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第六十回 倫理委員会 議事録

日時 2015年2月5日(木)18:30~21:40
場所

京都民医連中央病院西館1階第一・二会議室

出席者

外部委員 原昌平副委員長、岩橋多恵委員、勝村久司委員、関谷直人委員、広瀬東栄子委員

内部委員 川島市郎副委員長、内田寛委員、冨田豊委員、那須徹也、東正一郎委員、平田恵美委員

事務局 影山大悟、根石明彦、丸山俊太郎

オブザーバー 川原初恵、坂田薫、寺前八重、吉中丈志

欠席

小原克博委員長、井上賀元委員

議事

 若干、集まりが悪いですが、定刻を過ぎていますので第60回倫理委員会を開催いたします。小原委員長はトルコに行っておられるので、代わりに私が進行を務めさせていただきます。議事の順番を入れ換え、事務的なものを先にやってしまいたいと思います。
まず、「外部委員の退任について」を事務局から報告をお願いします。

 

議事(1)「外部委員の退任について」

根石 富永委員は当初、常勤医師で内部委員でしたけども、非常勤に変わった段階で外部委員をお願いしたのですが、退職されまして退任の意思を示されましたので、富永委員は外部委員を退任ということで確認をお願いしたいと思います。

 はい。次は前回の議事録ですが、ご確認下さいということです。
その次は簡単に済みそうな「臨床研究迅速審査報告」をお願いします。

 

議事(2)「臨床研究迅速審査報告」

冨田 資料D1を見て下さい。これは昨年10月からの分で、60番から64番までの5題の臨床審査請求されたものが迅速審査に回り、検討中の1題を除いて、全て承認をいただいております。

 その次の「インフォームドコンセントについて」も説明をお願いします。

 

議事(3)「インフォームドコンセントについて」

冨田 これまで厚労省と文科省が疫学研究と臨床研究との2本立てでガイドラインを作っていましたけれども、それを改定した上で1本にまとめるということで、昨年12月に「人に関する医学系研究の倫理指針」というのが出され、実施は今年の4月からの予定になっています。だいたいは似たような形なんですけども、細かいところで若干、変わったところもありまして、インフォームドコンセントについてのところも少し変わります。資料D2は厚労省の方がその文章を表にまとめられたものですが、P2の「既存試料・情報を提供・利用する際のICの手続」の左の方に匿名化という項目がありますが、「匿名化されていない試料・情報」「匿名化された試料・情報」という区分は以前にはなかったのです。で、それぞれのインフォームドコンセントの手続きについては、「他機関への提供」「他機関からの取得による利用」「自機関での利用」に分けてありますが、以前、迅速審査をお願いした出島先生の件のインフォームドコンセントについては、今回の基準に当て嵌めると、若干、中身が変わるかなと思いました。彼が出していたのは、匿名化された試料を扱った子供さんのてんかんについての研究で、京大の小児科が取りまとめるものですが、本人の意見をまだ聞いていませんが、要望が出るようだったら、新しいガイドラインに沿って再検討をお願いできるかなと思って資料を出しました。

 先程の話はてんかんの子供の予後調査みたいなものでしたか。

冨田 京大の小児科にてんかんグループがありますので、外来で扱っている子供さんのデータを匿名化して送り、多分、これから経時的にデータを積み上げていくという中身だったと思います。

 その迅速審査は私が担当していたのに、あまり覚えていないですけど、元々の倫理指針で見ても、必ずしもインフォームドコンセントは要しないということだったと思います。

冨田 ただ、匿名化に関しての項目はなかったと思いますから、そのへんに判断の余地があるところかなと思っていたのですが、今回、こういう指針が出ましたので…。

 まず全体としては、国の方の医学研究の指針が疫学研究と臨床研究を統合した形になるということを認識しておきましょうと…。根本的に変わるとは思わないのですけども、「これは臨床研究なのか疫学研究なのかよく分からない」という問題は解消するだろうと思います。後は、ICの関係で整理がなされているということですが、これで迷うケースが出てくるかどうかは私も分かりません。先程のてんかんの情報収集の話は、改めて検討する必要があるということであれば、ご提起をしていただければと思います。ただ、「匿名化されていない情報」「匿名化された情報」というのは、送る段階で匿名化されるかどうかという話とは違うと思うのですけど。

冨田 いや、送る段階です。病院の中で匿名化ということは実質、どこもできません。だから、多施設共同研究で中心になる施設へデータを送る時に、個人情報を付けて送るか、匿名化して切り離して送るかで決まると思うのです。

 あの件は、必ずしも必要はないのだけど、「口頭といった中途半端なことよりは、同意を取った方が良いのではないですか」といった意見を述べたという記憶であるのですけども、いずれにしても今、議論をすることではありませんので、ご要望があればまた改めて検討するということで宜しいですね。
次に「治験審査委員会報告」もお願いします。

 

議事(4)「治験審査委員会報告」

冨田 資料はEです。今、動いている2種類の治験はどちらも多発性硬化症に関係したもので、P1のSiponimodは、二次性進行型多発性硬化症の患者さんに使う薬です。P3のFampridineというのは、多発性硬化症の歩行障害に使う薬で、どちらも以前から順調に進んでおり、今のところは特に問題はありません。

 はい。先に事務的なものをこなしましたが、次は「看護部倫理チームの活動について」と、さらに続いて「事例検討」ですね。平田さんの方からお願いします。

 

