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第四十二回 倫理委員会 議事録

京都民医連中央病院

日時

2011年4月19日(火) 18:30~21:00

場所 太子道診療所3階多目的室
出席者 外部委員 原委員長、位田委員、岩橋委員、小原委員、関谷委員、広瀬委員
内部委員 北村副委員長、赤木委員、内田委員、富田委員
事務局 丸山
オブザーバー 橋本、野崎(臨床研究申請)
欠席 勝村副委員長、井上委員、東委員、中村(特別委員)

議事

原 倫理委員会を開催させていただきます。議事一覧がありますが、少なくとも臨床研究の関係まではこなしたいと思います。まず、人事関係の改正について説明していだけますか。

議事(1)「委員の再任と委員会体制について」

内田 では事務局より説明させていただきます。本日、ご出席をいただいています小原先生は、1年間のご留学をされ、その間は原さんに委員長、勝村さんと北村先生に副委員長をお願いして、1年あまりをこの体制で運営させていただきましたが、お戻りになったということで、病院長の方から、再度、小原先生に委員長をお願いしたいということです。そこで、皆さんのご了解をいただけるのであれば、小原先生に委員へ戻っていただきまして、次回の運営からは委員長に上っていただき、副委員長に原さんと北村先生にご就任いただきまして、その体制で倫理委員会の運営をお願いしたいということです。外部委員の定数は特に定めておりませんので、関谷先生にも引き続き残っていただきたいのですが、外部委員が増えることについては、「減るよりも増える方が良いだろう」と原委員長にもご快諾いただいています。

原 はい。よろしいでしょうか。私もその方が助かります。
それでは次にいきまして、議事には書いていませんが、臨床研究の関係の手順書が次のページにありますので、ちょっとここの説明をお願いします。

 

議事(2)「臨床研究等の申請、審査に関する手順書について」

富田 P2~3は昨年度に作りました手順書で、ここでご議論をいただいて承認いただいたものではありますが、簡単に説明します。P3の流れ図で、上の囲みにある臨床研究部というのは、臨床研究のあり方の政府の方からの指導のような格好で、昨年度に病院の組織として立ち上げ、整備されつつありますので、それにできるだけ近いような格好で受け止めていきたいのですが、大学や研究機関と違いましてウチの場合は、積極的にはやしたてていかないと出てこないということもありますし、かなり慣れていないので、どういうふうに組み立てればいいのか分からないということもありますので、立ち上げのところからサポートしようということになっています。
これまで臨床研究部というのは、病院内の規約を作ったりといったこともやってはいたのですけども、少し広げて臨床研究に対する入口にするためには、審査する場所をキチッと設けて公正さを得た方が良いので、当初はどうしようかという議論もあったのですが、倫理委員会で既にいろいろな議論をしていただいていたので、ここで審査していただけないかと、昨年にご議論をいただいて、流れ図の矢印が下へとつながっていますが、倫理委員会でやっていただくことになりました。
図のいちばん上からいきますと、「研究責任者」は院内での責任者ですが、その人が臨床研究部へ申し込み、そこで一緒になって申請書を作り、付議が必要でないものは「付議不要」ということで、審査を省略しますけども、付議が必要だというようなものであれば、下の「倫理委員会」へ提出します。そして、厚労省のガイドラインに則れば、提出されたものにも「通常審査」をやるべきものか、そこまでは必要なく「迅速審査」でよいものがあり、「迅速審査」であれば、倫理委員会の委員長から指名された1~2名、当院での議論では内部委員・外部委員各1名ということになっていますけど、そこでの簡略な審議で決めてもらって、委員会には事後報告させていただけばいいということです。「通常審査」の分に関しては、通常にここでご議論いただいて、最終的に病院長に報告する流れでやろうということで、左側の手順書は、それを文章にしただけのものですけど、ちょっとモタモタしていますが、そういった仕組みが動き出したところです。

原 何かご意見等はございますか。

位田 流れ図の「付議不要」の**印の付いた文の「指定された臨床研究部員が判定」というのは、手順書では「指名した者(臨床研究部部員を含む)」となっているので、ちょっと齟齬があるような気がします。「付議が必要に臨床研究かどうかという判断は、臨床研究部ではなく倫理委員会が関与するべきだ」という話になっていて、「だけど、倫理委員会で判断するのではなく、倫理委員会が指名した方が判断するということで、できれば倫理委員の方がいいのですけど、臨床研究部員を兼ねた倫理委員であっても構いません」という話だったと思います。

富田 しかし、消えてしまうのも含めてもですが、かなりの数になりますので、本当に関わっていただいていいのでしょうかという気がしますが。いわゆる大学のレベルと全然違いますので、そこまで議論をしなければならないほどの…、

岩橋 いや、「手順書の記述そのものをそのまま書いていただいたらいい」という趣旨だと思います。

富田 全部は載せていませんが、今日も実はP4の表の下2つが付議不要で回したものですけど、ある程度はフォーマットに従ってセレクトしてしまっています。

位田 「臨床研究部員が判定するという形ではなかったのではないか」と申しあげているだけであって、富田先生は臨床研究部員であられますが、倫理委員でもあられるので、実質的には今のままで構わないということです。で、手順書の3.の「倫理委員会があらかじめ指名した者」というのは、「倫理委員会がそういう形で関わりますよ」と言っているわけですよね。それが「たまたま臨床研究部員であっても構いませんが、そうでない場合もありますよ」ということです。

原 「右側の図の記述を修正する必要性がある」とおっしゃっているわけですよね。

位田 ええ。「~指定された者(臨床研究部員も可)」という書き方だったら問題ないと思いますが…。

原 図の方の「~臨床研究部員」というのを、単に「~者」としておけば良いわけですよね。そもそも指名はしましたか。具体的なお名前は挙がっていたと思うのですが、指定していないのであれば、この場で指定してしまえば良いわけですね。

原 富田さんはできますよね。他にはいらっしゃいますか。

富田 いえ、今はいません。私がやっています。

原 その態勢で可能ですか。

富田 皆さんは忙しいので、今のところは私が一手に引き受けてやりますが、ある程度、軌道に乗れば、分担していただければありがたいなと思います。ただ、まだそこまで進んでいないので…。

原 そうしましたら、「当面、富田委員を指名しておく」ということで、「今後、必要になってくれば、追加指定を提案してください」ということでよろしいですか。

富田 はい、私の方はそれで結構です。

位田 もう1点あるのですけど…。P3の流れ図には、付議不要の例として「アンケート調査の一部」「後方視研究の一部」が上げられていますけど、臨床研究の審査からは外れても、疫学研究の審査に含まれる可能性はあります。P4の最後の2件の内、上の方はひょっとしたら疫学研究にあたるのではないかと思うのですね。

富田 これの実質的な中身は、通常の外来での臨床医療とほとんど同じで、聞かれる中身をアンケートでキチッと押さえて、資料として取っていきたいということだけなんですが、疫学研究に含まれるのかも知れません。

原 どこまでが疫学研究かという定義も、あまりよく分からないところがありますからね。P4の最後の「糖尿病教育入院」というのは、私は見ていないのですが、「アンケートも皆、疫学と言えば疫学」というような面もありますよね。

富田 ここで議論していただくのは、ある程度、重要な案件に絞りたいので、あまりここで議論していただくものでもないと、僕は思います。

原 それでは論理性がないから…。「ここで議論するのか、迅速審査に回すのか、あるいは倫理審査の必要性がないのか」というあたりは、どちらにしても、疫学研究は厚労省の指針との関係で考える必要がありますね。委員会にかけなくても罰則はないので、別段、困りはしないのでしょうけど、通しておかないと研究発表ができないことになりかねないという問題もあります。

富田 例えばアンケート調査のレベルが、大学でやられるようなかなり多くのデータを取る本格的なものなら、議論も必要かも知れませんけど、かなり小規模で、これまでも通常によくやっているようなアンケート調査ですので、あえて委員会に出さなくてもいいのではないかと思いました。

原 これはご相談を受けたので、付議不要でいいのではないかという判断をしましたが、線引きを感覚でやっていくわけにはいきません。少なくとも一つの線引きは、何らかの形で研究として発表されるのであれば、迅速審査か本審査かは別として、委員会にかける必要があります。かけないと研究者にとってデメリットになります。

北村 付議不要の基準というものが、ここに例示されたような漠然とした中身であることに、問題があると思います。このままだと、非常に恣意的に解釈されて、何でも付議不要ということにされかねないので、疫学の研究の基準とか臨床研究のガイドラインには、付議不要の要件が「これまではいいですよ」と書いてあるので、それに準じて、別紙でもいいので具体的に挙げておくというふうに、基準を明示した方が良いように思います。

