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第六十八回 倫理委員会 議事録

日時 2016年8月4日(木)18:30~20:30
場所

京都民医連中央病院西館会議室

出席者

外部委員 小原克博委員長、原昌平副委員長、勝村久司委員、関谷直人委員、広瀬東栄子委員
病院委員 川島市郎副委員長、冨田豊委員、東正一郎委員、平田恵美委員
事務局  影山大悟、藤﨑智、丸山俊太郎
オブザーバー 松本孝、川原初恵
オブザーバー(エホバの証人京都医療機関連絡委員会) 荒川晃裕、小嶽朝陽、園部

欠席

岩橋多恵委員、井上賀元委員、那須徹也委員

議事

 

議事(1)「第67回倫理委員会議事録確認」

小原 只今より第68回倫理委員会を開催させていただきます。まずは第67回の議事録のご確認をお願いします。もし何かあれば事務局にご連絡を下さい。

今日は議事(2)の「宗教的理由による輸血拒否に関するガイドラインの改定について」の事例検討がメインになりますので、この件に関して十分な時間を取りたいと思います。その為に本日、エホバの証人の医療機関連絡委員会から3名の方がご陪席していただいています。最初に松本先生からご説明をいただいて、その後に検討をしたいと思いますので、宜しくお願いいたします。

 

議事(2)「宗教的理由による輸血拒否に関するガイドラインの改定について」

※事例の報告がありました。

小原 有り難うございました。続けてご説明を宜しくお願いします。

川原 資料B-②をご覧下さい。ウチではガイドラインをベースに、継続的委任状で患者さん本人がエホバの証人でいらっしゃることを確認させていただきながら、教団の方から出された免責証書をいただいたりすることで、運用してきましたが、今までは小児とかご高齢の方とか、個人の意思を表明できない方は全くいらっしゃらなかったので、免責証書を使うことはあまりなかったと思いますが、「論議・検討依頼事項」にあるように、世界共通に合わせて教団の方の免責証書をもう使わないということで、ちょっと混乱した事例がありました。13年に作ったガイドラインでは「本人の意思が確認できない場合は免責証書で確認する」となっていますから、教団が免責証書を出さないとなると、病院が準備しないといけないことになるのではないかということで、ベースは13年のガイドラインの運用で良いと思うのですけれど、免責証書の扱いを整理しないといけないなと思いました。

また、松本医師がご報告しましたが、病状や手術適応状況において当院ではできない場合ですね。まずは医師同士で、どういう状態かということとウチで受け入れできるのかということを集団で論議しながら決めていただくのですが、その時に「自分とこが断ったらこの患者さんはどうなるのかな」というような心配もあったりするので、教団で掴んでいらっしゃる当院以外の状況だとか、そういう情報をやり取りしたいなと思いました。「国立京都でも受け入れてもらっているよ」と聞かせてもらったり、今も徳州会のガイドラインの話が出ていましたけれど、先週土曜日の京滋の医療安全研究会には、徳州会の先生もいらっしゃっていたのですけど、「ガイドラインがありますよね」と言ったら、「全国的にはあるのですけど、京都はそこまでは行っていなくて、相対的な判断でやっているのだ」と言われましたが、京都とか近隣の実際の受け入れ状況をお聞かせ願いたいなと思っています。

資料のP2です。以前はお一方毎に「どうしようか」とガイドラインをベースにやってきたのですけども、決めておいた方が現場はスムーズになりますので、手順を作らせていただきました。そのポイントは、エホバの証人の方の紹介があったらまず治療できるかどうかの判断をするというのは、ガイドラインがベースになっています。後、患者さんの面談をきっちりしたいなと思っていまして、患者さんとご家族、それとエホバの教会からも来ていただけば何かあった時に支援していただけるので、私も何回か面談に入りましたが、とても安心して面談できましたし、患者さんのご家族が教会の方ではなく、「やっぱり何かあった時には輸血して下さい」と外科手術当日の直前に言われて、もう一度面談したこともあるのですけど、教会の方が一緒にいていただくと非常に安心でした。また、キーパーソンが教会の方でない場合、とても混乱するケースもありますが、面談では、病態によっては「治療そのものができない場合もあるよ」とか、色々な可能性を含めて医師はきちんと説明をさせていただくということです。後、ガイドラインには「院長への報告」というのがありましたが、形になっていなかったので、医療安全管理者がきちんと把握して院長へ報告するという形で、今は報告を毎月しています。

松本医師から手術に関する患者数を出してもらいましたが、P3の上はカルテに「エホバの証人である」ということがどこかに書いてあるというのを、情報管理課で拾っていただいた数で、その下は入院された数を拾ってもらいましたが、同じ方が何回か入院されていることもありますので、延べの入院件数です。私からは以上です。

小原 有り難うございました。では、今まとめていただいた課題に対して、まず連絡委員会の方々からお答えいただけますか。特にガイドラインでは重視されている免責証明書の取り扱いが変わったということとか、医療に関する継続的委任状の現状だとか、その辺りをまずご説明いただければと思います。

荒川 大変なケースでもお世話になっていて、皆さんが真摯に対応して下さっていることに本当に感謝をしております。こうした機会を設けて下さったことにも感謝をしております。こちらから免責証明書を提出しなくなった背景なんですけど、元々継続的委任状というのを各自が携帯していまして、これまで手術の場合には組織から免責証書を提供して、これで合意しましょうというスタンスだったのですが、輸血謝絶という件に関しては継続的委任状で意思表示をしているという理解でして、プラス免責証書となると、内容が免責以外の部分もほぼ重なっているという背景があるので、書類を整理するという理由が1つありました。そして、手術をされる場合の一般的な流れは、病院に患者さんが受診して「手術が必要だ」と言われて、患者さんからは「無輸血でお願いします」となると思います。その時点では、本来は病院の免責という趣旨ですので、先生の方から「無輸血でやりましょう。でも免責に関してはこの書類に書いて下さいね」というように、組織として書類を提示するよりも、病院の方で整えていただいた書類に患者が同意してサインするというのが、自然な流れではないかという理由もありまして、それで2年ぐらい前にこちらから免責証書を提示するという制度が廃止されました。実際、各病院の方で全く一緒の文面を使っておられるケースもありますし、独自の文面を考えて下さった免責証明書を提示して下さるケースもあるかと思うのですけども、宜しければ病院の方で書式を整えていただいて、それを運用していただけると有り難いなというところです。

