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第三十三回 倫理委員会 議事録

京都民医連中央病院

日時 2009年7月30日(木) 18:30~21:20
場所 太子道診療所3階多目的室
出席者 外部委員 原委員長、勝村副委員長、岩橋委員、関谷委員
内部委員 北村副委員長、内田委員、東委員、吉中委員
事務局 丸山
オブザーバー 清水、田中、橋本、中村、山田
欠席 位田委員、広瀬委員、赤木委員、井上委員

議事

 原 第33回倫理委員会を始めたいと思います。まず委員のメンバー交代があって、新しく位田先生と関谷先生が来られるということですが、まだ皆さんが揃っていないので、紹介的なことは事例検討の後ぐらいにしたいと思っています。次は事例検討が2件ですが、今日はそちらを主に進めていこうと思います。では最初の事例の方から、アウトラインの説明をお願いします。

 

議事(1)「事例検討」

※事例2例検討しました。

 原 倫理コンサルタントの話もペンディング的になっていましたかね。若干、手続き的には問題があるということですね。ただ、実質的な必要性はあるようなので、次回以降に検討するということでよろしいでしょうか。事例と想定されるものなども考えないといけないですね。そういうことでよろしいでしょうか。
 次は臓器移植法改正ですね。

 

議事(2)「臓器の移植に関する法律について」

 岩橋 はい。皆さんもご承知でしょうが、今国家で臓器の移植に関する法律の一部改正という形で、いわゆる脳死法A案というのが成立しました。日弁連の人権委員会などでこれまで検討してきた中身から言いますと、そもそも臓器移植法が成立した時点でもかなり激しい攻防がありまして、今回は一部改正という形を採ってはいますが、成立した経過から見ますと、かなり根本的な改正だと言ってよろしいのではないかと思います。
 で、一部改正の概要は、骨子で言いますとだいたい4点に集約されます。1つは「脳死の位置付け」ということで、現行法は「臓器提供の場合だけ人の死」と脳死を位置付けているのですけど、改正法は「一般的に人の死」としており、臓器移植の場合に限定していません。2番目に「提供の条件」として、現行法は「本人が書面で意思表示をして、かつ家族(法文表現では遺族)の同意が要る」ということで、これについては、脳死判定についての意思表示と臓器提供自身の同意という2つの面での要件、あくまでも本人が「脳死判定を委ね、臓器移植をする」という積極的意思表示をしている場合が現行法では前提になっているのですが、改正法の方は、もちろん本人が明確に意思表示をしている場合も含まれますが、広げている部分として「本人が拒否していなければ、家族ないし遺族の同意で可能だ」ということで、ここでやっている患者の自己決定の原則とかから言うと非常に大きな問題をはらんでいます。私もここで報告するために勉強し直して、「臓器をあげたくなかったら明確に拒否しておかなあかんのやな」と思った次第です。3番目に「提供可能年齢」ということで、現行法では条文に年齢の制限が書かれていないのです。で、どこで決まっているのかと言いますと、本人が意思表示するということとの関係で、「15歳以上の人の意思表示は本人の真意の意思表示」という形でガイドラインで限定しており、それで結局、「15歳以上しか提供できないではないか」という議論が一部臓器移植を推進する人たちから強く言われてきたという経緯があります。それが改正法では、この制限がなくなることになっています。結局、拒否していない人は年齢に関わらず全部含まれてしまう関係になっているわけです。もちろん、意思表示も15歳以上という限定がないわけですから、15歳以下の子供でも積極的意思表示していたら、臓器移植・脳死判定にかけるということになります。4番目の「親族優先提供」というのは、現行法の規定にはないのですね。だけど、改正法では「親族に優先して提供します」ということを意思表示しておくことができます。
 現行法は1997年、わずか12年前に成立しましたが、これが成立するまでは数年にわたる激しい議論が行われ、その反対論の非常に大きな理由の一つに「脳死を死とする社会的合意ができていない」というのが上がっていました。しかも、「死をどのように判断するかということについてはいろんな考え方があるので、それに対する社会的合意ができないと、こういう法律を作ることはできないのではないか」ということで、自己決定権を重視することを骨子とすることにより、法律が制定されたという経過があります。ですから今回、現行法を添付したのは、現行法を理解していただくと、改正法の運用の下でもそういう精神から捉えていただけると思ったからです。