議事(5)「看護部倫理チームの活動について」

平田 北3階病棟の師長の平田と申します。昨年1月ぐらいから看護りんりんチームという活動を立ち上げています。で、倫理委員会にはまだ一度も報告させていただいていなかったので、どんな活動をしているのかということを報告させていただきます。
名称は、倫理ということに掛けて、りんりんチームと呼んでいるのですけども、平仮名を使って親しみ易く優しい印象ということで、ネーミングにも拘っています。りんりんチームは、今日、オブザーバー参加をしている坂田副看護部長と、長谷川老人看護専門看護師と本井緩和ケア病棟師長と私の4人で今は活動しています。
看護の場にいて悩むことは多々あるのですけれども、今日の事例にも近い問題で、経口摂取が低下している高齢者の方で、認知症も進んでいて、今後の栄養をどうしたら良いのだろうとか、独居でご家族の同意が得られない場合、ご本人1人の判断で良いのかとか、患者さんの治療方針とかでご家族の意見が分かれている場合はどうしたら良いのかとか、また、術後の譫妄とかで看護師を強く罵倒して薬を拒否されたりしても、主治医は仕方がないというふうなことを言われることもあるのですけれども、看護の場面ではしてあげないといけないこととか、こちらが逆に傷付けられることもあったりで、悩むことは日々、非常にあるなと思います。
そこで、倫理チームが必要かなということが看護部の中でも上がってきて、以前も倫理委員会の場で、院内のコンサルテーションができるようなところが必要かなという話があったかと思うのですが、「倫理的な問題なのか、私達の力量の問題なのか」ということや、栄養とかターミナルとか患者さんのクレームの対応、ご家族のおられない患者さんのことであったりとか、いろんな場面で倫理的な側面が潜んでいるなということなので、倫理的な視点からスポットを当てることで解決の糸口を探り、カンファレンスを持って、何か方向性を見いだせるのではないかということで、活動を始めることになりました。
手法としては、倫理的な課題に対して臨床倫理の4分割法を用いて、コンサルテーション活動を行っています。これを行うことで看護部全体の倫理観を高められたら良いかなということで始めました。で、コンサルテーションの依頼を受けたら、今、困っている問題なので、できるだけ早期に介入した方が良いということで、3日間程度で日時を決めてカンファレンスを開催することを目指してやっています。
一連の流れなんですけども、コンサルテーションの依頼というのは、スタッフ側からの「すごく困っている」とかいう意見も出るのですが、スタッフがバラバラに言うのではなく、一応、病棟の師長を通して申し込んでいただいております。窓口は坂田副看護部長を通していただくことにしていて、そして依頼を受けたら、カンファレンスを設定し、開催します。後はカンファレンスの結果を記録に残すということで、部署では中間サマリーに記録して、チーム員はその記録をファイリングすることにしています。記載は、依頼書兼報告書でもあるシートを用いて、4分割の各項目に書き込んでいます。
この1年間で30弱ぐらいの事例、1ヵ月平均で2事例ぐらいを検討してきたのですけど、このような内容のものが上がっています。本当に多岐に渡ったいろんな問題でコンサルテーションをさせてもらいました。これでもデータ的には途中なんですけども、栄養に関する問題が比較的に多かったのですが、後の患者対応とかクレームというのは、看護師が非常に辛どい思いをするので、「なんとかして欲しい」とか「どう対応をしたら良いのか」ということで相談を受けます。後は患者さんの治療拒否とか医療部分のところでの相談も受けました。
「1年間の活動を振り返って」ですが、10部署からの相談依頼があって、各部署での倫理観が向上したなと思います。看護部は手術室や透析室などの病棟以外も含めて13部署あるのですけども、ほぼ全部の部署から相談があったと思います。で、私自身もそうなんですけども、窓口を師長にしたということで、師長自身の倫理観も高まったかなと思っています。で、カンファレンスにはできるだけ主治医も一緒に参加していだきたいとお願いしているのですけども、医師が参加してもらえることで内容も充実しましたし、医師自身も非常にジレンマを抱えて日々の医療にあたっているのだなということが分かりました。さらに医師だけでなく、理学療法士や言語療法士などの多職種のスタッフに参加してもらうことで、お互いの立場や思いの理解に繋がったかなと思います。あと、依頼から早期にカンファレンスを開催することで、タイムリーにアプローチできたのではないかなと思います。
これからの課題としては、まだまだ未熟な点も多いですので、日々、倫理観を高めていかないといけないなということと、看護部以外でも倫理的な問題を抱えている部署、例えば診療医事課なんかも患者さんの対応をする場面が多いのですが、今は看護部に限って活動しているので、そういうところへのアプローチもこれからの課題として考えていく必要があるかなと、これからの課題として挙げさせていただきました。

 ありがとうございました。とりあえずご質問・その他はございますか。

関谷 これまでのコンサルテーションの内容を見たら、すごく難しそうな問題があるのですね。そのコンサルテーションの形としては、ここでカンファレンスをして「こうしたら良いですよ」ということを文書か何かでお答えになる形になるのですか。

平田 文書というよりは、ディスカッションしていく中で、例えば患者さんの思いを充分に聞けていないことが分かったり、ご家族の情報が全然なかったりということに気付いて、「もっとそこを知れば解決の糸口が見つかるのかな」ということで、決してハッキリと「こうすべきだ」と決めるみたいなことではないです。参加した看護師さんとかも自分の思いも出され、みんなの思いも聞くことで、話の中で糸口が見えてくるという形になるので、問題が非常に整理され、「こういうことに取り組んでいけば良いのやな」みたいなところを、話をする中で自然とみんなで気付ける形になるのかなと思います。

関谷 カウンセリングセッションみたいなカタルシスみたいなもあるのですか。言うだけ言ったら楽になるということも現場ではあるのですか。

平田 そうですね、抱え込んでいた悩みがみんなの共通の認識になるとか、「自分だけではなかったね」とか、「他のスタッフもこんなふうに思っていたんだな」とかいうようなところがあるのではないかなと思います。

坂田 特にクレームだとかで、「自分達が何かいけないことをしてしまったからこうなったのではない」という思いを強く持っていたりする時には、「私達は充分にやっているんだ」という気付きになっていくということで、またその患者さんに立ち向かっていけるようにもなります。この先も長い付き合いになりますので、一度トラブルになると、その先がなかなか見えなかったりしますから、話し合うことで自分達の自信になって、次に繋がるという感じはありました。

冨田 4分割法というのをあまり知らないのですけども、何かガイドラインのようなものがあるのですか。それと、今のお話のように4分割法では敢えて結論を出さないでも良いという仕組みというか、やり方のようなものがあるのですか。

平田 倫理的な問題をディスカッションする時のフレームワークの一つに4分割法というのがあって、すぐには思い出せないのですけど他にも幾つかあります。私の読んだ文献では、日本は4分割法が結構好きなんですが、海外ではあまり使われていないようです。これは、4つの枠組みに当て嵌めながら整理していくと、自分達の中では情報収集できていたつもりが、足りない部分が結構ハッキリと見えてきます。

冨田 日本でのオリジナルですか。

坂田 九州大学の白浜先生が用いられた日本のオリジナルのもので、答えがなかなかハッキリしないということが問題点にはあるのですが、そもそも「こうしたら良い」というのがなかなか見つけられないのが倫理問題なので、問題が整理できることが大事かなと思っています。