富田 例えば「対象数が何例以上は疫学研究」とかいう線があるわけではないのですし、患者への指導が全くない臨床もないわけではないので、観察研究という線も実は引けない。一般病院の場合は、いわゆる研究なのか診療なのかという線引きのレベルが低くなってくるというか、そのあたりの計画が多いように思うので、そういう計画はあえて委員会に持ち込まないで、P4の表の上の方に挙げたような、大事な計画の方に時間を取ってご議論をしていただいた方がいいなぁと思っています。

原 問題になってくるのは、やっぱり主に疫学研究ですかね。臨床研究では症例報告はある種そうかも知れませんけど。

位田 13番で気になるのは、研究責任施設が大阪医大の耳鼻科なので、多施設共同研究ですよね。大阪医大では倫理審査をしないと…、

富田 いや、通っている分です。

位田 では、やっぱり疫学研究です。ということは、「中心機関の大阪医大で疫学研究として審査したから、ここでは迅速審査でしましょう」とか、「委員長一任にしましょう」という手はあり得ると思うのだけど、「大阪医大では疫学研究なのに、こちらでは疫学研究ではない」というのはおかしいと思いますね。これは13番だけの話で、その下の「糖尿病教育入院」というのは疫学研究ではないと思いますから、問題はないと思います。

富田 これの対象は10人ぐらいで、入院されて既に退院された人へのアンケートです。

原 「通常の診療なのか、研究なのか」という話は線引きではなく、重なってくる部分があると思います。通常の診療であり、それが研究にもなるという場合があり得るので、「どちらか?」という考え方をするとよく分からなくなると思います。で、少なくとも「研究である」と位置付けされるのは、「発表を予定する」ということぐらいだと思うのですが、それだけに、予定をするのであれば、委員会にかけた方が良いだろうと思います。

富田 「学会発表するなら要る」という考え方もあるのかも知れませんけれども、少なくとも指針の中には読めないので、そういう書き方はないと思うのです。ここに付議不要の例が挙がっていますが、どこで線を引くのかというのは結局、手間との関係で線を引いてあるのだと思うのです。多分、発表する可能性のある分しか相談はないと思うので、全部を迅速審査に回して、お手間を取っていただいても、私自身は問題がないのですが、他の議題もありますので、そこまでしていただくのも大変かなと思います。

原 疫学研究の指針を見ても、どこまでが適用されるのかは必ずしも分からないですよね。臨床研究の場合でも曖昧なところはあると思いますが、安全を優先すれば見ないと仕方がないので、「手間をかけるのは大変だ」という意識でやるよりも、少なくとも研究として扱われる見込みがあるものは回した方が良いと思います。

富田 そういうふうにしていただけるのだったら、そういうふうにやりますけど…。

原 何か倫理的な問題が生じた時に、「倫理委員会なり病院はどうしていたのだ」ということが発生したらよろしくないですし、研究発表のネックになり得ますので、やれるものはやっておくに越したことはないですね。

富田 そういう流れでいくのなら、「とにかく迅速審査に回しておく」というふうに理解してよろしいですか。

原 迅速審査に回る場合が多いだろうと思いますが、本審査になる場合もあるということでしょう。ですから、この「糖尿病の教育入院」というのも内容は分かりませんけど、看護の研究であっても問題が変わるわけではありませんので、審査に回してもよいと思います。で、13番のスギ・ヒノキ科の花粉症の件もやり直しましょうか。

富田 いや、これはもう…、

位田 13番の表題の3行目に「薬剤選択と治療効果」とありますが、これを調査するわけですから、その後の「患者満足度・QOL」はまだ良いかなと思いますけど、治療効果を含めて調査するということになると、やっぱり研究の意味合いが強くなるかなと思うので、そこがちょっと気になったのですね。

富田 しかし、臨床行為そのものは対象にならないですね。

位田 いや、今は疫学研究の話ではないかと思っているわけで、アンケートだけであれば、臨床研究からは当然、外れると思います。

富田 いや、疫学研究であれば必ず対象になるとも言えないのでないですか。「これをもう一回、やり直す」と言われても困るのですよ、既に始まっていますから。しかも、これは季節ものなので、急ぎでしたし、ほとんど臨床をそのままなぞる中身でしたので、私の独断かも知れませんが、このように判定させていただきました。

原 独断ではなく、私に相談がありましたでしょ。

位田 だから、倫理委員長の判断でゴーサインが出て、ここで事後承認という手続きを採ったということなら、それで構わないと思います。ただ、今後もこれでいくという話…、

原 ですから、内容的に簡易なものについて一々、膨大な実施計画書とか同意書といった書類形式を整えなければならないかというと、必ずしもそうではないと思います。こういう簡単な申請書はいるとは思いますが…。

富田 申請者は非常勤で、来られるのも不定期な先生で、モタモタしたら遅れるなと判断しましたので…。

位田 もし書類の問題であれば、これが大阪医大で計画が通っているなら、それをそのまま持ってこられれば良いので、書類を作るのもそんなに難しくないはずですよね。疫学研究だとすれば、やっぱり倫理審査に付されるのが本来の形ですが、その審査の選択肢として、今回のように委員長一任で判断していただく形にするのか、迅速審査にするのか、この委員会で議論するのかという3つのオプションがあり得ると思います。

富田 いや、委員長一任というやり方があれば、私もそういう判断を選べたのですが、そういうやり方はこれまで議論にもなっていません。

位田 だから、今回の分を疫学研究として通すというなら、院長一任というやり方はあり得ると思います。臨床研究ではもちろんないですよ。従って、臨床研究と判断すべき話かどうかは分かりませんけど。

富田 ただ、そこまで細々としたものがいろいろと上がってくれば、ちょっと大変だろうとは思うのですが、よろしいですか。できるだけご負担が少なくなるように…、

位田 お言葉を返すようで申し訳ないですけど、倫理審査というのは本来、手間をかけてやるやらないという話ではなく、研究の対象となっている人の保護というのが本質ですので、手間がかかるという理由は立ちません。

富田 そうしましたら、委員長一任のコースも考慮の中に加えていただいて…、

原 委員長一任というのは、ちょっとよく分からない感じもするのですけど…、

位田 委員長が承認したという形ではなくて、今回は委員長が見られて、「これは疫学研究で審査するにあたらない」という判断をされたのだったら、それはそれでいいのだろうということです。

原 ですから「スギ・ヒノキ~」の具体案件に関しては、これから審査するとしても、準備もできていませんので、この扱いでやったということで済ませるというのが一つです。もう一つはイレギュラーですけども、事後的に迅速審査的な手続きで問題がないかを再点検するということで、このどちらかなと思います。研究調査を止めると支障がありますので、止めるという意味ではありませんが、事後的迅速審査をしましょうか。

富田 申請者にはもう了解という返事を渡していますが、後日、事後だけど委員長に資料をお渡しすると…、

北村 今まではこの手順で確認され、それに基づいて付議不要という判断をされたので、それでOKということで構わないと思うのです。ただ、付議不要の基準に曖昧さがあるので、ここを明確化して記述に加えていただくとか、今後はしていただければいいかなと思います。

原 では、今後の問題でいいというご意見ですね。

位田 これは臨床研究というカテゴリーの形で、13番は臨床研究ではないというのはハッキリしているわけですね。だから、この図とは離れたところで「どうするか」ということだと思います。

富田 しかし、疫学も広い意味では臨床研究に入りますので、この図に入らないというのはどういうことでしょうか。これを疫学としたとしても、この図でよいのではないですか。

北村 臨床研究ガイドラインの用語の定義の「臨床研究とは」の最後に、「疫学研究を含まないもの」というのがありますので、これに従うのであれば、疫学研究はこれではコントロールできない。だから、疫学研究についてはまた別のものを当院でも用意されないといけないが、現時点ではないので、取りあえず今はこれの流れに従ってやったということでご承認いただくか、また別の考え方でやるかということになるとは思うのです。

小原 審査の流れからすると、臨床研究と疫学研究で何か根本的に違ってくる可能性はあるのですか。

富田 広い意味での臨床研究の中で疫学の部分というのは少し取り出しやすいので、疫学研究の指針をまず作って、それから治験の分も別個に作りました。それから、後のまとめきれない分を「全部ひっくるめて臨床研究と言おう」というふうに理解しています。そういう意味でこの流れ図も作っています。だから、「疫学研究はこれと全く別の流れ」という話ではないと理解しています。分類についても疫学研究か観察研究かあまり深く考えないで分類していますけど、疫学研究に近いものをこれから外しても、あまり意味はないと思います。

原 改正前の疫学研究の倫理指針には、「人の疾病の成因及び病態の解明、並びに予後及び治療の方法の確立を目的とする疫学研究を対象とする」とありますが、「疫学研究とは何か」は書いていないので…、