 臓器移植法改正の経緯ですが、低年齢の子供の臓器移植を求める声が多かったのと、現行法の下での臓器移植の実施例が極めて少ないということで、一部に強い要請がある中で、2005年ぐらいから改正の議論が上ってきたのですが、前回は国会が解散して廃案になりました。それが今回の国会で成立するということになった。
 私は弁護士なので、人権の観点からどうかということを報告する必要があるだろうと思いましたが、日弁連は2005年からの議論の際や、もちろん臓器移植法が成立する際にも、激しい議論や意見書を出して検討してきたのですが、2006年3月に極めて詳しい意見書を出しております。これは日弁連のホームページに出ていますので、関心がありましたら見ていただいたらよいのですが、現行法の問題点や運用上の問題点を指摘して、臓器移植法を見直すにあたってはこういう点を考慮すべきだということで、まとめられています。その1点目は、「臓器移植法を見直すにあたっては中立公正な機関を設立して、臓器移植法施行後の実施例を含めた法執行状況の全般を検証すべきだ」という点。「脳死と判断された後も長期に生存する患者が存在する事実を踏まえて、脳死を死とする生物学的・医学的根拠の再検討を充分にした上で、脳死の定義や脳死判定基準や手続き、それから脳死臓器移植実施時の検証システムなどを是正する必要がある」というのが2点目。それから3点目が「救急医療で充分な医療が施されたかどうかということも、キチッと検証されなくてはといけない」ということで、「充分な救急医療態勢の確保が、まず臓器移植の最前提だ」ということを挙げています。4点目は「脳死からの非使用臓器を生体間の臓器の移植についての法整備もすべきだ」ということで、5点目は「こういうことを検証した結果を公開して、市民が充分に脳死について理解してた上で、脳死臓器移植について社会において充分に議論された上で、臓器移植法というのは実施されていかなくてはいけない」ということです。結論から言いますと、日弁連は「この5点を実施しないままに、脳死を一律に死と見なしたり、臓器摘出要件とか脳死判定要件を緩和することを内容とする改正には反対する」という立場でしたので、今回のA案には正面から反対していたということですね。
 今の5点の問題点を日弁連で検証していまして、1つは、脳死の定義が現行法では六条2項で「脳幹を含む全脳の機能が不可逆的停止するに至ったと判定される」となっていて、全脳と脳全体とがイコールではないので、日弁連では厳格な脳死の基準を求めています。この定義は、改正したA案でも変わっていません。脳死判定基準や手続きについては、ガイドラインの要件で厳格に手順が踏まれていくべきであるけども、実際にはそういう手順が踏まれているかどうかが怪しいものもあって、実際に日弁連の人権救済の申し立てにも出てきた事例もあるので、そのへんについてもキチッとしていくべきだと言ってことです。それから、正しい情報提供の必要性について指摘されております。あと、検証会議などについても、「脳死患者の代弁者が含まれていない」「中立公正ではない」「非公開だ」などの批判があります。それから、貧困な救急医療態勢ということが指摘されています。
 改正法の問題点は、そういう問題を踏まえたところで、一般に人の死とすることがどうなのかということで、一般に人の死とすると、脳死判定による医療中止への懸念とか、医学実験や医療資源として利用の危険とか、死と判定されることにより、健康保険の適用を初めとした権利義務の発生や消滅などの法的な混乱を招くとか、そういう問題が新たに生じます。
 法律の具体的な適用の問題で、解釈が微妙だったり困るだろうと思われるのは、遺族や家族の定義が非常に曖昧なことです。普通、法律では遺族や家族の範囲をキチッと定義しないとやれないはずですが、「そのように硬直的にすると、かえって臓器提供が危ぶまれる」ということもあってか、「その時の状況で実態に即して判断しなさい」となっていて、現行法の解釈本では「法令で画一的にその範囲や範囲の中での承諾の優先順位について規定すると硬直化されるから、原則として喪主ないし祭祀主宰者等が遺族に該当し、死亡した者の近親者の中から、個々の事案に即して慣習や家族構成等において判断すべきものであるが、原則として配偶者・子・父母・孫・祖父母および同居の親族の承諾を一義的には得る必要があるだろう」と言っていますが、ガイドラインの第2では「喪主や祭祀主宰者となるべきものが、これら遺族の総意を取りまとめること」として、コーディネーターにある程度の判断を任せるような形になっています。多分、明確に拒否の意思を示していない場合には、家族の同意で可能ということになりますので、範囲をどう判断するかによって非常に悩ましい状況になるのではないかと思います。提供施設かどうかというのもありますが、こういう点が現場でいちばん問題になると思います。また、脳死判定をする医師にとっては「これは脳死になるかどうか」という判断も悩ましいと思います。

