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第四十一回 倫理委員会 議事録

京都民医連中央病院

日時

2011年1月18日(火) 18:30~21:45

場所 太子道診療所3階多目的室
出席者 外部委員 原委員長、勝村副委員長、位田委員、岩橋委員、関谷委員、広瀬委員
内部委員 北村副委員長、内田委員、東委員、富田委員
事務局 丸山
オブザーバー 清水、橋本、齋田(治験申請)
欠席 赤木委員、井上委員、中村(特別委員)

議事

原 第41回倫理委員会を開催いたします。手順は議事に書いてある順番で進めたいと思います。できればガイドラインまでやってしまいたいと思いますが、最初に委員の交代からお願いします。

議事(1)「委員の交代」

内田 かねてから院長が「機関の長は外す方が良い」ということで、臨床研究関連の議論も多くありますから、吉中先生から富田先生への内部委員の交代をお願いします。富田先生には快諾をいただいております。院長につきましては、議決には加わらないオブザーバーとして引き続き関わっていただきますが、今日は出張で欠席です。

原 ただ、倫理委員会の規定を変える必要はないですか。院長が委員に入るような規定はなかったですか。

内田 いや、外部の委員を各分野から選出していただくとあるだけで、院長に関してはなかったと思いますが、もう一度確認し、もしそういう規定になっていましたら、事務局で整理しまして、次回に変更をお願いします。

原 事実上、諮問する側が委員になっている状態は今日に解消して、改正が必要なら、次回にお願いします。

北村 「委員長・委員は院長が任命する」ということで、「院長が委員になる」という話はないのですが、「委員長のなり手がない時は院長が代行する」という項目はあります。

内田 分かりました。失礼いたしました。規定の改正をなるべく…、はい。

内田 かねてから院長が「機関の長は外す方が良い」ということで、臨床研究関連の議論も多くありますから、吉中先生から富田先生への内部委員の交代をお願いします。富田先生には快諾をいただいております。院長につきましては、議決には加わらないオブザーバーとして引き続き関わっていただきますが、今日は出張で欠席です。

原 ただ、倫理委員会の規定を変える必要はないですか。院長が委員に入るような規定はなかったですか。

内田 いや、外部の委員を各分野から選出していただくとあるだけで、院長に関してはなかったと思いますが、もう一度確認し、もしそういう規定になっていましたら、事務局で整理しまして、次回に変更をお願いします。

原 事実上、諮問する側が委員になっている状態は今日に解消して、改正が必要なら、次回にお願いします。

北村 「委員長・委員は院長が任命する」ということで、「院長が委員になる」という話はないのですが、「委員長のなり手がない時は院長が代行する」という項目はあります。

内田 分かりました。失礼いたしました。規定の改正をなるべく…、はい。

 

議事(2)「治験審査審議(前回継続)」

原 はい。では、委員の交代はそういうことで、次は治験ですね。前回、多発性硬化症の関係の治験を次の段階へ進める案件がありましたけど、A段階のデータがなくて議論ができなかったので、今回へ継続となりました。齋田先生に来ていただいていますので、要点という感じで結構ですが、お願いできますか。

齋田 それがいちばんの問題だったのですか。

原 はい、基本的にそういう問題です。リスクが全然ないわけではない治験ですから、Aの段階からBの段階に進むためには、基本的に「Aの結果はどうだったのかというデータが必要でしょう」という話でした。

富田 特に「PK・PDについてPartAでまとめて、Bに移る」と書類上はなっていますが、そこがなかったのです。

齋田 はい。よろしくお願いします。手元に英語の資料がありますが、第Ⅰ層試験というのは「日本人と白人との間で、薬物の分布・濃度・代謝に差があるのかないのか」ということについてのデータを得ることが目的でして、日本人では初めてこのモノクローナル抗体の点滴をしたデータということです。「PartB開始通知書」というのがありますが、日本語でPartBをやる人達に対して「PartAの結果はこうでした。で、開始が可能ですと委員会が認めた」と去年の9月に通知したものでして、そこで報告があって承認されたということなんですね。こちらを見ていただいた方が分かりやすいかと思いますが、細かいデータは英語のやつです。
PartAは全12例、本院で10例、国立精神・神経センターで2例の患者さんの参加で実施されました。欧米ではTYSABRIという商品になっていますが、ここではBG00002と呼んでいるのモノクローナル抗体を、1時間をかけて点滴して、その後、患者さんの体内で薬物がどのように変動したかというデータを、頻回に採血をさせていただいて、まとめようということでした。結論的には、「欧米人と基本的に差がないということが確認できたということと、短い期間の安全性のデータでは、これまでに知られていなかったようなものが新たに分かったということはなく、全般的には安全であるというように判断された」という報告が皆さんに送られています。
細かくは、英語資料のP2の表"Pharmacokinetic parameters,meen±SD"が大事で、日本人12例と白人36例の同じようなフェーズ1のスタディを比較し、日本人と白人の各平均では体重差がありますので、白人の中から日本人の体重に近い14人を抽出して、その人達と日本人との比較も行っています。白人全体と比較すると体重差が影響して、Cmax(血中最高濃度)が121と107で差があるようですけども、同じような体重の白人は117で大きな差はありません。その他いろんなパラメーターがありますが、日本人は体重が少なく、血中濃度が高くて、長く滞留して、half-lifeも長いということが出ており、白人の体重補正をしても若干そういう傾向があるように見えますが、大きな有意差ではないということが出ています。それに関連して最後のページに、多数の欧米人で体重といろんな副作用の間にどんな関係があったかを解析した表がありまして、体重が大きければ濃度がやや低くなっているわけですが、体重と様々な副作用の間には相関は認められないという参考データに上げられています。こういう解析はサンプル数の少ない日本人の中では不可能です。
そしてP1には「少し問題があったケース」が12例中3例あったということです。1例目は私の患者さんですが、点滴をして1ヵ月目ぐらいの早期に再発があったということで、再発も一応アドバースイベントとして報告することになっていますから、報告されていますが、この方は尿閉になったということで、元々、排尿が難しかったのでわずかな変化なんですが、悪化したということで私のいない時に来院され、担当医がステロイドを点滴されています。この患者さんの場合は日頃から症状の変動がめまぐるしく、心因的なものもかなりある方ですので、再発ではなかった可能性がかなりあると、私は思っていますが、TYSABRIの投与中の再発はほとんど起きないと言われていまして、事実、唯一の事例ですので、かなり珍しいと会社側もコメントしています。
2例目は治験中に網膜の剥離が起きた方ですが、この治験の何年か前にも同様の網膜剥離が起きていまして、眼科の治療を受けておられます。主治医が「薬物に関係あり」というところに丸をしたので、報告が上がってきましたが、網膜剥離というのはかなり偶発的にいろんな理由で起き、委員会での検討では「薬物には関係がない可能性が高い」という判断になっています。
3例目も私の患者さんでして、3回目ぐらいの点滴中に喘息様の発作があったということで、中断しまして、ご本人の意思でそのまま治験をやめられました。何年も前から時々、喘息のある方でしたけども、最近は小康状態だったので、薬物そのものと因果関係があるか、点滴をしているということと関係があるのか、ちょっと分かりませんが、投与という行為との因果関係がある可能性があるということで報告されています。喘息が出るということは、これまで世界中のいろんな報告では上がっていません。
この3つ以外には特に問題になるようなことはなかったということで、これらの報告も世界的なデータベースの中に入れられ、投与している全世界の医者へ警告として流されるということが行われていますが、因果関係はハッキリしていませんし、偶発的な可能性もあるというふうに考えられる事象です。ということで、「特にこの試験を中止するべきだというような現象は見あたらず、全般としては安全性がほぼ確保されているから、Bのステップに行ってもいいのではないか」というのが、この委員会の結論でした。
もう1つ、「集積結果を踏まえた見解及び安全対策」という日本語資料があります。これには海外の今までの全ての報告が入っていますが、日本の事例は入っておりません。たくさんの事例の中でまとめられるのは進行性多巣性白質脳症(PML)で、これは間違いなく因果関係があるということで非常に注目されている現象です。現在約7万5千人が約4年間にこの薬物の投与を受けて、80人を少し超えるPMLの発症が報告されていますが、投与後1年以内には全く起きていません。で、1年半を超えた頃から若干の発症が始まりまして、2年を超えた頃から4年目までは同じようなペースで増えて、その後は、さらに増えるというような傾向はなくて、ちょっと減るのではないかというカーブが報告されています。それらから計算すると、1000人あたりに1人よりもやや高いぐらいの発生率の事象でして、通常に起きる病気ではありませんので、いちばん怖れられている副作用と言えます。
新情報としては、去年の10月のヨーロッパの多発性硬化症学会で、この会社の副社長、私もよく知っている日系ハーフのアメリカ人ですが、「PMLというのは、元々JCウィルスというものを持っている人に発症する」という非常に重要な発表をされました。JCウィルスというのは元々はマウスが持っていて、人間に感染しても何も病気を起こさず、我々の内の約半分ぐらいの人が持っています。で、「JCウィルスが感染しているかどうかを抗体によって検出する非常に感度の良い正確な技術を開発した」というのが趣旨なんですが、それを用いて、今までにPMLを発症した人と発症していない人で調べますと、発症した人は全員がJCウィルスの感染があって抗体は陽性で、陰性の人からは今のところ1人も発生していないということが分かったということです。
このデータから、アメリカのFDAは会社に対して「全患者さんにJCウィルスを持っているかどうか調べて、結果を本人に通知すべきだ」と命令しまして、会社はその態勢を採りつつあるということで、治験に入っている人はアメリカでなくても、全世界でそれをやるようにするということです。これが検査されますと、持っていない方は、5年続けても10年続けてもPMLは起きないだろうし、逆に持っている方は1000人に1人ではなくて、500人か400人に1人が発症するリスクがあるという情報を、患者さんに渡すことができます。PML以外に確実となった重大な副作用はありませんので、持っていない人にとっては、非常に良い治療法だということになる可能性が高いというふうに考えられています。日本で今、投与を始めた患者さんが発症するかも知れないのは2年後ぐらいですから、その頃までにはデータが得られるのではないかと、確証はないですが会社は「努力する」というふうに言っています。
その他に注目されいているのは悪性黒色腫。これは、治験の中では当初から問題になったのですが、治験ではむしろ偽薬(プラシーボ)群の方が多くありました。ただ、モノクローナル抗体については癌免疫を抑えるかも知れないということで、「いろんな癌及び黒色肉腫についてのデータを蓄積せよ」というのが世界的な当局の要望事項となっていて、追跡して報告されていますが、実際には関係がないのではないかと思っています。我々はFTYという別の治験もやっていまして、その治験でも当初はこの病気が問題になったのですが、データをオープンしてみますと偽薬グループの方が多かったということです。白人では治験中にかなり高率で発症していますから、ホクロの小さい点をバイオプシーしてみますと早期の癌が見つかるということで、通常、黒色肉腫というのは死亡率のかなり高い病気ですが、治験中では早期に見つかって、みんな切除して、助かっており、今までに黒色肉腫で死んだ人は1人もいないということが報告されています。
あと、腎不全と自然流産についても注目して蓄積するということで、報告が増えてきていますが、7万5千人が使っている中でのこれぐらいの事例ですので、特に有意に増えているかどうかは明確ではありません。
PMLという一定のリスクはあるのですが、もしこの治療がなく、自然な経過では進行が非常にある患者さんですので、リスクを承知しながらも、それだけの方が使っているということでして、日本においてもこれに該当する患者さんがかなりおられるので、リスクとのバランスを考えながらも、選ぶ患者さんがいるだろうということで、治験をやっているということです。