位田 疫学研究については、ここに「用語の定義」というのがあって…、

原 後にありますね。「明確に特定された人間集団の中で出現する健康に関する様々な事象の頻度及び分布、並びにそれらに影響を与える要因を明らかにする科学研究を言う」。だから、これを平たく言うと「統計的な研究」という程度の意味にしかならないですね。

位田 「実際に患者さんに対して何かの治療法をやってみる、薬を使ってみる」ということは臨床研究ですけど、その結果について、例えば何人もの患者さんのデータを集めて比較して「どうだ」というのが疫学研究で、数の多い少ないというのとは、あまり関係がないと思います。

小原 ただ、この倫理審査の対象には両方のジャンルが入りますよね。ですから、「今は臨床の手順だけを扱っているから疫学を排除する」という分けにはいきませんよね。だから、両方を倫理審査の対象にできるような受け皿をどうやって作っておくかということで、流れは一緒だと思うのですよ。

原 ですから、倫理審査の対象とする疫学研究の範囲の線引きというか、付議不要にする線引きの目安だけ付けておけばいいのだと思うのです。そういう意味で言いますと、一つは研究であるかどうかというのが目安ですし、もう一つは、用語の定義で言いますと「頻度及び分布、並びにそれらに影響を与える要因」ということですから、少なくとも統計的な研究である必要はあるでしょうね。症例報告なんかは統計ではありませんから…、

富田 だけど、「10例は統計なのか、100例で統計になるのか」という線引きもできないです。しかも第一線の場合は当然、対象とする症例は少ないです。ですから、あまりそこに拘ってもしょうがないのではないかな。

原 いや、具体的な症例数の線引きはできないにしても、考え方の目安を付けておかないと困るので…。

位田 だから、「この病院ではこういう治療方法を使っているのだけれども、その効果を知りたい。で、今後もそれを続けていくかどうか」というように、病院の中でやっている分には、研究というよりも実際の治療法の確認みたいな話でいけると思います。それを論文に書くという話ではありませんから、患者さんが1人であっても100人であっても同じだと思います。

富田 いや、どういう格好で発表するか、あるいは研究までになるのかということも含めて、相談に来た時に、最初は区別ができないと思います。後になって発表しようと思った時に、簡易的に審査を受けることも可能ではないですか。その前のところで、ガチガチに線引きをするのは実情に合わないのではないかと思います。

位田 それは無理だと思います。

小原 疫学か臨床かという区別は、今の問題ではなくて、発表や公表がされる場合には、研究を始める前に倫理審査に通っておく必要があるわけですよ。そして、「その審査に基づいてスタートした結果が、こうですよ」という形になって初めて発表できるので、僅かでも発表の可能性が関わってくる場合は明らかに自動的に審査対象になるというのが、一つの線引きのラインだと思います。

富田 それはちょっと違うと思います。指針ではアンケート調査なんかも付議不要の例に入ってきています。それから「後方視的研究の一部」と載っているのは、カルテをひっくり返してこれまで病院でやってきたことをまとめるというようなことですが、それを院内で発表するか院外で発表するかは多分、最初は明確に決めずに現場ではやると思うのです。そこが大学とはちょっと違うところだと思いますけれども…。だから、まとめれば必ず学会で発表されるというのとは、ちょっと違う実情はあります。そういうところを少しファジーにしておかないと、どうなるか分からないような細かい案件まで、委員の方に付き合ってもらうようなことになると思います。それから「疫学研究はこの流れと違うものになる」ということではなく、疫学を含めた臨床研究の流れというふうに理解していますけどね。「まとめる」といっても大学の場合は、研究の業績につながるレベルを前提にしていますし、そうでなければ叱られますが、ここではそこまでいかないという実情があると思います。だから、簡易も含めた審査の流れに、できるだけ乗せるようにしようという意味であるなら、私もそれでいいのではないかと思うのですけど、そこに綺麗な線を引けるかというと、引けないのではないかと思います。

関谷 例えば、後で学会発表するような研究に発展した場合、倫理審査にかかってなかったら発表できないということですか。

位田 それは無理です。事前審査をするということで、研究していいという話なので。

富田 例えば後方視のやつなんかは、どう動こうが動かまいがデータは一緒なんですよ。どうなるかまだ分からない最初の時にプランを作って審査をする場合と、まとめてみたら「これは発表する意味がありそうだな」となって、倫理審査にかけてOKをもらえるかどうかというふうにやることも、あり得るのではないですか。

位田 だけど、それは倫理審査の趣旨ではないですよね。

富田 いや、この「後方視研究の一部」というのは、それを認めているのではないでしょうか。そういうのは臨床行為にかなり近いところにありますから。例えば院内で発表することに関しては、指針では「全く問題なし」としています。

位田 ある種の治療行為の連続というか、継続としてやられるから、それはあまり問題はないと思うのです。

富田 でも、院内発表のつもりでやっていたから審査を受けなったけど、「良い治療結果が出たね。これなら発表する価値があるよ」ということで、研究発表のために審査をお願いすることもあり得るのではないですか。

位田 それはあり得ると思いますが、「倫理審査は通っていないよ」というだけの話で、それはできないです。「その研究をやってよいかどうかを、倫理的な観点から事前に審査する」というのが倫理審査ですから、「これをやってみました。結果がよかったから発表します。倫理審査を通してください」ということで審査して、通らなかったらどうされますか。

富田 発表できないということではないでしょうか。

位田 それで良いのですか。

富田 「良いのか」ではなくて、そういうコースもあり得るのではないかということで、それで問題があれば、倫理審査のところで承認しなければいいだけの話です。

原 実際上は、疫学研究になるのか、臨床研究になる場合もあるかも知れませんけど、過去のデータを蓄積して見るという後ろ向きの研究の話でしょ、少なくとも解析を終えた段階で「倫理審査をお願いします。発表させてください。よろしいか」という話があり得るのは分かりますが、あまり原則的ではないとは思います。

位田 それを前提にして考えられると困るなぁという話ですよね。

富田 そういうのがあり得るということなので…、

原 ですから、少なくとも研究として取りかかろうとした段階で倫理審査にかけてもらうのが原則なんですよ。倫理委員会は発表許可機関ではないのですよ。

富田 特に第一線では日常臨床の結果と研究との間がファジーですけど、研究機関や大学の場合はそれこそ最初から研究としてやろうという姿勢が基本になっていても、一般病院ではそうでない場合が結構多いので、そういう中からむしろ研究と称するものを作り上げていくというのが一つの方法なんですよ。で、研究部というのは、実はそういうこともやりたいと思っています。そこを厳密に線を引かれると、ちょっと…。

関谷 こういう審査をどんどんやっていくようになると、多くて煩雑になるというお考えなんですか。

富田 研究になるかどうか分からないようなものまで審査することになるかなと思いますけど。

関谷 要するに私達の手間がかかるというだけであれば、念のために申請しておかれたら、後々、問題にならないのではないかなという気はするのですけどね。

富田 それはおっしゃるとおりなんです。ただ、もう一つは、泡のようにできては消えを繰り返す可能性がちょっと強いものですから、そうしますとねぇ…。

原 ですから、データを調査したり、調べてみるということを「全部、審査にかけてください」という話ではないのですよ。

位田 だから、幾つかやってみて「どうもこれはものになりそうだ」と思った時点で、研究計画を書いていただいて審査をして、そしてゴーサインが出ると本格的に研究をやりだすという話ではないのですか。

富田 レトロスペクティブなものも結構、出てくると思います。それもまだ少ないのですよ。

位田 例えば10例ぐらいがレトロスペクティブにあり、その2つ3つを調べてみたら「何か出てきそうだ」という時に、「10例全部を調べます」という研究計画を書いていただいて、その段階で倫理審査にかけていただくということはできないのでしょうか。2~3例だったらいいけど7例だったらダメだという話ではなく、調べておられる方が「研究として発表できそうだ」と思われた時点で、きちんと研究計画を書いていただければ良いのであって、全部を調べ終わって「こんな結果が出たから、遡って倫理審査をしてくれ」というのは、いくらなんでもやり過ぎだということです。

富田 そういうところも認めていただきたいなと思います。指針上はそれも認められています。

位田 いや、それは認められていないです。

富田 病院内の業務の延長線上でまとめたデータを、「別のところに出せる価値がある」と判断をした場合は、研究になる可能性があるわけですよ。その時に審査をお願いするということは認められるのではないですか。

