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第三十回 倫理委員会 議事録

京都民医連中央病院

日時 2009年1月29日(木) 18:30~21:00
場所 太子道診療所3階多目的室
出席者 外部委員 小原委員長、原副委員長、勝村委員、立岩委員
内部委員 北村副委員長、内田委員、坂田委員、井上委員、東委員、吉中委員
事務局 丸山
オブザーバー 清水、小鴨
欠席 広瀬委員、村井委員

議事

 小原 これから来られる方もおられると思いますが、第30回倫理委員会を始めたいと思います。今日の議事はお手元の要項に従ってやっていきますが、割り当てたい時間配分を最初に申しあげて、ご協力をお願いしたいと思います。「(3)その他」の治験報告も忘れないで入れますが、簡単に済むということですので、大きな議題は(1)と(2)になります。(1)はこれまでの続きで、(2)は全く新しい議題になりますので、概ね等分に扱い、だいたい1時間、1時間ぐらいの感じで結論を出せるようにしたいと考えていますので、よろしくお願いします。

 

議事(1)「事例検討」

※事例1例検討しました。

 小原 では、(1)のガイドラインの方を進めたいと思います。

 

議事(2)「DNARに関する院内手順整備」

 北村 事前資料でお送りしたものの中の「京都民医連中央病院で行われるDNAR指示に関するガイドラインとその解説」という文章のご検討をいただきたいと思います。前回の倫理委員会で「こういったガイドラインを作った上で、患者さん向けの説明文書を作る」ということにご賛成いただいたので、今回は前回のものを大幅に修正して案を作成いたしました。前回は、ガイドラインの内容自体について議論する時間がありませんでしたので、前回案のどこを修正したかということは省きまして、これを第1案として提示させていただきたいと思います。今回、ここで提示するまでに、前回以降に院内での議論を若干、行いました。内科科長会議と全体科長会議で、医師を対象にした話し合いを持っております。ただ、看護の現場には諮れておりませんが、倫理委員会とキャッチボールしながら、関係する部署との議論を重ねていきたいと思っております。
 ということで、本文を読んでいきたいと思うのですが、1点、今までの議論から大きく修正している点がありますので、その点を最初に「どこをどうして変えたか」ということをお話ししたいと思います。今までの議論では基本的に「無益である、意味がない心肺蘇生を行わないために、医師がイニシアチブを取ってDNARを決断したらよい。その上で、その決定の中で若干の修飾因子として患者さんの意向を最大限に尊重しましょう。例えば意味がないと分かっていても家族が来るまで続けるという意向があれば、そういう思いは尊重しましょう」という方向性だったと思います。ただ、今回のガイドラインでは、「DNAR指示を出すためには、医師が提案するのだけれども、患者あるいは家族の同意を必要とする」ということに変更しております。なぜ変更しているかと言いますと、これまでの議論ではあまり出ていませんでしたが、「心肺蘇生は全く意味がない」と判断することに若干の不確実性が伴うということにあります。もちろん、病棟で既に死後硬直が始まった状態で発見されたといった場合では、心肺蘇生を行う必要がないと100%言えると思いますが、必ずしもそういう状態はそんなに多くない。常に若干の一定の不確実さを伴うということであれば、DNAR指示を医師の判断のみで出すということは具合が悪いのではないかということで、今回は、患者あるいは家族の同意というものを受けないとDNAR指示を出せないということにしてあります。
 そんなに長いものではありませんので、ガイドライン本文についての説明に移らさせていただきます。目次がありますけど、【Ⅰ はじめに】と【Ⅱ 全体の構成】は細かいことなので割愛いたしまして、【第1部 基本的情報】を読み上げさせていただきます。
 【第1部 基本的情報】【Ⅲ 心肺蘇生に関する基本的情報】【1 定義】【患者の心肺機能が停止した状態にある場合、救命を目的として心機能と呼吸機能を回復させることが試みられるが、この行為を心肺蘇生(CPR)といい、その際の手技を心肺蘇生術という。CPRは一次救命処置(BLS)と二次救命処置(ACLS)に分けられる。BLSは気道確保や人工呼吸、心臓マッサージなどの手技を含み、広く一般の方でも実施することができるものである。一方ACLSは病院等の医療施設において、医療従事者のチームによって行われる高度な心肺蘇生法のことを指し、気管挿管をはじめとする確実な気道確保と高濃度酸素投与、電気的除細動および静脈路確保と薬物投与を主体とした手技が用いられる。本ガイドラインで扱われる心肺蘇生は、このACLSを指す。】
 【2 心肺蘇生術の効果】【心肺停止患者に行う心肺蘇生は、あまり有効性の高い治療ではない。入院患者に行われた心肺蘇生に関するEbellらのメタアナリシスによると、調査対象となった全例の中でいったんは生存を達成した率は40.7%、退院にまで至った率は13.4%となっている。またSandoroniらによれば、病院で発生した心肺停止に対して蘇生が行われた場合、退院にまで至ることができるのは15-20%であり、Nolanらによれば、病院外で生じた心肺停止の場合では5-10%と、病院内での発生事例と比べて厳しい予後を示すデータが出ているという。】【また、転移性の悪性腫瘍や敗血症、高クレアチニン血症を有した患者に発生した心肺停止の場合、退院に至る可能性はさらに低くなる。例えば心肺停止に陥った入院中の癌患者に対して行われた心肺蘇生についてのReisfieldによるメタアナリシスでは、転移性の悪性腫瘍の場合、1990年以降は退院率が5.6%となっている。】
