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第四十七回 倫理委員会 議事録

京都民医連中央病院

日時 2012年3月8日(木) 18:30~
場所 京都民医連中央病院西館1階会議室
出席者 外部委員 小原克博委員長、原昌平副委員長、岩橋多恵委員、勝村久司委員、広瀬東栄子委員
内部委員 冨田豊副委員長、内田寛委員、神田陽子委員、東正一郎委員、平田恵美委員
事務局 丸山俊太郎
オブザーバー 

吉中院長、橋本看護部長、根石事務次長、古板医師、山西医師、川原師長、寺前師長

欠席 位田隆一委員、関谷直人委員、井上賀元委員、富永愛委員、中村光佐子(特別委員)

議事

 小原 第47回倫理委員会を開催させていただきます。お手元の資料に今日の議事が載っていますが、いつもに増して色々ありまして、どれも話しだすと大変時間を取るものばかりですが、できれば9時に終わりたいと思いますので、時間を区切って進めていきたいと思いますから、審議にご協力いただきたいと思います。では早速ですが、「(1)臨床研究関連」ということで、これまでの迅速審査の結果報告と、迅速審査では取り扱うことができない通常審査での申請が1つ出ていますので、併せてやっていきたいと思います。まず、迅速審査の結果報告についてご説明をお願いします。

 

議事(1) 「臨床研究関連(臨床研究迅速審査結果報告)(臨床研究申請通常審査)」

 富田 当日資料のP2に一覧が出ていますが、No.29番は今日、通常審査をお願いしているもので、迅速審査は27、28ですね。どちらも野崎先生から出されたものですが、27の「大腸癌におけるセツキシマブを含む一次治療の観察研究」は、既に迅速審査を終えまして、OKということです。28の「大腸癌化学療法における制吐療法を検討するための臨床第Ⅱ相試験」はまだ進行中でして、お2人の内、お1人からは質問が来ているという状況で、もう1人からはまだ来ていないということです。今日は29の方を通常審査としてお願いしたいと思います。

 小原 では、続けて通常審査の方のご説明をお願いします。

 山西 産婦人科の山西です。課題名は「低身長妊婦の分娩形式に影響を与える要素の検討」ということで、申請をさせていただいています。事前資料Bには研究実施計画書と患者さんにお渡しする同意説明文書を添付しています。利益相反はありません。研究の概略は臨床研究で、研究デザインは介入を伴わない前向き研究と、過去の症例に対しては後ろ向き観察研究を行いたいと思います。
 医療的背景ですが、低身長妊婦は、お母さんの骨盤に対して赤ちゃんの頭が大き過ぎて産道を通過できないという児頭骨盤不均衡(CPD)の状態などで、選択的帝王切開となる確立が高く、産科的にはハイリスク妊娠とされています。CPDは、お腹の上からの超音波で測った児頭大横径、これは赤ちゃんの頭の横幅の直径ですけど、この長さと、グースマン法というX線撮影法で算出したお母さんの骨盤の一番短い前後経の差を見て、2cmあったら産めるのではないかとか、そういう根拠で診断しています。通常は、あまりにも骨盤が狭いとか、赤ちゃんの頭が大き過ぎることがあると、予定帝王切開という診断にしています。参考にグースマン法で撮った画像をお持ちしたので、後で回します。お母さんの骨盤と赤ちゃんが一緒に写っていますが、これで測っているのは骨盤の広さだけで、赤ちゃんの頭はエコーで測った値を用いています。これで骨盤の広さが約何cmで、赤ちゃんの頭が約何cmで、「これはいける」と診断されても、実際に経膣分娩を初めてみるとお産が進まなくて、臨床的に「これはもうCPDでしょう」ということで、緊急帝王切開となる例も結構あります。なので、CPDを単純に長さと長さの関係ということでなく、お母さんの体重が妊娠中にどれだけ増えたかとか、色々と他の要素も参考にした方が、実際のお産の進み具合を予想できるのではないかと考えています。
 研究の目的としては、妊婦さんの身長、妊娠中の体重増加、児頭の大横径、骨盤の最短前後経と、今まで下から産んだことがあるかどうかという経膣分娩歴、妊婦さんの年齢、ここには書いていませんが出生後の赤ちゃんの体重も参考にしようと思っています。これらの要素が「結果的に経膣分娩でいけたのか、挑戦したけどもダメで緊急帝王切開になったのか」ということに、どの程度の関係があるのか、影響を与えたのかというのを検討したいと思っています。
 研究主体は一応、当院でお産をされる妊婦さんを対象にしようとは思っているのですが、協力していただけるところがあれば声を掛けて、症例数を稼ぎたいと思っています。目標の症例数31で、細かな数字ですが、今までのカルテから11例程、使えそうなデータがあるので、実際にはプラス20例を目標としています。
 P4の研究実施計画書の方に進みます。「[1]緒言」と「[2]目的」については、今、述べた通りです。[3]の「対象」ですが、2群を考えております。①群は、当院で分娩の開始時に「私は下から頑張るぞ」となった妊婦さんで、身長150cm未満の方を対象として、今から先の2年間で集めようと思っています。②群目は、過去の2003年から2012年3月までの9年間で、分娩前にグースマン法でのX線撮影をされていて、かつ経膣分娩を望んだ身長150cm未満の妊婦さんです。この2群に該当するのが11例あります。
 「[4]方法」なんですが、これから集めようとしている方については、身長150cm未満の方は全例、妊娠36週以降にレントゲンを1枚、撮らせていただいて、骨盤の最短前後経を算出します。妊娠中の体重増加については、妊娠して最初に来られた時に「妊娠前は何kgでしたか」と聞いて答えられた体重と、最終の妊婦健診での体重との差を算出します。児頭大横径は、分娩前の最後の妊婦健診なので37~38週ぐらいになる方が多いと思いますが、その時のエコーでの測定値を用います。分娩歴は、経膣分娩の回数のみを数えます。初回の方はもちろん0ですし、前回のお産が帝王切開という方も0と数えます。過去9年間の対象②に該当する場合は、上記と準じてカルテから同じようにデータを集めます。以上で得られたデータを解析して、どの要素がどのくらい影響を与えるのかを出していきたいと思います。
 「[5]その他」の検査費用ですが、グースマン法の撮影費用は児頭骨盤不均衡の疑いがあれば保険が通り、身長150cm未満の方なら充分にその疑いありますので、保険診療として患者さんに負担していただきます。これはよけいな検査というわけではないので、そんなに問題にはならないと考えています。目標症例数は当院が31例で、他の施設のご協力が得られれば、もう少し増やしていきたいと思っています。
 P5は患者さんへお渡しする説明書ですが、これには2つの内容を入れ込んだつもりです。1つは「これからレントゲンをします。これは必要な検査です。これによって分娩の経過を予測します」という内容で、後半は「その結果を私達の研究に使わせてください」という内容です。読み上げますと、[身長150cm未満の女性の妊娠では、骨盤が比較的狭い可能性があり、赤ちゃんの頭が産道の広さに対して大きめであった場合、児頭骨盤不均衡(CPD)という状態になり、自然のお産が難しくなります。予定日超過や、お産に時間がかかり過ぎる遷延分娩の原因となり、緊急帝王切開となる場合もあります]。[そのため、CPDが予測される場合に、当院では分娩の前に骨盤部位のレントゲンを撮影し、経膣分娩が可能かどうかをある程度評価しています。レントゲン撮影の被曝量は僅かであり、赤ちゃんへの影響はほぼありません]。[検査をして、明らかにCPDを疑う場合には選択的帝王切開をお勧めする場合があります。また、レントゲンで経膣分娩が可能と判断されても、分娩経過中に赤ちゃんの状態の悪化や遷延分娩があれば、緊急帝王切開となる場合もあります]。[また当院では、身長150cm未満の女性の妊娠経過についての臨床研究を行っています。お母さんの身長、妊娠分娩歴、骨盤の広さ、妊娠中の体重増加、赤ちゃんの大きさなどを基にして分娩形式を予測するものです。本研究への参加に同意していただける場合には、検査結果を研究に使用させていただきます。お母さんや赤ちゃんが特定される個人情報(氏名・出産日等)についてはこの研究では扱いません。したがって、外部で研究結果のまとめを発表する時も、個人情報は一切報告されません]。[なお、検査結果を研究に使用することに同意されない場合でも、不利益は一切ありません。また、一度同意されても、いつでも自由に撤回することができます。不明な点がありましたらお問い合わせ下さい]ということで、一応、サインをいただきます。このような感じで進めたいと思っていますので、ご検討をよろしくお願いします。