位田 研究が終わってしまってからですか。

富田 レトロの場合はもう終わりますよね。

位田 1例1例は終わっていますけど、「10例を集めて」というのは、集める作業をするわけですから、その作業をする前に審査しましょうという話だと思うのです。

富田 できるだけプロスぺクティブに計画したいと思いますし、そういうふうな指導をしたいと思いますが、「そうでない場合はダメ」と最初から決められると、ちょっと困るなぁと思います。

原 そこは、なるべく安全側で考えてもらう方がいいということです。「事実上はやったから、もったいないから認めて」という馴れ合いの話で通すわけにはいかないので、「手順がおかしい」ということであれば、委員会で承認しないこともあり得ますから、「ダメになることはありますよ」ということを覚悟していただかないといけません。後ろ向きの場合は事実上は解析する過程があるのは分かりますけど、どこかの段階で研究としてのデザインを組み立てるのだと思うので、その段階でかけていただくのが原則だし、安全だと思いますね。
で、「どんな計画を審査するのや」という話は、曖昧と言えば曖昧ですけど、疫学研究は統計的研究と言い換えても良いと思いますから、「統計的手法による研究は基本的に審査対象ということを前提にして、付議不要かどうかを判断していただく必要はある」というぐらいの、取りあえずの目安でいかがでしょうか。でも、学会とか論文など、外部に発表しようという心づもりができてきたら、なるべく早くかけていただいた方がいいし、研究デザインもしっかりと作るということが必要なので、その方向でお願いするということでよろしいか。

小原 もう1点、確認したいのですが、迅速審査か否かの判断というのは、倫理委員会は2ヵ月に1回ぐらいの割合ですから、急を要するかどうかで判断するのか、重要度で区別しているのか、どういう基準があるのですか。

原 基本的には重要度です。「急を要するから大胆なことを」というのはあまりないでしょうね。救命のための治療とかで場合によったら、他のところではあり得るかも知れませんけども。ですから、臨床研究の場合では多施設共同研究の分担研究などですね。

位田 これは研究の話でして、「研究だから急ぐ」というのは、例えば重症の人が入って来て、治療するかどうかというのは研究ではないので、指針の対象にはならない。ただ、臨床行為をやるかどうかという院内審査委員会の対象にはなると思います。だから、迅速審査をするかどうかは重要度で判断すると指針ではなっています。

富田 迅速審査のもう一つの考え方として、例えば多施設共同なんかで中央IRBという言葉が最近は使われていますが、研究計画書の中央での審査が済んでいる場合は、分担のところは迅速で結構ですと、書いてあります。

原 P3の図に挙げている「共同研究の分担研究」というのは、ここがメインではない場合ですね。で、疫学研究に関しても、ちょっと線引きは曖昧ですけど、迅速審査で済ませる場合もあり得ると思います。私が若干、迅速審査をやってみて、お願いをしたことがあるのですが、臨床研究部の方が内部委員として迅速審査をするのはマズイと思いますので、「外部委員が1人と内部委員が1人」とするなら、内部委員の方は臨床研究部員でない方というか、少なくとも申請書作成とかに関わっていない方…、

富田 いや、それは分かりますし、多人数の組織であればいいのですけど、今は人がいませんので、しばらくの間は了解していただきたいのです。

原 いや、「しばらく」って…、どこに人がいないと言うのですか。

富田 臨床研究部の窓口のところで、やっているのはほとんど私一人ですから。

位田 だから、先生以外だったらいいのでしょう。

原 そうです。迅速審査を別の方にやってもらいたいということです。

小原 手順書の6.のところで、「院内」の方から「臨床研究部の人を外す」という意味ですね。

富田 いや、外さないでいただきたい。まだ、慣れている方が少ない。実は頼みますけど、慣れていないので、「何を見たら良いのか」というところから話をしなければいけないのですよ。今はそれをやっている最中です。それには時間がかかります。で、私が外されますと…、

原 ですから、富田先生が臨床研究部の窓口として、迅速審査で意見を述べられる分にはいいのですけど、別の内部委員に審査をやっていただかないと、実質的な迅速審査になりませんということですわ。

富田 いや、迅速審査の委員にしていただきたい。臨床研究といっても、今のところ多施設共同が多く、重要なのは、他所でプランが作られてきてやられているものが多いので、私が介入できるところもほとんどありません。だから実質的には、迅速のところでは私に判断させて…、

原 それは困ります。次回から委員長は交代しますから、今後に審査する委員はまだ決まっていませんので、小原さんが指名するという形でもいいのですけど、内部委員が臨床研究部員である必要は全くないのですよ。

富田 やれる方がたくさんおれば、おっしゃるとおりなんですよ…、

北村 一応、僕と赤木さん、井上先生、内田さん、東先生も内部委員ではありますので、審査の質がどうかという点があるかも知れませんが、特に問題がなければ「倫理委員」ということでも構わないようには思うのです。マズイですかね。

富田 じゃぁ、お願いしてよろしいでしょうか。

原 だから、どなたでもよく、別にその都度、代わっても良いのですよ。

富田 まだ全体の流れもハッキリとできていない状態ですよね。

原 この委員会で現に臨床研究や疫学研究を審査しているわけですから、その委員が迅速審査をできないと言える理由はないと思います。主にドクターの委員になるとは思うのですけど、看護の場合だったら看護の人でも結構ですし…、

富田 今のところ、看護の研究で他施設からの正式な依頼は出てきていません。

原 別に看護の方が医学の部分の審査をしたって構わないと思います。

富田 「構わない」と言っても、実際には私はわりと暇がありますけど、現場の方は忙しいので、それはあまり現実的ではないと思っています。もう少し慣れてこられる方が出てきたところで、バトンタッチをしていきたいと思います。

原 できるのではないですか。

岩橋 中央の施設で基本的な審査を経てきている研究ということであれば、むしろ先生ではなくて、別の方でもやれるはずなんですよ。

富田 そうおっしゃっても、ますます複雑になっていますので、大変ですよ。ハッキリ言いまして、私もよく分かっていません。私らはレビュアーではないですら、結局、レビュアーでない者が何を審査するかというあたりの問題もありますから、結構、難しいですよ。

位田 我々はレビュアーですよ。

富田 いや、ここではサイエンスとしてのレビューには限界があると思います。だけれども、読み込む人はある程度、肉薄していただかないと、分からないのですよね。かなり時間がかかります。

位田 限界はあるとは思いますが、そんなことをおっしゃったら、我々は文化系ですから、とても審査はできないですよ。

富田 サイエンスとしての中身は無理だと思います。私も無理です。

原 そんなことでしたら、研究はやめましょうよ。そんなことまでおっしゃるのでしたら…。

富田 違いますよ。ですからレビューするのではなくて…。だって、サイエンスとして価値があるかどうかという話ってできますか。

位田 だからそれは、サイエンスをやっておられる方がこの委員会で「これはサイエンティフィックに意味があるのだ」という説明をしていただければいい話で、他の委員がそれを「じゃぁ結構ですね」と納得して、そして、「倫理的にはこんな問題があります」「でもこれはパスできますよね」という形で承認するわけですよね。だから「サイエンティフィックなことが判断できないから」という話は、元々からない話だと思います。

富田 もちろん、本当の意味でのサイエンティフィックなところの価値を判断する必要がないと思います。

位田 だったら、他の先生でも良いわけですよね。「先生でないといけない」という理由はないと思います。

富田 もちろん、ないです。私も本当のところは分かっていませんから。

位田 いや、「分かっている」「分かっていない」ではなくて、それなりにサイエンティフィックな判断はされると思いますから、先生が臨床研究部でいろんな支援をされるというのは大賛成で、それでいいとは思うのですけど、迅速審査の時に「先生でないといけない」という理由はないと思うのです。そこだけの話なんですよ。

富田 もちろんそうなんだけれども、時間と労力とを忙しい中で皆さんに…、

位田 そんなにたくさんの迅速審査が出てくるとはあんまり思えないのですけど。

原 だからこの間、若干の迅速審査を私は担当させていただき、結構、分厚い資料が来てたいへんですので、全部を精密には見ませんけども、気づくところはありますから、それを「手直しをしてください」と申しあげるわけで、おそらくもう少し医学の分かる方ならさらに良いわけですよ。だけど医学の分かる方だけでは困るという部分がありますので、内部と外部という組み合わせの方が良いと思います。ただ、富田先生がそれに関わられるのは結構ですが、臨床研究部の方は推進する側ですから、他にいてもらわないと、ブレーキがちゃんと掛からないので困ります。

富田 いや、内部から生まれてきた手作りの分に関しては、ある程度は関わらなければいかんと思いますけど、今、たくさん出てきているのは、ほとんどが外部でカチッと作られているものですから、私がブレーキを掛ける掛けないの話とは全く違い、それは誤解です。こういうできあがったやつは、当院のフォーマットに書いてもらった要約を話すだけで、中身はタッチしていません。