原 はい、ありがとうございました。ご質問等、ありませんか。先程おっしゃったJCウィルスの検査法について、治験参加者に説明はできるのでしょうか。

齋田 はい。ただ、FDAの話や会社が検査態勢を作りつつあるといった話は、現在の計画書にはまだ記載されていません。した方が良いとは思いますけどね。

富田 そういうようなのは、例えば治験コーディネーターが付加的に説明するという…、

齋田 私は口頭でやっていますが、どうしているのかは会社に聞いてみましょうかね。できるのだったら早くそのへんを…。治験の会議の席で医者や我々に対しては、努力するという説明がありましたが、いつまでにできると明言できる状況ではないということですね。

原 確定的な内容でなくても、FDAの勧告はきちんとした形で出ているのでしょうし、研究発表もそうでしょうから、いつできるかはハッキリしなくても、重要な情報ですので、そういう見通しを確実に伝えていただく方がよろしいと思います。

齋田 そういう要望を付けましょうかね。

勝村 JCウィルスを持っているかどうかの検査方法は、日本でも可能ですか。

齋田 いや、その会社だけしか持っていないです。

勝村 態勢を整えるというのは、検査ができる態勢ということですか。

齋田 全世界で今から作りますということで、今はできません。

勝村 今は言っても検査ができないので、検査が可能となって同時に言うことに意味があるということですか。

齋田 そうですね。「態勢を作る」と会社は言っているけども、「いつ作る」という明確な提案はまだ貰っていない段階で、技術はもう確立している段階ですね。去年の10月に学会で発表されたばかりですが、全世界で検査態勢を作るにはアメリカとヨーロッパの何ヵ所かに拠点を置いて、日本は患者数も少ないのでアメリカに送ることになると思いますが、そういう仕組みでできると思いますね。国内でも研究では抗体を計ることはできるのですが、今度、会社が作ったものは確度が非常に違うそうです。

位田 今のご説明だと、JCウィルスがある人には治験をしないということになるのでしょうか。

齋田 いや、それは患者さんにデータ提供して、「1000人に1人ぐらいのリスクだと今まで言っていたのが、あなたの場合は400~500人に1人くらいのリスクになります」と説明した上で、選ぶということはあると思います。ただ実際は、選ぶ人はだいぶ少なくなると思いますね。

位田 同意説明文書をどこまで修正できるか分かりませんが、「JCウィルスというものがあれば、PMLを発症させると考えられています」というところまで書いてありますよね。

齋田 ある方しか発症しないのですが、あれば発症するというわけでもありません。

位田 もちろんそうです。確率の問題ですけど…、

齋田 確率というより、おそらく何か知らない発症させる理由があるわけです。

位田 患者さんはそのことを知らないで、治験の受け入れをオーケーするかどうかの話ですよね。

齋田 今は「1000人に1人ぐらい発症しています」とリスク説明をしています。

位田 それはPartAの治験で明らかになったわけですよね。

齋田 PartAというより、全世界の4年間の症例蓄積において出てきたのです。

位田 そうすると、そういう危険性があるということを患者さんに知らせないで治験をやって…、

齋田 いや、それはPartAの前に既に説明しています。

位田 でも、「あなたは持っている」「持っていない」は…、

齋田 今、現実には検出方法がないわけです。

位田 でも、会社はそれをできると言っている。

齋田 できるけども、まだ開発された段階でして、現実にはできる状況ではないですね。日本人のリスクが現実になるのが2年後ぐらいですから、希望的には、2年後までにはぜひできるようにしたいと願っています。もしできなかったら、「そこで私は中断します」という方が現れる可能性があると思いますね。

位田 そうすると、この会社が海外でやっている治験についても2年後…、

齋田 継続としての治験はやられていると思いますが、治験は既に終え、市販されて4年になります。

位田 JCウィルスの有無でPMLが起こるということは、どういうふうにして調べられたのですか。JCウィルスを見つける方法はないという話ではないのですか。

齋田 いえ、抗体の感度と特異性との両方の問題があるのですが、両方とも非常に高い方法であれば、正確に同定できます。今までのは低い技術だったが、今回、非常に高い技術が開発でき、それを用いて、過去にアメリカでやった治験の患者さん達に適用してみると、100%が持っている人達で、持っていない人からは1例も出ていないということが分かりました。だから、これを全体に広げたいということを言っているわけですね。

位田 そうすると、日本の場合はこれからやられるわけですから、会社の側で可能であれば、当然、それをやられるべきではないでしょうか。

齋田 ですから、「この人達のリスクが出てくる2年後までには、やれるようにして欲しい」というのが我々の要望ですし、会社側もやりたいと言っていますが、口頭での話で、文書で確約しているわけではありません。

位田 患者さんの側から言わせると、「それが分かるのだったら、分かってからして欲しい」とおっしゃるかも知れませんね。そうすると、治療への期待かリスクを取るかの、患者さんの選択次第ですけど、そのへんの可能性をどういうふうに伝えて…、

齋田 私の個人的なやり方ですが、「会社はそれをできるようにすると言っているが、万が一できなかった場合は、そこで中断するというやり方も選べます。2年ぐらい経ってリスクが現実のものになる時点で、もう一度考え直したら良い」と言っています。現実にはまだできないわけですから。

位田 質問ですが、開始通知書のP2の「安全性結果概略」に「4.有害事象発現例数:3例」となっていますが、「5.有害事象内訳」のところには網膜剥離や再発は書いていなくて、しかも4件になっていて、問題にならないような事象が並んでいるのですけど、これはどうなっているのですか。

齋田 おかしいな、本当ですね。これはまた別ですね。これはどういう表やろうね。

位田 つまり、患者さんには「こういう有害事象が出ました」という話は、しっかり説明される必要がありますよね。その時にこの英語の資料だと難しく、私はこれを読んでもよく分からないのですけど、患者さん用にどういう資料を付けられるのかなと思って開始通知書を見ると、ずれているので…。

齋田 患者さん用の同意説明書は前回の資料に出ませんでしたか。

位田 重大な副作用の可能性、特にPMLの話はJCウィルスも含めて書いてありましたけども、これに有害事象の話は出ていなかったと思う。

齋田 日本で全く新しく起きたことはなかったということで、むしろ7万5千人の全世界的なデータに基づいて作っているということですね。

位田 これは第Ⅱ相のPartBにいくための説明書ですね。そうすると「第Ⅰ相試験でこれだけの有害事象が出ました」というのを患者さんに説明する必要があるんじゃないかと思います。

齋田 日本におけるデータですか。担当者向けの会議の時では、全ての説明はありました。

位田 ドクターも当然ですが、患者さんは投与されるわけですから、そのへんは書かれるべきではないですか。

齋田 4.と5.は別で、4.が先程の3例ではないですかね。すると、4.の3例には説明が付いていませんね。

位田 そうすると、数字の上だけで言えば12例の内に合計7例の有害事象が出ていた話になりますから、そういう説明が記載されていないというのは問題あるのではないですか。だから、「PartAはどうだったのか」という話が前回も出たわけで、先生にご説明いただいたわけですけど、今回も開始通知書で齟齬(そご)があったり、医者でない者にはほとんど分からない英語の資料だったりするわけです。

齋田 眠気や頭痛という5.の表は会議の席にも出ませんでしたので、私も初めて見ますが、実際にはあまり問題にならない事象で、先程の3例は若干問題があると思いますけども。ただ、全部を挙げだしたら全世界の…、

位田 いや、全世界的なことを申しあげているのでなく、12例だけの話ですが、通知書でさえこれだけしか書かれていないし、英語資料は「どうもそうらしいな」ということしか分かりませんから、これで「PartAは本当に大丈夫です」という説明をどうやって患者さんにするのかなと思います。要するに「海外の例ではこれぐらいのリスクがあって、これだけ安全性が高いですが、でも日本人ではやっていないから、日本でやりましょう」という話ですね。そしてやってみたら、大きな副作用・有害事象だとは必ずしも私も思いませんけど、これだけあるのですから、当然、「日本人でやった時にはこうでしたよ」という説明を患者さんにされないといけないですが、「じゃぁどんな事例があるの」と聞かれて、これを患者さんに見せても絶対に分かりませんよね。

齋田 この3例に関しても、私達の専門家が「いずれも無関係であろう」という判断をしたということで、症例の解説は要らないということですね。

位田 ただ、それだったらそういうふうに文書にしていただかないと、倫理委員会としてはなかなかオーケーしにくいと個人的には思いますけど。

齋田 「全般的に海外のデータと差がない」というのが概括的なまとめだと思うのですが、それで良いのではないでしょうか。

位田 そこはよく分かりますけど、日本での有害事例の中身をハッキリ示されないのなら、その理由が要るのではないですか。

齋田 示されているのではないですか。

位田 では、何故この3例の中身がここに書かれなかったのでしょうか。先生は表を見なかったとおっしゃいましたが、見なかったらこれで納得しますか。

齋田 開始通知書はよく分かりませんが、実際は全員を招いた2時間ぐらいの報告会で、今の問題ケースについてのレポートがあったり、質問の受け答えとか、そういう時間を設けたというのが事実ですけど。

位田 この通知書というのは病院長宛ですね。

齋田 私自身はこれを見ていませんから知りません。会社側が病院に出した結論的なレポートなんですかね。もっと詳しいレポートがあるはずですから、これには抜けているのではないですかね。例えば英語資料に該当するものがあるはずだと思います。

位田 開始通知書の後に英語のスライドが付いている分がありますが、これでしょうか。

原 この通知書の3例とか4件という部分には「投与開始後4週間」と書いてありますので、おそらく初期の分だけを書いてあって、3人の人に4件が出たという意味でしょうね。本当は位田先生がおっしゃるように、その後も含めたPartAの結果というのを日本語で、メチャ詳しくなくてもいいのですけれども、まとめていないと…、

齋田 会議で聞いていて納得しているのですけども、患者さん向けのそういうものが必要ということですね。

原 …必要だし、本当は今日もそういうような形でまとめられていたら、話は簡単なんですけど。

齋田 すみません。おっしゃる通りで、この4.と5.は4週間だけのもので、その間には頭痛といったものしかなく、4週間以降に3例の問題が起きてきたということから、3番目の重篤な有害事象が0になっているのですね。

原 4週間以降の分を英文を張り付けて代用しているような印象を受けるのです。

齋田 会議の席におきましても、3例の問題ケースについては「あくまでも最終報告ではありません」という形での報告でした。

原 因果関係の判定はともかくとしても、有害事象レベルとしては網膜剥離なんかは重大な事象でしょう。

富田 ただ、実施計画書のP5に書いてあるように、開始後4週間のPK・PDと言われる薬物動態のチェックというのが、PartAの元々のプランなんですね。

齋田 この英語の3例については重篤な有害事象としてのレポートですが、1ヵ月を超えてから起きているということで、当初の報告の中には含まれていないのです。治験が終わってからの追跡調査ですね。

原 治験は4週間で終わっているということですか。

齋田 元々はそうなんですよ。4週間の部分とその後の部分で2つの部分から成り立っているのです。

北村 治験実施計画書のP5の元々の治験デザインでは「PartAの投与開始後4週間の中間解析を基に、Bに移るのはオッケーですよ」という話で、元々、決められたデザインに基づいて報告が行われて、オッケーが出たということですね。