 小原 はい、ありがとうございました。今、非常に分かりやすく説明していただきましたが、これまでここで検討したことのない事例ですので、改めて議論を深めていきたいと思います。まず、幾つか基本的なことをお聞きしたいのですが、通常、妊婦さんの身長は測るのですか。

 山西 身長は自己申告です。

 小原 150cm未満の方というのは、全体の何割ぐらいになるのですか。

 山西 パーセントは出していませんが、少なくて、過去9年間でちょうど100例ありましたので、年間で10人余りぐらいの背の低い方が当院で分娩されています。

 小原 そして、通常の分娩が難しい場合にレントゲンを撮影するというのは、通常に行われているのですか。

 山西 通常ですね。普通の病院では、明らかに低かったら、はなから「無理です」みたいな感じで撮らなかったり、「前回が帝王切開で、今回も最初から帝王切開をします」という方なら、あえて撮ることをしなかったり、赤ちゃんの大きさによって、赤ちゃんが大きいと背が高い方でも撮ることはあるし、逆に背の低い方でも撮らないこともあるというように、撮るか撮らないかも医師の裁量によるその場の判断で、全例は撮っていないです。

 小原 ボーダーに掛かる場合、ハッキリさせるために撮ることを勧めるのですね。

 山西 そうですね、迷った場合に「念のために撮っておきましょうか」と勧めて、それを妊婦健診の時に見て、帝王切開にするかを考える場合もありますし、撮っておいた上で、これを参考にしながらお産の進み具合を見て、いつ帝王切開に切り換えるかを考えることもあります。ただ、病院によっては「何cm以下は全員撮る」とされているところもあるみたいです。

 小原 かなり医師の裁量によるところが多いので、例えば年によって違いがあったりすると思うのですけど、1年間にレントゲンを撮る方は何人ぐらいおられますか。

 山西 過去9年間の100人で撮っているのは11人です。ただ、もっと身長の高い方でも何例かはあると思いますので、もうちょっとは多いかと思います。

 原 150cmという線引きが、何かガイドライン的にあるのですか。

 山西 あります。150cm未満を低身長に入る区分にしてあります。で、これまでに同じような研究がないかを見た時に、150cm未満を一括りにされてていて、それより上か下かでリスクが何%というような研究がありました。ただ、150cm未満の方でも、149cmだとウチではだいたい産めているのですけど、142cmではかなり厳しいとか、身長ももっと細かく分けたら、違いが出てくるのではないかと思っていまして、今回は細かく分けて出してみようと思います。

 原 150cm以上の人でも、子供の頭との関係で帝王切開でやる場合があるわけでしょ。それでも、研究的には150cmまでに絞っておく必要があるのですか。

 山西 それも考えたのですけど、150cm以上の人でレントゲンを撮ろうとなると、全例を撮る必要があるらしいのです。150cm以上の人で産めそうでない人だけを選んで撮っても、産めそうとして判断して撮らなかった人のことを考えないと、150cm以上の人のデータとして実際には使えず、かといって、全例を撮るとかなりの数になりますし、誰もCPDを疑っていない人まで撮るのは、被曝の問題も多少なりともあるので、今回は150cm未満ということにしました。

 原 サンプリングにバイアスの問題があるということですね。

 山西 そうです。で、この研究で何か使えるような結果が出てきた場合、それを150cm以上の人にも応用して使えたらと思いますけど、今回は150cm未満でやってみます。

 原 150cm未満で児頭のサイズを見ればいけそうだと思ったけど、緊急帝王切開になるというのは、体重とかを書いておられますけど、メカニズム的にはどういうことを想定されているのですか。

 山西 頭の形を測った時点でも誤差があるということと、実際には、骨盤は骨と骨が重なり合っていて、赤ちゃんの頭は上手い具合に骨盤の形に合わせながら産道を通過するという仕組みがあるのですが、お産が始まる前の状態で測ったCPDと、お産の時に変えてきた形というのは多分、違うと思うのですね。また、赤ちゃんが骨盤の上を通る時は横向きで、少し下がったら斜めになって、だんだん真っ直ぐになるというように回旋しながら下りて、その道筋でないと通れないのですけど、回旋を間違って下りてくる赤ちゃんですと、どんなに余裕があっても通過できないということになりますので、そういう諸々のことがあって、お産の前の判断と実際のお産の進行が違ってくることは結構あります。

 富田 一般的に体重増加が多ければリスクは高くなりますが、この場合はどこに影響するのですか。

 山西 実際には骨産道だけではなく、肉も含めた軟らかい軟産道というのがありますので、体重が増えて産道の肉が厚くなれば、それだけ狭くなるのではないかなと思いますので、体重増加も関係あるのではないかなと思って、ここでは要素に加えました。

 平田 この要素に、非妊時のBMIを参考にはしないのですか。例えば90kgの人が95kgに増えても、体重増加は5kgだけですけど、体重増加だけで肥満度が分かるわけではないので。

 山西 そうですね。最終的なBMIか妊娠前のBMIか、できればどちらかは出したいと思っています。

 富田 1つの因子だけでは分かりにくいので、幾つも取りあげて相関を見てみようということですよね。

 小原 変数というかインデックスが複数あって、最終的な目標は分娩形式を予測することですが、仮にデータが集まってきた結果、将来「こういうデータを持っている人は経膣分娩」とか「~帝王切開」とかを、ある程度の確立をもって推測できるようにすることが目的なのですね。そのデータが充分にあれば、それを使って「あなたはこういうデータが出ているので、こちらでいきましょう」というようなアドバイスをするための研究と考えて良いですか。

 山西 はい、そうです。

 小原 今まであれば例えばボーダー上の人に対してはレントゲン撮影をしていますけど、これからもレントゲン撮影は必要なのか、あるいは、データが集まることによって必要なくなるのか、そのあたりはどうですか。

 山西 「下から挑戦しますか、帝王切開にしますか」という話をするのは、ご本人にとってはとても大きなことなので、ご本人が納得できる形で話をすることが大事ですし、パッと見れば分かるレントゲンはかなり強い証拠になり、説明の材料としては伝えやすいので、撮ることになるかなと思っています。

 小原 この研究とは直接は関係ないですが、レントゲンを撮ることに対して抵抗感のある妊婦さんもいますよね。特に妊娠前には「妊娠の可能性のある方はレントゲンを撮らないでください」と繰り返し言われますが、「ある程度の週数を超えれば撮っても良いのか」という不安も、多かれ少なかれ恐らく持っていると思うのですよ。そのあたりのことは、説明・同意書では「影響はほぼありません」と表現されていますけど、なかなか0とは言えないわけですから、そのあたりの心配を表明された場合、それに対する説明は現状、どういうふうになされているのでしょうか。

 山西 私は経験も少ないですが、「グースマンを撮ってみませんか」と勧めた妊婦さんで、不安がられた方はいません。初期は心配される方が多いのですけど、お腹も大きくなってくる時期になると、「この子は無事に産まれるのかな」という不安の方が大きくなってくるのかなと思うのですけども、「赤ちゃんがちゃんと出てこれるのか、ストレスが大きそうなのか、事前に一度評価したい」というような話し方をすると、あまり拒否感なく「じゃぁお願いします」と言われます。「内診も嫌」だという外国の人とか、「全ての検査が嫌」みたいな人には無理強いしないですし、この紙を渡して「やっぱりちょっと」と言わはる方に無理強いはせず、あっさり「いいよ」と言ってくださる方だけにしようかなと思いますが、9割9分はいけるのではないかと思っています。

 吉中 年間で300ぐらいの分娩を扱う中で、分娩前にグースマン法で骨盤計測を行って経膣分娩に望んだ150cm未満の人は、9年間で11例だったということですから僅かなんですけど、その理由はグースマン法ではなく、経膣分娩に望んだ人が少ないと理解したらよろしいですか。

 山西 どちらもですね。この100人の中には、逆児などで初めから帝王切開を選択された方もいますし、経膣分娩を選択されても撮らなかった人も結構おられました。

 吉中 だいたい等しく両方のセレクションがかかって、この数になっているということですね。

 山西 そうです。なので、150cm未満の方を機械的に撮るようにした場合は、年間20人ぐらいはありますが、その内、何人が経膣分娩に挑戦されるかは分からないですけども。

 吉中 それから、「できれば他所の施設でも」みたいなことを考えているという…、

 山西 尼崎とか、耳原とか…、協力していただけたらなと思っていますけど、まだ決まっていないです。この会議の反応を見てからと…。

 小原 分娩形式が事前にある程度の確信を持って予測できると、病院側も妊婦さんも楽になるということで、現場ではかなりニーズが高いと考えていいのですか。

 山西 そういうこともないかなと思います。と言うのは、何を言われても「やっぱり私は陣痛が来るのを待って、下から産みたい」という気持ちの方がたくさんいらっしゃって、そういう方はどんな検査をしても、確立や根拠のあることを言ったとしても、やっぱり下から挑戦したいと思われるのです。ただ、こちらの心づもりができればというのはあります。「スルッといくだろう」と思って診ているのと、「きっと帝王切開に切り換えになるだろう」と思って診ているのでは、判断のタイミングも多少は変わってくると思います。