小原 継続的委任状は普段、皆さんが携帯されているようなものですか。

荒川 継続的委任状は基本的に小さく折り畳んで各自が身に着けています。

小原 大きな事故でご本人の意識がない場合でも、多くの方はそれをどこかに身に着けているということですね。今日の事例は、丹波で事故があって綾部の病院からこの病院に運ばれたということなので、「この病院だったら受け入れてくれるだろう」という情報で来られたのだろうと思うのですけど、受け入れ先の病院についての一覧的なものというのはお持ちになっているのですか。

荒川 一律に「このケースはこの病院で」というように、病院名を挙げられれば良いのですが、実は難しくて、症例や病状によって異なると思います。難しいケースは私共に連絡が入って、その都度「このケースだったら以前はこの病院にお世話になった」と架け橋になる活動なのです。

小原 では一覧化はされていないのですか。

荒川 そうなんです。「整形外科だったらこの病院」という形ではなくて、病状によってその都度、先生同士で連絡を取っていただく架け橋をさせていただくという感じなんですね。

小原 今日の事例で綾部の病院は、どういう形でここの病院のことを綾部の病院は知ったのですか。

松本 ご家族の方が教会の方と相談されて、直接の依頼は…、

川原 荒川さんから私に来たのですけど、私は判断できないので、整形の科長に連絡を取って下さいって…、

松本 具体的には整形の科長に向こうの病院の医師から電話が掛かってきて、全部の情報を貰ったわけではないですけど、受け入れることにして、来てからちょっとビックリしたということです。だけど、それはご家族とか向こうの責任というわけではなく、病院同士の紹介のあり方の問題ですから、議論しても仕方はないです。

小原 綾部からここまでは比較的距離がありますし、今回はたまたま上手くいったのですけども、一刻を争うという場合には、事前の情報がどれぐらい整理されていて、直ぐにそこへ搬送されたかによる分かれ道ってあると思うのですよね。ですから、その辺りが1つの課題かなという気がするのですけども。

では他に何か、我々が考えた方が良いような課題がありましたら、今、出していただきたいと思います。また、ガイドラインがあり、受け入れの実績なども年々増えているような形であるのですけども、更に改善すべき点とかがあれば、教えていただきたいと思います。

荒川 難しいケースがあれば、その都度にご連絡いただければ有り難いのと、他府県からのこちらへという場合、ホームページを見て直接に掛かられるというケースがあったりして、全ての連絡が入るわけではありませんので、病院の方で設備やスタッフの問題でかなりご負担になっている部分もあるかと思うのですけど、病院側からの「こういうふうにして欲しい」といったご要望があれば、逆にお尋ねしたいです。

小原 ご本人が継続的委任状を持っておられて、ご家族がエホバの証人ではない場合も、何かあった時には連絡委員会に連絡しなければならないということの了解というのは、だいたいの皆さんはお持ちなんですか。

荒川 「血に関する問題が生じた時は私達に連絡して下さい」というスタンスなので、全ての病気で連絡が入るわけではないですね。

小原 ただ、手術を要するようなことに関しては連絡委員会へ連絡が行くようなシステムは一応できているということですね。

荒川 基本的に「連絡して欲しい」ということです。

松本 輸血の方針でご家族と患者さんの意向が対立して、教会の方が間に入られて困ったようなケースはあるのですか。

荒川 私が直面したことはないのですが、基本的にご本人の意向を尊重して欲しいというお話なんですね。

松本 そうですね、病院としてはそれをまず基本にしないといけないと思いますね。

小嶽 私達の方では家族の中でエホバの証人の人とそうでない人がいる場合、緊急事態が起きる前に「家族の中で普段から話し合っておいて下さい」ということを話しています。私達の仕事は先生達と患者ということなので、家族の中の状況に直接関わることはあまりないです。

小原 ということは、例えばご本人の意思はハッキリとしていて、エホバの証人ではない家族の方が「そんなんでもし死んでしまったらどうするんだ」と非常に強く反対した場合、連絡委員会としてどういうふうな立場を取るというのはあるのですか。

荒川 基本的にご本人が前もって意思を表示されていると思うのですね。それを尊重していただきたいということになると思います。家族からすると自然な感情だと思うのですけどね。

小原 その辺りのスタンスは我々も基本的には同じで、ガイドラインもそこを尊重して作られているので…。

では、どうぞ自由に質問やご意見を出していただければ良いと思います。折角の機会ですので、お互いに課題をシェアして、改善すべきところは双方で改善できれば良いと思います。

小嶽 私達が制作している委任状の中には、第1順位と第2順位の代理人の欄がありまして、患者本人が意識のない場合などに、本人の代弁をしてくれる人が選任されています。なので、その方達が本人に代わって意思を表明するという法的な整備を整えています。

小原 治療方針などを決定する上で継続的委任状が極めて重要だということですが、我々のガイドラインはそこの部分に対応していなくて、以前の免責証明書を中心に作られていますので、継続的委任状を土台にして、ガイドラインを早々に改定しないといけないのですね。

勝村 資料B-③に載っている継続的委任状を実際は凄く折り畳んで持っているわけですね。

荒川 携帯する為に名刺サイズに折り畳んで、首から下げたり財布に入れたりして身に着けています。

 免責の話ですけど、僕らが若い時には手術を受ける時に「手術で何があっても文句を言いません」というのを書いたりしましたが、あれは意味のないという話で、病院が免責証明書を発行するというのは同じことではないかと思うのですね。そもそも免責の同意書というのは、ご本人達が言っているから意味があるのであって、病院側から「何があっても構わないですね」と言って、「はい」というふうに同意をいただくというのは、昔の「何があっても文句を言いません」と同じで、意味をなさないのではないかと感じますね。

小原 ただ、先程のエホバの証人側の話としては、病院側が用意して患者側が納得した上で署名するようなものがあった方が有り難いということですか。

荒川 病院の免責ですから、病院の責任を取りませんという書類ですよね。患者側からそれがあった方が良いというより、手術同意書や輸血同意書のように病院が準備されている書類の1つとして見ることができるのかな。

小原 東先生が言われたのはそういうことですか。

 病院側がそういうことを言っても良いのだけど、何か起きた時に病院の責任を取らないという保障にはならないということです。

松本 本来は輸血しなくても良い治療の過程で、何か過失があって輸血せざるを得なくなって、輸血を拒否されたから、患者さんの容態が悪化した場合、罪は免れないということではないですか。

 いや、いくら患者さんが「はい」と言っても、何があった時に法律的に病院が責任を問われないという保障にはならないので、免責証明書を取っても意味はなさないのではないかと言っているのですね。