 【3 心肺蘇生術の副作用】【一方、心肺蘇生術は副作用を伴うことが多い。約30%の確立で肋骨や胸骨の骨折が生じ、他にも肝臓や脾臓の破裂なども生じることがある。この際、非常に厳しい臓器損傷が起これば、心肺蘇生術の実施によって死がもたらされる場合がある。】
 【4 一般の人たちの知識と認識】【このように心肺蘇生は限界が大きい治療である。しかし一般の人たちは、心肺蘇生についての正しい情報を把握していないことが多いと考えられる。例えばある研究によれば、心肺蘇生後のほとんどの場合に人工呼吸器装着が必要であることを理解している一般の人は極めて少ないことが示されている。】【また、報道の影響によって、人工呼吸器の装着や静脈路の確保といった手技については、ネガティブな印象が与えられがちな状況になっている。救命に成功したが人工呼吸器や経管栄養から離脱できない状態に陥ると、その状態は「チューブにつながられて生きている」「スパゲッティ症候群」といった言葉で表現され、行われている治療は「単なる延命」「無益な治療」などのネガティブな常套句を用いて表現されることが多い。】【一方、近年は心肺蘇生法教育が重視され、心肺蘇生についての様々な情報提供が市民に対して積極的になされたり、救命講習会が多数開催されるようになるなど、少しずつ状況は変化しつつある。しかし、そうした心肺蘇生教育については、まだ質・量ともに十分だと言える状況になく、それゆえ多くの人は正確な情報を持たないままに、現実以上にネガティブな印象が強調された終末期の心肺蘇生に関する考えを持っている可能性が高いと考えられる。】
 【Ⅳ DNAR指示に関する基本的情報】。【1 定義】は割愛して、【2】に行きます。
 【2 DNAR指示がはらむ倫理的問題点】【1)延命の可能性を奪ってしまうことによる倫理的問題点】【医師がDNAR指示を出すということは、心肺停止時にも敢えて「心肺蘇生を開始しない」ことになり、医師の不作為によって結果的に患者は死亡することになってしまう。こうした性格を持つDNAR指示は、その倫理的妥当性が厳しく問われることになる。なぜなら、まだ命を長らえる可能性のある状態の患者に対してDNAR指示を出されてしまうと、その後、心肺停止した場合は患者が死亡することになるからだ。】【もちろんDNAR指示が問題なく許容される場合もある。アメリカ心臓協会のガイドラインにも示されているように、全く生存の可能性のない心肺停止状態(例えば死後硬直などの死体現象が始まっている例など)が発見された場合、あるいは最善の治療ににも拘わらず、生命維持に不可欠な機能が悪化していて、心肺蘇生による生理学的効果が期待できない場合(進行した敗血性ショックや心原性ショックなど)にも許容されるだろう。】【しかし、一般にDNAR指示が出されるのはそうした状況に陥る前の時点である。通常はかなり厳しい予後予測が医師によってなされた時点で、指示を出すことを検討される場合が多い。この予後予測が100%正確なものであれば問題はない。しかし、この医師の予後予測がそもそも不確実であり、さらに医師個人の思考パターンにも影響を受けるものだと言われている。例えばEbellらは「心肺蘇生の結果についての医師の判断は信頼性が高いとは言えず、医師の持つ主観的な認知モデルが予後の推測に強い影響を与えており、その場合、一般的には『年齢』の因子が特に重視される一方で、血清クレアチニン、癌、肺炎などの予後を決める他の重要な因子は軽視される傾向がある」ことを明らかにしている。この見解に基づけば、例えば「高齢」の患者だと、医師によって必要以上に早い治療のDNAR指示が出されてしまう怖れがあることになる。また、医師の認知モデルが影響を与えるのであれば、重度認知症や遷延性植物状態など、一般に「QOLが低い」とラベリングされがちな状態の患者に対しては、「早すぎるDNAR指示」が出されてしまう怖れも高いということが言えるだろう。】【こうした不確実性を伴うDNAR指示を、医師のみの判断で出すことは倫理的問題があるため、患者(あるいは家族)の同意を得ることを通じて、医師と患者双方がこの不確実性を共有し、納得した上でDNAR指示を出すことを許容する流れが一般的となっている。】
 【2)本人が「心肺蘇生をしない判断」を下せないことによる問題】【しかし、その場合でも別の倫理的問題点が生じる。DNARの指示が検討されるような重篤な病状の際には、患者自身の同意を得ることが困難なことが多い。だから、「本人が同意できない場合に、誰がどのようにして治療内容を決断するのが倫理的に妥当なのか」という問題が生じることになる。この問題の解決法として、以下の3つの方法が用いられている。】
 【A 患者の「事前指示」に基づく決定】、【B 「代理決定者」の判断による決定】、それから【C 集団的意思決定】と、3つが大きく挙げられるだろうということです。それぞれ説明をしておりますが、この「集団的意思決定」を今回は採用しようということですので、ここだけちょっと読ませていただきます。