 これで答えが出るという話ではなしに、問題の整理法ですね。だいたい、そんなに簡単に答えが出るのだったら悩まないですね。

吉中 「1年間の活動を振り返って」で、「各部署での倫理観が向上した」とか「師長自身の倫理観が高まった」とあって、そういうことは良いなと思いますけれども、「倫理観が向上した」というのは、どういうことで感じているのかという…。「病院の倫理度を上げる」とか言っても、どう測定するのかという話が難しくて、悩ましいところなんですね。

平田 「こういう問題も倫理的な問題なんやな」ということに気付けたことが大きかったかなと思います。看護部の初期研修などにも倫理の研修があって、到達度評価のチェック表に倫理に関する自己の意識などを評価する項目がありますが、看護師一人一人は、「倫理的な行動が取れているか」といった評価が非常に低いのですね。看護協会では倫理行動というのも作っていますが、「それに則って行動ができているか」みたいに問われると、非常に難しいことみたいに捉えてしまって、倫理的な問題って日常からかけ離れたところにあるように思っているのが、見ていると感じるのです。でも実際は、看護や医療の現場では常にこういうことと隣り合わせで、こういうことが倫理的な問題になったりとか、倫理が問われることになるということに気付いていけたかなと思います。

吉中 自己評価が非常に低いというのは、高尚なことみたいに思っているから余計に低くなるのですね。

平田 そうですね。技術的なところは非常に身に付いていけば自分も分かるし、知識が増えればやれることも増えて分かるのですけども、倫理的な問題ってなかなか評価が難しかったり、感性を磨いていくのも難しいかなと思うのですけど、こういう活動を通していくと、ウチのスタッフなんかも参加して「すごく勉強になった」「楽しかった」という感想が出るので、地道にやっていくことが大事かなと思います。

 「カンファレンスにはドクターも」とおっしゃっていましたが、それは主治医とかいうことですか。

平田 はい、できるだけ主治医の日程に合わせて開催して、主治医も悩んでいるようなところからコメントをいただけるようにしています。

 それで、必要な場合にはリハビリ職の方とかも参加されるそうですが、看護倫理の範ちゅうで収まるのだったら良いのですけども、医療倫理とか診療そのものへと拡がってくることもあると思いますし、ソーシャルワーカーだとまた違った見方もあり得るようなケースもあるような気もするので…、

平田 ソーシャルワーカーの方も、可能な時には参加していただいたりということもあります。

 次の事例検討に挙げている分もここに入っているのですね。

平田 はい、事例検討の分は私の病棟の患者さんだったのですけども、私自身がすごく悩んだのでカンファレンスをしてもらいました。

 おっしゃるように、倫理問題は安楽死だとか脳死だとかそんなことだけではなくて、日常にあることですので、これは悩まないといけないということに気付くということが大事になりますよね。まぁ、いろんなものの見方の人が検討するということは大事かなという気もするので、看護のスタッフだけだとものの捉え方が限られる面も出てくるかも知れないし、そのあたりを工夫していただいたら良いかなと思います。これは紹介ということで宜しいですかね。次に資料B2の事例検討についてお願いします。

 

議事(6)「事例検討」

※事例1例検討しました。

 

 もう宜しいですか。非常に参考になりましたが、こういうケースは多いと思いますので、現場でもできるだけ丁寧に考えていただいて、必要だったらそれこそ法律家もいてますので、意見を尋ねてみるということもできます。倫理委員会そのものは機動的に動けないにしても、個別に聞いてみるというのは事実上の話としてありなので、そういう活動も含めて、丁寧に考えていただきたいなと思います。ありがとうございました。
では次、「DNARガイドラインの見直し検討について」の説明をして下さい。

 