原 いや、臨床研究部というのは、基本的に推進する立場ではないですか。いつまでやっていても進まないので、これは多数決でやります。ですから、「迅速審査の院内委員は臨床研究部以外の方でやっていただくことを条件としてお願いしたい」というのが、私の方の提案です。

小原 手順書が今のままだと臨床研究部の人も入る可能性を残すので、その条文を6.に追加するのですね。

富田 私の提案は、それを1年先に延ばしていただきたいということです。

位田 「1年」という根拠は何なんですか。

富田 その間にもう少し慣れていただいて、いろんな作業の流れの滞りが少なくなるようにお願いしていきたいと思っています。

小原 「慣れてもらう」というのは、臨床研究部の内部の人に慣れてもらうという意味ですか。

富田 それもあります。それから、研究部ではない委員の方もおられますし。

位田 では、その1年間は迅速審査ではなく、本委員会で審査をするということで、いいのではないですか。

富田 どうして、また変えなければならないのですか。

北村 部外の医師は僕と井上先生と東先生しかいないですが、ここで分担させていただくので、「迅速審査の院内委員は臨床研究部でない人であるべきだ」と入れていただいても、何の問題もないと思うのですけどね。もちろん、僕らが質問することはあるけども。

原 議論をする人は多い方が良いですから、富田さんが入ってもらうのはいいのですよ。少なくとも、他の人が入っていただくのは可能ではないかと思います。

小原 ただ、手順6.では「1名、1名」ということですね。

原 そうですね。まぁ、臨床研究部から案が来ますから、「事実上」という意味ですけどね。

位田 オブザーバーみたいな形なら構わないと思いますけど。

小原 院内に3名の候補者がいて、その内の誰に対しても「任せてもいい」という信頼関係ができるのであれば、やはり、「臨床研究部は省く」という形で選出していただいた方が良いとは思います。人がいないのなら、「やむを得ず」ということも考えないといけないのですけど、3名がいますので、「その方々のいずれでも具合が悪い」というのであれば、その理由を改めて説明していただきたいのですよ。

富田 いや、「具合が悪い」という意味ではなくて、「待って欲しい」と言っているのです。だから、ある程度、動き出して、皆さんも「どこで何がされているな」というのが見えてきだしたら、思い切ってお願いしたいと思っていますし、いつまでも私一人でやるのも辛どいですので…。

位田 いや、でもそれは臨床研究部のやる話ではなく、臨床研究部を通った後の話ですよね。

富田 だけども「臨床研究部員ではダメだ」という話には納得がいかないのです。

位田 それは、中立性に疑問符が付くからですよ。

富田 その中立性というのも、これまで扱ってきた案件を見てください、具体的に。一般論ではないのです。今日に提案していただく審査の中身も外からの大規模なやつです。私がどうこうする問題ではないのですよ。

位田 だから、他の3人の先生では何故ダメなのかというのが理解できないですね。「慣れていただきながら」というのは、「他の3人の先生に」という意味なんですか。

富田 3人だけでなくてもいいのかも知れませんけども、できるだけ慣れていただくようにしたいと思います。

位田 今のところ、3名しかないわけですよね。

小原 3名の方が具体的に、今は具合が悪く、1年経てばOKになるというのは、どういうところですか。

富田 このシステムを作ったのは昨年の暮れで、やっといろんなことが動き出すかどうかという段階なので、なんで待ってもらえないのかということですよ。分担するのがいちばん良いのは百も承知ですよ。

小原 慣れる慣れないというのは、「その3人の人は、今の時点では慣れていないがために判断力が十分でない。しかし1年が経てば、経験を積んで、十分に受け止めて判断する力を養える」という認識ですか。

富田 私も何を判断したらいいのかということを考えながら、悩みながらやっている段階なので、もうちょっとそういうことがディスカッションできるだけの蓄積をしたいと思ってします。

関谷 そうしたらやっぱり、1年間は迅速審査をやめて、その人達に慣れていただくためにも、先生を中心にしてみんなで審議するのが筋ではないですかね。先生がインチキをするとは全く思いませんが、今そのままで迅速審査をやると、迅速審査自体の信頼性がないというか、外から見た時に質が問われないかという気がします。

富田 そんなことをおっしゃるのであれば分かりました。具体的な現場の状況がなかなか伝わらないので、申し訳ないのですけど。

関谷 いや、実際的にはそれで良いと思うのですよ。ただ、委員会の性質から言えば、先生が入られることによって迅速審査自体が無効になるというか、「意味ないじゃん」という話になってしまうわけですよ。

富田 このシステムは、説明をして一旦、了解をいただいたのですよ。

関谷 先生が入るということもですか。

富田 はい。

原 「各1名」というところを「各1名以上」としたら、「入ってはいかん」ということがなくても済むのですけど。

位田 委員長が富田先生以外を指名されれば、それで話が終わるのです。

富田 運用でやっていただいてもいいので、お願いします。

原 誤解されても困るのですが、臨床研究部の人間が「慣れていない」とか言う話ではないのですよ。

富田 しかし実情としたら、それがここでは一杯なんですよ。区別するほど人がないというのが…、

原 ここでは前から臨床研究の審査はやっていますよ。

富田 分かりました。では、口を挟みません。

原 いいですか。よろしければ…、

位田 それで、迅速審査部というのを作るわけではないので、迅速審査は必ずA先生ならA先生に行くということではなくて、この審査はA先生、次はB先生に行くということは当然、あり得るわけですね。

岩橋 特に説明が必要だとか、理解するために必要なことは、富田先生にお聞きしたらいいわけですよね。

富田 別にディスカッションすること自体は構わないですけど、ちょっと最初は大変かも知れない。

原 6.の項目に補足をしたいと思うのですけど、[院長が指名する倫理委員会の委員()]の()の部分に「臨床研究部に所属しない院内委員及び院外委員から各1名以上」ですか。

小原 「1名」で良いのではないですかね。

原 原則は1名で良いのですけど、判断に迷ったら、他の人に投げたいという場合もあり得ると思うので、「以上」を入れておいた方が良いかなと…。若干、審査した感じからいいますと、迅速審査を外部委員でやってみると、変な判断をしてスッと通してしまって、責任を問われる場合がありますから、場合によっては他の外部委員の意見を聞けるような形にした方がありがたいのと、臨床研究部以外の院内委員にもやっていただかないと、責任感の荷が重くて堪らんという意味なんです。

小原 いいと思います。

広瀬 研究内容によって、その時その時にブレーンになっていただくということでも良いわけですね。

原 固定したメンバーではなくて、「委員長がその都度、指名する」にしましょうか。迅速審査の委員になるかならないかは事実上はあまり関係がないと思うのですが、富田先生に「迅速審査に関わっていただいても結構」という意味でしたら、「~各1名以上を含む」とでも入れていただいたらと思います。

位田 正式な迅速審査の委員に富田先生が入ってもらうというのは、ちょっと問題があるけど、まぁ…、

北村 最初のご提案のとおりで良いと思います。

原 そうですか。では「~院長がその都度、指名する倫理委員会の委員(臨床研究部以外の院内委員及び院外委員から各1名以上、委員長自身も含む)」という形でよろしいですかね。はい、じゃぁそういうことで…。
ちょっと手間取りました。手続き関係はよろしいですか。では、臨床研究申請①ですね。

 

議事(3)「臨床研究申請案件審議(2件)」

北村 ①番の申請者が今日は来れないとのことで、次回に回していただきたいと思います。

原 では②番ですか。②はどなたが説明をしていただけるのでしょうか。

野崎 2つ出していますが、②は「術前化学療法、原発巣手術施行後、病理学的に腫瘍が残存している乳癌患者を対象にした術後補助療法によるCapecitabine単独療法の検討(第Ⅲ相比較試験)」ということです。申請書のP2の「6.研究概略」にも書いていますように前向きの臨床研究ですが、「(3)医療的背景」としては、乳癌に対する現在の術前化学療法は、アンスラサイクリン系薬剤を3回のサイクルで施行した後、リンパ節転移が陰性の人はそれで終わりなんですけど、陽性の人はタキサン系薬剤を追加して終わりとなります。で、術前の抗癌剤治療をやって手術をした時に、癌細胞が1個もないという事態が時としてあって、これをpathologicalCR(pCR=病理学的完全奏効)と言いますけど、その場合の患者さんはあまり再発しないということが知られているのですけど、術前化学療法をやって手術をした時に癌細胞が少し残っている人は、再発率がやや高いというのが一般的に知られていて、今までの臨床試験では、アンスラサイクリン系薬剤とタキサン系薬剤を投与するというところまでしか治療として成立していないので、「乳腺手術をやっても残っているかも知れない人を、そのまま放っておいてもいいのですか」という疑問があります。それで、そういう人達にCapecitabineという抗癌剤を術後に追加すれば、再発率が下がり、生存率が上がるのではないかという臨床的疑問から、この試験が組まれたということです。
ただ、「効果があるだろう」と考えて行った過去のいろんな臨床試験では、再発率が変わらなかったり、追加する意味がなかったという結果もあるので、本当にこの治療が良いのかというのは結局、アンスラサイクリン系薬剤とタキサン系薬剤を入れるという術前化学療法をして、手術時に癌細胞が残っていた人を2群に分けて、1群は現在の標準治療となっている経過観察を行い、もう1群はゼローダというCapecitabineの薬剤を、副作用に注意しながら投与し、その差を見て、さらに治療を追加する必要があるのかどうかを見るという試験です。