 【本邦においては、以上のどちらにも収まりきらない意思決定が行われていることが多いと考えられている。例えば2007年に厚生労働省が定めた「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」では、患者の意思を確認できる場合の治療方針の決定は、「専門的な医学的検討を踏まえた上で、インフォームド・コンセントに基づく患者の意思決定を基本とし、多専門職種の医療従事者から構成される医療・ケアチームとして行う」ものとされている。この表現ではいったい誰が決断の主体なのかが不明確であるが、この決断主体の不明確さは、日本の実際の医療現場での決定過程を反映したものであると考えられる。というのは、本人や家族と医療チームが話し合う中で、双方の考えの違いをゆっくり埋めつつ、妥当な落としどころを探っていくという、言わば「日本的決定方法」が実際の臨床現場で多く用いられているからだ。】【こうした決定方法は、決して悪いものではない。なぜなら、多くの人たちの経験や知識、価値観や智恵などに基づいて集団で思考することによって、独善的な判断を防ぐことができ、また、多くの人が納得できる結論が得られるという点で、良い決定方法だと言うことができるからだ。】【しかし、集団的意思決定にも問題がある。それは多数の意見が通りやすくなり、少数意見が軽視されるという危険である。特に、患者以外の人たちの利害が一致している場合に、患者の利益に反した決断がなされてしまうことが生じかねない。】
 で、【第2部】が【Ⅴ 当院のDNAR指示に関する考え】を整理したものです。で、この考えに則って、後に【第3部 ガイドライン】が細かく規定されることになります。
 まず【1 状況によっては「DNAR指示」が出されることを許容する】。【死が極めて差し迫った時期に発生した心肺停止状態については、心肺蘇生を行っても延命の効果がほとんどない場合が多い。その際にもなお心肺蘇生を行うことは、身体への負担の大きさに比べ、実質的な効果がほとんど得られないことから、正当性が乏しい医療行為だと考えられる。】【そこで、心肺蘇生の効果がほとんど得られないような状態、具体的に言えば、病気の進行によって死が不可避な状態にあり、数時間から数日ほどの延命効果しかないと推測される場合には、心肺蘇生術を実施しないことが倫理的に許容されると考える。】
 【2 倫理的問題を乗り越えるために遵守するべき三原則】【しかし、DNAR指示を出すにあたっては、倫理的問題が生じる。その問題を乗り越えるために、以下に挙げる三原則が遵守されていることを確認した上で、医師はDNAR指示を出さなくてはならない。】
 【1)当院でDNAR指示を出す際の三原則】【・患者の意向を尊重する】【・集団的に意思決定する】【・患者の生命活動を大切にする】。
 で、【2)上の三原則を掲げる理由】を次に挙げました。【A 患者の意向を尊重することについて】【予後予測は不確実性を伴うため、例え死が極めて差し迫っていると推測される場合でも、患者や家族の意向を考慮に入れないで、医師のみの判断でDNAR指示を出すことには倫理的に問題がある。そこで、DNAR指示についての「患者の意向」を尊重することを一つめの原則としたい。】
 【B 集団的に意思決定することについて】【しかし、現実にDNAR指示を出すことを考慮する状況においては、「患者の意向」をハッキリ確認することが困難であることが多い。そこで当院では、患者の現在の意見だけでなく、患者の過去の言動や、既に表明されている「私の考え」なども材料にして、医療者と患者・家族らと集団的に討議を行い、合意の上で治療方針を決定することを基本としたい。】
 【C 患者の生命活動を大切にすることについて】【しかし、「集団的に意思決定する」ことに力点をおくと、別の問題が生じる。例えば「QOLが低い」と評価される人たちには医師は厳しい予後評価をしがちである。また、家族が患者と感情的な対立関係にあると、家族が「治療の手控え」を期待してしまう可能性も否定できない。そうした傾向を医師や家族が持っていると、無意識的に無意識的に延命治療を手控える共謀関係に医師と家族が陥ってしまう可能性が高くなってしまう】【また、「患者の意向を尊重する」ことだけに力点をおいていても問題が生じる。それは一般に、延命についてネガティブに捉えられるの傾向があり、また、患者は「家族に負担をかけている」ことを気にしがちでもあるために、患者自ら「心肺蘇生は要らない」という判断に傾いてしまう可能性が否定できない。】【そうした危険性を考えて、第3の原則として「患者の生命活動」を大切にすることを確認しておきたい。この原則は、私たちの経験から導き出されたものである。私たちの病院は、以前から「社会的弱者」と言われる人たちの思いを大切にしてきた。また、様々な障害によって自分の思いを十分に伝えることができなくなった人でも、この世に存在していることの意味があると考えて、関わることを大切にしてきた。そんな援助活動を通じて私たちは、人の生命の意味というのは他者との関わりの中で生まれてくるものだということに確信を持つようになった。例えば患者が「自分の命は意味がない」と考えていても、私たちがその人の生命活動に意味があると考えて関わり続ける中で、患者自身も自分の生に意味を感じるようになったことを経験している。また、意識がなかったり、高次の脳の活動が困難になっている人でも、その存在自体を大切にして関わる中で、ご家族やケアにあたる人が患者の存在に意味を感じるようになることも経験してきた。だからこそ当院では、「患者の生命活動」を大切にする原則を重視したい。】