議事(7)「DNARガイドラインの見直し検討について」

根石 昨年来、倫理委員会としての新たな課題として、終末期医療をテーマにしてやりましょうということで、議論を始めたところなんですけど、その議論の中で「DNARのガイドラインはどうなっているんだ」ということも取り上げられまして、どうなっているのかということも含めて病院として検討することになりました。平成21年ぐらいに議論いただいて作ったDNARガイドラインは、院内での運用について言うと、なかなか活用ができていなかったということもあって、改めて院内に終末期医療を考える検討チームを作りまして、今は高齢者のエンドオブライフ検討チームと改称しましたが、ここで検討を始めまして、「DNARガイドラインが折角できたのに使われていないのはなぜか」とか、「今後、ガイドラインを改定する必要があるのであれば、どういった問題があるのか」ということで議論してまいりました。このチームは、ここにおられる川島先生を筆頭に、看護師・栄養士・薬剤師・社会福祉士(SW)、リハの関係で言うと言語聴覚士(ST)も、NSTを含めて栄養関係の場面で入ってもらい、事務の私も入って検討してもらいまして、DNARのガイドラインを見直すにあたって、まず職員の意識調査をしたらどうかということで、このアンケート調査をしました。
この調査は1月15日から30日に取り組まれたのですが、この倫理委員会に少しでも報告しようと、急いで集約したので、今日は結果しか報告できないのです。今後に分析評価をして、どうだったかという報告は次回にさせていただこうと思っています。
目的としては「DNARのガイドラインの見直しにあたって、職員のDNARに関する意識を把握し、参考としたい」ということで、嘱託も含めて約600人の常勤職員の全てに、各部門を通じて無記名の質問用紙を配布し、部署毎に回収をしました。回収数は421で70%近くが集まりまして、それを大慌てで集約したという今日の中身であります。今日はアンケートの現物を添付しようと思ったのですが、ちょっと忘れていまして、分かりにくいかも知れません。質問の中身については全て選択肢を提示しまして、そこから選んでもらうという形にしましたので、難しいこととがいっぱい出てきます。
まずは用語解説を付けてということで、DNARについてとか、CPR(心肺蘇生)について、BSC(BestSupportiveCare)、緩和手術、緩和化学療法についての解説を付けました。
結果なんですが、最初の職種別は、大雑把な枠で職種を分けていまして、看護職は保健師・助産師・看護師。検査関連技師職は臨床検査技師・診療放射線技師・病理検査技師・臨床工学技師。それからウチはリハのスタッフがかなり多いのですけども、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士を含めてリハビリの職員としました。医療職ではない事務系の職は全部をまとめて事務職としました。それから医師と薬剤師ですね。栄養関係は調理師・栄養士。それから、資格のない者はまとめない方が良いだろうということで、看護助手は看護職と分け、介護福祉士、それからソーシャルワーカーということで部門分けをしました。看護職がやっぱりいちばん多く、残念なことに医師の回収率が悪いのですが、このような比率になっています。
年齢構成で言うと、質問自体が難しかったのですが、結構若い世代も良く答えて下さいまして、20代29%、30代30%で、古い世代が答えて下さるかなと思ったのですが、ちょっと少なくて、若い世代の回収が多くありました。男女比率は看護師が多いということで女性68%、男性32%という割合でした。職歴も、5年未満が31%で、10年未満が約半数と、若い世代が回答していました。
まずは「DNARの意味を知っていたか」ということなんですが、「知っていた」というのが59%、「だいたい知っていた」が27%、「知らなかった」が13%で、ある程度は認知ができていたかなといいう感じがします。
次は医師だけへの質問なんですが、医師は60〜70名いるのに、回答数は30と少なかったです。その中で「DNARの指示を出したことがあるか」と聞くと、9割方が出したことがあり、出したことのない人は13%でした。それから、DNARの指示を出したことがあるという前提で、指示を出す時に「患者本人に意思確認をしているか」ということは、いちばん多かった「取らないことが多い」は、むしろ「意思表示ができにくくて取れないことが多い」というのがかなり多いですが、ちょうど半数になり、「だいたい取る」を含めると67%になりますが、場合によってはという意味の「どちらとも」の13%、「ほとんど取る」の10%を含めて言うと、一応、本人の意思確認についてはできているような感じです。
で、かなり難しい質問になったのですが、次の「DNARについて患者と話し合うタイミングはいつが良いか」で、いろんなケースでDNARの意思表示をご本人やご家族に聞くのですけども、後期高齢者になった時とか、突然死の可能性がある時とか、BSC方針を出された時というように、これだけの選択肢を示しました。で、複数選択可なので、かなりの量を選んだ人もおりましたが、1番上位に来た「後期高齢者になったらDNARについて確認した方が良いだろう」というのが76人いまして、「突然死の可能性」というのが60人でした。ただ、自由記述の「その他」の中に「タイミングというのは限られたその時というのじゃなくて、いつの時点でもそういうようなタイミングがあれば、1回だけではなくてできるだけその都度その都度、確認した方が良いよ」というご意見もありました。また、「高齢者を対象に」とあったのですけど、「若い人でもいつ何が起こる分からないので、若い人でもそういう機会があれば話した方が良いのではないですか。病院に入院した時は全てしてもらうとか、急性期のみとか、本人や家族から申し入れやそういう情報があった時にはした方が良いとか…」というのが記述の中にありました。
それから「DNAR指示が出された患者に行うべきではない」、まぁ「やらない方が良いことにはどんなことがありますか」という質問なんですが、そのことに対してはやっぱり「DNAR指示が出されていれば、人工呼吸器装着と気管内挿管、心臓マッサージはするべきではない」という意見が圧倒的に多かったですね。あと、血液透析とか大腸カメラとか色々あるのですが、このような形で出されています。
それから「患者の意思表示があって、DNARの指示が既に出されています。患者さん・ご家族は延命治療の中止を希望しております。で、実際に治療されているのですが、こういうケースの場合の治療行為の中止を許容、やめても良いのではないか」というのを選択してもらったのですが、いちばん多かったのは高カロリー輸液で、経管栄養と血液透析が上位を占めました。
ただ、DNARの指示を出す必要条件の中に「CPR(心肺蘇生)が無益である」というのがあるのですが、その「無益というのを考える時、回復率で言うとどうでしょうか」ということで、「0%」「5%以下」「10%以下」「20%以下」「30%以下」「その他」と分けましたが、これはバラバラで、その他の中には「90%」「100%」という回答もありました。
で、「CPRの結果、どのような効果が期待できないと無益だと判断するか」ですが、「一旦は蘇生が不要ということにならないとダメだ」という答えが27%、「一旦は意識が戻らないとダメだ」というのが38%、「心肺蘇生以前に戻らないと…」が28%、中には「退院までいかないと…」という極端な答えも3%ありました。で、「一旦は蘇生が不要」と答えた人に「その一旦とはどのくらいの期間を想定しますか」というのが次の質問で、「1時間以内」「数時間」「24時間以内」「1週間以内」とあって、ここでも「退院」というのが5%ありました。
で、ここが問題ですけど、当院にはガイドラインがあるのですが、「ガイドラインの存在についてはどうですか」という質問で、「知っていた」が45%、「知らなかった」が50%で、半数ぐらいの人が知らなかったのですね。やっぱりアピールできていないというか、きちんとアピールできていないということが分かりました。
それから、当院の電子カルテのトップページにガイドラインを集めたのがありまして、そこを開くとDNARのガイドラインも見れるので、「電子カルテから取り出せるか」という質問をしたところ、ここは職種別に分析できていないので、医師や看護師はある程度比率が高くなると思うのですが、「いいえ」が81%で、全体で見るとあまり周知できていませんでした。
最後に「あなたが心肺蘇生の効果が期待できない状態になった時、どんな治療・処置を希望しますか」 という質問に対しては、酸素投与とか鎮静・麻薬・補液ぐらいはCPRの効果が期待できなくてもやって欲しいという思いが表れています。自由記述の中では「やっぱり楽にして欲しい」という意見がありまして、「鎮静」という選択肢がありましたが、「鎮痛」であったりとか、「もうちょっと安楽になるようなことをして欲しい」というのがありました。ただ、後の振り返りでの反省なので、「何もして欲しくない」という選択肢を設けるべきと思いましたが、「無回答」が116もあり、これだけの選択肢にないということなので、多分、ほとんどの無回答の人は「何もして欲しくない」という思いがあったのだろうと思うのですが、「この選択肢にはない」という人がいるかも知れませんから、そこは正確には掴めません。自由記述でわざわざ「何もして欲しくない」「希望しない」と書いてくれた人が10ぐらいありました。
で、「DNARガイドラインについて、医師を中心にして、どこをどう変えていったら良いのか」という意見かいちばん欲しかったのですが、残念ながらあまりありませんでした。意見としては「その時の状況で一人一人が違うので、ガイドラインに書かれている中身で判断するのは難しいのではないか」、「ガイドラインはあるのですけど、合意形成のためのカンファレンスの持ち方とか、患者側とのセッティングとかいうことを統一したルールがないと、なかなかできない」、「ガイドラインそのものの認知度が全体的に低いのではないでしょうか」、「今、出されているガイドラインは非癌患者を前提としたものになっていない」というようなものがございました。
で、チームの中で学習したり討論する中でも、アンケートを作るにあたっても、箕岡真子さんが書かれた「蘇生不要指示のゆくえ」を参考にさせてもらいました。
今日は、参考資料として当院ガイドラインの解説編と本編をお手元に置いてありますが、今後、このガイドラインをどう考えてどういうふうに変えていくかということの取っかかりとして、このアンケートを行いました。次回にはちゃんとした分析・評価を含めて報告できたらと思っていますが、とりあえず今日はトータルな結果ということで説明させていただきましたので、ざっと聞いていただいて、「こういうところに突っ込んで分析した方が良いのではないか」といったご助言がございましたら、出していただければと思います。以上で終わります。