小原 ですから現状はそういうものがないのですね。

 病院が出す書類に免責的な文面は入らないですよ。同意書というのは「こういうことをやります」というだけで、過失があった時に病院が責任を問われないということはないです。エホバの側から免責証明を書くこともどれだけ意味があるかということも実際はよく分からないけど、病院側から発行することは意味がないと思うね。

小原 免責に関しては多分、意味はないと思うのですけども、輸血をしないことを中心にした同意書に署名してもらう点では意味があると思います。

 それは良いと思いますが、今言っているのは免責という中身の話ですね。

小原 その辺りはどうですか。免責というのはお話にあったように病院の側からも求めるものではないのですけど、輸血しないで手術を行うことに同意しますとか、いわゆる同意書があれば十分だと考えて良いのですか。

荒川 病院サイドから特に免責ということに言及せずに、「無輸血治療を行います」とかですね。

 ですから、多くの病院は後で家族から訴えられたり、そういうトラブルになるのが嫌だから受け入れないということもあるし、仮に受け入れる場合でも、免責のような形のものを要求してきたのだろうと思いますね。病院から書くのが筋だと言われれば、それはそうかも知れないのだけど、そういう文書は本当に法的には意味があるのかなと言いたいのです。

松本 法的な意味ではなくて、エホバの中で求められているのは、安心して手術を受ける為の1つの条件という意味ですかね。つまり、医療者側が信仰上の理由を理解してくれて、「無輸血で行います」と言ってくれたということなんではないですか。

荒川 そういう側面もあると思いますけど、一義的には免責証書というタイトルですから、輸血をしないことで生じるリスクについて…、

松本 …何が起こっても病院の責任を問うことはありませんということは、やっぱり必要だということですか。

荒川 私達がそれを明文化して求めるわけではないですけど、これまでは病院を保護するという意図があったと思うのですね。便宜上はこちらから書類を提供して使用していたという背景があるのですけど、現実的にはエホバの人の書類にはサインしないで、病院自体が書類を作っておられて、それにサインして下さいというというところもあるのですね。

小原 無輸血手術の件数は増えているのですけど、その1件1件に関して現状はどういう書類をやり取りしているのですか。

川原 基本的には委任状だけです。それは、これまでは意識がハッキリされた人ばっかりで、その方の意思表示が委任状なので、それをカルテにスキャナー取り込みをして、それを根拠に輸血をしないよということで…、

松本 免責証書にサインしたケースはありますか。

川島 府立の麻酔科医が「病院ので構わないから、免責同意書を取ってくれ」と言うので、出しているはずです。免責証書では「輸血を拒否することによって生じるかも知れないいかなる損害に対しても」と限定されている。

小原 その免責同意書というのは、一般的なものがあるわけですか。

 ガイドラインに資料として付いているけど、これは元々エホバの方が作られていたやつですね。

川島 そうです。それが病院の電子カルテに入っている。

川原 それを今は使っていないのでという話ですか。

荒川 こちらから提供することはなくなりましたので、病院としてこのまま使っていただくか、文面を考えていただくかは、どちらにしても私達は構いません。

小原 ということは、今はこの病院でこの免責証明書を使っていないのですか。

川島 前回からはだいぶ間が空いているけどね。

松本 使っていないケースも幾つもあると思います。

川原 大学の麻酔科の先生が「ご免なさい」と言わはるので、田中先生が「僕がやるよ」とおっしゃって…、

松本 田中先生はこれを使っていないと思います。

川島 府立で「良いよ」と言う先生は、「取っておいてくれ」と言うよ。

川原 今もですか。

川島 だいぶ空いているから分からないけど…、

小原 ということは、病院としてもその辺がまだきちっと決まっていないということですね。

川島 一応、曖昧な事例は取ることになっていて、運用が正しく行われていないケースがあるというだけです。

 いつからこれを使わなくなったのですか。

松本 2年ぐらい前ですかねぇ。

 ということは最近、通常は使っていないということですか。

荒川 こちらから提供することはなくなったですね。

小原 ということは、改定する際にこの扱いをどうするかということを考える必要があるということですね。

 これは病院で発行したものではないですから、自主的に書いていただいているけど、発行元は書いてないですもんね。

松本 ガイドラインのⅡ.の(4)に「医療に関する継続的委任状、自筆の事前指示書もしくは免責証明書、または~その他の文書」というのは、この3つのどれかで良いということですか。

小原 「どれか」という意味ですね。

松本 だから、継続的委任状をカルテに取り込むだけでもガイドラインでは正しいのですね。

川原 これは共通項目なので…。このガイドラインでは、意思決定ができない場合に免責証明書を使うという考え方ですよね。

松本 意思決定がハッキリしている場合は「免責書が要る」とは書いていないです。

川原 ただ府立の先生方は、自分の立場を保護する為に…、

松本 「いずれの事前指示文書も保持していない場合は本人署名の免責証明書を求める」ので、全例を求めているわけではないですね。いずれかで良いというガイドラインです。

勝村 「2年前から世界的に出さなくなった」と書いてありますけど、それは、病院がこれ以外の文書を使うようになってきたので、それを使って下さいということで、同じようなものが様式が変わって使われているのか、やめた方が良いということで減ってきているのか、結果としてはどっちなんですか。

荒川 私の印象だと、病院が作っておられる書面に変わってきています。

小嶽 「世界共通」という表現ですけど、世界中で同時に使われなくなったかというと、そうではなくて、いろんな他の国では私達が免責証書を作るということはしてこなかったということです。

勝村 今も免責証書をエホバの証人の患者側の人で持っていて、「これに書いて下さい」と言う人もいるのですか。それとも、やめたから使わない方が良いんだと皆は思ってはるのですか。

荒川 提供していた時も患者さんが持っていたわけではなくて、その都度、手術前のインフォームドコンセントの際に提供していたのですね。

勝村 患者さん側がこれの存在を認知していないということなんですね。継続的委任状の3番に書かれる内容と、免責証書のチェック欄の下の「注記」に書かれる内容は完全に一致しているものなんですか。

荒川 継続的委任状は皆が携帯していますので、手術前の「この書類に記入しましょう」という時に、それを見ながら書き写す形になると思いますけど…、

勝村 では、継続的委任状があれば、ここの項目はそれで把握できるので、重複することになって、こっちの方が欄は大きいですが、より詳しく書かれるということはあまりないということですね。

小原 情報としては、継続的委任状があれば既にカバーできていると思うのですね。ですから、病院側が何か同意書を用意する場合も、かつての免責証書と同じような細かさは必要ないということですね。継続的委任状を前提にして、「継続的委任状を参考にした上で、無輸血手術をすることに同意します」といった簡単なものが1つあれば良いということですね。