齋田 そうですが、その後のデータをできるだけ集めて一緒に提示した方が良いということですね。

富田 その後の6ヵ月に及ぶデータも、願わくば評価の中に入っていると矛盾はないのですけど…、

齋田 6ヵ月のデータは今、まとめているわけですが、今日も何かしていていましたね。

富田 多分、その後も薬物動態を調べておられるのでしょうね。

齋田 薬物動態はもうやらないと思いますね。安全性と有害事象だけだと思います。

富田 まだ全部は出ていないということですね。

齋田 今日、私のところのデータについても「最終の締め切りをしています」と言っていましたね。

原 重篤な有害事象が3例だとしても、有害事象は多分もっといっぱい出てくるわけですが、それは直ぐにはまとまらないでしょうね。

齋田 風邪をひいても何でも有害事象ですからそうです。今はデータを固定している段階です。

勝村 PartAを始めてから今はどれぐらい経っているのですか。

齋田 いちばん早い方は4月に始め、遅い方でも6月ぐらいだったと思いますね。ですから、全員がほぼ6ヵ月が終わったというタイミングですね。

勝村 元々のプランでは、始めて1ヵ月ぐらい経ったらPartBも速やかに始めようと思っていたのですか。

齋田 1ヵ月のデータでBについての結論を出して、並行してやるということでした。

勝村 現実には並行ではなくなっているわけですね。

齋田 いや、他の施設ではBをスタートしているところもあると思います。

勝村 だから、PartBを並行してやる場合は4週間のデータでできたけど、この時点で考えれば、それ以降のデータもあるわけですね。

齋田 実際上は12例の内の10例は私の患者さんでして、だいたい知っているのですけども、特別の問題はほとんど起きていません。もちろん、風邪をひいたりとか、いろんなことは起きていますけども。

原 Aの4週間というのは中間解析の意味で、Aそのものは24週間ということですね。

齋田 最初の4週間のデータをまとめる会議が9月頃に行われましたから、それだけの時間がかかるのですね。

原 当初の4週間でBへ進むかどうかを判断することになっていたとしても、その先のデータも出てきているわけですから、やはりこの段階でのデータを示しておく必要はあろうかと思うのですね。

勝村 大きな問題がなかったということは理解できるのですけど、この倫理委員会としては、PartAの情報がもう少し分かりやすく文書で出されていれば良かったと思いますね。

原 ですので、Bの方を認めるとした場合、特に患者向けの説明書をどうするかという話ですね。

齋田 Aはpharmacodynamicを中心にしたものとごく短期的なadverse eventで、実際上はBで症例を増やしてさらに蓄積するというのが、元々の趣旨だと思うのですね。ですから、Bを進めないと現実にはあまりできないのではないですかね。

勝村 この開始通知書の安全性結果概略と同量ぐらいで良いと思うのですけど、とにかく4週間を超えているわけなので、患者向けにPartAの結果の概略を…、

齋田 実際はちょっと難しいと思います。これだけでまた大きな会議を開かないと…。誰がそれを作るかということになりますと…。

勝村 例えば、この「重篤な…」という3例の説明があって、もう少し分かりやすく…、

齋田 患者向けの資料を作るといっても、中間的に会社が勝手にまとめるものしか、実際には資料にできないですが、会社側がまとめるのもそう簡単にはできないと思いますよ。今、データを集めてきて、整理してということをやっているわけですけども…。

原 ですから、今日に出されたスライドの英語資料があるわけでしょ。「薬物動態で西洋人と日本人はあまり変わりません」という部分と、「国内の重篤な有害事象としてはこのようなものがありました」として、「専門医の検討ではあまり関連がないのではないかという見立てをしています」というようなものを…、

齋田 それは多分、会社単独では作れないのではないですかね。委員会を開かないと…。

位田 それがないと「Bに行ってよろしい」という倫理委員会としての意見が出せないのではないですかね。

勝村 お医者さんを集めて説明しているレベルを、もう少し一般の人にも分かるような表現で伝えれば、倫理委員会では承認できるが、お医者さん達は分かっているけど、どうも患者にその情報を与えるのはちょっと…、

齋田 9月の段階では3例についての報告はありましたが、全般としてはまだまとまっておりませんので、あくまでも中間というか、「予報的な報告です」という形での報告でした。実際にそうだと思うのですよ。

原 だからといって「最初の4週間分しか出さない」というような話にはならないということですよ、データが出ているのだから。

齋田 いや、データが出ていないというのが事実。

原 いや、出ているではないですか。

齋田 それは最終的な報告ではないですよ。あくまでも一部分ですよ。だから、6ヵ月間の追跡をして、そこでまとめるというのが…、

原 だけどまとまっているわけでしょ、一応。

齋田 いえ、まだまとまっていません。これはあくまでも問題ケースがあったという速報です。予報です。それらを含めた6ヵ月全体のまとめというのは、今、データを集積中です。

原 それで、できないのですか。

齋田 私は何とも言えませんが、難しいと思いますけど。

富田 患者の説明用にだけの、正式な書類でなくても良いということなんでしょうか。

勝村 そうそう、お医者さんに説明されていることと同等のことが、患者さんも知れるという形を採れたらいいなぁと思いますよね。

富田 最終的な結論としての正式な書類はまだないわけで、それが出てくるのはもう少しかかります。

齋田 治験の担当者に説明したもので1ヵ月のもの以外は、追加的に「こういう3例の予報的な問題点がありました。ただ、最終報告ではありません」という報告がされ、これはその時の資料です。

勝村 それがそのまま患者も知ろうと思えば知れるという形があれば望ましい。

齋田 「あくまでもこれは予報である」ということであればできると思いますよ。ただ最終報告は、6ヵ月間のデータを全部集めてきてまとめるというスタンスなんですね。

原 だから「PartAの全体の解析はもう少し時間がかかる」というのは、それで結構だと思うのですが、3例の報告もある意味ではPartAの中間報告でしょ。

齋田 そうですね、後半部分の…。

原 ですから、解析報告書とかそういうことではなくて、後半部分の中間報告の要点を、患者が分かる形の日本語で渡せないかということですね。

齋田 私は会社側の人間ではないから責任は持てませんが、それはできるだろうと推測しますね。ただ、作成するのはあくまでも会社側でして…。

原 では、今日に承認するとすれば、「作ってくれ」という条件を付けるということです。

齋田 そういうことですねぇ。分かりやすく…。

原 そんなに詳しく、全部を日本語にする必要もないかも知れませんが、この英文は分からないですから…。

齋田 少なくとも9月のBのスタート時の説明の時に予報的に出されたデータのものは、患者さんにも分かるようにしてくれということですね。正式なものは委員会を開いてオーサライズされなければ出せないというのが、会社側の立場かなと思うのですけど、そうでない予報的なものでいいというのなら、多分、出せると思いますね。

原 「予報」という言葉はちょっとよく分からないですけれども。

齋田 中間報告ですね。

位田 これは元々、中間解析をした後で並行して進めましょうという話ですよね。こんなもの、最終報告になるわけはないですよね。いずれにしても「中間報告でこんなことが出ました、というのを、何らかの形で会社の方から出していただけませんか」という話なので…。

齋田 それは理解できますから、私個人にも言ってみますけど、多分、オッケーするだろうと思いますけど。

原 ですから中間報告と、先程のJCウィルスの検査技術の開発が進んでいるという話と…、

齋田 「…進んでいて、やる意思がある」ということもそうですね。

原 その2点を日本語書面で被験者向けの情報提供として、追加説明文書みたいな形で出せるようにしてください。被験者にとっては重要な情報であると思いますので…。

齋田 そうですね、その方が良いと思いました、私も。私が引き受ける話ではないのですが…。

位田 だから、条件付き承認ということで、条件が満たされなければできませんという話ですね。

原 条件付き承認ですね。要望というレベルとは違うと思います。

齋田 そうすると、正式に委員長から会社側に要望するということになりますね。

位田 いや、委員長が「結論としてこういう条件が付いて、この条件が満たされれば承認するのがいいですよ」というのを病院長に出すのですね。で、病院長から治験責任医師の森先生に伝えて、そこから会社です。

原 …ということでよろしいですか。異論がなければ採決しましょうか。

齋田 では、外に出ましょうか。

位田 やっぱり、出ていただいた方が…。

齋田 よろしくお願いします。(齋田氏退室)

原 では、2点ですね。PartAの中間報告とJCウィルスの検査技術の開発状況について、被験者にも分かりやすく伝えるような追加の説明文書を出していただくという形で、承認ということでよろしいでしょうか。特に異議がなければ、そういう条件付き承認という結論にいたします。

富田 「これを出す」という会社側の返事があれば、それでスタートで良いのですね。

位田 出てきてからじゃないですか。

岩橋 出てきて、それが患者さんに提示される…。

富田 そこで要りますかね。

位田 患者さん向けの文書ですから。出てこないと患者さんに説明できないじゃないですか。

富田 それはそうですけど…。文書も要りますけれども、ドクターなり治験コーディネーターの人がキチッと資料で説明するかということの方が、逆に言えば大事なんではと、個人的には思いますけど。

位田 それはよく分かりますけど、患者さんが文書を持たずに、耳で聞くだけでどの程度お分かりになるかという問題ですよね。

富田 逆に、文書でどれほど伝えられるかという…、

位田 いや、文書だけで理解してくれという話ではもちろんないと思いますよ。文書は説明の補助ですから、文書を見ながら「ここに書いてあることはこういうことですよ」と説明してもらうのが本来の話だと思います。

勝村 文書がないと、多分、説明もちゃんとできないですね。

富田 特に強く反対しているわけではないのですけど、会社がどのくらいのレスポンスのタイムラグでやってくるのか、延び延びにならないかちょっと気になるものですから。

原 「文書で出してください」という条件付きの承認ということですので、出ないとダメです。で、その程度の文書をまとめられない者が、口頭でまともに説明できませんから。

北村 大変なものなんですか。別に大したものではないのではないですか。

位田 だって、このスライドでも出ているわけですからね。

原 無いものを作ってくださいと言っている話ではないのですよ。

富田 レスポンスの良い会社であれはね…。

位田 もし、レスポンスが悪い会社であれば、「そんな会社の治験を、何でここがやらないといけないのか」という話になると思います。確かに、患者さんにとっては非常に良い結果が生まれるかも知れないけれども。

富田 治療経過を見ていますと、滅多にない良い薬だと思っていますのでね。

位田 やっていただきたいとは思うけれども、だからといって、会社側の都合だけでやってもらっても困るのではないかと思います。

富田 早くしてくれることを、私も望みます。

北村 ちょっとよく分からないのですけれども、当院の倫理委員会が条件付き承認を出したわけだから、当院の中だけの文書を、簡単な1枚もので説明の附属資料として付けるというわけにはいかないのですか。

富田 正式なものは、中ではちょっと作れないということですよね。

北村 例えば森先生が1時間ぐらいで打てるようなものではないですか。

富田 そこまで責任を持たれるかどうか分かりません。ちょっとご本人に聞いた方がいいのではないですか。

原 だから結局、メーカー側が治験の実施主体であるということの関係でしょうね。

富田 齋田先生はそういう考えを持っておられると思います。

位田 どの程度の文書を出してくれるかということでしょうね。

原 だけど、ここの病院がメインなんですから…、

勝村 すごく当たり前の簡単なことをいっているのだから、こっちのニュアンスがちゃんと伝わって、かつ、直ぐに反応しないと大問題だと思いますよ。企業倫理の気持ちの問題として…。