原 はい。では、ご質問等をお願いします。

小原 副作用というのは、どの程度の予想がされますか。

野崎 副作用に関しては、ゼローダは基本的に経口の内服の抗癌剤ですが、高頻度に出るのは皮膚障害で、手足症候群というのが出ることがあります。それは大半は出ると思います。

小原 では、主に皮膚障害であって、内臓関係への影響はあまりないということですか。

野崎 あるというイメージはあまりないですね。ただ、ゼロではないですし、骨髄抑制とかがかかった時に感染症を引き起こす患者さんもおられる可能性はあります。

岩橋 「強い下痢が生じた時には服用中止」と書かれている「強い下痢」というのは、どういうことが発生する可能性があるということなんですか。感染症ですか。

野崎 粘膜炎というか、皮膚障害と同じように機序はハッキリしていないのですけど、抗癌剤は基本的に細胞増殖を止めますから、小腸粘膜とかの増殖も止めて炎症を起こし、下痢になることがあるのです。軽い下痢であれば、服用をやめるとか、下痢止めや整腸剤等で回復はするのですけど、ご高齢で抵抗力がなかったりすると、下痢をした時に腸内細菌の感染を起こして、感染性腸炎でキツイことも可能性としてはあり得ると思います。

岩橋 「重篤な場合になることも否定できません」の「重篤な場合」とはどういう状態ですか。

野崎 例えば感染性腸炎から敗血症を起こすとかですね。そういう場合は当然、入院して治療しないといけないという判断になります。

小原 今回の場合はCapecitabineが投与されるのですけど、これはこういったケース以外の別の目的で投与されることがあるようなものですか。

野崎 通常は転移再発で見つかった乳癌の患者さんの抗癌剤治療として、アンスラサイクリン系とタキサン系以外に、ビノネルビンとかこのCapecitabineとか他のお薬も幾つかあって、ほぼ同じぐらいの位置付けですけど、転移再発の患者さんでも、アンスラサイクリン系とタキサン系で抗癌治療をしていて、なおかつ再発しちゃった人にCapecitabineを投与して、反応する腫瘍が縮小する例があるので、この早期の段階でやってみようというコンセプトで、これを選んだということです。

小原 これと同系列の抗癌剤があるということは、効き方や副作用にかなり個人差があって、人によってはこちらが適しているという、違いが出やすいということなんですか。

野崎 実地臨床では、例えば事前に測定して「こういう人だったら副作用が出やすい」「…出にくい」というのが、まだ商業ベースで測れないので、こういった臨床研究の形で検体を取っておいて、それで調べて、データを全部集めた時に「こういった遺伝子系の持ち主だったら副作用が出やすかった」とか「…出にくかった」という情報にもつなげるということです。

関谷 2群に分けるのは、どうやって分けるのですか。

野崎 それはランダマイズです。

関谷 ランダムに分けて、投与すると決めた方に同意書をお願いするのですか。

野崎 これは900例で多分450例ずつに分けますが、本当に無作為割り付けをすると、たまたま片方の群にご高齢の方が集まるといったことがありますから、1-7の「1-3-1.ランダム割付」に書いているように、6つの割付調整因子で調整します。

富田 偏りをなくすといっても、基本的にはランダムで、当院でやるのではなくて、中央で決めるのです。

関谷 で、決まった人に同意説明書を見せて、「あなたは選ばれました」とやるのですか。

野崎 割り付けをやる前に、「どちらに振られるか分かりませんけども」という同意を得てから、データを中央センターに送って、中央センターで割り付けをして、その結果が返ってくるので、「あなたはこっちの群になりました」とお伝えして、治療に入るのです。

原 ランダム割付はするけれどブラインドにはしないという形で、この薬での治療を加えるか加えないかということですね。

野崎 そうです。

位田 この病院の目標は3例だけですか。

野崎 ウチの規模の数と、結局、日韓共同で900例なので、この話が11月ぐらいに僕のところに来て、僕が忙しかったので審査とかも1ヵ月ぐらい手間取っていたので、その間に多い施設では10例というように、どんどん申請が入って埋まってしまって、今は400~500例になっていると思うので、多分、ウチとしては、今回の倫理委員会が通って、念頭においている人を来月とかに申請したとしても、2~3例ぐらいになるという予想ですね。

位田 日韓共同研究ということは、韓国でも同じことをやり、韓国を含めて900例なら、日本では何例ぐらいになるのですか。

野崎 ちょっと分かりません。

位田 じゃぁ結構です。もう一つ、遺伝子家系があるかどうかということをトランスレーショナルリサーチでやるということですが、説明文書の2-13の説明は素人が読むと分かりにくいですね。下から3行目のところに「手足症候群という副作用の個人差を検討するために、7mLの血液を採取して、DNAを取り出して、DNAの個人差を比較検討します」とあり、遺伝子解析をすることになりますよね。そうすると参照指針が適用になって、「ターゲットになる遺伝子は何か」というのをできるだけ説明するということになっているはずなんですけど、ある程度は目標にしている部分はあるのですかね。遺伝子検査に関する追加説明は、よく使われる分かりやすい説明なのでいいのですけど、この研究について「どういう遺伝子を調べます」というのが書いていないですね。
実施計画書の方も基本的にトランスレーショナルリサーチの方ではなくて、第Ⅲ相の比較試験の説明がしてあって、これはこれでそのとおりだと思うのですけど、「TP-DPD活性の臨床的意義及び手足症候群の機序解明」というところは今日の資料には入っていないと思います。

野崎 多分、2-19に書いてあるとおりで、「調べる対象になる遺伝子は、現在全てが明らかになっているわけではありません。関係する可能性がある数多くの遺伝子を調べることになります。将来、関係する遺伝子が見つかった場合には、その遺伝子をさらに詳しく調べ、その際、あなたの診療記録を使わせていただく可能性もあります」ということですね。ですから、このプロトコルを書いた時点では、まだ「この遺伝子が関係するだろう」という予測が付いていないくて、今回の臨床試験に合わせて検体を採らせていただくので、保存しておいて、後年、「この遺伝子が関係しているのではないかという臨床結果が得られた時に、そこを引っぱり出して調べます」という意味なので、「ここを調べます」とは書いていないのですね。

位田 オールゲノムで解析ですか。そうでないと分からないですね。そうすると余計に問題が起きる可能性が高くなるという話で、そのへんの遺伝子検査をされることを、本来ならここの部分で説明される必要があると思うのですけど。

野崎 そうすると、なんで他のところでは倫理審査に通ったのでしょうかね。

小原 遺伝子検査した検体の遺伝データというのは、後の利用のためにも、データベースに登録されていくのですか。

野崎 それはそうだと思いますけど。

位田 それも書いていないですね。

小原 ただ、1-48に「氏名は事務局のデータベースに登録されることはない」と書かれていますね。

位田 だから、これが遺伝情報も含まれるかどうかというのが分からなくて…。説明文書の方は第Ⅲ相試験だけでなく、トランスレーショナルリサーチの話も含んでいるので、同意書も2種類あるのですけど、実施計画書訂正版というのは第Ⅲ相試験の計画書なので、ここには遺伝子解析の話は出てこないのですよね。だから「第Ⅲ相試験の結果についてはデータには残らない」というのはハッキリ分かるのですけど、遺伝情報を解析した時には、データバンクに入れるといったこともあり得るかも知れないと思うのですけど。

小原 そのあたりは白黒がハッキリとしているべきですけど、入れないと事後の利用に使えないですよね。

位田 トランスレーショナルリサーチについての実施計画書はないのですか。

野崎 やるからには当然、京大の方にはあると思うのですけど、それは僕らの方には来ていないので、「分からない」としか言いようがないです。今回、こういう意見が出たということであれば、向こうに問い合わせて、確認をしなければいけませんね。