 原 よろしいですか。あまり時間がないのですが、「ここの病院で具体的にどういうことが必要なのか」という話だけしておく必要があるのかなと思います。まず、改正法は7月17日に公布されており、親族優先提供の部分だけの施行は公布から6ヵ月以降ですが、全体は1年後以降で、それまでに新しいガイドライン等を作成するということですね。こちらの病院そのものは、脳死の臓器提供施設の要件に当てはまるものはないということですが、心停止はあり得るということでしょうか。

 吉中 心停止や、脳死判定はしないから分かりませんが、脳死に相当するようなDOA(心肺停止)で運んでこられる人はしょっちゅうあるわけです。

 原 提供のネットワークは、腎臓は登録施設みたいな言い方をしていましたかな。

 吉中 臓器によってちょっと違うのですね、皮膚とかがまた別にあるし。一応、今は提供施設や制度手順に関わることは全てしていないのですけど。

 原 脳死判定もしないのですか。

 吉中 脳死判定の厳密なものはしていないです。厳密に要件を満たすにはちょっと厳しい。

 岩橋 脳死判定をする条件がですか。医師の態勢?

 吉中 努力義務になっている聴性脳幹誘発反応なども取れないことはないのですけど、厳密にはちょっとしにくいですね。判定医は神経内科医・救急医のそれぞれの学会の専門医認定資格をお持ちの方ということですが、そのへんはちょっと満たしていません。

 原 それ自体は臓器移植法による脳死判定をやる場合の要件ですが、一般的な脳死判定基準という意味でも、技術的な要件も含めて厳密には難しいのでしょうか。ポリシーとしてしていないということですか。

 吉中 困難性があるということと、そのことで何か変わるということがあまりないのでしていません。

 関谷 でも、改正後には一般的に死の定義になると、ここでも厳密的には脳死で死亡ということになりますね。

 吉中 今でももちろん、ドナーカードを持っている方が運び込まれた場合には可能性はあるのですが、実際には遭遇していない。

 原 一応、提供施設でないと適用されないということには今でもなっています。

 関谷 でも改正後は、一般の人も全部、人の死の定義に入るでしょ。

 原 入らないのですよ、国会の質疑では。

 岩橋 一応、法律的には「一般的に」と言われているのですけど、他のいろんな法律等との整合していかないと、厳密的にはものすごく難しいのですよね。

 原 多分、A案の論理構成として、「脳死は人の死だ」という前提を立てないと、論理が立たないという意味合いもあるみたいですけど、国会での提出者の答弁と法制局の答弁としては、実際は臓器移植に限り、「医療一般に拡大するものではない」というふうに言っています。