 で、次は【3 ガイドラインに従って運用する】という原則ですけれども、これは割愛して、最後、P12以降が「ガイドライン本編」です。
 【1 目的】【このガイドラインは、京都民医連中央病院に入院中の患者に出されるDNAR指示の倫理的妥当性を高めることを目的として制定される。】
 【2 対象】【このガイドラインは、当院入院中の患者について出されるDNAR指示に関するものであって、当院の終末期医療全体に関する倫理的な方針や、また、心肺蘇生開始後に行われる中止の判断に関する倫理的な考えを表明するものではない。】
 【3 当院のDNAR指示の決定過程に関する基本方針】【「患者の意向」を尊重することと、「患者の生命活動」を大切にすることを共有した上で、患者、家族、医療スタッフの間の討議によって、集団的に判断することを基本方針とする。】
 【4 心肺蘇生の開始に関する原則】【心肺停止状態の患者に対しては、心肺蘇生を開始することを原則とする。】
 【5 心肺蘇生を開始しないでもよい条件】【しかし以下の2つの条件が揃っている場合には、心肺蘇生を開始しないことを許容する。】【5.1:第1条件(事前条件):有効なDNAR指示が出されていること】【5.2:第2条件(心肺停止時条件):患者が医学的要件を満たした状態にあること】
 【5.1 第1条件(事前条件)について】【以下の1-医学的要件、2-多職種の同意要件、3-患者(あるいは家族や患者が信頼している人)の同意要件、を満たしている場合には、主治医はDNAR指示を出すことができる。この条件を満たしていないDNAR指示は有効なものとして認められない。】
 【5.1.1-医学的要件】【A、Bの条件を満たしていなければならない。】【A 現在、以下の3つの要素を満たしている場合。または数週間以内に以下の3要素が満たされる可能性が極めて高いと推測される状態にある場合。】【○患者が進行性の病気に罹患している】【○最善の治療にも拘わらず、その病気の進行によって死が差し迫った状態にある】【○心肺停止した場合、仮に心肺蘇生しても数時間から数日で死を迎えると推測される】【B Aが初期研修医を除く複数の医師によって確認され、診療録に記録されていること。】
 【5.1.2-多職種の同意要件】【当該患者に関与する多職種(最低でも医師・看護師を含む)の参加するカンファレンスにおいて、指示の妥当性が確認されていること。】
 【5.1.3-患者(あるいは家族や患者が信頼している人)の同意要件】【5.1.1と5.1.2が確認された後に、以下の1)~6)までの手順が完了していなくてはならない。】【1)患者(あるいは家族や信頼している人)へ説明する。】【・主治医と看護士同席にて、説明を行う。】【・主治医が一般的な医学除法について十分な説明を行う。ここでいう医学的情報とは、現在の病状、推測される予後、心肺蘇生に関する一般的情報(手技、効果、副作用など)、DNAR指示の持つ意味などを含む。】【・主治医が「当院のDNAR指示の決定過程に関する基本方針」(本ガイドライン)について十分な説明を行う。】【・看護師は、患者の立場に立って心理的サポートを行うよう努める。】【2)十分によく話し合う。】【3)患者、あるいは家族の意向を確認する。この際、患者の過去の言動や、過去の意思表明(当院で全入院患者に配布する「私の考え」)などを参考材料としつつ、患者の意向を確認していく。】【4)患者、あるいは家族が了解された場合、同意書に記入していただく。】【5)主治医が、説明内容と患者あるいは家族の同意についてカルテに記載した上で、DNAR指示を出す。】
 【5.2 第2条件(心肺停止時条件)について】【患者が心肺停止状態に陥った場合、1-有効なDNAR指示が出されている、2-医学的要件を満たしている、の2つの条件を満たしている場合には心肺蘇生術を開始しないことが許容される。】
 【6 DNAR指示の安全性、倫理性の確保のためのチェック機能】
 【6.1 職員の任務】【1)当院職員はこのガイドラインを熟知した上で運用しなくてはならない。】【2)このガイドラインに沿わない不適切なDNAR指示が出されていることを知った場合には、院長に報告せねばならない。】
 【6.2 主治医の任務】【該当患者の主治医は、患者の状態について十分な注意を配り、DNAR指示の妥当性について常にモニターせねばならない。また、DNAR指示を許容する条件を満たさなくなった場合には、早急にDNAR指示を取り消さねばならない。】
 【6.3 当該病棟師長の任務】【当該患者が入院している病棟の師長は、DNAR指示が出された患者の氏名を、指示が出された翌々日までに病院長に報告しなくてはならない。】
 【6.4 院長の任務】【1)医療安全委員長に、報告を受けている当該患者の氏名を伝えなければならない。】【2)不適切な事例の報告を医療安全委員長から受けた場合には、主治医に対して指導などの必要な介入を行わなければならない。】
 【6.5 医療安全委員長の任務】【1)医療安全委員長は、院内で発生している「DNAR指示」の対象患者を把握し、経過をモニターしながら、その妥当性について確認せねばならない。】【2)不適切な事例が発生している場合には、院長に報告せねばならない。】後は参考文献の一覧です。