 小原 心理的な負担がちょっと軽くなるということですね。で、これには複数のインデックスがあって、結果としての分娩形式というのは、複数の原因が複合したものですよね。ですから、例えば身長とか骨盤の広さとか体重増加とか赤ちゃんの大きさとか、どれが決定的な影響を与えたのかというのを、どうやって判断するのかなというふうに、素人考えで思うのです。どれもデータの出方が違うわけですが、そういうのを集めることによって、本当に分娩形式が推測できるような指標みたいなものが、そこから出てくるのですかね。

 山西 ある程度の数が集まれば、解析してくれるソフトに頼ろうと思うのですけど、症例が31ではだいぶ少ないと思うので、実際にどれだけの結果を得られるのかは、不安が残るところではあります。

 原 形式的には、これからの分は臨床研究として一通り撮影してやりますが、過去の分は疫学研究みたいな感じでデータだけを見るという話ですね。

 勝村 遅れて来てなんですけど…。これは結局、身長と骨盤の問題ではないのかと思うのですけど、150cmという身長にはどういう意味合いがあるのですか。一般に150cmと言われているからですか。

 山西 どこかで線を区切らなければいけないので…、

 勝村 骨盤だけを指標にすることと、どんな違いがあるのかということなんですけど。

 山西 骨盤だけを指標にしようと思うと、全妊婦さんの骨盤をまず撮って、それで骨盤の広い人、狭い人というように区分けしないといけなくなりますよね。身長なら、全妊婦さんを測ることは簡単ですけども、全妊婦さんの骨盤のレントゲンを撮るのは、お金もかかるし、負担もありますので、まず身長で区分けして、150cm未満のグループを作って、その中で骨盤の評価をしようというふうにしています。身長と骨盤は単純に比率の問題というか、身長が低ければ骨盤もそれなりに狭いだろうという感じで、骨盤の狭い群として抽出できるだろうと思いますので、便宜的なグループ分けのようですけど、まず150cm未満。

 勝村 疫学的調査をする時にも150cm以上はやらないのですね。

 山西 実際の臨床ではCPDを疑って撮る場合もありますが、研究サンプルとして扱わないでおこうと思います。

 勝村 身長と骨盤の相関があるかどうかハッキリしているのですか。でも、サンプルを絞る方が良いのですね。

 山西 今まで誰もやっていないことではなくて、150cm未満を低身長として狭骨盤によるCPDのリスクとするというのは、産科的には一般的なことなので…、

 勝村 その時に150cm以上と身長毎に比較するという…、

 山西 他の研究ではそれもやられています。で、今回は150cm未満に絞ってやってみようとしています。

 勝村 レントゲンの撮影をするというのは、スタンダードなんですか。

 山西 スタンダードですね。きっちりとやられるところは全例を撮っておられると思います。

 勝村 CPDの疑いがあろうがなかろうが…?

 山西 そこまでは分からないですけど、ある身長以下は全部を撮るようにしている病院があると聞いています。

 勝村 身長が低くなければ普通は撮らないのですね。ここでは…?

 山西 ここでは身長が低くても撮らないことは多いです。担当した医師が疑えば撮るというような感じです。

 勝村 僕もレントゲンが気になるのですが、大人でも気になるではないですか。「気にしなくても良いよ」と言ってしまっていますが、週数が少ない子もあり得ますね。

 山西 今回は36週以降にしていますので、数週が少ない子はないです。逆に言ったら、早産で産まれてくる子だったら、その週数に相当する子で、産まれてレントゲンを撮る子はいますし、必要があればということです。

 広瀬 小柄なお母さんのお腹に、普通の母体の方と同じ大きさの頭の赤ちゃんがいるということで、分娩がややこしくなるということですね。150cm未満で普通の人以上の骨盤がある人はあまりないですからね。

 山西 でも、時々いはります。ウチの病院は何人かフィリピンの方がお産されたのですけど、小さくてもドンとしたお尻の方もおられますし、一概には言えないです。

 勝村 僕の母親は148cmで、2人を産んでいますけど、昔は150cm未満の人がかなりのパーセンテージでしょう。

 岩橋 最近は小柄な人も少ないけど、昔に比べたら栄養状態も良くなったので、子供の発育も良くなっているというのはないですか。

 吉中 子供はむしろ昔よりも小さいよね。

 原 小さい人の子供は小さいということではないということですね。お母さんの身長とはあまり関係ない?

 山西 全く関係がないわけじゃないですけども、そんなにきっちり当てはまるわけではないです。小さな方でも大きな赤ちゃんを持っておられる方もいますし、3000gちょっとぐらいの平均的な赤ちゃんでも結果的には下から出なかったということもあります。

 勝村 宇宙線による放射線量が多いということか何か分からないけど、産まれたばかりの子は飛行機に乗せるなと言われているではないですか。何かそういう類のことを言っている専門家はいないのですか。

 富田 飛行機の件は、飛行機に乗ると気圧が急に変わりますが、赤ん坊は耳管が充分に発達していなくて適応できないということで、「1ヵ月ぐらい経てば大丈夫でしょうけど、ダメで機嫌が悪くなるようだったら、ミルクかお白湯を飲ませれば少しましになる」という話題にはなっていましたけど、放射線の話は初めて聞きました。

 原 撮影は、通常の1回の撮影なんでしょ。

 山西 それは通常と同じです。

 富田 レントゲン撮影は直接法ですよね。

 勝村 「妊娠中はレントゲンを撮ってはいけない」と言われるのは、いつまでなんですか。

 山西 「初期は避ける」とはなっていますけど、絶対に撮れないということはなくて、どうしても必要であれば、胸のレントゲンなんかは、距離が離れているので撮ることはありますね。器官形成期は避けるということで言うと、ごく初期の妊娠に気付くか気付かないぐらいのあたりです。

 勝村 安定期ぐらいに入ったらOKみたいな感じなんですか。

 山西 初期ほどは問題がないと思います。

 小原 これは難しいですけど、僕もここが引っ掛かるのですね。結局、福島第1原発以降ですけど、何をもって安全かどうかというのは、専門家でも意見が違うし、実証的なデータがあるわけではないので、できれば避けた方が良いと思うのですね。ただ、安全に分娩するためには必要なのでやっているというのも、やむを得ないと思いますけど、データが集まって、やらなくて済むようになればいちばん良いなとは思うのです。でも実際には、そうはならないということですね。最後にきちんと自信を持って判断するためには、これからもレントゲンを撮り続けていかざるを得ないということですよね。難しいですね。

 勝村 福島原発の頃から、レントゲンの被曝量の話をしていて、「間接法の方が直接法より被曝量が少ない」とか「新しいのと古いのではどのくらい違うのか」ということで、レントゲンを作っている業者のカタログを見たのですけど、被曝量を書いているカタログはなかったのですよ。「だから病院も、時間あたりの被曝量は幾らですと説明できないのか」となったのですけど、放射線に神経質になると、「できれば病院も、レントゲンを撮る時に、予想される被曝量の概ねの数値を示していくべきではないかな」という話をしていたのですよ。そういうことからすると、原発の近くで子供が遊んでも大丈夫だという専門家もおるけど、小さな子供への被曝の影響の研究がもっと進んでも良いのではないかと、この件とは関係なしに思っていたのですね。

 吉中 表示するといっても、なかなかパシッとはいかないのですけど、ウチの放射線業務委員会では、被曝低減プロジェクトみたいなことで、できるだけ無用な被曝をなくすという努力が必要かなと思っているのですね。で、CTなんかの設備では、できるだけ被曝量を抑えるようなソフトを組み込んだものに替わってきていますから、かなり意識はされています。2005年頃にランセットで「日本は放射線天国みたいに被曝量が多い」と出されたのですが、「肺癌検診とか色々するのですけど、マスで見ると被曝による発癌という要素も無視できないのではないか」という指摘なんですね。それに対する反論が出されるという経緯もあって、結論が着いていません。ただ、取りあえず被曝低減をやらないといけないなということで、相談をしたいと思っていた矢先でした。ただ我々は、しっかり撮らないとよく分からないから撮るということですが…。

 勝村 ちょっと話がそれるかも知れないけど、海外から原発の被曝量のことを指摘されたのに対して、日本の専門家は「CTと比べたら全然大丈夫なんだ」と言っていて、逆に「CTって相当被曝量が高いのか」と普通は思ってしまうけど、医療被曝とかは分かりにくいですよね。