 ありがとうございました。とりあえず報告内容についての質問等はありますか。

勝村 「患者と話し合うタイミング」というのは、経験を聞いているのではなく、意見を聞いているのですか。

根石 経験ではなく、タイミングをどう考えるかということを聞いているのです。

川島 どういう時期が望ましいと思うかということですね。

勝村 これまでどれだけ指示を出したかとか、どのタイミングで話し合ったかという経験は、あまり多くはないわけですか。

根石 そこはちょっと聞けていません。

 この調査から分かるのは、医師の回答という部分で「DNAR指示を出したことがある人」は87%でかなり多いという話と、「本人の意思確認を取らない(取れない)ことが多い」というのが50%あるといういう話との、この落差の理解はどう考えたら良いですか。ガイドラインそのものだと、「本人の意思を推定することを家族に聞いて」ということもありなんですけども、そういうプロセスを経てという理解をしたら良いのか、それとも、お医者さんが勝手に決めているのか、何とも分からないです。指示を勝手に出すということはあるのですか。

根石 勝手に出すのはあり得ないですね。そこは、ガイドラインの考え方のベースにのって、「集団的に判断しましょう」ということでやっていますので、医師個人の意見で判断するということはありません。

勝村 「ほとんど取る」と「だいたい取る」「取らない(取れない)ことが多い」を合わせたら80%ぐらいですね。

根石 まだ充分に分析ができていませんので、今日はそこをあまり突っ込んだ回答はできませんので、今後、分析についての助言とかでしたらお伺いしますが、なければ次回にお願いします。

 これはさらに見直しが必要ではないかというのは、根本的なという意味合いですかね。後は、特に質問とかがなければ、時間的に可能な範囲でフリーディスカッションをして、終わろうかと思います。
ちょっと確認しておかないけないのは、現在ある中央病院のガイドラインは基本的に悪性腫瘍のケースを想定しておりますし、死亡することが差し迫った状態で出すという…、「差し迫った」という表現で良かったのかな…、

川島 手順の中に「1ヵ月以内に」という感じで書いてあるのですけども。

 資料C2のP16ですね。「差し迫った状態」という意味のことがありますね。

川島 このあたりはかなり現実とのギャップが…。「後期高齢者になった頃」みたいな意見が出たりしていまして、要するに「本人と充分に話し合うチャンスのある時が望ましい」という意見が非常に多い中で、ガイドラインではギリギリを前提にしたDNAR指示になっているのですけども、このへんはどう考えたら良いですか。

勝村 話し合いをするタイミングと、指示を出すタイミングは違いますよね。先のは話し合うタイミングやね。

川島 そうですね。提案は違いますけどね。

 このガイドラインを作った時は、かなり画一的に心肺蘇生をやっていた、やらざるを得ないという考え方があったので、それで良いのだろうかと言うことが主な動機だったのですよね。無理やり心臓マッサージとかをやらなくても良いケースは、それはそれで認めていきましょうということでした。そこの間口を公式に開くという意味合いで作ったガイドラインなので、わりと限定していて、無闇に拡げることはしないということですし、心肺停止した時に心肺蘇生法をやらないということに関するガイドラインですよね。個人的には延命治療という言葉をあまり好きではないので、別の言い方をした方が良いと思うのですけども、生命維持とか治療をやめることを、DNAR指示によってその代用にするということを認めているわけではありません。やめることについての病院の決まりは今のところありませんし、ターミナルの話で公式なものとしては、厚生労働省のガイドラインを話し合いを中心にしてもらえれば良いですね。各学会で色々あるので、学会のものをそのまま受け入れて良いのかどうかはかなりの検討が必要だと思います。で、心肺蘇生法以外の話は、個別ケースでよく話し合って決めていきましょうというのが現状だと思います。

吉中 これは非癌患者を対象にしているのですよね。でもアンケートの自由記載で「非癌患者が対象になっていないから」と誤解して答えている人達がわりといましたよね。一方で、治療の差し控えということも我が国もなってきていますが、先っきの胃瘻の話ではないけど、何でもやめようかということというのは、当然、現場で色々問題になりますし、他の治療については何も先入観を持たないことが必要という話を現場でしています。今使われているガイドラインでは「心肺蘇生をしないのは末期に」とはなっているけども、その幅は少しあるかも知れないなという印象です。
時代的な背景として全部にサインをしてという煩わしさみたいなものがあったのだけども、病院サイドとしては、医療事故の訴訟問題もあって、ちゃんとやることが自分達を守ることになるんだというような説得の仕方というアプローチもしたことがありますね。色々と型通りに行ってもちゃんとカルテに記載しておかないかんということは、ほとんどみんな「何もなかっても拙いんだ」という思いはあって、記載はしていると思うのです。しかもカンファレンスで決めたりするので、こっそりやるということはないと思いますが、実際には、医師が24時間ずっと付いていない限り、当直医やいろんな人が診るので、それをできないようにしておかないとダメです。

 先っきの非癌の話で誤解があるのは、癌に限定しているのはターミナルセデーションの話で、他分、そことの混乱があるのだと思うのですが、そっちはそっちで検討の必要はあると思いますけど、こっちはそういう限定はしていないです。ただ、「DNARの指示とか本人の意向を根拠にして、他の治療やケアを控える理由にしてはいけない」と注釈も付けてわざわざ書いていますが、そこは慎重な形で作っていたのですね。