 小原 今、DNARのガイドラインの重要だと思われるところを中心に読んでいただきました。もしお気づきの点、特に、最初に「変更点がある」と言われましたけど、そういったことを含めて、意見があればどんどん出していただきたいと思います。これまで議論してきた患者さん向けの説明書の、さらに詳細を詰めたものだと位置づけていただいたら良いと思います。

 立岩 P12からP13の表現の問題で、「あるいは家族や患者が信頼している人」というのは、「家族や患者が」ということか、「家族や、患者が信頼している人」ということか、どういうかかりになっているのですか。

 北村 「家族か、患者が信頼している人」。

 立岩 「家族、ないしは患者が信頼している人」ということですね。

 北村 はい。その優先順位についてはここでは定めていませんが、代理決定の内容についてはまとめ切れていないところがありますので、見ていただくと不明瞭な点が多いと思います。

 原 「家族」というのがあって、それと別に「患者が信頼している人」ということだから、「家族や」の次に「、」をいれるということですね。

 北村 そうですね。「家族や、患者が信頼している人」ですね。

 勝村 P14の5.2に書いていることは、P12の5に書いていることとほとんど同じですよね。だから、第2条件が「医学的要件」となっていたら、P13の5.1.1というのが、第2条件を説明しているのですかね。

 北村 2段階がありまして、まず、「DNAR指示を出す」という段階があります。その次に、DNAR指示が出されている患者に対して実際に心肺停止が発生した場合、何もしない」という段階があります。で、5.1というのがDNAR指示を出すことを許容するための条件になっています。DNAR指示が出されていても、まだ本当に死が差し迫った状況ではなく、例えば急にノドへ食べ物が詰まったなど、その後に発生した偶発的な事象で心肺停止しても、蘇生すればまだ全然、生きられるという場合であれば、5.2には当てはまらないということで、心肺停止時に本当に数時間から数日以内に死ぬという状況でなければ、心肺蘇生を行いましょうという条件です。

 勝村 いや、それは分かるのですが、構成が分かりにくいような気がするのですね。

 小原 重複があるからということですね。P14の5.2に「1-」が入っているのがややこしいという意味ですか。

 勝村 5で最初に「第1条件」「第2条件」と書いておいて、5.1で「第1条件について」と書いて、その次は、P14の5.2で「第2条件について」になっているのですね。

 原 勝村さんのご指摘に添って言うと、P14の5.2の内容を書き換えた方が良いということだと思うのですね。例えば「心肺停止条件というのをどういう状態と呼ぶのか」と、それから「誰が確認するのか」という…、まぁ1人でも仕方がない気がしますけども、それから、「病気本来の進行によってということであって、偶発的なものは除外されますよ」というようなこととか、他にもあるかな。「この案件の対象になる心肺停止かどうか」という内容を書いた方が良いということですね。

 小原 5.2で書きたい要点は、「予期せぬ形で心肺停止に陥った場合にはしない」ということを留保しておきたいということですが、ニュアンスがちゃんと伝わっていないので、それを書き加えた方が良いと思います。

 原 加えるのと、5.1の第1条件に関しては集団的な討議ですが、5.2では「第2条件の確認を誰がするのか」ということと、「第1・第2条件を満たしていることを誰が決めるのか」という手順を書く必要がある感じですね。

 北村 「心肺停止した時にそれを誰が確認するのか」ということですね。

 小原 これは普通、誰がしているのですか。

 吉中 何分も待てないので、医師が瞬時にそれを判断するしかないですね。

 北村 その前に心肺停止を発見するのは看護師ですよね。

 坂田 はい。でも、そこで看護師が「この人は心肺蘇生をした方が良い」とかというよりは、例えば窒息などの予期せぬことが起こったといった、今の条件を医師に伝えて、医師が来て、「心肺蘇生をしようか」ということになると思います。

 北村 でも、看護が発見した時点でも一部は始まりますよね。

 坂田 そうですね。そうなるとそこの条件で、看護師が判断しているということもあると思いますね。

 小原 原さんはそこを厳密化させるということですか。

 原 厳密にしなくても良いのですけど、ハッキリできればハッキリしていただいた方が良いと思います。

 勝村 P13の5.1.1の「医学的要件」というのは、P12の5の第2条件の「医学的要件」とは違う?