荒川 「輸血を拒否することによって生じるかも知れない損害に対して責任を取りません」という免責ですね。

松本 医療機関側が発行するので、「責任を取りません」という中身は要らないと思います。つまり、「無輸血を貫く」ということと、「その場合にこういうリスクがあります」ということをどれだけ説明したかということを書かれているかということですから、形式的には輸血同意書を発行しないということと、手術と麻酔の同意書の中に「最悪、こういう場合があります」ということを書いていれば十分ではないですか。エホバの証人へ積極的に取り組んでいる他病院はどういう同意書を用意されているのかが分かれば…。

荒川 この同意書をそのまま使っている医療機関もありますし、独自で…。輸血学会はホームページにガイドラインを公開されていて、そこに免責証書のサンプルが添付されていますから、それをそのまま使っている医療機関もあります。

小原 輸血学会のものは、エホバの証人の側から見て特に問題のないものだと考えて良いのですか。我々はこれから作らないといけないので、どういうものであれば良いのかというベースが欲しいのです。ですから、輸血学会のものでOKであれば、それを使うとか…。

小嶽 それは病院側の判断で、私達が決めることではないのです。

小原 もちろんそうなんですけど、折角の機会なので、もし輸血学会の出されているものに対して、この点は改めて欲しいなということがあれば、言っていただいた方が、我々にとって参考になるのですよ。

荒川 輸血学会の文面を覚えていないので、持ち帰って内容に関して検討させていただいても宜しいですか。

小原 はい、そうですね。

 確認ですけど、継続的委任状は必ず持っているのですね。昔の免責証書だけを持っているというパターンはあり得ないですか。

小嶽 免責証書だけというのはないですね。

 エホバの証人の患者側の立場としては、免責証書みたいなものは別に要らないということで、病院が要りようだったら病院で用意して下さいということですか。

小嶽 病院や先生方の責任を取りませんという書類ですので、もし、病院側で「それは要らないですよ」ということであれば、私達が必ず求めるものではないです。

松本 輸血学会ホームページの免責証書はありました。簡単なものなので、こちらから回します。

小原 読んでいただいて良いですか。

松本 「輸血拒否と免責に関する証明書」とあり、説明者・主治医署名ですね。で、「○○病院長殿。私は、私の健康と適切な治療の為、以下の種類の血液製剤を以下のように輸血する可能性や必要性があることについての説明を受けました」「しかしながら、私は、信仰上の理由に基づき、私の生命や健康にどのような危険性や不利益が生じても、輸血しないように依頼いいたします。私は、輸血を拒んだことによって生じるいかなる事態に対しても、担当医を含む関係医療従事者及び病院に対して、一切責任を問いません」。で、細かいことが書いてあります。で、患者さん氏名と代理人氏名が書かれるので、ほぼ免責証明書と同じものを輸血学会は決めているということですね。これは病院が決めた書式だけど、患者さんからの免責証書だね。

小原 病院側に聞きたいのですけども、こういうのがあった方がやっぱり安心で、用意した方が良いですか。

川島 いや、別になくても…。お守りにはなるね。

勝村 25年とか30年ぐらい前は手術時には必ず書かされて、医療過誤の被害者達は「あれにサインしたから何も言えないのではないか」と思っていて、でも弁護士さん達は「あんなの関係ないですよ」ということで訴訟になったのですが、病院側があれを書いてもらうというやり方は、その時のことを思い出すし、何か違うと思う。ただ、無輸血手術に抵抗がある医療者達には何らかの保証が必要なのかも知れないけど、病院側が自分の為に出すところが多くなっているというのは、昔に戻っている感じがするので、何か違うやり方はないかなと思う。

小原 ちょっと大事なのが出たので、議論を深めたいと思います。東先生はどうですか。

 貰った方が安心はするから、お守りみたいなものにはなるかも知れないけど、意味があるかどうかと言ったら、多分意味がないのではないかなと思ってしまったということと、エホバの方が自主的に出されるということであれば、僕なんかも「思いは分かりました」という感じなんだけど、それを病院が「さあ書け」みたいな話だと、昔の話と同じだと思ってしまったのですね、一瞬ね。

小原 先程に話のようにここの病院ではない方が執刀される場合には、一筆があった方が安心されるということですね。その辺りはどうですか。

川島 そういうことにしているのでしょうね。

川原 大学では無輸血手術はやらないですからね。

松本 大学は絶対的な無輸血は拒否すると明言していますからね。

 無輸血にしたことによって起きた事態に関しては継続的委任状でも責任は問われないと思うのですけど、免責証書のところに出ている相続人とかとの、後の紛争予防という意味では、事実上の効果はあるかも知れません。本人が生きていたらもちろん問題にはならないし、輸血しないこと以外のトラブルについて免責するという話ではないですから、法律的な意味はそうなんでしょうけど、これなしにやった場合に、関係のない相続人とかが訴えるというパターンはあり得るかも知れないとは思いますね。

勝村 患者側が自主的に出していたら受け入れ易いと思うのだけど、病院側が出すということは、「これにサインしないと手術をしてもらえない」というハードルになるわけで、自ら出すのとは凄く違う感じがしますよね。

小原 文面が殆ど同じでも、どちらが出すかで全然意味は違いますね。どうでしょう。

松本 今年、医療安全管理者講習というのを受けに行って、エホバのことではないですけど、同意書とか免責の考え方について勉強したのですが、ご家族が後で問題にされる場合は結局、リスクと可能性についてどれだけ説明したかということが一番問題になると思うのです。その時に、免責証書がありますからあなたの責任はないですよということには、民事上も刑事上もならないです。具体的に「無輸血でいけばこんなリスクがありますよ」と、手術の規模とか中身についてどれだけ説明し切ったかということだと思うのです。そうすると個別の手術同意書とかどういう内容が必要かということで、免責証書の必要性は感じませんし、何か違和感を感じます。

 そうしたら、今までの医療行為の同意書の方にきちっとリスク説明を入れて…、

松本 例えば、手術同意書の中に「輸血について」という一項がありますので、「患者さんの意思を尊重して無輸血を行います」ということを必ず入れることにしておいて、「その場合にこういうことがありますよ」とご本人とご家族と立ち会われているエホバの方に説明すれば、それは医師によってちょっと強めに言う人もいるでしょうし、柔らかく言ってくれる人もいるでしょうけど、その方が余程有意義のような気がします。

小原 分かりました。今までの意見を総合しますと、かつての免責証書に対応するようなものを新たに作る必要はないのではないかということですが、それで対応できそうですかね。他院から来られている先生が「一筆を取ってくれ」みたいなことを言われた場合、病院として「ウチは取らないから、それでやってくれ」と言い切れるかどうか、その辺はどうですか。