原 患者へそれなりの説明ができるかどうかという話ですから…。いずれにしても、そういうことを結論にしておいて、手順はどうしたらいいですかね。一応、書面を貰ったらいいですかね。

北村 委員長に見ていただいて、一任でよろしいのではないですか。

位田 一任でいいのではないですかね。

富田 では、それを原さんの方へメールで回します。

原 では、齋田先生に戻っていただいてください。(齋田氏入室)
結論ですけども、議論で出ていましたように一応、条件付きの承認ということで、今言ったような被験者向けの追加の説明文書を、そんなにやたらと詳しいものでなくて結構ですので、2点のテーマについて追加で出してください。で、出てきたものは病院長経由で結構ですが、私のところまで届けてください。

齋田 私も側面から言うだけで、正式の部署ではありませんが…。

原 ここがメインの治験の実施機関ですから、それではダメという話にはならないと思いますけどね。はい、どうもありがとうございました。

齋田 お世話になりました。どうもありがとうございました。よろしく。(齋田氏退室)

 

議事(3)「臨床研究申請案件審議」

原 次です。疫学研究ですが、説明していただけますか。

富田 管理番号5とある臨床研究等申請書をご覧ください。小児科の尾崎望先生から出されたものですが、本人は待機で病棟の患者さんのケアをしているということで、私が代わりに説明するよう頼まれましたので、分かる範囲で説明いたします。課題名は「小児における肺炎球菌血清型別抗体の後方視的及び前方視的研究」ということです。研究責任は仏教大学の武内教授で、ウチの尾崎先生が分担研究という格好で協力したいということです。利益相反については問題ありません。
P2の「6.研究概略」ですが、疫学研究に属し、[(3)対象疾患領域]は、化膿性髄膜炎の原因となる肺炎球菌に関しての抗体を調べたいということです。何故かと言いますと、肺炎球菌というのは子供で敗血症や化膿性髄膜炎などの重症感染を起こす原因になるのですが、抗生物質は耐性化が進んでいますから、ワクチンを打った方が良いだろうということです。PCV7というワクチンが世界的に使われていまして、日本ではもうじき実用化するのではないかと言われていますけど、それを使う前後の肺炎球菌に対しての抗体の上がりを調べておきたいということです。[(4)研究及び医療の概要]ですが、各病院にあるこれまでの血清を使い、PCV7が始まる前の日本人での抗体価のベースを調べておきたいということと、やがてワクチンが開始されますので、開始後の抗体価の変化も見ておきたいということになります。[(6)目標症例数]の本院分は「?」になっていますが、本人に確認したところ「過去の分とこれからの分を合わせて50例ほど集めたい」ということで、研究全体では750例が目標です。P3に移りますが、本院に関しては特に資金的な援助はないということだそうです。アウトラインはそんなとこです。
P4以降は研究実施計画書で、[2.研究の背景]もだいたい述べましたが、いちばん最後の段落では「PCV7をこれから打っていくことになりますが、世界的には髄膜炎の流行るタイプが地域によって違うので、結果的にワクチンの効果も良く効くところと、効きにくいところがあるのではないかということが気になっている」、「実際にワクチンを打って、抗体値がどの程度上昇するかというのは、日本人ではまだ未知なところがあるので確認したい」、「中には十分な抗体を得られない患者さんもいるかも知れない」ということです。
で、P5の[3.研究目的]ですが、「PCV7接種前後の抗体価の推移を主に調べる」ということになります。
[4.研究計画]ですけれども、「2009年1月から2011年12月までの3年分の臍帯血及び、6歳までの各年齢層の血清の抗体価を調べたい」ということだそうです。ですから一部は、もう既に病院で予備に保存されている血清を使いたいということと、これからはワクチンを使った子供さんが出てきますので、そういう方の抗体価も調べたいということです。検体は大阪大学の微生物病研究所感染症国際研究センターの大石和徳研究室に送り、ここで測定していただけるということで、当院からの検査費の持ち出しは特に必要ないということになっています。その下に研究協力者の一覧がありますが、今のところ全国で6ヵ所の病院から検体を集めるそうです。
「検体採取から測定の流れ」以降は省略しましてP7に移りますが、これは患者の保護者用の説明文書です。これから採ろうという場合は、通常の外来で来られた方にこれをお渡しして、次ページの同意書を後から郵送してもらうという運びになっています。それと、「検査結果についての解説が欲しいかどうか」を被験者側が選べる質問項目があります。また、ワクチンを打たれている人と打たれていない人、あるいは過去に打たれた人を調べて、それぞれの抗体の上がり具合を確認したいので、同意してただいて送っていただける方は、通常の診療でも血清が保存されていますので、そこから抗体を調べるという流れになっています。なお、過去の分については、現在、保存されている分を調べるということで、これについては同意は取れていませんが、広報などをすることで同意に代えたいというプランになっています。まぁ、やることは通常の診療の範囲内のことで、通常、血液検査をした場合には、必ず再検用に余分目に血清を採りますので、必ず保管してあり、それを特定の抗体測定に使わせてもらえるかどうかということで、それほど被験者への負担はありません。

原 はい。研究スタイルはデータの解析ということですから、前向きの分と後ろ向きの分析でも、患者さんに害が及ぶ話ではないのですけど、ワクチンを打つ前と打った後との抗体の上がり方を調べる研究の目的が、いまいち良く分からないのですけども。ワクチンを打ったら抗体が上がるということは、既にワクチンの治験で調べているはずの話ではないのでしょうか。

富田 一つは肺炎球菌に関しての抗体価ですが、血清のタイプが幾つかあって、どのタイプが元々どの程度の広がりがあるのか十分に分かっていないから、それをチェックしたいということです。それから、ワクチンが打たれだしてからはどのタイプが有意に上がってくるかということを調べたいのではないかと思うのですが…、

位田 調べる内容はそうだと思うのですが、それを調べたらどうなるのですか。

富田 一つは、この7価のワクチンを打った場合、日本人の特性としてどれが上がるのかということで、上がらない例もあるようですから、効果を抗体価で特異性を確認したいのではないかと思います。もう一つは、肺炎球菌の重症感染で来院している場合、要するに入院レベルの方から採るようですので、それに該当するのがあれば、過去ではどのタイプで上がってくる可能性が高いのかという、特異性を調べたいのだと思います。

位田 ただ、それを調べてどういう役に立つのですか。

富田 だから、重症感染を予防する上で、ワクチンが実際に日本での重症感染の頻度に上手くフィットするのかどうかということを見たいのではないかと思うのですが…。

位田 それは書いてないですよ。P6の[アウトカムあるいは解析の内容]というところの最後の方に、「時間外に来院して診療を受ける必要がなくなる」とは書いてあるのです。

富田 これはちょっと私も余分なことと思うのですけど。

位田 これを除くと、確かに「特異性を調べます」というのはよく分かるのですけど、「調べて、じゃぁ何がどうなるのでしょうか」というのがここには書かれていないので…、

富田 ワクチンが1種類しかないようですから、確かに実態を調べても、それでワクチンの種類を替えてみるという話にはつながらないです。ただ、結果が出るとしたら、おそらくワクチン世代で上がってくる抗体の力価が、以前の日本の重症感染での肺炎球菌のタイプにフィットするかどうかという部分かなと思います。

位田 これは重症感染症を発症している小児が対象なので、患者さんにとってどういうプラスになるのか。

富田 現在、来られている患者さんへの利益はないですね。将来…、

位田 ただ、「現在、あなたのプラスになるわけではありません」とは書かれていないので、そのあたりは書かれるべきですけど、「ワクチン導入が抗体保有状況に関連するかを確認することができます」とあるだけで、「将来の患者さん・患者予備軍に対してはどういうプラスがあるのか」というのも書かれていないのですよ。疫学研究ですから、そんなに詳しく説明する必要がないとしても、ある程度は分からなければ…。

富田 やはりデータベースを作ることが目的なので、臨床研究ほどのメリットはないかも知れないですね。

岩橋 同意書に接種日を尋ねる欄がありますから、今はもう小児用肺炎球菌ワクチン接種が始まっているのではないですか。これは、今後に接種が始まってから使用するためのものかも知れませんが。

富田 もうじき導入のはずですが、今はまだです。向こう2年ぐらいのプランになっているようで、開始された時にはもうワクチン世代が出てきますので…。

位田 今は任意で接種をしているわけですか。

岩橋 計画書の[研究及び医療の概要]を見ると、ワクチンに効果があれば、耐性菌も発生しにくくなるわけだから、それで、できるだけワクチンを投与する態勢を広げていきたいのかなと推測されるのですけど、患者用ではそれをストレートには書いていないですね。

位田 [研究及び医療の概要]のところでは3つの目的があって、血清型の上昇についての基本的な治験の方針という話と、接種によってどの程度上昇するのかという話と、それから、利益があるかどうかという点では3つ目がいちばん重要かと思うのですけど、間接ワクチン効果によって接種していない子にどのような影響を及ぼすのかという話ですよね。どういう意味なのかが読んでいてよく分からない。

富田 私もよく分からないですし、症例数もこの程度で、こういうところまでいけるのかなと思いますが…。

原 間接ワクチン効果って何ですかね。

位田 「ワクチンを打っている子の場合と、打っていない子の場合を比べて…」という話ではないですか。

原 「7というタイプではない病原体でも効いている」とか、そのような意味の気がするのですけど、ちゃんと説明していないので分かりません。どちらにしろ「今は1種類しかないけど、それは7価というタイプのワクチンで、それがどの程度、子供の肺炎系統を中心とした病気に効きそうかを知りたい」という話なんでしょうけど。

富田 7価というのは、特定の7というのではなく、7種類の抗原を使っているということです。で、この抗原に対応した肺炎球菌は、微妙に違う種類が色々あるのですね。

関谷 これのワクチンは一社固有のプレベナーという商品しかないのですか。

富田 よく分からないですけど、おそらく今はそこのそれだけしかないと思いますけどね。

関谷 なんとなく、これが効くかどうかみたいな話に感じる。

位田 効くかどうかなんでしょうかね。

富田 ある程度は効くだろうということを前提にはしているのでしょうけど、本当にそうなのか、日本国内での流行株にフィットしているのか、そのへんも見たいということなんだろうと思うのですけど。細かい血清タイプに分けた抗体価の基本的なデータもないというのを、他の説明文に触れられていましたが、それを押さえたいというのが、趣旨だと思います。基本的には「現在行っている医療行為をほとんど乱さないで、残りの血清でデータベースみたいなものを作って、細かい分類で肺炎球菌の血清タイプを確認しておきたい。そして、今回のワクチンでそれがどう変わるのか」ということなのかなとは思うのですけどね。小児科ですので、大きな治療効果というよりは、わりと小技のテーマだとは思うのですけど。

原 ワクチンというのは抗体が上がるかどうかで承認され、実際に効果があるのかどうかは調べませんから、調べるというのは大事なことだとは思うのですけどね。で、例えばこの7価の分を使ってもあまり肺炎を減らすことにはならないとか、他のタイプが増えることもあると書いているように、いろんな可能性が考えられるから調べることには意味があると思うのですけど、ドクター方はもうちょっと日本語を、一般の人間が読んで分かるように書いて欲しいですね。書く人は違うのですけど、毎度毎度そういう傾向があります。

位田 データベースを作るというのなら、それは一つの重要な研究目的と思いますので、「データベースを作ります」と書いていただければ分かりやすいのですけど、そういうことは書かずに、「抗体価が上がるかも知れない」という話が出ていて、親御さん宛の文書のように「どのように抗体保有状況に関連するかを確認することができます」と言われても、読む方は「だからどうなの」と思うだけです。

富田 むしろ実施計画書の方の問題ですよね。

位田 取りあえずは…。それで、それがもうちょっとハッキリしていれば、親御さん宛の文章ももうちょっとハッキリするのではないかと…。

富田 私も、おそらくそういうことだろうとは思うのですけど、分かりにくいと言えば分かりにくいですね。疫学調査では必ずしも患者に何か与えるものがあるということには拘らないので、「基礎的なデータを揃えます」と、計画書にある目的をハッキリとうたった方が良いのでしょうかね。

位田 これ用に血液を採血するわけですか。

富田 いえ、そうではないですね。血液検査では少し血液を残しますので、外来あるいは入院した患者が血液検査をする時に、「費用は取りませんので、それを使って調べさせてください」という格好になります。

位田 この病院では2011年1月以降の検体に関してだけ担当するということですね。

岩橋 いや、先程「過去分も…」と言っていましたね。

富田 2009年1月から2011年12月までの分です。

岩橋 それは残っている血清を…?