 岩橋 付帯決議などを取り寄せていないので不明確ですが、そうしないとかなり混乱するということでしょう。

 吉中 臓器移植提供意思があるケースに限りということですか。

 原 提供意思が分からなくても良いのですけど、脳死で臓器提供をしようとする場合ですね。まぁ、判定までいったら、その段階で死亡確認をしますから。

 吉中 だからウチらで言うと、そういうご希望があった場合、脳死判定施設に転送してきちんと判定してもらうということが生じるかどうかですね。

 原 今は、転送の手順は実務的にはないですから、患者転送はないのですよ。転送方式と脳死判定チームを派遣するという方式が理論的にはあり得るのですが、その体制はこれまでにはないです。で、改正後に備えたところで、そういう形をあり得るようにするのかどうか、ちょっと分からないです。

 吉中 それはガイドライン的な話になるのですね。

 原 そうですね。ガイドラインなり、実際の実務の話。

 吉中 日本医療評価機構は救急をやっている病院に対して、そういう場面での対応手順を全て定めるように求めています。で、酷い場合は、例えば私が逆にサーベイヤーで行った150床の慢性期の病院で、一部だけ掛かり付けの人が風邪で来るとかいうのが一次救急でいるという病院でも、普通は関係ないなと思うのですが、やっぱりその手順を求めるのです。

 原 だから、判定をやるとか提供の基本的な要件は、システムを組み換えるのかどうか分からないですけどね。

 岩橋 しかも小児救急機関なんかは、「厚労省で要件などをキチッとしないといけないのではないか」という議論をかなりしていますね。

 原 キチッとしたら、1年に1例あるかないかでしょ。しなくても子供はそれぐらいだと思うのですけど。実務的に増やそうというのだったら、判定チームが出張っていく方式の方が絶対に多くなると思いますけど。
 ただ、国会のやり取りで私が把握している限りでは、「脳死を人の死として一般化させるものではない」という答弁が議事録の中に出てきますから、一般化するという誤解をしてはいけないと思います。

 岩橋 この法律に規定されているということからも、多分、そういうふうにするのだなと思います。

 原 医療現場によっては、実際にそれで走るところもあるとは思いますよ。

 岩橋 評価的には、「そうされる危険性がある」とは言われているということなんです。

 原 だから、ガイドラインに書き込むとかいうことをやった方が良いのですけど、日弁連や日医も一般化するのに反対していますからね。

 吉中 病院としては、1年後のことを考えて検討すべきことはどういうことがあるのかを把握しておきたいという問題意識はあるのですけど、まだ具体的にシャープには定まらないなと思うのですけど。

 岩橋 でも、どういうところが問題になりそうかは、そういうものが定まる前にキチッとしてもらっておかなければいけないようなところがあったら、やっぱり意見を言わなくてはいけない部分も出てくるでしょうからね。

 吉中 経過をちょっと見ながら、ガイドラインも今後に出るでしょうし、検討が必要な事項が定まれば、ちょっと検討いただきたいなと思っているぐらいですね。

 原 だいぶ掛かると思いますけどね。骨子みたいなものを出すだけでも半年は掛かると思いますね。

 吉中 ウチの医師団とかでも臓器提供とあまり関係がない医療部分でやっていますから、そういうところの医療者にとっては、逆にこういう問題はあまり議論に上らないということが一つの落とし穴で、人の死について議論するとか、こういうのが一つあるとまた高まるのですけど、無視してしまう傾向も出やすいですね。

 原 いずれにしても意思表示をしなければ「反対ではない」という扱いになりますから、啓発が必要なのかも知れないと思います。それと、「そもそも意思表示できない人はどうするのや」という大きな問題もあります。

 吉中 それも残っていますね。

 勝村 そういうものを大切にしながらいろんな議論してきただけにね、こういうのが出てきたら堪らんですね。

 岩橋 特に知的障害者だとか、よく言われているのは子供でも虐待のね…。

 吉中 子供さんのところに踏み込んだということは、意思表示ができない人も全部まとめてということでしょ。

 原 それを根本的に詰めていくと、現行法と同じ話になっていったりするのですけどね。まぁ、今はまだ具体的に何かを提示するという段階ではないのかなという気がしますけれども。
 時間がだいぶオーバーしていますので、次に「治験審査委員会」「DNAR関係」の報告だけお願いします。