川島 病院として取らないという方針を伝えたら、「それなら良いです」と言ってくれると思いますけど。

小原 つまり、病院としての方針を示せば良いということですね。そういう形でこちらはまとまりそうな感じですけど、それで問題はないのですかね。

荒川 こちらは免責証書を求めているわけではないので、問題はないです。

松本 「世界共通に合わす」と書いているのですけど、例えばアメリカだったら、そもそもこんなことが問題にならないのですか。

小嶽 いや、病院毎にもしかしたら免責証書みたいなものがあるかも知れませんが、私達から出すという…、

松本 むしろ医療機関側が色々としはると…。

小嶽 しているかも知れません。

勝村 2年前まではアメリカでも必ず皆さんが免責証書を渡していたのですか。

小嶽 逆に日本がこういう免責証書を私達から出すという習慣だったと聞いています。

勝村 逆に海外にはこれがないかも知れないということですね。

小嶽 海外で私達から出すことは恐らくなかったと思います。

川原 それは例えば日本の文化が家族が決める割合が凄く多いので、日本はそういうふうに免責証書を作ったのかも知れませんね。老いては子に従えみたいな…。

勝村 日本のお医者さんはこれがないとやってくれなかったのと違いますか。

松本 多分、80年代に10歳の子が多発骨折で入院されて、主治医とエホバの保護者がやり取りをして、無輸血で子供は亡くなったのですけど、凄くセンセーショナルにその件が取り上げ続けられ、僕らはそのインパクトで、無輸血なんて許さないという風土で育っているので、こういうのが必要になったというのが経過なんですかね。

荒川 先生方は救命第一ですから、「無輸血でお願いします」という時点で、こういう書類がないとこれまでは難しかったのではと思いますね。最近は病院がオリジナルの書式を作っておられるので、逆に「エホバの証人の書類にはサインしません」という病院も増えてきていて、こちらから提供する機会も減っていたと思います。

川原 継続的委任状を持っていないで、子供の手術をしないといけないとか、家族の誰かが意思表示をできない状況だったらどうしたら良いですか。この間も、面談の時に「家に忘れてきました」ということがあって、「それがないと絶対にダメです」と言って、取りに帰ってもらってまで貰っているのですね。

荒川 事故にあってこれがなかったケースは困りますので、本人は原本を持っていて、第1・第2の代理人がコピーを持っていますし、家族にも渡すようにと伝えています。

川原 普通だったら書けない方、意思表明ができない方は、免責証書で家族が「やって下さい」と表明されて医療をすると、ガイドラインではなっています。継続的委任状だけでは、子供さんの場合はどうなるのかとかいうことがあるので、心配なんですけど。

勝村 質問ですけど。輸血学会のやつは様式は違っても書いていることはほぼ一緒だけど、責任に関してよりくどくど書いているとか、病院独自のもので書いていることが違うというのは、ご存じの範囲であるのですか。基本的に書いていることは一緒なんですか。シンプルな論理ですから、これ以上のことって書けないですよね。

荒川 そうですね、はい。

勝村 質問をもう1つ。元の免責証書には「私は輸血に関係する種々の危険があることを知っています」と書いていますが、その上で「そういう治療を自己決定で選択していくのだ」というふうな文章になっていますが、そういう勉強はしているのですか。

荒川 ビデオでの教育ですかね。

勝村 それは、交通事故や病気といった個々のケースが全て網羅されているのですか。

荒川 それこそ症状とかによってケースバイケースだと思うので、患者の…、

勝村 ケースバイケースだから、「私は知った上で自己決定するのだ」というよりは、いざ手術となった時にもう一度、「あなたの場合はこうです」というインフォームドコンセントを受けた方が良いというスタンスですね。

荒川 そうですね、「今回の手術だとこういう製剤を使う可能性がある」というのは伝えていただけると、決定する参考になるかなと思います。

小原 今の免責証書に関しては、ここの病院としては要らないのではないかということでほぼまとまっているのではないかという気がしましたけども、その他のことで何か質問やご意見はありますか。

川島 実際に輸血が必要な事態が発生して、患者さんの意思を尊重して輸血を行わなくて亡くなったケースというのはどのくらい経験されていますか。

小嶽 そういうデータを取っていないので分かりません。

川島 データがないということは、そういう経験がないということですか。

小嶽 私の父はそうでした。白血病だったので輸血があれば色々な治療法はあったのでしょうけど、輸血を拒んで死亡しております。

小原 連絡委員会は全国規模で各都道府県に京都委員会みたいな形であって、全国で症例などのデータを統合しているような組織はないのですか。

荒川 ないですねぇ。

小原 ないのですか。では京都委員会とか大阪委員会みたいな形で完全に独立している感じなんですか。

荒川 もし難しいケースがあって京都の病院はどこも受け入れてくれなさそうという時に、大阪や滋賀を始め全国にあたるという感じですね。

小原 ということは、各都道府県別の委員会を統合するような全国委員会みたいなものは存在しないのですか。

荒川 一応日本支部の中に医療機関デスクというのがあって、それが日本のエリアを統括している形ですね。

小原 ということは、京都でいろんな症例があった場合、そこに報告する義務はあるのですか。

荒川 報告する義務はないですね。症例を集めているというわけでもないです。

小原 中央でも全てを網羅したデータを持っていないという意味ですね。ただ私の視点からの要望としては、そういうのがあった方が良いと思うのです。きちんと医療機関とエホバの証人が対話していく為には、日本として実際にどれぐらいの件数があって、その中には無輸血を貫いて不幸な結果に終わったようなものも含まれているということを情報開示することで、初めて真摯なやり取りができますので、今後は全国的な症例のデータの収集・統合を進められた方が、より良いやり取りができるのではないかなという気がいたしますね。

川島 輸血が必要な事態で、治療することで解決できるとして、治療すべきかどうかと悩む時に、どういうケースがちょっと危険なのかというのが分かっていたら判断材料になりますが、自分達の感覚でこれなら大丈夫だろうと証拠も何もない中で決めるよりは、一定の症例を蓄積されていて、どういう状況で亡くなっているのか、救えるのかということは、医療機関ではないので非常に難しいと思うので、分析するのは医療機関かも知れないですけど、データを教会の方がお持ちでしたらね…。

小嶽 症例報告というのはやっていないですね。ただ、無輸血で行ってこういう結果になったというケースは、直接担当にあたった医師達がレポートとして提出されることが多いです。世界中の症例のレポートが集まっているので、そういうものは日本の事務所でも世界本部でも見ることができる。