 北村 医学的要件は同じことを指しています。5.1.1の医学的要件に書いてある3つの条件が書いてありますね。これが揃っている状態であれば、「心肺蘇生をしない」ということが可能になります。

 勝村 Aの3つの条件とBがありますが、それを合わせて医学的要件としているわけですね。

 北村 ここには少し混乱がありますね。5.1.1の医学的要件には、3つの要素がありまして、1つはその3条件の問題があることと、2つめの要素が「複数の医師によって確認されて、診療録に記載されている」ことと、もう1つ、「数週間以内に3条件が満たされる可能性が高いと推測される」という要素があって、で、実際に心肺停止時条件に書いている医学的要件は、この3条件だけなので、医学的要件という言葉を使い回すと、誤解を生じる怖れがあると思います。

 勝村 だから、第1条件の医学的要件と、第2条件の医学的要件を分けられるから分けているのかなという構成だけど、それが上手く分けられていないのではないかなと思うのです。特にP14の5.2というのは、P12の5と全く同じ文章になっているから、5.2という欄を立てている意味が非常に分かりにくい。

 北村 ここでもう一度、「5.2で言っている医学的要件とは何か」ということを詳しく明記するのと、それと、「偶発的なことは除外する」ということも明記するのと、ここをより明確化していくということは、確かにした方が良いと思います。それともう1つ、「心肺停止状態に陥ったことを誰が確認するのか」ということを厳密にここで書く必要があるのかどうかは、ちょっと迷うところではあります。医師が判断するのか。

 井上 心肺停止に陥った状態、これは誰でも、もう居合わせた人がいちばん良いと思いますね。これは道に倒れていたら、居合わせた人がしますから、院内でも同じようなことです。

 原 心肺停止は分かるのでしょうけどね、「偶発的な問題ではない」という判断が必要ですよね。

 井上 それは非常に難しいところですよね。ただ、まぁ始めないと…。

 原 始めるのは良いのでしょうけどね。

 坂田 医師が来る前にACLSまで院内でするかと言うたら…、

 井上 EMコールをかければ、医師はだいたい1~2分ぐらいで集まってきますので、そこで「継続するかどうかの判断をする」というのが今の現場ですね。

 原 確認の仕方的に言ったら、「原則的にはドクターを含めた複数」というぐらいなのかな。「ドクター2人」とまでは言う必要はないですけど。ナースだけで「ここを満たしています」と言うのは多分、現実にはあまりないのかも知れないけど、マズイような気がします。

 北村 でも、そういう状況を入れると、「ドクターが来るまでは開始しておく」ということになってしまいますね。少なくともBSLという「医者が来なくてもやれるような心肺蘇生はやる」ということになってしまいます。

 勝村 P12の5の第2条件の医学的要件というのは、何なんですか。心臓が止まっているという事実ですか。

 北村 5.1.1のAのところの○が付いている3つですね。

 勝村 この3つが心肺停止時条件ということですか。だけどこれは「第1条件について」という事前条件の中を説明している構成になっていますよね。

 北村 そうですね。「こういう状態に陥ることが数週以内に満たされる可能性が極めて高いと推測される場合」という中に入れているわけですね。

 勝村 で、これは事前の条件なんですか、心肺停止時の条件なんですか。

 北村 DNAR指示を出す条件が5.1の事前条件で、出されている人に本当にこの3つの○が揃った場合は「しないよ」ということで、それが5.2の心肺停止時条件です。

 東 元々そういう条件があって、既に指示が出されていると、でも、実際に心肺停止に陥った人が、実際にその条件の心肺停止かどうかということを確認するという意味だと思います。極端に言えば「とっさにご飯を詰めたというような全然違う話ではないですよ」ということの確認が最低限は要るよということですね。だから、「同じ条件を満たしている状態で亡くなったということを、再度確認せよ」ということですよね。

 原 だったら、細かい話ですけど、「これは3つの○を満たしていること」というふうに書く必要があるでしょう。Bまでいくと「複数で確認しろ」となるし、「予測される場合」は除かれるから。

 吉中 第2条件である心肺停止時条件の医学的要件というと、痰を詰めたりというような、「予期せぬ死」というのを除外したいということですね。ということは、「想定された範囲での予想されている死について許容する」ということをここに入れたいことですね。その証明と判断は難しい面はありますけれど、そこに限定してやった方が良いですね。全く同じものにしてしまうと、「なんでもう一度するの」となってしまうから。