吉中 それが国会の場の話とか、幾つかの学会でそこが拡がってきているという流れの現実はあります。

川島 できるだけ元気な内からご本人の意思が反映されるようにという時代になってきていますし、終活という考えもありますので、DNARの問題だけでなくて、アドバンスケアプランニングへの拡大もありますので…。

吉中 それはその頃も議論して、南医療生協かどこかの経験を参考にして、入院された時をチャンスにいたしましょうと…。しかしその時、婦人科に「子供が産まれる時にDNARのことは言えない」と言われ、限定して入院のパンフレットで「DNARについての希望があれば書いて下さい」とやろうということになっていたのですけど、担当者が代わったりして、うやむやになったという経緯があるのです。

川島 少なくとも友の会の人にはそれを考えるチャンスがあって良いのではないかと思ってはいるのですけど。

吉中 太子道も1回、載っていると思います。だけど、そこはちょっと推進力がなくなってしまって…。だから当然、リバイバルした方が良いですね。

広瀬 来月に東先生に来ていただいて彩の会で勉強しようかということになっているのですけど、尊厳死という勉強会をやろうかとなったところ、「それでは恐ろしくて来ない人も多いのではないか」いう意見が出て、「医療が進んで長生きするようになったので、認知症などになる前に、自分の方向を考えておきましょう」というような文章を付けて案内を出しました。

 決めたことができなかったいちばんの理由は、DNARの指針では「死が差し迫っているかどうか」ということが入っていますが、現場で診る患者さんは、急にこうなるわけではなく、ダラダラ悪くなっていくことも多いので、「そういう時に心肺蘇生をやるのですか」という話を早くしたいというような感じがあったと思うのですね。DNARのガイドラインを死が差し迫っている人に限ってしまうと、現実には早めに話し合うことが必要なのに、そういうことができないということで、現場の多くは内科の先生方から「これは現実にはできない」「難しい」というふうなことがあって、その結果、そこでペンディングになっちゃったのですね。だから説明同意書もできたのだけど、最初に入院患者さんから意思を聞こうという話も、その前提に「こういいうガイドラインを作りました。これを読んで自分の意思を聞かせて下さい」というような内容でしたので、それも現場から若干、拒否的な反応があって、それを実施しましょうというところまでいかずに、そのまま止まったような感じです。実際に現場の医師が困るのは、今すぐにどうするかことよりも、もう少し長いスタンスの話で、もう少し緩やかなガイドラインを欲しているように思うのですけどね。「あまり早いDNAR指示は宜しくない」と書いてあるのと方向的には違い、もう少し早めにある程度決定していきたいみたいな感じではないかなと思います。

川島 多分、受け取り方がだいぶ違うと思うのですけど、勝村さんが言われたように、話し合うチャンスと指示が出るということのタイミングは、かなりギャップがあるかも知れないです。話し合うチャンスはそれこそ35歳になったらみたいに、すごく早くても良い世界かも知れませんし、指示が出るとなったら終末期みたいなイメージで捉える患者さんもおられるのではないかという気がしますね。

岩橋 指示は一つの目安として1ヵ月以内という範囲なので、そういう形にしながら前倒ししても、「早くからその人の心肺蘇生は一切しない」というふうなことになるわけではないし、まだ回復の可能性のある時にそうしたら拙いですよと…、

川島 可能性がない時にしないというのがDNARということなので、例えば、若い方が交通事故で脳死になったとしても、それ以前にDNARの意思表示をしていた人には、DNAR指示が出るということになると思います。

岩橋 だから、「余命が1ヵ月以内とか死が差し迫っているところで、そういうようなことをしないでも良いですか」という話は、別に早い段階から話し合っても全然、問題にはならないのではないですか。

 整形外科なんかでは、内科的にもいっぱい病気を持っていてかなり全身的な状態が悪い人が骨折して入院されることも多く、その人が1ヵ月ぐらいの間に亡くなるとは限らないですけど、例えば手術をしてその後で急に悪くなったとして、体力が落ちているので亡くなる可能性もありますから、このまま悪くなるかどうかも分からない入院時に、「手術した後もずっと悪くなることもありますが、その時は積極的に色々な処置をやりますか。それとも心肺蘇生などはしないでおきましょうか」というDNAR的な話をすることも経験ではありますね。しかも、ほとんど判断ができないような方が骨折するというという状況も多く、その段階では本人の意向を聞くことができないので、そういうことをお家の方に聞くことも現実の対応では聞きます。だから、ガイドラインとはちょっと違うのですけど、そういうところがもう少しガイドラインに欲しいのではないかなと思います。

勝村 「患者の意思決定」という言葉と「患者の意向確認」という言葉は違う話ですよね。元々は「入院した時に伺おうよ」という話になったけど、その時に聞くのは「意向」で、指示を出すために「意思」の確認を取ろうというのが1ヵ月に差し迫っている時の話でしょ。1ヵ月に差し迫ってきた時というのは医師が出す指示の話で、その段階で意向が分かっていれば良いから、「入院時とかいろんなタイミングで意向を聞いておければ良いですね」というのが、このガイドラインの趣旨ですね。「ガイドラインと合わない」というのは、何が合わないのですか。

 現場で言うと、意向の時に「そういう時にはどういうふうにしますか」というように、ある程度は「意向かつ決定」という形の解釈を言っているのです。

勝村 意向を聞いた瞬間にDNAR指示をしてしまうということですか。

 意向を聞いた時に「この患者さんの意向はこうだから、基本的にはDNARですよ」という形が多分、現実にはそういうふうになる率が結構高いのではないかなという状況があると思いますね。全然そういう可能性がなかったらやりませんけど。

勝村 意向を聞いた段階で「DNAR可」と書いたのに、1ヵ月ぐらい前にもう1回、何をするんやと…、

 ガイドラインに沿ったらもう一度、あるいはDNARという言葉は意向を聞いた後に言うのではなくて、再度そこで協議をして確認するという話になるので、多分、そういうことは現場の現実にそぐわないという意見だったと思いますね。