松本 教会で把握されているということですね。学会には「上手くいきました」という報告しかなかなか発表されないのですけど、ダメだったというのを知りたいのですね。

小嶽 何故症例を集めないかという私の観察なんですけども、「輸血をしないで生じる結果に対して何も責任を問いません。覚悟します」というのは、患者自身が自分で聖書を学んで信仰の上で決定した事柄であって、エホバの証人の組織から「こうしなさいよ」と言われてしたことではないのですので、組織にも責任はないし、自分の信仰の上で決定することなので、組織としてデータを集めることもないのかなということです。

小原 その考え方はその通りだと思いますが、エホバの証人の団体とご自身の関係の問題だけではなくて、輸血に関しては医療機関とのやり取りが生じてきます。ですから、医療機関側があれば望ましいと思う情報をやり取りできれば、対話がもう一歩先に進むような気がするのですよ。今まではエホバの証人が願っている無輸血手術に対してのハードルが高くて、今も多くの病院が拒否するわけですよね。そういう文化を変えていく為には、エホバの証人の側から積極的な情報開示をして姿勢を変えていけば、病院側の態度もまた変わっていくように思うのですよね。やっぱり文化が変わるというのは一朝一夕にはいきませんけども、双方が理解を深めることによって次の時代には違うものを作っていくことができます。医療サイドからすると知りたい情報って確かにありますよね。やはり成功例だけじゃなくて上手くいかなかった例との両方が分かっていることが、大事な判断材料になるかなという気がしますね。

松本 本来は医療者がしなくてはいけないですね。

小原 そうだと思います。そういう網羅的なデータベースみたいなものがあれば良いと思いますが、日本にはないですよね。学会などで成功事例は報告されても、全体の件数が幾らで失敗の件数はこうなっているという学会発表ってありますか。

川島 絶対無輸血を何例もやっていて、「こういうケースはダメでした」という報告をする例というのはないと思います。

小嶽 私の記憶している範囲では、京都の日本バプテスト病院でエホバの証人の親を持つ子供さんに輸血をしなかった為に数日後に亡くなったというのはありますが、どういうデータが医療関係者向けの情報として必要なんでしょうか。

川島 一例報告というのではなくて、こういうケースは手術するべきではないとか、手術をチャレンジした方が良いとかいう、ギリギリの線の判断が知りたいわけです。チャレンジする時は、感覚ではなくて正しい判断をしているという保証が欲しいわけですね。

小原 やはり前例があると判断がより確かになりますね。

 手術を輸血でやるか無輸血でやるかだけではなくて、手術自体をやるかということもあるわけですね。

川島 そうです。癌が理由で貧血になってしまって、輸血をして手術をしたいところだけど、輸血はできないし、状態を改善するには手術しかないということもあるのですけど、その手術をするべきかどうか時に、それが正しい判断なのかどうかというのは、成功したケースばっかりだとちょっと分からない。

関谷 医療者が各病院のケースをピックアップして集めるのは難しそうですが、エホバの証人の方は一応全部にあたっているわけですから、失敗したケースも含めて横断的には一番ご存じですよね。エホバの証人の方が手術で輸血拒否をするのも、死にたいからやるわけではなくて、上手くいくことを望んでおられるわけなので、エホバの証人の方が無輸血でもできるだけ良い予後、あるいは長く生きるようなことができる為であれば、むしろそういう死亡例とかも積極的に医療者と話し合ってより精度を上げていくことで、本来死ぬべきでなかった人達が無輸血でも助かるようなケースが出てくるかも知れませんから、積極的に情報共有を考えられて…。医療者は無輸血ならどうなるかという実験をできないから、ある意味、貴重なデータをお持ちだと思うのですよ。多分教団としても死んだ人達のことは言い難いことだと思いますが、信仰的には輸血をせずに亡くなったとしても問題ないわけですよね。そういうことで是非、共有していただいた方がより良くなるかなと思いますね。

小原 その点を是非ご検討をしてみて下さい。

勝村 絶対に輸血はしないのだから、輸血する手術か輸血しない手術かという論点は本来はなくて、今までの事例でも手術をすることでかえって早く亡くなり、実際は手術の適応ではなかったということもあると思うので、無輸血手術をするかしないかの判断をしないといけないケースもあるのですね。その判断時に、何らかの線引きができるような材料があるならば知りたいという趣旨は理解できるし、そういう情報が必要な感じがしますね。そんなケースばかりではないとは思うけど…。

荒川 「こういう病名で以前に手術をしたケース、しなかったケース」というのがあると、判断材料の1つになるということですね。

勝村 普通の手術でも適応というのは非常に難しく、した方がかえって早く死ぬこともありますからね。

 例えば血液疾患なんかの場合は、抗癌剤とかは使えることも多いかも知れないけど、自己血輸血や幹細胞移植といった自分の血液を増やす類のものはだいたいダメなんですね。

小嶽 幹細胞移植などは人によって違いますが、幹細胞も臓器と同じ範ちゅうですね。

荒川 自己血に関しては事前に貯血したものは辞退していますが、血液回収とか希釈に関してはそれぞれが…。

小原 そこは教会で全てを判断しているわけではなく、お任せするということですね。

荒川 そうですね、聖書に「血を避けなさい」というのが、私達の理解としては全血と赤血球・白血球・血小板・血漿を指しているということですね。

松本 臓器移植はダメですか。

荒川 臓器移植もそれぞれが判断される…。

松本 臓器移植は当然に血を含むのですけど、臓器移植は良い場合もあるのですね。

荒川 物理的に血を一滴も取り入れてはいけないという理解ではなくて…、

川島 宗教上の判断ですからね。

 血友病は輸血しか治療法がありませんでしたが、今は人工血液を作れるようになりましたか。

 多分、血液製剤を治療薬として使うよね。

勝村 自己輸血に関して、委任状の2.に書いていることと、免責証書のチェック欄の2番目に書いてあることは、ニュアンスが違うような気がするのですけど、一緒なんですか。

荒川 一緒ですね。継続的委任状では4.が、血液希釈といった自己血の使用に関する要望を書く欄ですね。

勝村 2.に書いている「自己血を採血して貯蔵しておくことも拒否します」は…?