 東 今のところと若干関連するけど、P4の定義のところの最後に「本ガイドラインで扱われる心肺蘇生は、このACLSを指す」とあるので、いわゆるBLSにあたる「気道確保とか心臓マッサージというようなものはやってもいい」という話で、第2条件を満たした時でも、こういうことの判断を待っていれば、助かる人も助からなくなりますから、看護師が見つけて「とりあえず心臓マッサージをやりましょう」ぐらいのことはよろしいということで、そして、プロセスの中で第2条件が確認されたら、「次の段階ではもうやめましょう」というふうにしたらよいと、そういうふうに理解したらよろしいでしょうね。

 北村 この一文を加えたことで、そうなってしまいますね。

 東 要するに、「この人は何もしないんだよ」という話になった時に、普通は多分、これもやらないでしょ。

 坂田 でも、そういう時にはたいていの場合、概ね心拍が下がって呼吸停止状態となる前に、「そういう状況になってきましたよ」ということを医師と確認して、「もうちょっとなので」ということで電話をして、家族に来てもらって立ち会わせるという形を作るので、突然、振り返ったら亡くなっていたということ方が、むしろないと思うのですね。DNARのオーダーが出ていても、予期せぬ死の時は、確かにBLSはすると思うのです。で、そこで「この方の今回のエピソードはそういう条件が満たされているよ」という医師の判断があれば、「ここでやめましょう」ということは十分にあり得ると思うので、別にBLSをすることは何ら問題はないと思います。

 東 だから、とっさの時には臨機応変で、「もう何もしないんだということを前提でやる必要はない」というふうに理解したら良いですね。

 小原 そのへんがきちんと伝わるかどうかですね。「この人はDNAR指示が出ているから、もう触ったらダメ」みたいになっちゃうと、本当にやらないといけないこともできなくなるのでね。

 吉中 EMコールが鳴るということは逆に、予期しないビックリした出来事が発生したということですからね。

 東 普通は確かに、もう亡くなることが分かっていて、だんだん血圧も下がってという場合は、EMコールは鳴らないですね。

 原 「まぁ、病院によるだろうな」と感じましたけど、ここの病院の場合は、「知らん内に止まっていました」というのはあまりない話ということですね。

 坂田 そうですね、DNARの指示が出ている患者さんは、予期せぬことではない限りは。

 吉中 この前、科長会議の議論で出たのですが、P13の「5.1.1-医学的要件」のAに、「数週間以内に以下の3要素」というのがありますよね、ここが現場との関係では非常に重要で、今ははるかに前から出される傾向があるのですよね。それで、戸惑いがちょっと生じていたので、「数週間」の「数」はいくらかというのもありますけど、「1ヵ月を超えるともう一度確認する」というようなことが、手順として要るような感じがしますね。予想が外れる場合も、もちろんあるわけで、「後、数週間かな」と思っても、以外と長いということもあるし、回復する場合も実際にないわけではないですね。

 小原 今、平均するとだいたい「後、どれぐらい保つだろう」という患者さんに対してDNARの確認をしているのですか。数週間ではなくて数ヵ月みたいな感じですか。

 井上 人によっていろいろですが、悪性疾患の場合は本当に数ヵ月という単位も十分にあると思いますね。

 小原 そうすると、「数週」という表現は具合悪くなりますね。普通、「数」というのは2~3週ぐらいをイメージしますから。現状に合わせて、単純に「週」を「月」に変えるだけで解決するのか、どうしたらよいのでしょうか。幅を持たせるという意味では、短すぎるより多少長めの方が、柔軟な運用ができると思うのですけどね。

 井上 「予測されない心停止については心肺蘇生をする」という条件さえあれば、早く出していてもそれほど問題はないだろうとは思いますが、ただ、早すぎると、いわゆるDNARということが病棟に浸透しすぎて、あまり何もしないという消極的な医療になってしまわないかということが、いちばん危惧されるところです。

 吉中 早く出しすぎると、モニターをするということ自身が切羽詰まらないままになっていて、急に見つかってうろたえるみたいなことが、非常に起きやすくなりますよね。あまり長くしすぎると独り歩きしてしまうということもあるから、更新制度が要るのではないかと感じたのですね。

 北村 最初に出されて何週間か経ったら、見直すように義務づけるということですね。

 吉中 「1ヵ月程度だろう」と医師が医学的判断をした時に、それを超えた場合には当然、フィードバックして見直し、評価しなければいけませんよね。そういうふうに考えてやった方が現実に合うし、修正もできるということもあります。