吉中 そういう手順を取らなければいかんということの煩わしさが実はあるのですね。

 そうですね、手順が結構ガッチリとしていますよね。

吉中 私の印象では、悪くなって「もう難しいな」という時にDNARとカルテに書いているのが多く、あらかじめDNARと書いているのはあまり目にはしないです。

勝村 DNAR指示を出す要件は3つあって、その一つが本人の意向というだけですから、意向を聞くことと指示を出すことは明確に違いますね。さらに、ガイドラインのコンセプトは、意向を聞くとか、聞けない時には家族の同意を取ることももちろん大切な過程だけど、いちばん大事にすべきと書いているのは、本当に心肺蘇生の意味がないという担保を取るということで、そのことをスタッフでちゃんと確認することで、指示を出すということは、意向を聞くだけでなく、そのことを担保しなければいけないのですよね。

吉中 このアンケート調査の結果で見れるのは、1ヵ月前になってとか、そういうだいぶ悪いものがあって、回復率がこれぐらいだとかと、生存期間がどれぐらいとかということを想定して、皆さんは書いていますから、そこを意識しているのは間違いないですね。元気な時には全然そんな想定はできないわけなので、現実にはそういうふうなことだろうと思います。

勝村 複数のスタッフが「心肺蘇生はこの人には意味がないだろう」と確認することは、早くからはできないですね。だから、同意や本人の意向ではなく、意味がないということを担保を取るための1ヵ月の縛りなんですね。

吉中 現実の問題としてということになりますので、そうですね。あるケースにこんなのがあったのです。DNAR指示を出したのだけども、その人は元気になって退院しまして、半年後ぐらいに入院してその後に急変し、心肺蘇生をしたら家族から「前にDNARになっていたのになんや」とクレームが付いたのですが、そういうのは確かに防がないかんなと思いますね。その後に「あまり早くに出して」というようなことはないですよね。

関谷 有効か無効かが分からない。有効期間が消えたみたいに…。

勝村 1年ほど前に原という医制局長がいて、別のことで喧嘩して気が合わなかったのですが、僕も見ていた尊厳死か何かの会で、原医制局長が「事前同意書というのは毎月毎月でも気持ち変わるから、5年前と2年前と今とでは全然違い、ちょっと時間が経ったら全部、無効だ」と、事前指示書のことを一生懸命に発表している医師か誰かに対して言っていて、初めて面白いことを言うなと思いましたが、そういうのは難しいですね。

 今のガイドラインの構成では、今の病気を前提にして「差し迫った状態になったらどうしますか」という意向確認であって、患者の意向は早くても良いのですよ。具体的な指示は「これはもう無理ですよ」という段階でのドクターサイドでの判断ですから、それ自体はそんなに無理な感じはしないのですけども、ここの書き方が、順番的には患者の意思確認を改めて後でやるみたいになっていて、確かに、気が変わるという意味では確認した方が良いとは思うのだけども、ここがちょっと分かりづらい感じになっていますね。一般論として「蘇生しないでくれ」みたいなもので認めていくみたいなことは妥当ではないと思いますので、やっぱり今の病状の延長線上で「どうですか」という意向確認をしないと…。

吉中 大きな問題点としては、治療の差し控えの件を区別して入れるかどうかというのは、全然できていない。

 治療の差し控えの話は大きな話ですけど、ただ、意向調査を持って治療の差し控えの代用にするのは危ない話ですから、それをやるのだったら、差し控えの話をちゃんと揉んで考えないといけないですよね。

吉中 やっぱり人工透析なんかがいちばん起こりやすいですよね。差し控えするのも簡単にできますが、しなかってもすぐに死ぬわけではないので、心肺蘇生の概念とはちょっと違う。心肺蘇生はしなければ亡くなりますからね。だから今は、毎日確認しながら、患者に判断能力がなければご家族と話をしながらということで、代わりにしていますが難しいですね。人によっては血圧が下がって透析が回らなくなるまでやる場合もありますね。

 治療の差し控えの話は前から課題として求められていますが、どういう方向性がありますか。

吉中 透析学会は指針を出していますので、基本的にはそれに則って、カンファレンスを開いて現場で対処しているというのが現状で、大きなトラブルが起きているわけではないのですけど、現場の苦悩はあります。

 そのあたりにはかなり強い反対意見もありますので、この病院としてどう考えるのかは検討しないといけませんね。各学会によって食い違いもありますし、かなりの異論がありますので、学会の指針だからそれに則ってやれば良いというふうにはちょっと思えないのですね。ここをどうするかですね。DNARのガイドラインそのものを取りあえず触っておくというのが一つのやり方ですね。

吉中 まずは先生がどう考えているかですね。

川島 使われやすいようにマイナーチェンジをしないといけないかなとは思いますので、アンケートの意見を反映した形で…。じっくり読むと、すごく厳密に書かれていて良いガイドラインですけど、倫理性確保のためのチェックはかなり厳しく書かれていまして、必要なことではあるとは思いますけど、院長の任務とかも全部書いてありますので、これをやろうと思ったらすごく大変なことなんですよね。まぁDNARのことをきっかけに、ご本人の意思が反映される医療がもうちょっと進めば良いなと思っていますので、ここで発信したものを現場に返しながら整理していく形になると思うのです。

 治療の差し控えに関しては、今の法体系やこの病院の方針から言っても、ご本人の意向に添って控えますしいうことは、別にダメということはないのですね。と言うか、そんなことはよくあるのですけど、呼吸器を外すとかそのあたりの話になると、ちょっと別物で、ちゃんと検証しないといけないのですけど。

吉中 これを対象に入れてということで、そこをあまり拡げると収拾が着かなくなるからね。

川島 差し控えと治療は法的に一緒なのかも知れませんけど、そもそもご本人の意思を聞くチャンスが少な過ぎてちょっと困っていると…。ギリギリになってご本人が意思表示ができなくなってから決断することも現場では多いので、できるだけご本人の意思を反映した形でということになると、元気な内からということしか術がなくなりますし、認知症になる前からとかいう話になってきますので、そういうのをどうやって進めていくのかなという問題があるとは思います。少なくとも病院に関わる地域の方と、そういうのを話し合うチャンスができたら良いなと思いますけど。