荒川 これは、前もって採血して貯蔵することは「血を避けなさい」に含まれているという理解です。

勝村 貯蔵は4.には含まれていないということですね。分かりました。

川島 ウチのガイドラインの「Ⅲ.対応方針」の「A.患者本人が18歳以上の場合」の「1.患者本人に意思決定能力がない場合」の(3)で、「患者本人はエホバの証人を信仰しているが、患者本人の事前の意思表示により、または患者を保護する立場にある者の判断により、輸血による治療を許容する場合は、輸血を行う」と記載してあるのですけど、これは良いのですか。意思決定能力がないという判断をすること自体が難しい場合も多々あると思いますが、それは複数の医療従事者が判断するということになっています。

勝村 これは上の(1)との対比だから、宗教上の理由から輸血を望まないことが明らかでない場合…。

荒川 事前に継続的委任状などで「輸血しないで下さい」という意思が明らかな場合というのが(1)で、多分(3)で想定されているのは、エホバの証人だけど本人は「輸血して欲しい」と言っている意思表明があった場合、あるいは患者を保護する者がそう言う場合は輸血を行うということですよね。

 信仰しているが委任状とかを持っていないということでしょ。

勝村 そういうことだけど、文章としてもう一言、「明らかでない場合」と書いておいた方が良いかも知れない。

小原 エホバの証人の方で「信仰上のことは分かっているけれども、生きる為には輸血してくれ」という方はあり得ますか。

荒川 私は聞いたことがないですね。

小嶽 事前にというのは考えられないです。

勝村 「エホバの証人の信仰をしようかな」と入りかけているような過渡期の方はいないのですか。

荒川 確かにエホバの証人と呼んでいるのは、堅信してバプテスマを受けた信者ですね。信者になるまでは信仰を色々と勉強しますから、研究生という呼び方をしたりします。

小原 それは信仰者にならないわけですよ。

勝村 これはあくまでも病院側のガイドラインなので、A.-1.みたいに明らかだったらそれで良いわけですが、極めてイレギュラーでもちゃんと対応できるようなガイドラインにしたいから、僕は、(3)でそういうケースが論理上はあり得るので、こういうことを言い切るべきだという趣旨です。勉強している最中だったら…、

小嶽 エホバの証人を勉強してなろうかなと思っている方は大抵、手術が必要な時は多分「私は勉強中なんですけど、エホバの証人になりたいと思っている立場です」と言われると思います。

勝村 「そういうふうに言われたら、病院としてうしたら良いねん」というのは(3)になるね。

小原 普通は考えられないレアケースであっても、可能性としてはあるので、(3)はあっても良いと思います。

荒川 勉強中の方は研究生で、正式にエホバの証人ではないのですね。

 皆さんはあり得ないと言うかも知れないが、信仰が揺らいでいる人も理論上はあり得ますから、そういうケースはこの2.-(3)に当てはまると思うのですけどね。

広瀬 昔、「輸血をされた信者さんは罰せられるのですか」と質問したら、「それはない」とおっしゃったのですけど、そういうことはどうですか。

荒川 患者本人が後で「神様の言ってはることを破ってしまった」という気持ちになられるのだと思うのですね。

広瀬 中にはそういう人もおられるかも知れないですね。0ではないと思います。

関谷 そういう人達が教会のコミュニティーの中から排除されることはないのですか。というか、そういう場合は自ら引いていかれるのでしょうか。

小嶽 以前にこの場でそのことを話しましたら、「あぁ使っても良いのか」と…。

園部 ガイドラインにはそのことも取り上げられておられると思いますが、議事録に載っていたと思います。

広瀬 それを聞いて私はホッとしたなということがあったのです。

園部 ご心配されるのも自然なことです。

川原 実際に信仰しているのだけどエホバの証人ではない人が来て、「無輸血で治療して欲しい」と言われたケースがあって、その方は委任状を持っていなかったので、「どうしたのですか」と聞いたら「今、書き中」やと言われ、「あれっ?」と思ったので荒川さんに「この方は本当にエホバの証人の方でしょうか」と問い合わせをして、県外の人だったので調査していただいて、研究生だったことが分かりまして、「これはエホバの証人の人のガイドラインなので」ということと、たまたまその時は「今はまだ治療する適応ではないので、またその時になったらね」ということで帰られました。その時も困ったなと思ったのですけど…。

荒川 エホバの証人向けのガイドラインでまとめて下さっていますが、勉強中でエホバの証人ではないけども「無輸血でして欲しい」と言う方はいらっしゃると思うので、その時は普段して下さっているように患者の意向を聞いていただいて、病院として受け入れるかどうか判断していただけると良いのかなと思いますね。

 他の宗教かなんかの人でもありましたよね。

小原 ありましたね。これはバプテスマを受けてエホバの証人の信者になっているかに拘わらず、ご本人の信念として「無輸血でやって欲しい」という場合は、やはりそれを尊重しようということでやってきているのですね。で、エホバの証人ではなく違う宗教の信者の方で、自然治癒ということを凄く重視される方が「絶対に輸血して欲しくありません」と言われたケースがあったのですね。やはりそれも尊重すべきなんですね。

川原 確かに…。でも担保がないので…。エホバの証人の方は、教会の方にも来ていただいていますし、ご家族もエホバの証人の方であればなお安心するのですけども、何もなくて個人で来られたら本当に不安なんですね。

小原 やっぱりエホバの証人の信者である方が対応はし易いですね。ただ、やっぱりここに記されている精神は他のケースでも適用するというふうに考えた方が良いのと思いますね。

川原 そうですね。ただ産婦人科でも、宗教とかではなく「自分の信念として嫌なんだ」とおっしゃっていた方には、ずっと「今しないと危ない」と説得しましたね。

松本 それは、説得する自由があるのね。

小原 …と思います。

 そういうケースではやはり同意書にそういう項目を書く必要はありますね。

勝村 やっぱり説得という言葉で終わってしまうより、患者が判断する為の情報を与えて、最終的には患者が自己決定して、それを尊重するということがこれの心に繋がる話で、まずは十分な情報と何を勧めるかをハッキリさせることですね。

川原 その時は3回ぐらい面談したのですね。

小原 だいぶいろんな議論ができてきたと思うのですが、連絡委員会の方から聞いておきたいことやご要望があれば、出していただければと思います。

荒川 難しいケースでも受け入れて下さっていることに感謝しかないです。

松本 受け入れ病院が増えていかないと問題は解決しないのですよ。世の中…、例えば大学病院を変える。当院だって倫理委員会で審議していただいたのと、川島先生がいたので、病院全体が動くことになりましたけど、大きな病院で1人・2人でも動かしていこうと思ったら、やっぱりデータではないかと思います。

川原 やっぱり一定の科学的根拠に基づいた医療というのが求められていてまして、自分達がやっている判断が正しいという保証の下に治療をやっていますので、成功例・失敗例の蓄積で「この線以上のことはダメなんだよ」「この線以下のことは正しいのだよ」という判断の下に無輸血をやれるようにしたいですね。最初からダメなものをやるような人はいませんからね。