 

議事(3)「DNAR関係、治験審査委員会報告」

 北村 DNARガイドラインにつきましては、前回までの議論を踏まえまして修正をして、メールにて指示をいただきまして修正し、それで決定の予定だったのですが、1点だけご確認をいただきたい点があります。医師がDNARを許容するという判断をする際に、これまでは「複数の医師の確認が必要である」という内容にして今まで議論いただき、メールでもお送りしたのですが、その後、現場では「医師態勢が手薄な夜間帯とか休日などでは、複数ということを言われても医師の確保ができないこともある」と言われまして、そこだけ一部修正をしています。今日お付けしている資料のP4「手順1 医師の判断」というところで、最初の3行は前回と同じですが、その次は「ただし夜間帯や休日など医師体制が手薄な中で判断を下さなければならない場合には、医師一名のみの確認でもよいこととする。この場合72時間以内に、他の医師によってこの判断の妥当性が確認されねばならない」という中身にしています。で、これで良いかどうかのご確認だけいただければと思っております。

 吉中 これは全医師の集まる会議で議論した時に、「そんなに多くはないですが、救急関係でこういうことに遭遇し得る。その時に非常に困難性がある」ということが出されました。普通の日は24時間で対応可能なんですけど、土日を想定すると少し時間の枠を広げておかないと難しいかなというようなことですね。

 勝村 「72時間以内に他の医師によって確認する」が実現するまでに、その状況になったらどうするのですか。

 北村 それは許容されることになります。一応、医師の判断と多職種の同意が必要なので、多職種によってそこの安全性が保証されるという前提で、許容しようということですね。

 原 実際にここで想定しているのは、止まる前の前提の話ですね。止まる前の前提の話で、救急とか夜間というところでの必要性の具体的なイメージが掴みにくいのですが。

 勝村 「直ぐその状況があるのではないか」という意味なんじゃない?

 吉中 例えば救急に心肺停止で来て、直ぐに心肺蘇生をして回復したけど、いろいろ診断してみると「もうこれは難しいな」というようなことはあり得るわけですね。そういう時に「DNARをどうするの」ということです。

 勝村 だけど、72時間以上その状況が続くのだったら、複数の医師で判断できるわけですから、「直ぐに生存は危うくなるだろう」という場合のことですね。そういう想定のために書き加えたのだというのに、「72時間以内に~確認されねばならない」という文章があると、議論に参加していない人には意味が分かりにくいかも知れないですよね。結局、実際は1人だけの判断でDNARを実施する可能性があるということでしょ。

 北村 1人だけの判断で下して、数時間後にはもうアカンということもあり得るということです。

 勝村 「直ぐなりそうだったらDNARを1人だけで指示しても良いではないか」という付け加えですよね。

 北村 厳密にはそうなんでしょうけど、基本的にこのガイドラインの精神では、安全性を高めるために複数の医師を前提としていて、よほどやむを得ない時だけに限るということで、「どんどんやってくれ」ということではなく、あくまでも例外規定で置いているということです。

 原 家族の意向ではなく、どちらかと言うと患者の推測意思という方向で意向を組み立てているのですが、それでも急ぎの場合があるということですね。

 北村 この一文がないと、そのような事態には心肺蘇生を実施しないといけないことになってしまいます。

 勝村 もちろんそうですけど、従来から何らか一つでも条件に引っ掛かったら、しなければいけなくなっていたわけでしょ。

 北村 基本的にそうで、患者さんの救命、生命活動を大切にするのが原則なんです。ただ本当に、例えば広範な極めて重大な脳梗塞が起こって、心肺停止状態で運ばれてきて、一旦は戻ったけども、脳浮腫がどんどん酷くなってきて、このままでは間違いなくアカンというケースの場合でも、なお複数が要るということになってしまうと、そこに医者がいなければ蘇生を始めなければいけないことになってしまう。複数にしたのは、1名の判断だと妥当性が高くないエビデンスもあるので、2人にして妥当性を高めようということもあります。多職種を入れたのも、その妥当性をさらに高めるという面はあります。ただ現実的に、我々の病院の中でそういう人がいない時に、妥当性の高さをどんどん上げることを追求していくと、現実に使えないものになってしまって、守られない事態が発生するとかいうことになると、あまり意味のないものと言いますか…。