吉中 人工呼吸器も透析もそうですけど、やり始めたら終われないので、初めにもっと決めておいた方が良いみたいな、そういう見方も医療会には明らかにあるのですけども。

 ただ、刑事手法の運用で言うと、呼吸器を外すということも含めて、外したら殺人罪で問われるかについて言えば、少なくともチームで判断したものについて問われることはないと思いますよ。だから立法の必要はないと思います。そうではないと言う人達もいるのですけど、検察庁の運用は現実に依存してやっています。

勝村 患者との話し合いや意向を確認するタイミングをどういうふうにしていけば良いかという代表的なものとして、ドナーカードを持つのと同じような、尊厳死協会カードみたいなのがありますよね。ただ、ああいうカードを持っていたら「この患者はこうやれば良い」という感じになるのもどうかなという思いもありますけど。でも、少なくともマイナーチェンジは必要かな。

関谷 先程の先生のお話のように、「手順が煩雑過ぎて使いにくい」というのは実際にあるのですか。

吉中 「煩雑過ぎて」という感覚的な受け止めは相当ありますよね。必要なのはカルテに書くことで充分ではないかということですが、カルテには確かに記載して、家族と話し合いをしてということにはなってきています。それをもう一段上げるということだったのですけど、少しマイナーチェンジをして、変えながら少しスッキリさせてということでOKだと思うのですけどね。

 差しあたりはマイナーチェンジをどうすべきかと…。多分、事前の意向を聞くというところは、「前もって聞いたら良いんだ」という順番で書いたら良いだけで、ここは内容的にはあまり変わらない。ただ、再確認のところの「本人乃至は家族に確認をしなさい」という手順をどうするかというあたりは、今はP17にあるように「患者本人の意思決定が可能な場合は意向表明書に記入していただく」と、「可能でない場合は家族に書いてもらう」という条件になっていますから、そこで必要なんですよね。ちょっと分かりにくいですね。

吉中 そうですね。で、1ヵ月が済んだら、1ヵ月を超えたということで…。

 ちょっと分かりにくいですね。

川島 ちょっとここは矛盾する面もあるのですけど。

 簡略化するとすれば、事前の意向表明をしてもらって、確認の時にはカルテ記入でやるかですかね。最初の一般的な「蘇生は要りません」で代用してしまえるというのは、ちょっとどうかと思いますよね。病状の軽い段階で意向調査をされて、心臓が止まっても回復させられる場合でも「しません」というわけにはいかないでしょう。確認段階も要るとは思うのですけど。

勝村 尊厳死協会などと差別化を図ろうとしたら、本人の意向よりも、本当に医学的に無意味だということを確認する作業をきっちりすることが大事ですね。

 医学的に無意味というのが何を指すかというのは非常に難しいので不安なんですけど…、

勝村 尊厳死にあるのはその問題でしょ。「こんな感じで生きていくのだったら、死んだ方がまし」という意思表示ができるというのが入り込んだ部分が、多分、あるのでしょうね。

 いや、主たる部分は医学的な判断であって、逆に「医者の言うことなんて信用できないから、とことんやってくれ」という意向があるならば、それは尊重しないといけないだろうという話だと思うのですよ。医療サイドの判断をメインにして、単純に主治医がカルテに書くというような方法ではなくて、何らかの手続きを作っておくか…。あまり早い段階だとちょっとどうかなと思いますね。本人・家族の意向は参考に聞きますので…。

勝村 でも、本人に「医学的に本当に無意味だったら良いですか」と意向を聞くなら、医学的に無意味かどうかを確認する作業というのが要りますけど、そこの担保なので、医学的に無意味だったらやらなくて良いのですね。

 医学的に無意味かというのは難しくて、戻らない場合だけでなくて、戻る場合も含んでいますからね。そこは医学的にどうかという話ではなくて、蘇生した場合は価値の話が入ってきますので…。蘇生しない場合は純医学だと思いますけど。

勝村 蘇生しない場合を前提とした議論だったでしょ。

 しない前提ではなくて、心拍再開してもそんなに長持ちしないみたいな話。

勝村 尊厳死協会とはスタンスが違うかなと思っていたのです。

岩橋 ただ、1ヵ月ぐらいに限定したのは、P11の「早すぎるDNAR指示を防ぐ」という意味があって、不必要だということを目的においているのではないということなので、医学的に無意味かどうかという判断を集団で担保するということだから、1ヵ月ぐらいならそういう判断もある程度は可能だろうということですね。

 まぁ1ヵ月に限定すべきかどうかという議論の余地はあるとは思います。

岩橋 でもそれがあまりにも前になってくると、結局、読みが本当に正しいのかとかいう問題も出てきます。

 ちょっとまとまらないとは思うのですけど、作業的にどうしましょうかね。骨格の提案みたいなものをいただけるとありがたいのですけどね。基本的な思想はそんなに変わらないので、きちっとした文面でなくても骨子の案があれば、そこから文面にするのはそんなに難しいものではないと思います。治療全般の話はまた…。

吉中 平田さん、このケースはちなみにDNARの対象になっていた方ではないですね。

平田 その判断も、妹さんは「自然に生かしてやって欲しい」と後見人さんに言っておられて、DNARを取るか取らないのかという話はしていたのですけども…、

吉中 議論の俎上には上っていたのですね。そこがもう一つ趣が違うところで、今は1ヵ月以内と書いているのだけど、こういうケースで心肺停止に陥る場合もあり、高齢者になってくるとどうしても対象に…、

平田 別の疾患で入院されても、誤嚥性肺炎とかで全体にグッと悪くなるということも考えられるので、「その時はどうしますか」という話をご家族に聞くことも多いかなと思います。

 いろんなパターンもありますし、限定はしていないのだけど、癌みたいなものを想定している感じは、1ヵ月以内とかそういうのを含めて、内容的には強いです。

勝村 昔は事実的にはほとんど家族に聞いて、家族の意向に合わせていただけだったから、「もうちょっと本人に…」という話ですよね。

 差しあたり、できました病院サイドの委員さんで叩き台の骨格を出していただけると、次回に決められるかなと思います。細かな表現はメンバーで決めると宜しいと思います。
では、次回以降の開催スケジュールを決めたいと思います。

根石 今年度の途中から年間予定を設定した方が良いということで、隔月の第1木曜日に設定させていただきましたが、宜しければ同様に2015年度以降も、偶数月の第1木曜日の6時半ということで提案したいと思います。

 宜しいですか。はい。それでは倫理委員会をこれで終了したいと思います。ありがとうございました。

 

 

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