 神田 今回は全例ではなく、同意されない方は撮らないわけだし、基本的には医療上必要と思う方に、これまで勧めてきたことをやっているだけなので、そのへんはクリアされるかなと思うのですが、今は一般の方も被曝量の単位は耳慣れてきているので、「…被曝量も僅かであり(何ミリシーベルト)」と具体的に記入されても良いかなと思います。サンプル数が少ないので、そこまで出ないかも知れないけど、最終的には妊婦さんの身長を140cm前半とか、後半とか、真ん中ぐらいと細分化したり、妊娠中の体重増加と非妊時のBMIで群分けしたり、エコー時の児頭大横径で群分けしたりして、それでスコア化して、「あなたはこことことに当てはまり、合計何点だからこれくらいのリスクになりますね」というのが説明できて、それで本人が納得されれば、場合によっては不必要な被曝が避けれるというような使い方もできますので、意味ある臨床研究かなとは思うのですね。

 小原 私が期待するのもそういう使い方で、それができるのであれば、すごく意味があると思うのですよ。

 神田 そのためには、ここでちょっと修整していただいて、他の施設にもぜひ参加を願って、サンプル数を増やせば良いのではないかなと思います。

 小原 今の時点では何も分からないですけど、幾つかのインデックスで明らかな境界線があって、そこに引っ掛かっている人は、レントゲンを改めて撮らなくても帝王切開をやってもらわざるを得ないというふうになれば、かなり大きな進歩だと思うのですね。今の時点で「この結果の如何に関わらず、レントゲンを撮り続けます」と結論付けるのではなく、これによってレントゲン件数を減らすことができれば、有意義かなという気がします。

 勝村 この研究がなかってもレントゲンを撮っていたと思う人に撮るということに対して、僕らは口出ししないですけど、この研究がなかったら撮らなかったのにこの研究のために撮るということは、できれば避けて欲しいということで、レントゲンが気になったのですけど。

 小原 他の議事も控えていますので、特に大きな問題点がなければ、ご説明いただいた点を承認していただいて、研究を進めていただければと思いますが、よろしいでしょうか。原さん。

 原 結構です。ただ、被曝量の目安を示せるのだったら…。まぁ、直接撮影だったら幾らという目安はあると思いますから、出るとは思いますけどね。

 勝村 「似通っていても全然違う」と言っているくせに、メーカーはカタログに載せていない。「新しいタイプはやっぱり少ない」と言っているけど、カタログには載っていない。

 原 カタログの見る部分の問題だと思いますけど。医療機器なんだから、国の承認だってあるでしょう。

 吉中 被曝量は、管球の電圧の部分の問題と、被写体の大きさとかに関係して反応するようになっていますから、大きい人にはたくさん被曝を与えないとしっかりと画像が撮れないという、そういう関係なんですね。計測してすぐに出るかは分からないですけど、データはあります。

 山西 では、加えたいと思います。

 小原 では、色々と意見が出ましたので、そういうことにご留意いただきながら進めていただきたいと思います。ありがとうございました。
 ただ、次にいく前に、迅速審査について1つだけご意見をいただきたいことがあります。迅速審査は、先ほど富田先生にご報告いただきましたように、件数が比較的多いのですね。これは通常、内部委員と外部委員のそれぞれに私がお願いするのですが、だいたい決まった人でグルグルと回ってしまうので、負担が特定の人に寄ってしまっているという現状があり、お願いしてすぐにまた別のものをお願いするということがこれまでもありましたので、そのことを若干心配しています。件数が少なければ、今までのやり方で特に問題はないのですけども、件数が多いのでどうしたら良いかなということなんですね。今は内部委員は3人ぐらいで回しているのですけど、病院の側からは、倫理委員会に属していない先生にも加わっていただいて、一人一人の負担をもうちょっと軽減分散してはどうかというご提案も上がっていますので、そのあたりは検討の余地があるのかないのか、そこのところをご議論いただきたいのですけども、今日は少しだけ意見をいただくだけで、今日に決着を必ずしもする必要はありません。原さん、どう思いますか。

 原 国のガイドラインでは、迅速審査をする場合に委員以外はありとなっているのでしょうか。

 富田 倫理委員でないといけないという指定は特になく、「倫理委員会が指定する」となっています。

 小原 倫理委員会が指定した特定の人ということで、要するに委嘱さえしておけば良いのですか。

 富田 はい。ただ、ここで決めていただいたウチの内規では「倫理委員の中から」と、ちょっと制限がかかっています。また、できれば審査を経験する人をもう少し増やしたいなという意味合いもあって、何人か「どういう専門で卒業何年目で」というふうに候補者をリストアップして、承認していただければありがたいと思います。

 小原 内規上の現状は倫理委員会の委員でないといけないわけですね。原さんが言っているのは…、

 原 いや、ちょっと国の「臨床研究の倫理指針」の具体的な文言を確認したいということです。細則ですかね。

 富田 持って来ましょうか。

 小原 では、それは置いといて、それも視野に入れながら…、

 原 それを見て、抵触しないかどうかを確認しておかないと…。

 小原 そこは確認する必要はありますね。

 原 経験という意味では、迅速審査の書類上の審査でもって経験をスタートするというのは、あまり望ましくないなという印象を持ちますけどね。

 富田 しかし、いろんな形で経験を積んでいってもらいたいというのがあるのですけど。

 原 でも、ちょっとディスカッションして「倫理審査ってこういう観点で考えるのだな」ということを、やらないで始めるというのは、私はちょっと引っ掛かりますね。

 小原 例えばこういう場で議論の蓄積を加えた上で…、

 原 例えばオブザーバーとして参加するとかですね。観点も、内部委員の方はどちらかと言うと、医学的なサイエンスの観点は自信があると思うのですけど…。

 広瀬 内規に「迅速の時は、その問題について専門的な人が特別にその時だけ入っても良い」というのが出ていたのと違ったのかな。

 小原 なるほど、倫理委員会のメンバーだけではカバーしきれない場合に、それ以外の人に加わってもらうのですね。

 富田 例えば私も今、学会の投稿のレビューをしているのですけども、レビュアーというのは、公に登録している場合もありますけど、私を含めて一般的には登録されていない場合が多いのですよ。だけど、しょっちゅう回ってきます。原さんがおっしゃるように心配もありますけど、引き込む方が良いのかなという気がしました。

 小原 人材を育てるという側面は非常に大事だと思うのですよ。ただ、この倫理委員会の役割とか議論の質なんかを知ってもらった上で、関わってもらった方がいいかなという気は確かにするのですね。また、内部委員に関しては増員の余地というのはあると思いますし、国の指針と摺り合わせて議論を続けていきたいのですが、外部委員の方はなかなか大変なんですよ。今までのところは的確な議論をしてくださっているのですが…。

 吉中 位田先生の話では、京大の倫理委員会なんかだと、倫理委員は限られますけど、膨大な数が来るので分科会みたいにして分散させて、しかも分散させたものを委員の裁量でいろんな人にチェックしてもらうというパターンになっていて、やや不鮮明な部分が入っているというのが実態としてはあるので、ちゃんと定めを決めて広げるということをしていただいた方が良いと思います。

 小原 そうです。やはり長期的に、かつ負担を分散させるためには、そうせざるを得ないと思うのですよ。外部委員からの視点から言うと、最初、私のとところにいろんな資料がドサッと来るのですね。一応、それなりに目は通すのですけど、今回のいろんな資料と同じで、説明を聞くと内容やポイントも見えてくるのですけど、資料だけがPDFファイルで付いてくるだけでは、全て医学的な用語ですから、なかなか辛どいのですね。ですから、外部委員であってもきちんと関わっていくためには、書類だけではなくて、ここでやっているような簡単な説明があるだけで、関わりやすさが変わってくると思うのですね。実際に臨床研究を始めたりする時には、そこに関わる人達がきちんと勉強できるようなビデオを作ったりもしますよね。できればオンラインが良いと思いますが、そういう簡単な説明が付いていると良いかなと思ったりもするのですけど。

 原 国の指針が見つかりました。「臨床研究に関する倫理指針」だと、「倫理審査委員会は軽微な事項の審査について、委員長が指名する委員による迅速審査に付すこと、その他必要な事項を定める」としています。