 原 現実には、医師は夜間・休日には1人ですか。

 吉中 外科医とか産婦人科医とかということを入れると、複数を確保できる場合がありますけど、いろんなことをやっていてずっと待機しているわけではないというのと、じっくり構えて数日間にわたってという場合は全然別ですけども、これはじっくり構えてということにならない状況が想定されるのでね。

 勝村 そういう時にDNARにすることはどうなのかな。DNARにした方が良い場合があるからガイドラインを作ったのですけど…。

 北村 救急で運ばれた時点ではその患者さんの状態を把握することはなかなか難しい。しかし、その後の数時間の検査の中で概ね患者さんの病態が分かって、この医学的要件に当てはまってくるという事態はあり得る。しかも、急性的にどんどん悪くなるということもあり得る。その場合にもなお、1人しか医者がいなければ心肺蘇生を絶対にやらなければいけないとなると、かなりシビアだと思うのですけど、どうですかね。

 勝村 何かガイドラインを作った意味がないような気がする。

 田中 ちょっとやっぱり不安。夜間帯の例えば土・日曜日の場面を想定してということですよね。常勤の先生の時はそんなに不安はないのですけど、パートのいろんな先生とかが土曜の夜とかに来られている時に、判断の妥当性で「本当のところはどうかな」と思ったことは過去にあったので、「複数の医師によってで」ということが確立されていない場合、例えば「多職種の同意」で看護師が「それは同意できません」と言えるかというと、同意できない場合はどうしたら良いのかなと思っていたのですけど、一般的に、院内の先生だったら「でも、もうちょっとこうした方が良いのではないですか」と言えると思うのですけど、あまり面識のない先生に対してそこを追求していけるかどうかが、ちょっと今は引っ掛かりますね。複数の医師で、例えばパートの先生の時は常勤の上級医とか病棟担当医がキチッとコンサルトできるという状況の下でなら、まだありかなと思いますけど。

 関谷 フェールセーフでいくと本当は、こういうものは「人のいない時はやるしかない」というのが普通でしょうね。この文面から見れば、「休日など医師体制が手薄」と書いてあるので、「別に休日でなくても人がいなければ判断しても良い」ということですよね。そうすると、そんな医療態勢で良いのかということもありますし、手薄であって1人で決めなければならない状況がどうかということもありますが、もちろん、そこに危険性はあるでしょうね。ここに全部が集約され、この記述があることによって、やろうと思えば「手薄だった」ということで1人でやって構わないということですからね。

 勝村 この文面が「本当に救急で、1人しかいない間に判断しなければいけない状況に追い込まれた時は、1人でも良い」という意味なら、少なくとも「この場合72時間以内に」以降の部分は取るべきですよ。これはまやかしで、72時間以内に他の医師が判断できるのなら、その段階で2人でやれば良いのだから。

 北村 少なくともここの部分はもう一度検討ですか。

 勝村 医師1人の判断で良いのだったら、最初から全部「医師1人の判断で良い」ということになっちゃう。

 関谷 でも、現場のリアルな感覚では、やっぱりこれがないとものすごく困るのですか、実際問題、こういうことが起こり得るのだったら。

 吉中 起こり得るのだけども、想定できるのはそう多くないと思います。心肺停止で運ばれてきて、心肺蘇生をしたら自発呼吸も出たのだけど、診たら「もうこれは無理やな」というようなことはあり得る。それから先っきの急性間質性肺炎の患者さんのように自宅にいて、いよいよ悪くなって来られてというような時も想定できますよね。議論した時に「外来管理中の患者さんはこのガイドラインの対象としない」ということにしたのですね。だから基本的には、ウチに来院された人については全て、心肺蘇生も必要なことは全部するということで望もうというふうにしていますので、そこを使って振り分けるというのも一つの術ではあるのですけど。

