことができる。

(3)患者本人は「エホバの証人」を信仰しているが、患者本人の事前の意思表明により、または患者を保護する立場にある者の判断により、輸血による治療を許容する場合は、輸血を行う。

(4)患者の意思決定能力の有無に疑義がある場合には、医師1名以上を含む医療従事者3名により判断する。

 

B.患者本人が15歳以上18歳未満の場合

1.患者本人に意思決定能力がある場合

(1)患者本人が「エホバの証人」の信者であるが、輸血を希望する場合は、輸血を行う。
この場合、親権者または患者を保護する立場にある者(以下「親権者等」という。)の同意を必要としない。

(2)患者本人が「エホバの証人」の信者であり、宗教上の理由から輸血を拒否し、親権者等も患者への輸血を拒否する場合は、輸血を行わず、無輸血治療を行う。

(3)患者本人が「エホバの証人」の信者であり、宗教上の理由から輸血を拒否するが、親権者等が1人でも輸血を希望する場合は、できるだけ無輸血治療を行うが、輸血が必要な場合は、輸血を行う。

(4)患者の意思決定能力の有無に疑義がある場合には、医師1名以上を含む医療従事者3名により判断する。

 

2.患者本人に意思決定能力がない場合

(1)患者本人が「エホバの証人」の信者であり、事前指示文書がある場合は、以下のように対応する。

(2)患者本人による事前指示文書がない場合は、以下のように対応する。

(3)患者本人による事前指示文書がなく、親権者がいない(見つからない)場合は、以下のように対応する。

(4)患者の意思決定能力の有無に疑義がある場合には、医師1名以上を含む医療従事者3名により判断する。

 

C.患者本人が15歳未満の場合

(1)患者本人の信仰がどのようなものであれ、患者自身が輸血を希望する場合または患者本人の意思が明らかではない場合は、輸血を含む必要な治療を行う。
 この場合、患者本人が輸血を受ける意思を示しているにもかかわらず、親権者全員が輸血を拒否するときは、親権者に対して輸血の必要性及び無輸血治療に伴う危険性について十分な説明をした上で、それでもなお輸血を拒否するときは、児童相談所に通告・相談し、その判断を得て輸血を行う。

(2)患者本人が信仰を理由にして輸血を拒否している場合でも、それのみでは有効とせず、輸血の可否は、本人及び親権者に対して輸血の必要性及び無輸血治療に伴う危険性について十分な説明をした上で、次のルールに従う。

 

D.生命の危険を伴う緊急事態で、事前指示文書がなく、本人の意思も確認できず、また親権者や親族、代理人等の患者本人に関係する者が立ち会っていない場合、輸血を含む必要な医療行為を行うことができる。

 

 

Ⅳ. このガイドラインに定める手順で解決困難な事態が生じた場合

(1) 2名以上の医師を含む医療従事者3名以上で相談し、輸血の有無を含む治療方針を決定し、速やかに病院長に報告する。病院長はこの方針の可否について倫理委員会に意見を求めたのち、この治療方針の可否を判断して、主治医または担当医師に通知する。

(2)(1)にかかわらず、緊急の判断が必要な場合は、2名以上の医師を含む医療従事者3名以上で相談し、方針を決定し、速やかに病院長に報告し、病院長は倫理委員会に報告する。

(3)「エホバの証人」(「ものみの塔」)との協議が必要と判断される場合は、「エホバの証人」の医療機関連絡委員会に連絡する。

 

 

 

 

 

京都民医連中央病院 倫理委員会委員名簿(2016年12月1日現在)

委員長 小原克博 同志社大学神学部神学科教授
副委員長 原昌平 読売新聞大阪本社編集局編集委員
副委員長 川島市郎 京都民医連中央病院副院長・消化器外科科長
委員(外部) 岩橋多恵 京都第一法律事務所弁護士
委員(外部) 勝村久司 医療情報の公開・開示を求める市民の会事務局長
委員(外部) 関谷直人 同志社大学神学部教授
委員(外部) 広瀬東栄子 京都中右京健康友の会幹事
委員(内部) 井上賀元 京都民医連中央病院集中治療科科長
委員(内部) 冨田豊 京都民医連中央病院臨床検査科科長
委員(内部) 那須徹也 京都民医連中央病院内科医師
委員(内部) 東正一郎 京都民医連中央病院参与
委員(内部) 平田恵美 京都民医連中央病院看護師長

※委員は五十音順

 

 

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