富田 残っている分と、前向きの分ということです。

位田 P5の[検体採取から測定の流れ]では、「11年1月以降の検体に関して同意書を得る」とありますが…?

岩橋 先ほどの話だと「それ以外の過去分は広報か何かをするという形で、測定の対象にするということで良いのではないか」とおっしゃられていました。

位田 そういうことは、どこにも書いていないですよ。

富田 それは付け加えて、レトロの分は広報してやるというふうに考えています。

北村 かなり全体的に、読み手が色々忖度(そんたく)しないと分からないことが多過ぎて、検討するには情報が足りなさすぎる気がするのですね。目的、内容、そのへんの相互の脈絡が分かりにくいし、本来、研究実施計画書とリンクした形で、患者さんへの説明文書も書かれているべきなのに、計画書に書かれていないような目的が出てきたり、計画書の最後のところには「医者の負担を軽減する」とか、全体の目的があまりにも拡散しているような気がして、検討しにくいですね。これをやっているとキリがなくなるので、出し直してもらってもいいような感じがするのですが、時間的には急がないのでしょうか。

富田 できれば今年度中に始めたいということなので、もう一回、次回にお願いしてもいいかも知れませんね。

原 そうしましょうか。説明をもう少し分かるように書いてくれたら良いのですけどね。

関谷 どなたか説明に来てくれるのなら良いのですけど、本人はいない、文章も分からないというのでは、二重に困りますよね。どっちかをしてくれたら良いのですけどね。

原 そうしましたら、今回は保留しまして、改めて提出していただくということでお願いします。この倫理委員会は安易には通りませんが、厳しいのは私の意見ではなく、皆さんの総意ですから、なるべく下準備をしていただくなり、やはり説明をしていただかないと…。

位田 研究の中身が悪いとは誰も言っていなくて、この書類で分かれと言う方が問題ではないかという話ですね。倫理委員会が分からない話を、患者さんは絶対に分からないと思うのですよ。そこを理解していただかないと…。

富田 私もちょっと分かりにくいだろうなと覚悟していましたが、今回、委員会に加えさせてもらい、これまでよりは原委員長とは連絡を取りやすくなりましたので、あらかじめ細かにご相談をやりながらということでよろしいでしょうか。

原 いいですけど、「これを読んで分かりますか」というのは、僕が読んでも分からなくて大変なんですが…。

広瀬 同意書も分かりにくいですね。

原 そんなに難しい話ではなく、「このワクチン接種を始めれば、実際にどの程度の効果がありそうなのかという目安を、主に患者のデータで調べたい」という話だとは思うのですが…。

富田 ただ、研究の申請書などは書き慣れておられないので…。これでもだいぶ良くなったと思うのですけど。

位田 今はどこでも「研究計画書をどう書くか」というのが非常に問題になっていますね。倫理委員会に出てきた時に、何のことかよく分からない研究は承認しないので、当然、もう一回やらないといけないという話になって、時間もかかります。むしろ計画書を出す前に、臨床研究部などの部署でチェックしていただいて、これなら分かるだろうという計画書を出していただければ、問題は少なくなるだろうと思うのです。ただ、倫理委員長に相談するというのは、基本的におかしいです。

原 いや、簡単なものを相談していただくのは別にいいのですけどね、分からないものは読んでも分からないですよね。「分からん」というコメントでいいというのだったら、それはできますけど。

富田 やっぱり書き慣れていないということがすごく大きく、こういうのを書くにあたって何が必要なのかというのも分からず、例えば「代表が要るよ」「えっ?」といったところから話を始めるのですよ。そういう問題がありますので、どなたかと話をする格好で進めた方が、申請する本人にも話が見えやすくなりますので、あまり嫌がらずにお付き合いいただければと思います。

北村 個人的な意見なんですけど、倫理委員会の議題というのはわりと多くありますので、臨床研究の学術的な部分で詰められる話は、もう少し詰めていただいた方が正直に言うと助かります。

富田 だから、迅速の本来の姿はそういう格好で、打ち合わせながら詰めて、最後にここで承認という流れなんですね。本当はそれで行きたいのですが、始まったところですので、倫理委員会に全部を出して、ここからスタートするという流れになってしまっているのです。

原 臨床研究部でもう少しやっていただいた方が良いのと、それを病院内で結構ですが、富田先生が見るよりは、むしろ素人の方を入れてやってください。医療職ではない方に読んでもらい、「これが分かりますか」と…。

富田 ただ、「素人の…」という話の前段階として、医療的にキチッとした骨組みができていないといけないのですが、むしろそこのところの力量が私も含めてなかなか難しいので…。

原 もちろんそうなんですが、「研究として妥当か」とか「安全か」という話は詰めて議論ができるのに対して、「分かるか分からないか」という話は逆に時間がかかりますので、ちょっと工夫をお願いします。

 

議事(4)「医学研究の利益相反に関するガイドライン(2次案)」

原 次は利益相反管理のガイドラインですが、前回に提案をいたしまして、今日の資料も同じ内容です。
前回も説明しましたように、研究をしようという場合は、特に企業・団体等との利害関係があればオープンにしてくださいということですが、ある場合は退けるという意味ではなくて、研究の評価の参考情報として重視しようということです。この考え方自体は国レベルで進められている話とあまり変わらないのですけれども、国レベルで例示されている線引きと比べると、開示する対象のラインはずっと低く、金額ベースで言うと5万円ぐらいを提案しています。金額のところは変えてもいいのですけど、50万とか100万円ということだとほとんど引っ掛からず、引っ掛かってこないということは何も関係がないかのように映りますので、妥当ではないのかなと思います。5万か10万か1万かというように色々な考え方があるでしょうが、一般の人間が考えて、何らかの影響を受けそうかどうかという線引きをする必要があります。具体的にどういう類のものまで対象にするのかというのは、ある程度は他のガイドラインを参考にカバーをしたつもりで、その範囲をすごく超えているものも特にないとは思っています。例えば家族については親・子・配偶者・同居の親族ぐらいを対象にしています。京都保健会が利害関係のある場合というのはあまりないのかも知れませんけども。

関谷 兄弟もわりと近いのに、ここにはないですが、親・子・配偶者ぐらいまでというのが常識的なんですか。

原 いや、常識というのが確立されているわけではないですが、表に例示してあるような他のところでも、この程度まで入れているところが多いです。もちろん、兄弟とかお祖父さんとか、いっぱいあり得るとは思います。

関谷 限定してしまうと、それ以外のものは何でもありになってしまうので、それを上手く表現できないかなと思ったのですが。

位田 これは、例えば兄が年間10万円を貰っていて、弟に対して「俺がこれだけ貰っているのだから、お前は何かやれよ」という話で、弟がオーケーするかどうかという、そのレベルの話ですね。そうすると、親子や配偶者ならそれなりのプレッシャーがあって、なかなかノーとは言えないけど、兄弟なら「兄貴が勝手にやれよ」とは言いやすいかなという感じがしますよ。

関谷 でも、これには「子」があるではないですか。

位田 子から言われると親は弱いのですよ。それは家族によって違いますが。

関谷 そうか、兄弟は以外と淡泊なんですね。わりと横並びと言いますか、あまりパワーストラクチャーがないということですね。

原 日本社会では、大人になってからの兄弟関係というのはあまり密ではないように感じますけどね。

位田 それが一緒に住んでいると、なんとなく情が移るという…、

関谷 すごい適当やね。でも、どこかで線を引かないといけないからね。

原 あまり無闇に広げても煩雑になるし、そんなのは把握しきれないというようなこともあります。

関谷 利益相反の書類はどの場合でも必ず出るということですね。ない場合は「なし」として出るのですね。

原 例えば今日の分でも、申請書に「問題なし」と書いていますけど、何をもって問題なしとしているのか分からないですよね。

岩橋 そのチェックの基準、「これに照らして」というのが分かるか…。

富田 現在の範囲は分担責任者本人のみで、親・子・配偶者までは入っておりません。

原 ですから、「問題がある」とか「ない」というような価値判断まで踏み込む話ではなくて、「利益相反に開示すべきものがあるかないか」というような欄の作り方になると思うのです。

関谷 ペナルティの項目に「不誠実な行為の内容…」とありますが、利益相反の項にインチキを書いた場合は、ペナルティがあるわけですね。

原 簡単な例は、利害関係が現実にあるのに開示をしなかったという場合ですよね。

関谷 つまり、一応どなたも書くということで、「ない」という記述があって、それが嘘の場合はペナルティの対象になるということやね。

原 そういうことです。ただ、ペナルティというのは、基本的にはここでの審査拒否といったことです。

北村 [3:情報開示の対象者]の①に[情報開示の対象者は研究参加メンバー全員]と書いてありますが、これは「当院の研究参加メンバー全員」と考えてよろしいですね。で、[6:共同研究における情報開示]では[主たる研究施設における利益相反の開示内容を、当施設の委員会に開示しなくてはいけない]というのは、このガイドラインに従って開示してもらうわけではなくて、他の施設での開示内容をここに出せばいいということですね。

原 それしか無理でしょう。そこは明示をした方が良いですかね。今おっしゃった3:の分は「当院の…」と書き加えれば良いですし、6:のところは[主たる研究施設における]を「主たる研究施設で行われた」としましょうか。

位田 これは、主たる研究施設のA先生・B先生・C先生がそれぞれ幾ら貰っているというのが、ダイレクトにこちらにも開示されるということで、そこまで必要かなということですね。

原 そうですね。共同研究に関してという、この規定はあまりないかも知れませんね。

位田 共同研究の主たる施設であれ、分担研究施設であれ、そこの倫理委員会がオーケーすれば、別に我々にまで開示してもらう必要はないという気がするのですけど、それはどうですか。

原 例えば京大が共同研究のメインの施設として、京大の研究者はそのメーカーとたいへん深い関係があったとして、それを知らずにこちらで承認して良いのかというような話を仮定しているのですけどね。