 小原 ということは、「倫理委員会の中で」ということではなくて、「倫理委員会以外の外部の人に委嘱することができる」ということですね。

 原 そう読めるものかどうかは、私には分からないですね。

 岩橋 委員に限定されているのではないかな。

 原 「…でなくてはいけない」とは書いていないけど、限定されるように読めるような気がします。法律家の方に読んでもらう方が良いかも知れないけど。

 岩橋 今、読み上げられたものからいくと、委嘱そのものは委員のみということで、委員長が決められるというのは「その他」のことみたいですね。

 富田 これは「委員長が指名する委員」ではないですか。

 原 指名する委員というのは、倫理委員ですよ。

 富田 付議不要の件では「指名する者」なんですね。これはお任せするしかないらしいですね。ご免なさい。趣旨はそういうことだったのですけど。

 小原 国の指針と反するようなことであってはいけないので、検討した上で、次回、問題があるかどうかの確認して、次のステップに進むことができればと思います。位田先生がいればいちばん良いのですが。

 原 いや、解釈に関しては、厚労省に問い合わせればよいのですよ。

 小原 では、原さんがやってくださると…。

 原 あぁ、やっておきます。

 小原 助かります。ここは非常に大事ですので、ここをスキップして次にはいけませんので、原さんに問い合わせていただいて、次回にその結果の報告をいただいて…、

 原 それによると思います。ただ、まずメール審査から始めて良いのかというのは、また別の話で、委員以外でいけるのだったら、例えば何度か出てもらうとか、そういうやり方はやっぱり…

 富田 そういうやり方は、またやれば良いと思うのですね、

 小原 そうです。それは良いと思うのですよ。ただ、形式要件をクリアできるかどうかが大事ですので、そこをご確認いただいた上で、次回にそのあたりをもう一度整理したいと思いますので、よろしくお願いします。
 それでは(2)にいきたいと思います。[重篤な有害事象発生時の本院対応手順]の案が事前資料Cに入っていますので、これについても富田先生からご説明いただきたいと思います。

 

議事(2) 「重篤な有害事象発生時の本院対応手順(案)」

 富田 [重篤な有害事象発生時の本院対応手順(案)]としていますが、本来は研究機関の施設長が手順を決めておくことになっているのですが、書いたものがこれまでなかったものですから…。ここに書かれてある項目は、指針に書いてあるものを中心にまとめたものです。
 [1.有害事象の定義]は、[好ましくない、あるいは意図しない徴候、症状、または疾病を有害事象とする]というのが定義ですね。2.は[有害事象の評価]で、どういうものを有害事象とするかというのは、インターナショナルに決まっていまして、こういうのがあるということをウチのスタッフも知らない方が多いのかも知れませんが、知ってもらう必要のあるものです。その中で[3.重篤な有害事象とは]というのも定義がありまして、[有害事象のうち、次のようなものを重篤な有害事象とみなす]ということで、[a.死に至るもの][b.生命を脅かすもの][c.治療の為入院または入院期間の延長が必要となるもの][d.永続的または顕著な障害・機能不全に陥るもの][e.先天異常を来すもの]、これらは指針に書いてあるもので、だいたいこれが使われています。
 [4.有害事象への対応]からが当院での対応ということで、治療担当医師というのは、いわば主治医に相当する患者さんにいちばん近い医師ですが、[治療担当医師は、臨床試験の治療中および治療後に有害事象が認められた場合は適切な処置を行う。特に重篤と思われる有害事象については、治療担当医師は使用薬剤との因果関係に関わらず]…ここが大事なことかと思いますけども、[直ちに研究責任医師、病院長および関連医師に報告する]。研究責任医師が主治医ではないこともありますので、研究責任医師に報告することと、院長に連絡するということです。研究責任医師は実質的な研究の担当者になりますけど、[研究責任医師は、重篤と思われる有害事象に対して必要な対応を指示し、共同研究の場合には、他の臨床研究機関の研究責任医師に対して報告と注意喚起を行う]。だいたい多くの施設との共同研究がこの頃は主流になってきていますけども、そういうところにすぐに情報を流すというのが非常に大事なことになっていますので、それをキチッとやりなさいということになります。
 それから5.の[病院長の責任]としては、[病院長は速やかに必要な対応を行うとともに、当該有害事象および不具合等について臨床研究部、医療安全委員会および倫理委員会に報告し]…ここも、どこに報告するかが決まっていなかったものですから、一応、関係するところに連絡をしてもらって、[その意見を聞き、本院での必要な措置を講じなければならない]ということです。あと、[重篤な有害事象が本院で発生した場合で厚生労働大臣へ報告する場合には、「臨床研究に関する倫理指針」に掲載されている報告用Fax様式を使用する]ということです。
 これは、だいたい他所でも使われているようなシステムを、本院の状況に合わせて初めて作ったものです。ご審議いただければと思います。

 原 何のためにこの手順を拵えようというのですか。

 富田 ウチでのあらゆる臨床研究に関して、重篤な有害事象が起こった場合の対処の仕方です。

 原 臨床研究と治験もですね。

 吉中 治験は別に決まっていますから、良いのですけど。

 富田 いずれにせよ、治験は別扱いということです。

 原 有害事象ということは、臨床研究という概念の場合だけですかね。まぁ遺伝子研究にはあまりないから、どうということはないね。

 富田 指針にも「研究所の施設長がこういう手順を決めなさい」ということを定めているのと、実は、臨床研究28番の「大腸癌化学療法における制吐療法を検討するための臨床第Ⅱ相試験」というのがあって、この計画書に重篤な有害事象の時の対処方法について書いてあるのですけども、元々、京大病院の方が研究責任者として作られ、「対処の仕方は京大病院の手順による」と書いてあるのですけど、京大病院の手順はちょっと合わないことがありますので、これを機にウチの病院としても文書にしておきたいということです。もう一つは、実際に臨床試験を手伝ってもらっている方に、「こういうものがあるよ」「こういう時にはこうしてください」ということを具体的なイメージとして持ってもらう必要があるだろうということです。

 原 臨床研究ということを対象に考えるとすれば、1.の[試験薬の投与期間中]というのは、試験薬とは限らないだろうということがありますね。

 富田 そうですね、広い意味では機器もあるかも知れません。

 原 機械とか、薬ではない治療法とか、診断法とか…。

 小原 最初の[試験薬の投与期間中に起きた]というのは、かなり狭い縛りになっていると思うのですけど、ここを例えば「臨床研究において起きた」とすると、逆に広過ぎてダメなんですか。

 富田 いや、それは別に構わないです。もう少し範囲を…、

 小原 試験薬のことも含めて、その他の可能性を排除しないような形にしておいた方が良いと思いますね。

 原 [期間]というのは研究期間なんだろうかな。ケースによりますよね。

 勝村 全社連の医療機関で、臨床試験だけではなくて全ての医療事故を含む「有害事象の対応指針」というタイトルの指針を作っている病院があり、その冊子が全社連で配られていていて、東京で報道されたりしているので、タイトル自体を「臨床試験…」と限定した方が良い。また、その病院では、そのバージョンアップを検討しているのですが、「患者や家族に取りあえずどう説明するかという当初の対応、どう手順の中に入れるか」ということをいちばん議論しているので、患者や家族への説明みたいな形にも触れておいた方が…。

 富田 としますと、[有害事象への対応]の最初のところで、[処置]だけではなく、「対象者への適切な説明と処置を行う」というように、「説明」を入れましょう。

 原 「対象者」? 「被験者」では…。

 富田 研究では被験者ですよね。「被験者への適切な説明と処置を行う」。

 小原 この有害事象が発生した場合は、厚生労働大臣への報告義務というのがあるのですか。

 富田 「義務」という書き方はしていないと思いますが、「有害な事象は報告しましょう」でしたか…。

 原 「…しなければならない」はあります。「臨床研究に関連する予期しない重篤な有害事象および不具合等が発生した場合には、状況の対応・結果を公表し」…「公表し」も出てきますね、「厚生労働大臣またはその委託を受けた者に逐次、報告しなければならない」…多分これは医薬品機構とかでしょうけど。

 富田 もちろん、厚労省の指針は生きているとして、取りあえず院内バージョンで「何をするか」ということを具体的に書いて、で、ちょっとシンプルに…。だから、ややこしいので、むしろ最後の一文は取っても良いのですがね。

 小原 これが入っていると、報告したりしなかったりというのが、こちらの勝手気ままにできるみたいなニュアンスを含んでしまいますので…、

 富田 厚労省の指針は別扱いで取っておいて、これは消した方が良いですね。

 原 これは長の仕事でしょ。長の仕事を書くとすれば、指針には「公表して厚労省に報告しなければいけません」というように、「公表もしろ」と書いてありますから…、

 小原 そこまで具体的に書くか、[本院での必要な措置を講じなければならない]という中にそれも読み込むかということですね。

 原 そういう意味では、倫理指針の中に「倫理委員会への報告」も入っているのですけどね。

 小原 それも[必要な措置]だと思うのですよ。ですから、そういう細々なものも含めて[必要な措置]という文言として理解しておけば、最後の2行は要らないと思いますね。と言うのは、上の方が比較的に抽象度の高いことを書いていて、最後は[報告用Fax様式を使用する]と微細に書いて…、