小原 通常、こういう複数の機関が関わって、しかも今回のように日韓という場合には、データベースの管理は一元的にされるのですか。

野崎 中央で一元的に管理されます。

小原 それは、「ここで管理する」という決まったものが存在しているのですか。

位田 1-49にCSPORデータセンターというのが載っていますね。だから、これはCapecitabineの第Ⅲ相試験のデータの管理ですよね。

原 今、出ているご意見とすれば、遺伝子の解析の方に関する計画書、それから、遺伝子情報の取り扱いについての説明が必要であるということですね。

位田 Capecitabineの第Ⅲ相試験は多分、問題がないと思うので、そこの部分はやっていただいても良いと思いますけど、トランスレーショナルリサーチについては今は判断できないと思います。

原 もう1点…。2-21で「遺伝子カウンセリングを希望される時はご相談ください」と書いていますけど、これはここの病院でできますか。それとも、どこかに回すことになるのですか。

野崎 これはできないので、京大の遺伝子センターを紹介して、説明を受けていただくことになると思います。

原 今の議論ですと、「第Ⅲ相試験は承認して、遺伝子の方はペンディング」というのが一つの方法ですし、そういう分離に意味がなければ、全体をペンディングというのが一つの方法で、後は、委員のどなたかに遺伝子の部分を委ねるという術もありますが、一任するにはちょっと無理があるかなということで、遺伝子の課題をクリアできない感じなんですけど、研究のスタート時期とか、そのへんのタイミングはどうなんですか。

位田 京大ではもう通っているのですか。

野崎 京大はもう通って、多施設なので、もう40~60病院で通っていいます。

位田 後は京大の医療倫理委員会を信用するかどうかすが、私はもう委員ではないのでノーコメントです。

野崎 この倫理委員会は2ヵ月おきですね。今、既に術前化学療法が終わる人が来月に手術を迎えるので、2ヵ月後の承認だと、来月の時点でご本人に申請の話ができないので、せめて本体だけでも今回にご承認いただけたら、今回、トランスレーショナルリサーチはしょうがないということで、追加できるように…、

原 「血液採集を治療開始前と治療後に」と書いてありますが、分離して進めることはできるのかな。血液を保存しておけば良いということですか。

岩橋 本人が「ダメだ」と言ったら、できませんね。

野崎 「本体の試験はいいですけど、これは嫌です」と言う人もいるかも知れません。

富田 分離した部分だけ、迅速審査をするということはできないですか。

位田 多分、このトランスレーショナルリサーチについての実施計画書みたいなものがあるはずですが、それがここにはないので判断しにくいというだけの話なので、実施計画書なりプロトコルが出てくれば、それで判断をするか、もしくは中央機関の倫理審査を信頼してゴーサインを出すということだと思います。

野崎 多分、「それは中央で通っているので…」ということだと思うのですが…。

原 進め方についてご意見はいかがですか。中身が文章の修正とかなら迅速審査もアリかなとは思うのですが、書類そのものを改めて出してというような話を迅速にするのは、若干どうかなと…。あるいは全員に書面を送り、通常審査をネット利用で進めるという形でやるのもあり得ると思います。

小原 それがいちばん無難ではないですかね。

位田 基本的には、研究方法に問題はないと私は思いますけど、書類が整っていないのに承認するわけにはいかんだろうということです。

原 ネット利用の審査という手順も、本当は書いてはいないのですけど、迅速審査の一種という形にして、ただし、事実上は皆さんに送っていただくということでいかがでしょうか。トランスレーショナルリサーチの実施計画書と説明も要るのかな。いや、説明はこれ以上はないのですかね。

北村 確認ですけど、第Ⅲ相試験は承認ということで、トランスレーショナルリサーチだけは保留にして、後日に通常審査ではなく迅速審査の拡大で行うということですか。そうすると、先ほどの規定に戻せば、臨床研究部の方を外すとか、細かいことがいろいろありますが。

小原 通常でやったらどうですか。ただ、そのやり方をネットで持ち回りにするということにして…。

原 通常でいきましょうか。では、今のご説明のような結論でよろしいでしょうか。では、この件は資料を入手していただき、そういうことでよろしくお願いします。特定されていないような遺伝子の解析の話はこれまでもあまり審査したことはありませんので、なるべくキチッとした形で進めたいと思います。場合によっては、説明書に補足していただくために、この病院としての説明文書を作成する必要があり得るかも知れません。
では、次の件のご説明をお願いします。

野崎 大腸癌の初回治療はFOLFOXという治療と、FOLFIRIという治療があるのですね。それにベバシズマブ(アバスチン)を上乗せすると、癌が半分以下になる奏効率が10%ぐらい上乗せになって、無増悪生存期間がだいたい2~4ヵ月延びるということで、ベバシズマブが使える人は使った方が良いと…。で、初回治療でFOLFIRIまたはFOLFOXにベバシズマブをプラスしても良いのですが、実は日本全国で7割ぐらいがFOLFOXの方を先行して、それが無効になった時の2次治療でFOLFIRIを使うという流れの方が多くありますが、実際には1次治療をFOLFIRI、2次治療をFOLFOXにしても構わないのです。そういうことで、オキサリプラチンを使ったFOLFOXにベバシズマブをプラスする治療を、初回治療としてやった患者さんが、「初回治療が効かなくなりましたね」と判断された場合は、2次治療に移行するわけですけど、その時にFORIFIRIにベバシズマブをプラスするというのが、よくある流れなんです。
で、実はこのベバシズマブというのは、体重1kgあたりに5mgを使うか10mgを使うかの両方の使い方があるのですけど、初回治療にFOLIFIRIという治療をやって、2次治療でオキサリプラチンを含むFOLFOXにベバシズマブをプラスした時の治験デザインが、10mg/kgという量で設定されたがために、2次治療で使う場合は10mgが良いのではないかという意見があるのですけど、実際の日常臨床では、初回をFOLFOX、2次をFOLFIRIでいくのに、その時の至適投与量はまだ分からないのが現状です。それで、2次治療でFOLFIRIと併用する時にベバシズマブを5mg/kg使うのが良いのか、10mg/kg使うのが良いのかを調べるために、今回、1次治療が無効になった時に、5mgの群と10mgの群に振り分けて、結果を見るという試験です。

小原 現状ではどちらの量を使っているのですか。

野崎 日本全国、病院によってバラバラなんです。「原則どおりにいこう」というところは10mgを使っているのですけど、どちらが良いかの結果は分からないので、「あえて倍の量を使わなくても5mgで良いんじゃないか」というところもあります。

小原 それは、量を減らせば、かえって効くということもあるという意味ですよね。

野崎 そういうことではないのですけど、ただ、量を増やした方が絶対に良く効くのかということも分かっていないですし、高血圧は当然、量が多いほど出やすくなります。

小原 ということは、5mgでも十分に効けば、副作用をより減らすことができるので、5mgで良いという結論が得られるということですね。

野崎 そうです。ただ、効果が落ちるという結果が出た場合は、やっぱり10mgが良いということになります。

小原 海外では同じタイプの実験はされていないのですか。

野崎 少なくとも昨年11月の時点では海外で同じ試験デザインはなかったと思うのですけど。

小原 FOLFOXとFOLFIRIの順番なんかも、国によって違いが見られることもあるということですね。

野崎 どれくらい差があるのかは分からないのですけど、それはあると思います。昔に別の臨床試験で、1次にFOLFOXをやって2次にFOLFIRIをやった人達と、1次にFOLFIRIをやって2次にFOLFOXをやった人達では、無増悪生存期間や病勢増悪に差がなくて、若干、手術で肝臓を切れる割合が1次にFOLFOXの群の方が高かったので、FOLFOXを先行する方がやや多く、日本では7割ぐらいの施設がこちらになっています。

原 薬の承認としては、5mgか10mgかという用量の目安はないのでしょうか。

野崎 5mgと10mgのどちらも承認されていますし、実は肺癌とか大腸癌でもXELOXという治療だと、15mg/kgという使い方をしています。

原 薬事法の承認の時には、そういう抗癌剤の使い方の制限はないのですか。

野崎 いや、書いているとは思うのですけど、多分「5mgまたは10mg」というような表現だと思います。

原 そもそも承認の時に、適用量の研究はしていなかったのですか。

野崎 僕の手元に本体計画の実施計画書があって、アバスチンの添付文書が付いていますけど、「用法・用量:他の抗悪性腫瘍剤との併用において通常、成人にはベバシズマブとして5mg/kgまたは10mg/kgを点滴・静脈内注射をする」という文言になっているので、どちらでもよろしいということです。

原 どちらでもよろしくなった理由は分からないのですね。元の治験の時に差があまりでなかったのですかね。

野崎 いや、差が出なかったのではなく、初回治療では5mg/kgという試験デザインでやったので、当然、初回治療でやる場合は5mgが承認されたのですけど、オキサリプラチンを含むFOLFOXの2次治療では10mg/kgというデザインでやって、「上乗せする差が出たので認めます」ということで、10mgも承認ということになったのです。

原 予定の患者数は280例ですけど、多分これで差は検出できる?