位田 だから「京大の倫理委員会で問題がないと判断されれば」という前提を付けるわけですけど。

原 いや、利益相反に関して言えば、問題の有無の判断をしない可能性があるわけです。確かに「利害関係が強過ぎて、研究に影響を与えそうだから承認しません」という場合もあり得ますが、「開示を受けた上で承認します」というパターンになる場合もあり得ますから、「はねる」とか「はねない」ということではなく、「情報として出されたものは貰っても良いのではないでしょうか」ということですし、研究全体の性格付けをどう見るかというところに影響を与えるから、やっぱり情報を貰った方が良いのではないかという考えです。

北村 理想的にはそうなんですが、そのようなことにすることによって、例えば京大が「当院にはそういう情報を出さないかんのやったら、共同研究をやめましょう」とか、そういうふうな士気になったりはしますか。

富田 実情はよく分からないのですが、例えば化学療法なんかの分野で共同研究のテーマがあるようなんですけど、提案してくるところは、例えば東大の病院がバックにあっても、実際はそういうことを請け負う業者がやっているようなものがあって、「応募しますか」という格好でずっと回ってくるのですよね。そういうのは「情報を貰えたら受けます」ということはできないような気がするのですけどね。だから、これが必須条件と言われると、ちょっとなんか…。

位田 ただ、これは「主たる研究施設で既に開示された内容をこちらへも…」という話なので、向こうで何も言わないで「こっちへ出せ」と言っているわけではないですよね。基準も違う可能性がありますし…。

富田 ただこれは、必ず確認せよという意味合いではないですか。

原 共同研究の話をする時には「当方にも渡してね」ということにはなりますね。

富田 ただ、「ないと受け入れません」ということになると、ちょっといろんなのが…、

位田 どこまで要求するかですね。

原 ただ、研究を発表する段階では、どっちみち出さないといけないでしょう。

北村 実情的には、国際誌では必須になっていても、国内の商業誌レベルではまだ必須ではないのですかね。

原 実情的には必須ではないでしょうね。今からどんどん進んでいくところだと思います。

富田 多分それは了解しているでしょうし、分かるところは良いのでしょうけれども、業者が共同研究のマネージメントをやる場合は難しいですし、「ないと受け入れない」というのが実情に合うかどうか…。

位田 製薬会社が公募して研究の補助金を出している場合もありますしね。

岩橋 8:で[不承認または一部不承認とすることができる]となっていて総合的に判断できるので、「絶対にダメ」ということにはならないのではないですか。

原 ただ6:の規定では[開示しなくてはならない]ですから、現実的に難しいということであれば、例えば「開示することが望ましい」ぐらいにしておいて、[当院が主たる研究施設である場合は]の後に「求めに応じ」と入れておきましょうか。積極的に全部を出さなあかんということもないので、これで良いかなという気はしますね。
で、7:は[被験者への研究計画の説明文書に記載する]とありますが、通常、利益相反の話は被験者に説明せざるを得ない情報だと思いますね。

位田 開示内容にどこまで踏み込むかという、中身の問題がありますよね。「誰それが幾ら貰っている」とか「こういう所で講演した」という話まで細かく書くのか、例えば「講演には行ったけれども、この研究には特に問題がない」という形で出すのか…。倫理委員会には当然、「何年何月にこんなのを貰いました」というのを出してもらわないといけないと思うのですけど、被験者に対してはそこまで開示する必要はないと思うのです。

原 そうすると、どうやって説明するかが難しいですね。

位田 説明文書にどういう形式で書くか…、

岩橋 一応、「こういうことについての資料を提出させて、それに基づいて利害があると判断しました」というふうに書くのでしょう。ただ、その人達を決めつけちゃって開示しないというのも、それはそれで問題になりそうですから、確かにどこまで明らかにするかというのは難しいですね。

位田 説明文書に時々「この研究計画は倫理委員会の承認を受けています」という書き方をしますよね。だから、それと同じような書き方をして、「利益相反について倫理委員会に開示し、チェックを受けています」という一文を入れるという手はありますね。それだと、被験者に必ずしも細かな内容を伝える必要はなくなります。必要なのは「公正な形で研究が行われるかどうか」という判断をどこかがするためだから…。

関谷 利益相反というのは、幾ら貰っていても別に構わないというのですか。

位田 構わないと判断すれば構わないのでしょうね。「100万円を貰っていたらダメで、5万円だったら良い」という話かどうかも分からないですよね。「5万程度なら…」っていう可能性はありますよね。ある具体的な研究計画に関して、どの程度の利害があるかということですし、貰い方とか色々あるでしょうね。

関谷 ものすごく正直に書いているのだけど、一つの企業から5億も貰っているとか、場合によっては「あかんやろう」と拒否することもあるわけでしょう。それはここで決めることですね。

岩橋 ただ、企業は一般的に経済的なことも考慮してやっているといっても、経済的な目的のためだけに開発されようとしているとか、受けるかどうかを判断できるぐらいの材料がないとあかんだろうというのが、委員長のご意見だと思うのですね。1:の「目的」の中で、被験者は③の「研究データの信頼性」も期待するかも知れませんが、どちらかと言うと、被験者への開示が意味を持つのは①や②の目的ですから、それに添うような中身を開示しないといけないということだと思うのですけど、そうするとどういうことまで開示するべきかですね。

原 例えば、説明文書に要旨を書くというようなことにしておいて、その書き方も含めて倫理委員会で判断をするというような手法はあるのですけどね。

関谷 どことどういう利益相反があるといった情報は、どこでも委員会内だけで、書類自体は一般には公開されないものなんですか。一般の人が例えばウェブで見るとかはできないのですか。

原 それは、ここでこれから決めなければいけない。

位田 こちらから特に出さないかも知れないけど、説明文書に載せれば不特定多数に広がる可能性はありますね。受け取った患者さんに守秘義務があるわけではないから…。

関谷 こういう企業との関係があってこういう研究が行われているといった情報も、今はどんどん公開されるようになってきていますよね。

原 ですから、積極的に出すのか、請求されれば出すのかというような問題になってくると思うのですが。

関谷 隠すようなことでなければ、今はリーフペディアもあるので、そういうとこに出ていれば、被験者にも「そこに載っていますので、どうぞご覧になってください」と言えば済むことで、部分的に出したり出さなかったりするなら要約の必要性もありますが、書類をファイルか何かで見られるようにできたら簡単かなと思いますね。ただ、企業が金を出すのを嫌がるとか、研究が進まないといったマイナスの要素があるのだったら…。

位田 でもそれは、それぞれの研究者の収入の話で、それを明らかにしろという話ですね。その収入自体が問題と言うよりも、ある研究が倫理的に妥当であるかを判断するわけですから、その判断をするのは倫理委員会で、その判断をするために利益相反に関する書類を出していただくのですから、ここ止まりではないですかね。第三者に開示するという話ではないし、被験者にも開示する必要はそんなにないのではないかと、個人的には思いますけど、「利益相反に関する判断はしました」というのはどこかで知らせる必要があると思います。

原 第三者という意味では、例えば私が報道機関として取材をするということを考えれば、「倫理委員会で承認しました。中身は言えません」と言われても、少しも利益相反のコントロールがされているとは思えないですよね。やっぱり「承認したのなら、請求したら出してください」ということですね。

位田 それは利益相反の問題ではなく、倫理委員会の審査が公正に行われたかという問題ではないですか。

原 いや、倫理委員会の審査が公正かの問題ではなくて、研究をどう評価するかという情報として、利益相反がどの程度あるのかというのが必要だということです。

岩橋 だから開示する場合でも、具体的な金額と人が特定されない形の開示の仕方があると思うのですね。例えば「未公開株を持っている」といったレベルにしておくのか、「5万円以上の資金提供がある」といった段階に分けるとか、そのぐらいのことは説明できると思う。ただ、担当の研究者が1人しかい時に金額を明らかにすれば、その人がそれだけ貰っていると特定されると思うのですが、グループでやる時に「この研究にはそういう形で利害関係にある人がいますよ」というぐらいの開示の仕方だったらどうでしょうか。

勝村 原則的に開示した方が良いような気がします。間接的に探っていけば「この人がこれだけ貰っている」と分かるにしても、直接的に書かずに、情報を請求したら黒塗りの部分があるようなものでもいいけど、責任ある研究者の利益相反の有無はかなり大事なことなので、それを明らかにして進めていくべきだという気がします。

北村 利益相反に関する情報をできるだけ公開することによって、研究の倫理的妥当性が高まることは保証できるような気がするのですが、一方で、研究者の側のプライバシー、個人情報の問題を保障しない…、

勝村 だから情報開示をする時にはどんな場合でも、一部を黒塗りをしても周辺の情報から分かることがあるので、どこまで黒塗りをするかという話は出るけど、個人情報があるから一切公開しませんとはならない。

原 そのあたりはまだ確立していないと思いますが、例えば文科省の関係のガイドラインでは「当対象研究に携わる研究者あるいは個人の経済的な利益相反状態に関する、当該委員会の意見書または要約した報告書は、被験者から要求があれば開示されるべきである」とあり、当該委員会というのは利益相反委員会みたいなものです。それから、「研究資金提供者・雑誌社・研究結果を公開する機関など、一般からの公開請求があれば、個人情報及びプライバシー保護に十分配慮した上で、必要な範囲の情報を提供すべきである」というような内容で、具体的なことは分からないですね。だけど、何らかは公開しなければいけないという方向ではあります。

岩橋 約束をしてもペナルティがなければ、しゃべる人はしゃべると思いますが、当該の治験者が周りに広めたりしなければ良いので、「知り得た情報については個人情報になるので…」という約束を取り付けるかですね。

勝村 そこの担保はなかなか取れないですよ。利益相反があれば「その研究に科学性や倫理性、公正さがあるのだろうか」と思ってしまうけど、あれば直ちにいけないということでもなく、開示を受けることで公正さや倫理性を判断しようとしているわけなので、患者が研究に参加するかどうかを判断するのにも、その情報は必要です。ただ、プライバシーの方に関心があるわけではないので、「誰が…」といった情報は不要ですけど、「その研究に利益相反のある状況はある」という情報を伝えることは、できるだけ利益相反がない方が望ましいので、そういうブレーキの役にもなると思う。

富田 要約で良いのではないですか。で、利益相反って絶対悪ではないのですよ。逆にベンチャー企業なんかを大学が興す場合、研究者がその社長なんかになって研究を押し進めると当然、利益相反はあります。

勝村 それは分かりますよ。でも、そういう判断は微妙なとこがあるので、人によってはちょっとした有害事象なら出てこないこともあると思うので、全く利害がない人がやってくれている方が、より安心なんですよ。

富田 それよりも一流の雑誌なんかでは、著者が某会社のアドバイザーをしているとか、肩書がぞろぞろと載っていますけど、要約だけで良いのかなぁと…、

勝村 利益相反の概念がなかった今までの常識ではなく、ガイドラインで新しい常識を作っていくのだから…。

位田 被験者がどこまで知れば、同意するかどうかの判断ができるかという話ですよね。そうすると、この人が幾ら貰っているとか、どういう旅行に連れて行ってもらったとかいうのは、必ずしも書く必要がないと思います。これにはやっぱりかなりプライバシーの部分がありますから。

勝村 参加するかどうかという話の時には、「誰が」「どこまで」「何をした」といった研究者のプライバシーには絶対に関心はないでしょうね。ただ、僕は金額には関心ありますね。