 勝村 ただね、これは[対応手順]というタイトルのマニュアルと言うのだったら、1.~3.が前書きで、4.と5.が本文ですよね。「マニュアル」と言いながら[必要な~]ということでは…。僕はより具体的に書いた方が良いのではないかなと思う。5.の3行目の[必要な措置]というのは、[意見を聞き~]だから良いけど、1行目の[速やかな対応]というのは「何々、何々等」と書き加えるぐらいの方が、[対応手順]という形では良いと思うし、4.も「まず病院長に報告する」とか、もう少し個条書きになっている方が良いのではないかなと思ったのですけど。

 富田 指針にも「分かりやすくシンプルなものを作りなさい」と書いてありますので、個条書き等にします。

 原 そうですね。[倫理委員会に報告]も入っているのなら、マニュアルとしては「公表」とか「厚労省への報告」も入れなあかんとは思いますね。

 小原 [本院での必要な措置を講じなければならない]というのは[病院長の責務]ですけども、「それが具体的に何かということを入れた方が良い」というのが原さんですね。

 原 そうですね。勝村さんがおっしゃったような「被験者サイド、亡くなっていたら家族への説明」ということも必要でしょうし、これは全体として「有害事象が発生した時に何をやるべきかということを整理しておきましょう」ということだから、院外に対してやるべきことも含めて整理しておいた方が、間違いがない。

 小原 これを見て、さらに厚労省の指針を見比べてというのは大変なので、これだけを見れば最低限のことはきちんと分かりますよという文書にすべきではないでしようか。

 富田 全部を書いてしまいますか。

 小原 ただ、簡潔は大事なので、厚労省の指針ほど微に入り細に入りということは必要ないですけど。

 富田 アウトラインですけど、全部をまとめて一つの…、

 原 必要な措置という意味では、大きなものとしては研究の変更・中止ということも入ってきますけどね。

 富田 ただ、そこまで踏み込んで書き出すと、これはかなり…、

 原 いや、例示するとすれば「…など」という話だけですよ。

 富田 だから、必要な対応というのも、「院内で」というのが具体的にはどういうのが良いのか、まだちょっとイメージが分からないのですけどね。「連絡する部署だけ、要するに担当医・研究責任医師・病院長の3段階で、担当側は動きましょう、連絡を取り合いましょうということをハッキリさせたい」ということなんですね。「病院長の責務」というのが指針には書いてありますけど、どこまで書くかですよね。全部を書いておきましょうか。

 小原 ただ、手順なのでやはり、個条書きでも結構ですので、パッと見て分かるようにしておいた方が良いと思いますね。厚労省の指針との重なり具合も分かりましたので、次回までにもう一度、整理して、しかし複雑過ぎないように、だいたいA4用紙1枚に収まるぐらいの…、

 富田 情報を全部、収めるような方向でします。

 小原 それで、再提案していただけますか。

 原 4.の途中で[臨床試験]が出てきますが、[臨床研究]に統一していただいた方が…。

 富田 では、[臨床研究]に改めます。

 小原 それでは、今の場で出たご意見を反映した次のバージョンを、次回、ご提案いただければと思います。
 では、次は(3)番目で、当日資料に入っている「事例検討」に入っていきたいと思います。これについてご担当の方、ご説明いただきますか。

 

議事(3) 「事例検討」

※事例1例検討しました。

 小原 それでは、今もだいぶ議論になりましたが、次は(4)の「エホバの証人の信者の輸血拒否に関するガイドライン」で、事前資料Dをご覧いただいたら分かりますように、前々回まで扱ってきた案に基づいて、2つの案が出ていまして、だいぶ重複もあるのですけど、これについてご説明をいただいて、今後の進め方について議論をしたいと思います。よろしくお願いします。

 

議事(4) 「エホバの証人信者の輸血拒否に関するガイドライン」

 吉中 北村先生が委員を外れましたので、11月の議論を受けまして、ロジカルに見るとこのように整理できるということを試みたのが、P3~14の案です。前回の議論では、「現場の使うには非常に分かりにくい」という声がありましたので、そこを整理しようということで、私が作りました。前文とかは全然変えていません。
 P4の[2. 輸血実施判断の基本方針]では、分かりやすさということが念頭にあったので、患者さんの年齢で18歳以上の場合と15~18歳と15歳未満の3つに、単純に分けてみました。もう一つ考えましたのは、「基本原則はこうだ」ということを示した上で、例外で「違う場合にはこうですよ」という示し方をした方が分かりやすいという話も出たので、それに基づいて各項目を整理しています。
 1)は18歳以上で、これは[患者本人の意思を尊重して輸血実施の判断を行うことを原則とする]としましたが、ここは大きな異論はなかったと思います。チャートは簡単なものにしたのですけども、患者さんが輸血を希望する場合には同意書を得て輸血を行い、拒否される場合には免責証明書をいただいて無輸血治療を行うが、無輸血治療が困難な場合には、転院を勧告して、エホバの証人の医療機関連絡委員会に連絡して対処するということですが、これが基本原則だと思われます。で、[*ただし]というのがP5にあって、[現時点で患者が意思決定をできる状況にない場合]というのがオプションとして入ってくるということですね。ここでは、「その時点では意思決定ができないけども、事前指示書があるか、代理人もしくは保護者の方がおられるという場合」については基本原則に従っていいが、問題になるのは「事前指示書がなく、代理人もしくは保護者もいない場合」ですけども、エホバの証人であると分かっていることが前提ですので、この場合は「なるべく無輸血治療を貫くけども、最終的に必要であれば輸血を可とし、同意書は不要である」としました。
 これは前回の流れと基本的に変わっていないのですけども、実は今年の1月28日に老年医学会が、当日資料のP8にある「高齢者の終末期の医療およびケアに関する立場表明」を行って、これに基づいてガイドライン作りを進めるというふうにしてありますが、これを見ますと、ケアということを相当重視して打ち出していて、それは必要なことだと思ったのですね。そういう意味で、エホバの証人の方に基本的な趣旨とは違う形で輸血をした場合には、輸血後のケアを行うということを追加するのはどうかと、私は新しく考えたのですが、そのことでより充分な対応を示したいということです。
 2)は15~18歳未満で、これもロジカルには北村先生案と全く変わっていません。これも図示したような形に整理できるかなと思っています。それから、3)の15歳未満の場合も、ロジカルな点では変わっていないのですけども、図で示した方が分かりやすいかなと思って図示しました。
 その上でP8の[4) 注記]ですが、前回の議論の入口でグチャグチャとしたのは、③のところですね。「意思決定能力がある場合、ない場合」というのを最初の方で区別するようになっていたので、「では意思決定能力が元々あったのか、なかったのかをどう判定するのか」ということになっていったのですけども、意思決定能力については、この注記の中で[以下の2点を確認する]ということで、北村先生の案にあったものですけど、[現在、意思決定ができる状態にあるか]、[元来、意思決定能力があったか]を確認して、[確信を持った判断を下せない場合には、複数の医師で協議して精神科医にコンサルトした上で判断を下す]というふうにしています。後に持ってきた理由は、頻度としてはかなり少ないだろうと思われることと、ここに拘泥して入口から入れないと全体が損なわれるので、後にしたということですね。
 このように、ロジカルに整理してみると、少し分かり良くなったので、11月の委員会に参加していた富永先生に、「さらに現場際に近い形で整理してもらえないだろうか」と持ちかけて作っていただいたのが、作業途中なんですけども、P15からの「富永案」です。今日は出席されていませんので、詳しい説明はできませんけども、P18にあるようなフロー図に沿って見ていけば判断できるように整理すれば、現場的にも分かり良いのではないかということですが、P19の[4)注記]の上のところで、途中で終わっています。
 ただ、事務局で富永先生のご意見を聞きますと、P16の[はじめに]の[法的観点からは~]というところに下線が引いてありますが、「命を守ることと同時に自己決定権という法益が存在して、生命と比較してもいずれが優先するものではなく、各々が認められるという状況になっているということは、明示した方が良いのではないか」という提案をいただいております。これはまだ法的な解釈とか議論の経緯から言うと、大切なポイントだと思いますけども、そういった中身が記されています。あと、協議し忘れたもので、P19の[4)注記]のすぐ上の文は私の文章と一緒ですけども、意思決定能力がない場合の対応として、「複数の医療従事者が医療ネグレクトや虐待の可能性があると判断した場合にはどうするか」ということがなかったので、入れた方が良いと考えたのですが、これは法的に妥当なのかどうかということも少しあります。そこらへんのことがちょっと審議ができていない点かなということですが、流れ的には今日の議論を経て、富永先生にも検討いただいて、院内の各科の先生や倫理委員の先生方に見ていただいたものを、次回の委員会に出せるようにしたいと思っているのですけども、そのベースが整えばありがたいと思います。