小原 ここの病院だけでも一定の件数がありますから、全国でのデータが集まると、1年・2年でも凄く参考になるエビデンスになると思います。それは非常に有用だと医療側からご意見をいただいていますので、是非前向きにご検討いただければと思います。

勝村 遅れて来て説明を聞けていないので質問ですが、資料B-②のグラフの「登録実患者数」と「入院患者延べ数」というのはどういう意味ですか。

川原 電子カルテの中に「エホバの証人である」とかそういう記載のある方を全部、数を出してもらったのが「登録実患者数」です。入院の患者さんが「延べ」と書いてあるのは、複数回の入院を繰り返される患者さんもおられるので、入院件数を全て数えたものです。

松本 全部が輸血に関する入院ではなくて、過去に登録されている患者さんが17人入院されたということです。

 

議事(3)その他(「臨床研究迅速審査報告」「治験審査委員会報告」「今年度会議日程」)

勝村 実質は同じ人を表現しているのですね。分かりました。

小原 他はどうですか。宜しいですか。では良い議論ができたと思いますので、こちらの病院としてはガイドラインの改正の手続きに入りたいと思いますし、今日に出た要望に関してはご検討いただければと思います。どうもご陪席、有り難うございました。

では、この議題に関してはこれで終わりにしまして、「(3)その他」へ移らせていただきます。「①臨床研究迅速審査報告」を資料Cに基づいてご説明をお願いいたします。

冨田 この間、迅速審査にてご了解いただいたのは77番の1件です。まだ継続中のものはありますが、ここに書いてありません。

小原 それで宜しいですね。では続きまして資料Dの「②治験審査委員会報告」をお願いします。

冨田 資料Dの4つの治験は、齋田先生がこれまで通り継続しているもので、特に動きはありません。

小原 有り難うございました。ご質問は宜しいですね。では「③今年度会議日程について」ですが、ご報告お願いできますか。

藤﨑 大変申し訳ないのですけども、次回の倫理委員会の予定が10月6日になっていましたが、この日は病院の方で医療安全大会を開催いたしますので、日程の変更をお願いしたいと思います。候補は10月13日か10月20日のどちらかですが、10月13日はご都合の悪い方がおられるので、10月20日にさせていただきたいと思います。

小原 では10月6日から10月20日に変更いたします。12月1日と2月2日は変わらず、そのままご予定下さい。

ではその他ですが、DNARガイドラインに関してご報告されることがあるので、それをお願いします。

藤﨑 6月20日にDNARガイドラインの改定を予定していたのですが、前回の科長会議で少し問題提起がされていますので、今は発表を見送っている状況です。前回のここの事務局会議でも話ができていませんので、川島先生に報告をお願いしたいのですけども。

川島 診療部長、どういうことで議論が止まっていましたか。

松本 科長会議では、ガイドライン通りにやれていないというのを出発点にすると、死期が迫っているのは本当の短期間だけに限らないない患者さんがいっぱいいるので、その時に実践できないのであれば、本当に命が限られていている場合というのをどういう場合とするのかを、少し医療側で検討させていただいきたいということでした。ガイドラインでは「癌の末期」とかなり限定されてますが、実際にはウチの病院に入院されている患者さんでは呼吸器疾患であったり、殆ど寝たきりで感染症を繰り返される方だったりするので、そういう場合はどうするかを検討させて欲しいということで、前回は止まっているのです。

 癌の末期に限定していないのではないですか。

川島 かなり余命に条件があるので…。

松本 それで実質上はそうないのではないかということと、余命判断がそう簡単ではないということで、もう少し検討させて欲しいというところで止まっているのではなかったっけ。

小原 ということは、それを検討していただいて、問題点を整理した形で…、

松本 倫理委員会に「こういうケースにさせてもらってはどうか」という提案が行くのではないかと思います。

小原 それがあった方が議論し易いです。ということは、例えば次回にその辺を整理したものが出てきそうですか。折角これを作ったのであまり先送りしない方が良いと思います。

松本 このガイドライン自体を否定するのではなくて、実際に守られる為に少し議論させて欲しいと…。

 事情は分からないですけど、前回に改定はしたのでしょ。最終的には病院長の権限になるのかも知れないですけど、異論が出たから実行しないというのは、手順として変じゃないかと思うのです。「もう一度改定してくれ」と言うのだったら分かるのですけどね。

川島 実行しないということではないのですけど、実際は、悪性腫瘍でない患者さんのケースでDNARの指示が必要な方が結構おられて、余命判断が難しいケースが多くて、ガイドラインに則るとそこら辺は余命ということが必ず引っ掛かってきますので、判断に迷うケースが多いということです。

松本 いや、今おっしゃっているのは、ガイドラインの改定そのものが止まったのですかということです。

小原 実質的には倫理委員会で決まった時点で最新版のものとして動いていると思うのですね。ただ、現場でより使い易いものを求めて、更なる改定要望をここで受けるということは当然ありだと思います。

 そこの手順をハッキリせずに、運用をしていませんというのはちょっと具合悪いだろうと思いますし、テーマが対象の拡大というようなことだと、議論が簡単にまとまるとは限らないと思うのですよ。サッと線引きできるか、線引きなしのやり方ができるかというのはそう簡単ではないので、議論するのだったら再改定要望という形の方が良いのではないかな。それで良いのかな。

松本 それで良いのではないですか。ガイドラインを否定するのではなくて、実態としてガイドラインではないところのDNARというのは常に問題としてあるので、医療者の意見をちゃんと出しましょうということですね。

小原 それで進めたいと思いますので、10月20日に議論ができるように、院内での意見の取りまとめを宜しくお願いいたします。エホバの証人のことも継続で、今日の話し合いを踏まえて、記憶が飛んでしまうと意味がないので、できれば次回に改定案をご準備していただければ一番良いと思います。

藤﨑 すみません、過去に規定を定める時には責任者というのを決めていたのでしょうか。

小原 はい、DNARもそうなんですけど、だいたい現案を作って下さる方がおられるのですよ。今回は多分、DNARに関しては川島先生を中心に論点整理と提案をしていただきたいのですけど、エホバの証人のガイドラインについては、具体的に文章提案の作文をしていただく方を誰か決めておいた方が良いと思います。

 元から起案するという程の話ですから、委員がやるのではなく事務局の方でも良いと思います。

小原 免責証明書の扱いについてなので、大きな改定ではないと思いますから、それで宜しいですか。ということで宜しくお願いします。

他にございませんか。では、本日の倫理委員会をこれで終了します。有り難うございました。

 

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