富田 金額を出すというのは、かえって判断を誤らすのではないですか。「こっちの人は10万、こっちの人は20万、じゃぁ2倍も悪いことをしている」と…。

原 悪いことでは…。今日も研究の審査をしましたけども、ああいうのも全て開示対象になってくると思うのです。研究費も対象に入れていますし、講演とか色々あると思いますよ。

位田 誰に対してどこまで開示するかという内容の話なので、倫理委員会がこれからやる研究の倫理的妥当性や科学的公正さを判断するために、いつどこから幾ら貰ったとかも出してもらうのは良いし、その結論の要約部分を被験者に伝えるというのも良いと思うのですけど、生の資料をそのまま出す必要は全くないと思います。

勝村 僕も全て出せとは言っていなくて、黒塗りの部分があっても良いと思うのだけど…、

位田 黒塗りするのではなくて…、

勝村 いや、実際に黒塗りするのではなくて、黒塗りをするようなコンセプトの下に、その分、コンパクトな情報になって良いということだけど、どこまで出すかの葛藤はすべきで、「倫理委員会に通りました」というだけの一文よりは、もう少し出さないけないと思う。利益相反の趣旨からすると、細かな具体性は要らないけど、ある程度は額の範囲が分かるような開示であった方が良いような気がするのですね。

原 そうですね。ちょっと難しいのですけど、要点・骨子なのか、まとめなのか、どういうふうにやるのか…。

関谷 僕が思うのは、マトリックスみたいな文面にして、例えば資金提供の場合は、額を書かなくても良いけど、5万以上と5万以下だけなら、5万の人も2000万の人も5万以上だから、松竹梅みたいに何段階かに分けて「何万以上の供与を受けている」として、現物供与の場合は「物品供与がある」ぐらいで良いのではないですか。

東 研究のために100万円を貰ったというような話は、お金は研究に使うのだから非常に良いわけで、個人が5万円分の旅行へ連れて行ってもらったというような話とは、色合いがずいぶん違うと思うのですけど、そこのところをない交ぜに書いているのですね。建前では「プライバシーを見たいわけでもないし、金額みたいなことはどうでもいいんだ」と言うけど、実際、皆さんは興味があるのね。どこかで「こんなに貰っているんだ」みたいな話になっていくのですよ。だから、かなり慎重にやってもらわないと、「そんなややこしい条項があるのだったら、研究なんかどうでもいいわ」となりかねない。要するに、何を公表するかという場合は、もう少しキチッと「研究の正当な資金なのか、そうではないのか」と色分けするなど、もっときめ細かくやってもらう必要があるし、それにはかなりの議論が必要だと思いますね。
また、病院も経営体ですから、企業とどんどん交渉して薬の値引きみたいなことも受けるわけでしょ。そんなのも実は利益相反だと言えば、全部そうですから、非常にボーダレスなんです。それから薬の副作用が出た時に、報告書を書きますと、謝礼をくれます。ウチではこれは個人に入らないですけど、個人に入るとこもいくらでもありますよ。こういうことも全部、利益相反に加えるのかと言うと、非常に難しい話なんです。他の業界に例えさせてもらいますと、新聞社に「この企業から広告代をどれだけ貰っていますか」と聞いても公表しないじゃないですか。利益相反ということで言えば、公正な報道をしているというけど、例えば某宗教団体の本の宣伝をいっぱいしていて、僕らがどれだけ貰っているのかを知りたいと思っても、「それは関係ないです」と言われてお終いでしょ。そういうことで言えば、公表すべきことと、する必要のないことがあると思いますね。ここに書いている中身は、値引きの話も含めて、ものすごく広くなってくるので…、

原 値引きは入れていませんけどね。

東 いや、これはある意味では現物支給ですよ。

位田 だから結局、利益相反についてのガイドラインを作ることの本来の目的は何かという話ですが、これからやろうとしている研究が科学的に公正な形でやられて、かつ、倫理的にも妥当かどうかという判断をするための材料ですよね。それを誰が判断するかというと、被験者ではなくて、倫理委員会なり治験審査委員会であると思うのですよ。そこ止まりで考えるとすると、それこそ値引きや、副作用の報告書を書いてお金を貰ったのが出てきても、我々に「これは問題がありません」と判断されるなら、出しても構わないわけですよね。良い悪いという話ではなく、妥当な形での利益があるのか、研究に何らかの影響があるのか、あるとすればどういう形で影響があるのか、データをねつ造するのではないかとか、そういう話を倫理委員会が判断するという、それだけの責任があるから「個人情報も出してくれ」と言っているわけですよね。私はそこに留めた方が、少なくとも現時点では良いのではないかと思っています。

東 新聞社の立場から言われて、どこまで公開するかという話に及んでも…。でも、的確な判断をしていただけるということであれば、きちんと出しましょうという話になりますよ。ただ、それを一般に出した時には多分そういうふうに思われず、「患者の副作用を材料にして医者は金を貰っている」みたい話になるのですね。

岩橋 それか、目的②の「被験者がインフォームドコンセントを行う際の判断材料の提供」を目的に入れるなら、「倫理委員会が、利益相反に関するこの情報は開示しないといけないと判断したものについては、研究計画の説明文書に記載する」みたいな書き方をするというのも、一つの方法だと思います。

勝村 僕はこの前文を読んで、「今のスタンダードが、利益相反はあっても開示をしてきたのだから、取りあえずスタートしてもらおうじゃないか」と、委員会は開示していることをチェックするだけで、通過することの方が多いのではないかと思ったから、では判断するのは被験者だということで、判断材料がいると思ったのですけど、ここで「こんな利益相反があるなら止めよう」とか「利益相反はあるけど、これは良しとしよう」というのを、ここできちんと判断するというのが前提なら、情報を縮小してもいいということになるのかも知れない。

位田 倫理委員会が利益相反を開示していただいて、かつ何の判断もしないというのだったら、ダイレクトに被験者に伝える必要があるかも知れないですけど、判断するのなら、被験者に伝える必要はないと思う。

岩橋 そうですよね。結局、目的②のところを、倫理委員会が責任を持って「被験者に対するインフォームドコンセントが十分になされるような中身になっているかというのを、総合的に判断する時の材料にするんだ」という趣旨を目的に捉えるのだったら、被験者には開示しなくてもいいということになるかと思うのですけど。ただ、場合によっては、先程、私が申しあげたように、中身によっては、ある程度は開示することを条件にして、被験者に対するインフォームドコンセントが十分にできていると判断することもあり得ると思うので、「そういうことをすることがあり得る」ということを書いておくかですがね。

勝村 絶対、中間的なパターンはありますよね。連続的であるはずですからね。ここでオッケーを出す、アウトにする、判断を被験者に預ける…、

岩橋 結構、相対的な判断はあり得ると思うのですね。ただ、「それは条件付けの時にすれば良い」ということになれば、ここに敢えてそういう条項を入れる必要はないのかなというふうにも思いますが。

勝村 原さんが例示されたところの説明文書の中で、いちばん厳しめぐらいのを書いておいたら良いのでは…。

原 私はどちらかと言うと、倫理委員会は内容次第に関わらずそのまま通るけど、非常に極端な場合は止めるかも知れませんよというイメージなんですけどね。というのは、「何であかん」って言えるようなケースはあまりないような気がするのですね。

関谷 ないと思います。これだけ貰っているからといって、実際問題は判断できないですよ。

位田 だからと言って、被験者が本当に公正に判断できるかというのもまた難しい話で…。

関谷 もちろんそうです。ただ、こういうのは全部、良心を前提としているわけでしょ。例えばちょっとインチキを書いたところで、ウチに何とかGメンがいて、税金などを全て調べられるわけではないから…。…と言ってしまったら、これ自体に意味はないのだけれども、一応、良心を信じて出してもらったもの…。そうすると、いかにも絶対にダメなもの、倫理委員会が通さないようなものを出してくると思えないですよね。

原 「数十回の接待を受けております」というのは出てこないですよね。

関谷 そんな人はいないと思うけどさ…。これ自体が外に対して「やっています」というふうな形式的なものであれば、あまりガチガチにしてしまったら、誰も出さずに「じゃぁ止めるわ」となってしまったら意味がないので、一応、形を整えるということでないのかな。

勝村 製薬ベンチャー企業の大株主がメインではなくても研究者にいるとか、その上司であったりすることもするし、何と言っても製薬企業に薬害を起こさせないようにしようと思うと、もう一押しのプレッシャーをかけた方が良いような気もするので…、

位田 だけどね、企業がいつも悪いというのは間違いだと、僕は思っていて、製薬企業は良い薬を作るために、研究者にキチッと科学的に正しい研究をして欲しいと思っているわけですね。ねつ造なんかがあると、いちばん被害を被るのはお金を出した側の製薬会社なので…。

勝村 …にも拘わらず、時々、ねつ造をしちゃっているのですよね。だから、「なんやかんや言わないから、研究費を使って研究してくれ」という感じのものと、やっぱり「大量に株を持っています」とかいうのは、ちょっと違うと思うのですけど、そういう場合は、その人を外して、大株主ではないお医者さんだけで臨床研究をやれないのかと思うし、そういう方向に動かしていくためのガイドラインであった方が良いような気がする。

北村 今回、これの目的が研究の公正性を保証しようということであるとすれば、我々医療従事者は「研究を審査してもらう時に、倫理委員会のお墨付きがあるとありがたい」という思いはあるわけですね。しかし一方で我々は、個人情報を曝される怯えというのもあって、そのバランスを考えると、個人情報が厳格に全部、被験者へ開示されていくということになると、隠そうと思うか、研究をやめようとすると思うのですよ。隠すと、そもそも公正性が保証されなくなってくると思うのですね。だから、みんなが正直に出しやすくしていただいて、ここでしっかりと揉んでいただき、そして、公正性を保証していただくというふうな中身に設定していただかないで、あまり理想ばっかり求めても内容がないと…、

勝村 内容が本当に問題なかったら、そういうふうにできるのですよ。で、大概はそうなんですけど、たまに変なのがありますね。ここの病院であるとは思わないけど。

原 どうしましょうかね。例えば「重要なものは被験者の説明文書に加える」とかですね。要旨とか骨子とか言うとよく分からないような感じもするので…。

北村 情報の[5:開示すべき項目]は書いてあるのですが、[6:共同研究における情報開示]と[7:説明文書への記載]の開示項目の規定がないのだと思います。そこを細かく書いていただいた方が良いのかなと思います。これでは5:の全てを開示することになります。

位田 そこまでは必要ないのではないかと思うのだけど。

原 例えば7:ですと「利益相反の開示内容の内、重要なものは…」ぐらいにしておくとか…。重要なものが何かは分からないのですけど。

岩橋 だいたいそういう時に規定されるのは、「開示されることによって受ける個人情報の利害等を調整した上で、開示する範囲を判断して記載する」という感じですが、例えば共同研究者達の全部の概要が出ても、誰かは特定されないですけども、1人だけの場合は分かってしまうので…、

原 どこまで出すかという形なんですけど、例えば株をたくさん持っているとか、重要なものに関しては個人特定されるのはやむを得ないと思うのです。

富田 重要なものというの中身ですけど、最近の論文では、決定権にどれほどアクセスしているかということが本当に1行で載っている感じですね。それにはいろんな研究会やその企業のアドバイザリーのボードにいるといったことが載っています。重要なことというのはそういうことで、金額の問題ではないと思います。