富田 厳密には272例になっていますけど、ちょっと上乗せして280です。

野崎 一応、2ヵ月間の無増悪生存期間の上乗せ効果があることを期待して、登録期間2年・追跡期間1年・αエラー5%・検出力80%で計算すると、理論では272例の症例登録で良いのだろうけども、脱落例なども考慮して280にしたということですね。

原 特に問題はないでしょうか。日本語問題ではなく、研究のデザインが少し込み入っているので、分かりにくいと言えば分かりにくいですけど。

位田 患者用の説明文書は正確なんでしょうけど、ものすごく細かく書いてあるので、患者さんが読んで、本当に分かるかなと思いました。

野崎 書かなさ過ぎると「書いていない」と言われ、書き足していくとだんだん分かりにくくなるという…。

富田 結局、基本的には「説明をちゃんとしなさい」というのがベースで、説明文書は補助的になるようです。

野崎 特に、副作用の部分などの文章は分かり辛いから、メーカーが作った普通の患者さん向けのイラストの付いた文書も使います。

富田 実際、これを初めて患者さんに話をする時は、どの位の時間を取るのですか。

野崎 やっぱり30分ぐらいはかかりますね。

位田 2-7の図を見ると分かりやすく、要するに「このどっちの方がより効果があるか」ということですね。

富田 基本的に「他所で振り分け、こちらでは決めようがないので、どちらになっても応じていただけますか」ということを認めてもらわなければあかんので、ここがいちばん大変ですね。

関谷 で、実際に始まった時は「あなたは10mgですよ」と言うのですね。

野崎 それは分かります。大抵の治験薬は本当のダブルブラインドでプラセボも使うので、患者も主治医側も分からず、分かっているのは中央のみということになりますが、臨床試験はだいたい分かります。

位田 これはブラインドではないのですね。

富田 人手の多いところだと、治療効果の判定をするのは別の人が担当されることもありますね。

関谷 ちょっとイメージが湧かないのですけど、こういう人達は治ったりするのですか。それとも、治らずに生存期間が延びるという程度のことなんですか。

野崎 基本的にそういう患者さんは治らないですね。

関谷 そうすると、ちょっと長く延びたグループと、あまりそうでなかったグループに分かれるという話ですから、外れの方に当たった人はかなり可哀想ですね。

野崎 分かれるけど、現時点ではどちらかは分からないですし、この試験をやらずに各院所に任せている限りは、永久に分からないので…。

小原 「効いている」「効いていない」という結果の判定は、結構すぐに判別しやすいものなんですか。

野崎 それは毎回、CTで「腫瘍が小さくなっている」とか「変わらない」とかを診ますので…。

関谷 「ほとんど差がない」ということも当然、あり得るということですね。

野崎 それはありますが、ほとんど差がないのなら、「10mgでなく5mgでいいでしょ」ということになります。

原 この薬の多い方が効くのか、逆に副作用がきつく出るのかが分からないと、どっちが得かという自体も分からないですね。

野崎 どっちが得かが分かっていたら、最初からこんな試験自体も組めないですから。

原 そこのところは、誘導しないようにちゃんと説明をしていただいたら良いと思います。ブラインドでもできるような気もしますけどね。

野崎 ブラインドにするとなると、治験の場合などは区別ができないように、専用の特別な薬を作って持ってくるので分からないけど、実地臨床のフェーズ3なので、普通に電カル上でオーダーする時に自分も分からないようなシステムを作って、薬剤部だけが分かるようにするといった手間のことを考えると、ややこし過ぎるのでしなかったのだと思います。

原 あるいは、保険診療との兼ね合いでできないということですね。これは保険診療内の臨床試験でしょ。

野崎 あっそうか。治験は治験実施側が負担するから本人負担もないですけど、この試験は普通の臨床医療の範囲で本人負担があるのに、薬の使用量が分からないと請求もできないですね。

富田 ここらへんは、今はあまり製薬企業の協力はないですけど、これからは変わってくるかも知れません。そうすると、5mgと10mgの差を製薬会社が埋めてくれるというようなこともあるかも知れませんね。ダメかな。

原 よろしいですか。この件については、特に問題があるというご意見は出ていませんので、承認ということでよろしいでしょうか。では、この件は承認ということで審査を終えます。

位田 承認でいいのですけど、申請書のP2の「医療的背景」は何も書いていなくて、「研究目的」はごく簡単なものなので、これだけを見ると「何の話だろう」と思いますから、もうちょっと書いていただきたいと思います。

原 今日に次の議事はもうできませんね。資料もありませんので利益相反の議事も先送りします。治験審査委員会は報告だけですから、資料が出ていますので、それを見ておいてくださいということでよろしいですね。以上ですね。では次回の日程をお願いします。

丸山 急用で内田が席を外しましたので、代わりに提案します。次回の予定は2ヵ月後の第3火曜日ということで、6月21日の18時半から行いたいと思いますが、よろしいでしょうか。場所の方はここではなく、今日に審議ができなかった臨床研究申請①の尾崎医師の関係で、中央病院内の会議場所を押さえて行うと思いますが、追って連絡したいと思います。

原 議題ではないですが、震災の関係では当院はどんなことをされているのですか。救援は行っておられるのですか。

富田 第1陣で赤木さんが行きましたが、野崎さんは第3陣でしたか。定期的に行っています。

野崎 いや、そんなに早くなく、第5陣ぐらいでした。

赤木 毎回、支援に行っているのと、メインは仙台なんですけど、救援物資は仙台の病院で必要なものがあれば、こちらから提供するようなことをやっていますね。単独のウチの病院だけでやっているわけではなく、民医連のネットワークでやっていることもあって、ウチの病院としては…、

富田 最初は仙台の坂総合病院がセンターで、そこに行かれたのですね。

赤木 そうですね。2日目に行ったのですけども。

原 翌日という意味ですか。早いですね。

赤木 はい、次の日に…。まだコンビナートが燃えていたりとか、電気もまだ通っていなくて…。

関谷 そんな時にどうやって行かれたのですか。

赤木 車です。救援車両の登録を京都府にして、それでフリーパスで東北自動車道を行きました。で、主には被災場所で診療するのと、病院内に来た患者さんを診療しましたが、その時はまだ急性期だったので、患者さんは結構多く、300人ぐらい来ていましたけども、1日に救急車が30台ぐらいでした。

小原 民医連としたらまとまりがあって、ネットワークで動けると思いますけど、それ以外の医師との連携みたいなものは、現状はどうなっているのですか。

赤木 医師会は結構、行っていましたね。医師会はGMATという組織を組んでいまして、ウチにも四方先生とかに依頼が来たりしていましたけども、直接「誰々さん、何日から行ってください」という依頼が来るのですね。それで行ったり、看護協会も同じような登録制度があって、依頼が来たら行くということをしています。

位田 広域で、県と県の割り振りみたいなのをやっていましたよね。それとは関係なしに動かれたわけですか。

赤木 はい、それとは関係なしに動きました。今のところ「近畿の民医連はどこそこ」というような割り振りはやっています。いちばん最初は行けるとこだけしか行っていないので、今よりは全然、入れれていないです。

広瀬 「バンキシャ」というテレビ番組を点けたら、民医連坂病院が映っていましたのでビックリしました。

小原 それはどういうふうに映っていたのですか。

広瀬 救急治療の番組として映っていましたね。

野崎 救急外来で患者が運び込まれていたので…。

赤木 あそこは、僕が行った次の日から、東北テレビがずっと常駐しています。

原 今もドクターやナースが行っておられるのですね。

野崎 今も行っています。初期は外傷や溺水などの本当の救急でしたけど、今はだいぶ慢性期で、僕が行ったのは4月9日からですけど、避難所を回って、感染性胃腸炎とか感染上気道炎の人が多いので、それに対する診療をするとか、虚弱な高齢者とか、避難所で1ヵ月も経ってビタミン欠乏とかになっても、「ご飯はパンしか食べていません」と言われて、「野菜を食べてくださいとは言えないな」と思ったりとか、そんな感じの内科的疾患が多いです。

関谷 医薬品とか必要なものは、だいたいもう全部あるのですね。

野崎 医薬品はもうだいたい揃っています。東北自動車道がもう普通に通れるようになったら、物資も普通に通れるようになったので。

原 はい、ありがとうございました。

 

 

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