 原 それは対象としていないのですけど、実際問題、外来で終末期という人もいますよね。

 勝村 この間の倫理委員会の議論のイメージなんかを踏まえると、こういう一文を入れてしまったら、これまでの議論の全部が潰れてしまうような、根本的にコンセプトを大きく変えてしまって、何でもかんでもDNARで良くなってしまうような気がします。

 原 時間的にエンドなので、すみません。今の項目は異論が結構出ていますので、取りあえず付け加えないという形で運用してください。で、それを付け加えるかということや、入院に限るのかということは今後の検討課題にしたいと思います。適用は「病状の進行」ぐらいで、あまり病気は限定していませんね。

 勝村 前の議論では、救急は想定していなかったですよね。だから、そこに救急のイメージを入れてくると、全ての議論が飛んでしまったような印象を持つのですね。ただ、救急は別途ということになるのかどうかは分かりませんが。

 原 取りあえずそれは、具体的な対象のイメージも含めまして、次回以降の検討対象にするということで積み残したいと思いますが、これはあの部分を抜いた形で動かせてください。治験報告の方は書いてあるとおりということで、特段、扱う話はないですね。

 吉中 新しいことは何もありませんの。

 

議事(4)「委員(新任)のご紹介」

 原 それでは新委員のごあいさつですが、位田さんは今日は来られていませんのでまた次回にお願いするとしまして、関谷さん、自己紹介をお願いします。

 関谷 お喋りだった小原先生の代わりの席でございまして、あの人はウチの神学部でもよく喋る人で、多分ここでも喋っていたと思いますが、今日、アメリカに向けて出発しました。今日、会議に出て感じたことは、大学の会議というのはやっていてもほとんど意味のない会議が8割ですけど、この会議は珍しく実質的な会議だったので、すごく楽しめました。私の専門は終末期医療のスペシャルケアとホスピスでの看護で、アメリカではフイーズメディカルセンターというワイキキの病院で実習をしていました。病院付き牧師みたいな、皆さんからすればちょっといかがわしい仕事ですが、アメリカ・ヨーロッパには必ず1人いて、病棟をうろついています。今日の話を聞いていても、チャップリン的な役割が少し入ったらまた変わってくるなという局面もあって、非常に興味深く聞かせていただきました。関谷と申します。よろしくお願いします。

 原 簡単に名前だけ、私から自己紹介します。取りあえず交代して委員長になりました。読売新聞の原です。よろしくお願いします。

 勝村 私は勝村と言います。よろしくお願いします。

 岩橋 岩橋と言います。私も今日で2回目、新しいのでよろしくお願いします。

 清水 清水と言います。よろしくお願いいたします。

 田中 田中です。よろしくお願いします。

 丸山 事務局の丸山です。

 内田 メールでやり取りを数回しました内田です。

 東 副院長の東です。整形外科でございます。

 吉中 院長をやっています吉中と言います。よろしくお願いいたします。

 北村 内部委員の副委員長をやっております北村と申します。どうぞよろしくお願いします。

 原 はい。ということで次回の日程です。

 内田 今日は8月分ということですので、2ヵ月後の第1木曜日は10月1日になりますが、行事がありますので第5木曜日の10月29日はいかがでしょうか。

 原 いいですか。はい。では、10月29日木曜日で予定します。以上で委員会を終わります。不手際で長引きまして、すみませんでした。ありがとうございました。

 


(入力者注)
※ 文章は全体を通して、話し言葉を書き言葉に改めたり、意味の通じにくい言葉を言い換えたり、同じ発言の繰り返しを省くなどの推敲を行い、かなり要約した形になっていますが、発言者の意図を正確に伝えることを最優先にしています。また、患者名を特定される可能性のある情報など、秘密保持義務に触れる怖れのある発言は曖昧な表現に変えたり、伏せ字にしています。

 

 

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