勝村 日本に利益相反という発想がなかった時代には、筆頭株主が研究に参加することもあったと思うけど、利益相反が言われるようになってきて、さすがにそれは酷いよねとなっても、ちょっとぐらいの株を持ってるぐらいなら良いのではないかと…、

位田 ただ、最近は大学の中ではできない自分の研究を、外でやるために自分で資金を集めてベンチャー企業を作るというケースがものすごく増えているのですよ。そうすると組織は会社で、筆頭株主や社長はその研究者であり、研究するのもその研究者ということになりますが、これが本当に利益相反なのかという話なんですよ。

原 だけどその場合は、「有利になるようなデータの扱いをしていないかという、疑いの目では見られますよ」というような考え方です。

勝村 だから、問題がないなら、開示した上でやったら良いのですよ。やって良いのに開示してもらうのは、放っておいたら有害事象が出た時は本能的に隠すかも知れないから、「利益相反があっても許可したのだから、きっちりとやってよ」という担保を取る意味もあるのではないかと思っているのです。

原 いや、担保を取れるわけではないのです。例えば幾つかの研究を集めてデータを分析する時に、利益相反のある研究とない研究とを分けて、利益相反のない研究だけを集めてデータ解析をするということが行われています。だから、ダメということではないのですけど、研究の信頼度の評価の色分けみたいな使われ方はしますね。

位田 だから、誰にどこまでどういうふうに伝えるかということが問題で、一度、全部をここには出してもらうのだけど…、

勝村 「誰に」というのがちょっと分かりにくいのだけど、いちばん最初に開示するのはこの委員会ですよね。そうしたら、説明文書の記載に関しては「開示内容で、倫理委員会や治験審査委員会が必要と判断した部分に関しては、被験者の説明文書への記載を求めることがある」ということで良いのではないですか。

北村 ただ、そこに何らかの基準といいますか…、

勝村 本当にフェアにやっているお医者さん達が不安にならないような一文を入れるという配慮は必要ですね。

北村 そういうことと、隠そうとしないような条件とのバランスを取る方向が望ましいですね。

位田 倫理委員会の委員だって法律上は守秘義務がかかっているわけではなく、まさに倫理的に守秘義務を持っているわけで…。

原 どうしましょうかね。今、おっしゃったような形でも良いと思うのですけどね。

岩橋 ただ、個人情報保護法との関係で言うと、職員の情報に関することだから、「ここで漏らしてはいけません」と法律で縛っているわけではないですけど、その問題に手を貸していることになりかねないので…、

原 同意の下で出してもらうのだから、個人情報の問題は生じないと思いますけど。

岩橋 ここは良いのですよ。ただ、ここで出されたものについて、ここ以外に何らかの形で開示してしまうと、そこまでは同意していないから…。どうなんでしょう?

原 分かりません。私はあまり個人情報を重視する立場にはなく、ものすごくガチガチに大事なものという感じは持たないですから。

富田 というより、今の話を聞いていても、利益相反そのものが誤解されやすいと思いますから、僕は慎重にした方が良いと思う。本当に研究に必要な範囲で…、

原 例えば「倫理委員会等で必要と判断したものは…」というふうな考え方にしても良いとは思うのですけど、その場合の線引きでしょ。どういうことを必要と判断するのかという目安は何かあるのかということですよね。

関谷 先程の話だったら、ちゃんとした研究費の500万は別に重要でなくて、料亭に行ったとか、旅行に連れて行ってもらったとか、そればっかりが出てくるような…、被験者がそれを見たらビックリしますよ。やっぱりバランス良く載っていないとね。「この人は研究費としてちゃんと貰っているけど、片一方で少し旅行にも行っていますよ」とみたいな…。公平に載せるというのは難しいですよね。大事なものだけというと、悪い項目だけ書くみたいになって、それもバランスを欠いているので、全部を書かないかんから、やっぱり載せるのやったらマトリックスで公平に分かるような形で、額は書かなくても良いけど、松竹梅と言わんまでもだいたいこれ以上は貰っているとか、旅行という記載に印を付けるとかね…。

原 松竹梅という方が難しいから、額を出す方が簡単な気はするのですけどね。

位田 1000万以上を松とすると、999万円は竹という話になり、いくらでも抜け道ができる。

広瀬 だけど被験者というのは、いくら少額のお金でも、貰っているということになると、どんどん想像に行くので、やっぱり「倫理委員会や治験委員会がちゃんと関与してどうのこうの」と書いたところで止めておいた方がよいのではないかという気がするのですけど。「研究費にどうしてもこれだけ要るんや」というようなことがあれば書いたらいいけど、公開されるとしたら、絶対に研究者の人はものすごく迷うと思います。

勝村 止めておいて問題のないやつは止めておいた方が良いですよね。ただ、倫理委員会や治験審査委員会で「これは伝えておいた方が良いのではないか」というようなものが出てきた時は、書いておいた方が良い。

位田 研究者の言い訳も、「旅行とあるけど研究旅行だ」「現地調査旅行だ」と書いておいてもらわないと…。

広瀬 かと言って、患者というのは「何も儲けがないことばかりをやっているのも頼りないなぁ」と思うのではないかな。だから先程、東先生の薬の話を聞いて、ちょっと安心したのですけど。

関谷 「被験者から請求があった場合に限り開示する」というふうにはできないのですか。

原 そういう考え方もあるとは思うのですが、どうなんでしょうかね。

関谷 「絶対、開示できる」というのは担保だけで、現実にはガンガン見たいというのはあまりないのかも知れないですね。

原 そういう場合は、結局、出さないと言うのとほとんど等しいですね。全部開示するわけではないでしょ。

関谷 それはもちろん考え方で、全部を見せるか、それこそ黒塗りかは分からないのだけど。

富田 開示請求があるということは、トラブルが起こってきたということですよね。

位田 トラブルがなくても開示請求はできますから。悪意のある人だと、トラブルは関係なしに「見てやれ」というやり方もありますよね。

富田 もちろんそうですが、実際にはトラブルを念頭におき、その時には全部出せる準備だけはしておくと…。請求があれば、必要に応じて開示するという…。

位田 ただ、トラブルが起きているかどうかという判断が必要ですが、その判断はものすごくしにくいですよ。

富田 もちろん、「何故、必要なんですか」というとこらへんから話はできます。

位田 もちろん理由は書くわけですが、その判断はものすごく難しく、開示請求が出てくると、結局は全部を開かざるを得ない。項目について黒塗りの部分があり得るとは思いますけど、開かないという可能性は特にない。

富田 その時は別に、ここに届けられていたものを開示するのは差しつかえないではないですか。

位田 だから、それをやるかどうかが問題ではないですか。

富田 今は通常において被験者への開示をどれぐらいするかということでしょ。だから、通常はそのまま出せば返って不適切だと、私も思うのですけどね。

岩橋 ガイドラインの目的の②は、他所のガイドラインにも全て入っているのですか。目的②を入れると、どうしても知らせることが前提になりますよね。

原 全てとは言えませんが、わりと書いています。

岩橋 ただ、早く利益相反管理に関するガイドラインを作って、出発しましょうということであれば、当面、被験者の人権擁護とか安全性の確保は倫理委員会が判断することにすれば、今の段階でその規定がいるかどうかというのは、それほどまで拘る必要はないのかも知れないという気がします。

原 [インフォームドコンセントの際の判断材料]というのは、一般的には多分、必要な考え方のようには思います。この病院ではあまりイメージしにくいのですが、大学病院のように研究的な病院では、経済的な関係というのは、研究費ではない奨学費・寄付金とか、寄付講座だとか、ベンチャービジネスもそうですし、いっぱいあるので、そういうふうな研究を全然知らなくて良いということにはなかなかしにくいと思います。

富田 そうです。だからここの病院でのイメージでやっていただきたいですけど。

岩橋 先ほど言われたように、決定権にどれくらい近い人なのかということで言うと、最初にデータが集まるだけの所でも、出そうなデータだけを提供するということになれば問題かも知れませんけど、基本的に、いろんな人がものすごい大きなお金を貰っていて、関わっている人がいっぱいいることが分かれば、やめておこうかということになるのか、最終的な判断をする部署にいない人が研究に関わっていて、その人の利益相反を見ただけで参加するのをやめておこうというのは、ちょっと違うような気がするのですね。だから、本当のことを言ったら、企業が「これだけ関与している人にこれだけの金を配っています」と、公開するのは意味があると思います。個別で関わっている人のを明らかにすることで、被験者の判断に影響するのですかね。

原 どうでしょうね。いずれにしても妥協的には、特に重要なものの骨子は文書に載せるか、倫理委員会なり治験審査委員会が求めるぐらいで、具体的な線引きはなかなかやりにくく、運用してみないと分からないと思いますけどね。

関谷 いずれにしても、その説明文は倫理委員会に出てくるのでしょ。ということは、「それに重要な案件については記載するように」とガイドラインで決めておいて、「これは載せるべき」とか「これが漏れている」という判断はここの運用でやっていくということですよね。この話をいつまでしていても、それ以外に手はないのではないかなと思います。

原 そうですね。それぐらいしか、あまり具体的な線引きはしにくいですね。で、個人情報のところで、例えば研究者が1人だけというような場合、個人特定ができたら出さないというのは、ちょっと辛どいのではないかなと思います。今日の申請もそうですよね。出さなければあまり意味をなしてこないので、倫理委員会での判断を経た上で、重要なものの骨子ぐらいは説明に載せるぐらいで良いのではないですか。

位田 それは「研究に影響を与えるであろうもの」という意味ですよね。

原 いや、それは判断できないです。

位田 判断できないかも知れないけど、利益相反で影響する可能性があるということですよね。それ以外に使うというのはおかしいですね。研究計画を作って、それを実施する上で何らかの影響を与える問題があり得るので、利益相反の開示をしてくれという話ですから、倫理委員会としては「若干、影響を与える可能性があると判断すれば、それは明かします」と…。ただ、どういうふうに明かすかは別ですよ。「1000万円貰った」とか「松竹梅でいくか」という話は別だけれども、「これまでに多額の研究費を貰った例が、この研究者についてはあります」もしくは「この研究そのものについてあります」という書き方はできるかも知れません。だけど、具体的にお金とかそういうことを書く必要は、僕はないと思います。要するに、影響がある可能性があるかどうかということが、被験者に伝われば良いという話ではないのでしょうか。ただ、影響があるということは、データをねつ造するという話とはまた違うとは思いますけど、

原 難しいですが、どうでしょうね。もう時間がありませんので、今の点を踏まえて次回決定ぐらいを目指すことにしましょうか。それぐらいの落ち着き方しかないような気がするのですね。特にネットとかで無闇に出すと、情報が独り歩きしますから、問題があると思います。
いくら経っても輸血拒否のガイドラインはできないですけど、時間がかかりますので、今日は終わりにしまして、次回の日程をお願いします。

北村 通常は2ヵ月に1回の開催なので、今日は2月の予定を前倒しでやったということになりますが…。

内田 3月の第3火曜日は15日で、4月だと19日になりますが、前倒しと考えるか、臨時と考えるかですね。

富田 4月ではちょっと間が開きすぎやね。

内田 では3月15日ということでよろしくお願いします。次回は利益相反と、輸血拒否に早くいきたいのですが、辿り着く前に新しい議題が…。今日、北村先生から1月版の新しいバージョンの案が出ましたので…。

北村 かなり変わっていますが、説明しているときりがないですし、また、3月の時には3月案を出します。

原 次回は3月15日火曜日ですね。はい、お疲れさまでした。

 

 

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