 小原 はい、ありがとうございました。今日は細部の議論をする時間的余裕はないのですが、次の具体的な案を作るにあたって、「ここのところはどうか」と確認していただきたいという事項はありますか。

 吉中 私が全く判断できていないのは、私の文章ではP5になりますが、18歳以上で意思決定のできる状況にない場合、[事前指示書がなく代理人もしくは保護者がいる場合には、代理人もしくは保護者の判断に基づいて対応を行う]となっているのですけども、医療ネグレクトや虐待の可能性があると判断した時にどのように振る舞えば良いかということで、これはこの年齢だけではなく他の年齢層でもあると思うのですけども、ここは新しい論点で、ちょっと議論が要るかなと思っています。

 小原 この[判断された時には…]の後の文章はないのですか。

 吉中 だからこれはなかったのです。こういう項目が要るのではないかということです。

 小原 それは分かります。で、この[…]を埋めるとすれば、どういうご提案ですか。

 吉中 それを提案できる材料がないのです。どこかに通報するとかいうことですね。

 原 18歳未満の場合は、今の医療ネグレクトとか虐待の話に関係なく、親権喪失とかをやれば良いのですよ。

 吉中 そうですね。P6にありますが、18歳未満の時は一時保護とか親権者の職務停止処分があるのですね。で、成人と認めている18歳以上の場合で、意思決定ができない人の場合は、そういう条項が要らないのかということですね。例えば障碍を持っていて意思決定できない人の場合、どういう方策があるのでしょうか。

 小原 障碍を持っていて、ご本人が明確に自らの意思を表明できなくて、しかし、免責証書を…、

 吉中 …免責証書がなくて代理人もしくは保護者の判断しか材料がない時に、輸血拒否されたらどうしたらよいかということですね。それはあり得ると思いますね。多分、同じように権利を停止するという措置ができるのであれば、単純にそれを加えれば良いのであろうと思いますが、法的な枠を確認できていないので…。

 勝村 法的な枠が確認できれば、15歳以下と同じ方が自然ですよね。

 原 親権停止とかは、18歳ではなくて20歳未満までいけるのではないですか。

 岩橋 そうです。親権者は、未成年ですから20歳までです。

 原 民法上はそうですね。ただし、児童福祉法は対象にならないということですか。

 岩橋 児童の概念が未成年とは違うので…。

 原 そうですね。でも、民法的にはできる。

 岩橋 親権の問題はできると思うのだけども、多分…、

 原 家庭裁判所に親権者を選任してもらえば良いわけですよね。申し立てを病院ができるかという問題はありますけどね。できないのですかね。

 岩橋 でも、児童相談所に通報して児童相談所でやるか、事実上は病院でもできるかも知れませんが、今は分かりません。

 原 18歳までだったら児童相談所ですけど、18~19歳の場合はどうなるのかな。

 吉中 そこは弁護士さんの力をお借りしたいと…。

 岩橋 すみません。今日は持ってきていないので、ちょっと調べて送ります。親権そのものは未成年者が対象なので、親権停止・親権喪失は理論的にはあり得るのです。今までは親権喪失の職権停止の処分を受けて入りますけど、今度、親権停止が認められるようになりましたので、もしかしたら、前より手続き的には煩雑ではなくなるかも知れません。

 小原 親権停止の申し立てをして、実際に職務停止の処分を受けるというのは、どの程度スムーズに行われるのですか。2~3日でできる? そんなにはいかないのですか。

 岩橋 裁判所に聞いてみないと分からないですね。

 小原 つまり、ゆっくりとできるような期間があれば良いですけど、非常に切迫度の高い場合に、これを待っていられないですよね。

 岩橋 でも、職務停止の処分というのは緊急の保全処分としてやることなので、緊急という判断を一般的にしないといけないことになります。だから、緊急の度合いを書面に添えれば早まると思います。ただ、刑事事件で逮捕状とかを発行するように早いかどうかは分かりません。

 小原 これは、日本で前例があるのですか。

 岩橋 あるはずなんですけど…。京都ではどの程度のスピードで出されるのかとか、家庭裁判所の方にでも聞いてみましょうか。

 吉中 文書で今の部分は、「どこにアクセスしたら良いのか」ということがハッキリしていないといけないですね。

 神田 「これをやる裁判所がどこなのか」というのも…。親権停止は家庭裁判所なんですけど。

 原 そういう法律上の手続きを踏むか、もしくは、輸血治療をやっちゃって、「訴えるなら訴えろ」という対応をするかですよね。

 富田 現場的には、その日の内に返事が来ないと保たないですよね。

 原 そうですよね。で、そうやって訴えられても、ネグレクトや虐待の可能性あるということを、根拠を付けて説明できれば、負けないだろうという気がします。

 吉中 それを言いだしたらキリがなく、実際に判断するのはなかなか難しいところがあるのでしょうけど、具体的な実証では「こういうところがあるから可能性があると思う」というようなことしか言えないですね。

 勝村 そこもだけど、意思決定できないということでの共通点は大事ですよね。例えば大人の障碍者とか高齢者で判断できない場合、法定代理人とか後見人とか、そういったものの停止とかはあるのですか。
後見人がネグレクトしたり虐待しているということに対して、法的に対処はできるのですか。

 岩橋 私も後見になった経験がありまして、それこそ「インフルエンザを受けますか、受けませんか」というような問い合わせが来るのですね。ただ、弁護士とかが後見人になった場合、法律行為とかを代理するというのがいちばん大きな中身で、後は、看護について問題のあるような対応をされていないかどうかを監督したり、監視したりするまでが義務としてあると言われていて、医療行為に関しては、基本的には経済的に費用なんかの問題が伴ってくる時に、「支払いますよ」という意味の同意の権限はあるのですけど、医療が必要かどうかとか、その治療を受けさせるかということについて、後見人に同意する権限や同意する義務まではないと一般的に言われているのです。後はお医者さんの判断に任せるか、後のトラブルを考えるのだったら、身近にいる人で問題にしそうな人の同意を得ておくぐらいの話です。だから、お医者さんに「治療が必要だ」と言われて後見人が判断するのではなくて、身近にいる人がそれを必要と感じれば、その人達が代わりに判断していくべきだとされています。病院側としたら、問題が起こらないように同意書とかを貰うわけだけど、何か害が生ずるようなことについては、いくら同意書を取っても責任が問題になる時は問題になるわけで、そういうことについては、後見人が代わりに同意するべきではないというふうになっています。ただ通常、後見になるのは身近な人が多いので、事実上、病院側がその人に同意書を貰っておくとことは重要だと思いますね。ただ、弁護士や司法書士が後見になった場合は、そういうことは基本的にない。

 小原 義務を負わないというのは分かるのですけど、例えば後見人の方が、意思表示のできない本人のために「この人は無輸血治療でやってください」と言う権利はないのですか。

 岩橋 後見人にはないのでしょうね。本人の意思を推定するようなことは、例えば任意後見人とかで、以前の本人の考え方が分かっていたりすると、「本人はそういう希望だ」と言うかも知れませんけど、そうでなければ、本人の希望は分からないわけですね。だから、後見人の希望とか考えでの「無輸血治療…」とかいうことは無視して良いことなんです。そのへんが親権とはちょっと違うのですね。

 吉中 後見人がそうだとすれば、当初から文面にある「代理人もしくは保護者」の意味も、保護者は存命であれば分かりますけど、代理人というのは、何をもって代理人と言えるのかよく分からないですね。

 岩橋 よく「本人の委任状を持つ代理人」と書いていますけど、その委任状が本当に本人が書いたものか分からないですね。そういう見方をすれば、免責証書だってそうかも知れないということになっていくのだけど、このような任意の代理人を予定していましたか。

 吉中 それは、そもそもあまり明確に定めていなかったですね。

 岩橋 これを認めてしまうと、かなり広がってしまうと思いますね。

 小原 代理人という言葉はかなり広汎に出てきますが、代理人の法的な定義というか、理解はあるのですか。

 岩橋 代理権限のある人ということになるのですけど、通常は代理の範囲を確定しないと…。私達のところへ相談に来る人も、「誰々の全権の委任を受けて来ています」と言う人がおられるのですけど、基本的に全権を持つのは親権者しか考えられないですね。「任意で全ての権限」と言うかも知れませんけど、それはかなり危険なことでして、任意後見人なんかでも、通常の判断能力がなくなっている人からの委任状というのは、私達も貰ったらいけないのです。委任すること自身も判断できていないわけだから、そういうものはあり得ない。

 吉中 ここは18歳以上の場合なので、「親権者」とせずに「保護者」として、保護者がいない場合もあろうから「代理人」としているのだろうなという推測はしたのですけど、何かちょっとスキッとしないと思います。でも、あまりそういうことだけに拘り過ぎると整理できないので、そこはまた表現を考えていただければと思います。

 原 法律用語にしない方が良いかも知れないですね。代理人というのは確かに法律用語ですし、保護者というのが法律上にあるのは、確か精神保健福祉法ぐらいでしょ。

 岩橋 そうだと思います。保護者とは、事実上は保護している人のことを言うのだけど、法律用語としては極めて限られていますよね。それと権限がね…。

 原 だけど、精神保健福祉法には今は保護者という制度がありますから、そうすると、これはそれを想定しているのかというような問題も生じてきますけど。

 小原 親権者と保護者というのは、法的には明確に区別すべきですか。ここでは「親権者(保護者)」という表現がかなりたくさん出てきますけど、この書き方はやはり拙いですか。

 岩橋 それはちょっと拙いと思います。例えば極端で危険な例で言いますと、離婚をする時に親権は片方に決めますが、事実上は親権のない方と一緒に生活していた場合もあるのですよ。で、学校で「保護者様」と言う場合にその人を指している場合がありますから、必ずしも親権者イコール保護者とは言えない。

 小原 違う人になる場合があるわけですよね。ですから、ここで「親権者(保護者)の理解を得るように努力し」という時に、どちらを選んだら良いのかということが別れる場合も起こり得るということですね。その場合は…、

 岩橋 法律的に言うと、基本的には親権者にしておく方が、未成年の場合はいちばん危なくはないですね。

 吉中 18歳未満のところは全部、「親権者」になっています。それはそれで良いですね。それと、このことに付随して「ネグレクト」を入れるかどうか、取っておこうかなとも思ったのですけど、気が付いたので一応、入れてしまったのですね。

 小原 ちょっと時間もだいぶ経ちましたので、多分、今日に全部、議論を尽くすこともできませんので、できれば次回に、この2つをまとめたものを出していただいて、この「…」のところも一応、案みたいなものを入れていただけますと、より具体的な討議ができると思いますので、ぜひお願いしたいと思います。ベースになっているものはこれまで議論してきたことを踏まえていますから、だいたい良いと思うのですね。ですから、今、議論したような幾つかの点、それから肝心な点だと思うのですけど、親権者とか保護者とか代理人とかいうあたりのことも、少しチェックした上で、次回にまとめていくことができればと思います。たたき台になるものはしっかり積み上げられていますので、次回で決着するか、後2回ぐらいかかるか分かりませんけども、あまり先送りしないでまとめたいなというふうに思っていますので、よろしくお願いいたします。よろしいでしょうか。
 では、「(5)その他」のところの「治験審査委員会報告」をよろしくお願いします。

 

議事(5) 「その他(治験審査委員会報告)」

 富田 当日資料のP4以降になりますが、治験は順調にいっていまして、P4のFTY720は治験を終了しました。効果もあるということで、実際に市販が開始されています。それからP6のBG00002が現在も続いている治験です。これは注射薬で、抜群な効果があると分かってきました。ただ、ちょっと重篤な副作用もありまして、約2年を超えて注射を続けるとリスクがグンと上がることや、過去に免疫抑制剤を別に使ったことがある人など、リスクのある要素が整理されてきて、今後どういうふうに対応するかということが問題になってくるという状況です。

 吉中 追加しますと、Natalizumabという化学名のBG00002の方は、TYSABRIという商品名でアメリカやヨーロッパでは標準治療薬として使われていますが、日本はラグの問題でずっと使えなかった。それを使えるようにするには、日本では治験をしないといけなかったということです。ただ、検査精度が上がってきたことなどを通じて、進行性多巣性白質脳症という副作用が目に付くようになってきて、それがJCウィルスに起因するのではないかということで、アメリカに送って測定されるようになってきました。薬というのは開発して市販されるのですけども、いろんな検査法が進歩したりするなど、後で分かってくることも色々出て来ているということを、示している可能性が強いなと思うのですね。これは私一人の評価ですが、薬全般にそういったようなことが絶えず起こるだろうということを、見ていかなければいけない例かも知れないです。

 小原 欧米では標準薬として既に使われているということですが、欧米でも重篤な副作用が起こり得るということが確認されているのですか。

 吉中 あまり認識されてこなかったことだと思うのです。その理由は多分、発売後のチェックというのは甘いですから、関連性がよく分からないですし、JCウィルスの抗体を測るそのものが日常的にはできないので、よく分からなかったのかと思いますが、治験制度の中でそこが浮かび上がってきたということかなと推測します。

 小原 ただ、2年を超えて使い続けると副作用の率が高まってくるということですね。

 富田 発症率は、全くリスクのない方の場合は1000人に対して0.2人以下と非常に少なく、2年を超えていろんなリスクを重ねていって非常に高くなったといっても100人に1人だから、多人数を集めていないと、見つけるのが少し遅れるということはあるのでしょうね。

 小原 今のご報告に対して質問はありますか。よろしいでしょうか。

 原 前回に利益相反のガイドラインを作りましたけど、治験審査委員会との関係を「治験審査委員会で検討してください」という話にしていたのですけど。

 富田 まだです。

 原 どうしますか。前回の決定稿は、両方の承認を得た時点で効力を発するという形にしていたので、取りあげられないのでしたら、倫理委員会だけのガイドラインのような文言に手直しをし、取りあえず切り離して今日の段階でスタートし、同じ内容で治験審査委員会に検討していただいて、「治験審査委員会でもそうしましょ」というのか、文言だけを変えるか、どちらかで…。

 富田 利益相反に関して、倫理委員会のように審査を経るという例は、治験の方には全くないのですよ。

 小原 ただ、利益相反のルール化の必要性は、前回に原さんも言っていたので…。

 富田 「向こうでそれを了承したところで、こちらが発行する」でしたかね。

 小原 前回の案はそうなんですけど、原さんが言われたのは「こちらはこちらで先に進めておいて、ちょっと時間をおいてそちらが決まれば、後に文言修整をした上で合体させる人もありではないか」というご提案ですね。ですから、待たずに倫理委員会だけのものを先に発行させるということで、それがここで確認できれば、それでやりましょうということです。

 原 それで承認していただいたら、文言の修整は簡単ですから、取りあえず倫理委員会単独で有効にすることはできると思います。ただ、治験審査委員会の方でも、利益相反は問題としては変わらないと思うのですけど。

 富田 あちこち色々と調べましたけども、治験では利益相反の具体的な格好のものはまだ出ていないですね。

 原 出てきていないと言っても、研究していたら利益相反の問題は出てくるではないですか。

 小原 まだ前例がないということですか。

 原 そんなことはなくて、割と出てくるような気がするのですが…。

 吉中 治験を定めている薬事法とかの規定はすごく大変で、かなり細かく定められているのですけど、利益相反ということは定められていないというのが現状で、そこに雛形があるということもあるのですけどね。

 原 臨床研究の国の指針でも「開始の時に利益相反を説明しなさい」ということはもう入っていますから、「利益相反は何か」というのがハッキリしていないと上手くいきませんので、取りあえず切り離して、倫理委員会の方はそれでスタートさせて…。

 小原 「そういう議論がここであった」ということを治験審査委員会の方にお伝えいただいて、意見聴取していただいて、それをご報告いただければと思います。

 原 院長の方から治験審査委員会に諮問するという形を採るということになろうかと思います。

 小原 それでは、これで予定した議事は終わりましたので、次回日程の調整をお願いします。

 丸山 定例でいきますと、2ヵ月後の第2木曜日の5月10日はいかがでしょうか。

 小原 5月10日木曜日の18時半でいかがですか。特に問題がなければこれで決めたいと思います。では、長時間に及んでお疲れさまでした。これで第47回倫理委員会を終わらせたいと思います。

 

(入力者注)

※ 文章は全体を通して、話し言葉を書き言葉に改めたり、意味の通じにくい言葉を言い換えたり、同じ発言の繰り返しを省くなどの推敲を行い、かなり要約した形になっていますが、発言者の意図を正確に伝えることを最優先にしています。また、患者名を特定される可能性のある情報など、秘密保持義務に触れる怖れのある発言は曖昧な表現に変えたり、伏せ字にしており、不明確な情報に基づき、中傷と取られる怖れのある発言における他事業所等の名称も伏せています。

 

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