 勝村 「数週間」のところにもうちょっと具体的な数字を入れて、それを超えた場合には別途にいくような流れを明記できればいい。

 吉中 まぁ、カンファレンスはするわけですけどね。

 小原 ガイドラインなので、あまり曖昧なままにおいておくのは具合悪いですから、「数週以内」というのをどういう表現に置き換えるのが適切かということですね。

 坂田 「数週間」というところでは良いと思うのですけど、ただ、例えば「オーダーが出て4週間を超えた時に再度、評価をする」というふうなことでどうでしょうかね。それが妥当なのかどうか分からないのですけど。

 吉中 前の事例でICUの話だと、こういう話になったけれども頑張っていたというケースでしたから、日数で区切るとこの3条件を満たさなくなるので、こういう状態の患者ではないということですよね。それは意外と重要で、知らないと、DNAR指示が出ている患者が痰を詰めたり、何かが起きた時に、心肺蘇生をしないままになってしまうというというリスクは十分にありますよね。「4週間経ったら再評価する」ということで良いのではないでしょうかね。もしくは「医学的要件を満たさなくなった場合~」。

 小原 では、とりあえず「数週以内」というのはおいといて、再評価の要件を加えるということで良いですか。

 原 それだったら、「どれぐらい早めから備えておく必要があるのか」という事情の問題と、「治療方針に影響しないか」というところとの兼ね合いですけど、それが例えば2ヵ月とか3ヵ月という話だとか、6ヵ月ぐらい備えないといけない人も結構多いということだったら、それぐらい幅で取って、1ヵ月ぐらいで更新するとか、とりあえず数字を決めちゃった方が良いようなきがしますけど。

 吉中 それは、この要件の2番目の「その病気の進行によって死が差し迫った状態にある」ということが言えるところになりますよね。

 井上 あまり長いと差し迫っていないですからね。

 坂田 差し迫るというのはどのくらいになんですか。

 井上 数週がもう限界だと思いますね。普通は1~2週。

 原 いや、要するに戻ってこない亡くなり方をするだろうという予測が立つということですけど。

 小原 差し迫るという言葉が使えるのは、最大1ヵ月ぐらいですか。

 井上 でしょうね。通常は1~2週間というイメージですが、1ヵ月を超えるとちょっと微妙な感じがします。

 北村 数字が問題になっているのは、その状態に陥るのが「数週以内に以下の3要素が満たされる可能性が極めて高いと推測される状態」ということで、今は差し迫っていなくても構わないのです。

 原 ○の1つめと2つめは、「推測される」ではなくて、この事前段階でやっぱり満たしてないとあかんのではないですかね。

 小原 ○の1番目は推測ではなくて、実際に対象を特定して治療にあたっているわけですから。

 原 ○の2番目は、「差し迫った」をどうとるかですけどね。これは推測を考えないといけないですか。

 勝村 Aは「現在2つの要素を満たしている場合」で終わったらダメなんですか。

 北村 現実には数週、あるいは数ヵ月もあり得るのですかね。悪性腫瘍でもどんどん悪くなっていくということがあり得るのなら、出ることもある?

 坂田 例えば患者さん本人とお話ができる時期に話そうと思ったら、ターミナル中期ぐらいの、むしろ差し迫った時期ではない時の方が話しやすいのではないかな。

 勝村 2つめの「差し迫った」という言葉になる前に取るという意味での「数週間前」ということなのか。逆に言うと、「以下の3つの要素を数週間以内に満たす場合」にこそやるべきなのかな。でも、それができなくて既に満たしている時もあるか。

 小原 文章の構成はこれでさほど問題はないと思うのですけど、期間をこのままおいておくのか、特定した方が良いのか、議論を詰めていただきたいと思います。

 勝村 それだったら全然、良いのかな。いつやっても良いという感じがしますね。

 小原 数週というのは2~3週から5~6週ぐらいまではギリギリいけるかなと、でも7~8だったら数週にはならないかなという感じで、ちょっと曖昧さを残すのが現状に合うのかなと思うのですけどね。ですから、そのへんの解釈の幅を敢えて持たせてこのままおいとくか、それこそ1ヵ月以内ぐらいにするのか。

 勝村 「指示を出しておいた方が良いな」という判断をするということは、「近々そういうことが起こり得るな」と思うことが医学的にいつ頃に分かるのかという、経験のレベルだから、あまり倫理委員会として規定しなくてもいいような感じがする。

 北村 それでは、もう少し当院の医師と看護で議論する中で詰めていくと…。

 小原 妥当な数字を出していただいたら良いと思います。

 勝村 これだけを見ると数字が要らないような気がしてきましたけど、先ほどの院長の話のような、更新というものを考えるためには数字が要るでしょうね。

 小原 もし、追加条件で「1ヵ月後に再評価する」という言葉が入るとするならば、文章も「1ヵ月以内に」ぐらいとしておいた方が、整合性はあるだろうなとは思います。そのへんはちょっと検討してみてください。

 原 「1ヵ月以内」ぐらいの方が分かり良い気がしますけどね。

 小原 これにはかなりいろんな課題がありますので議論は尽きないのですけど、どうしたら良いですかね。

 勝村 それと、僕は誰が読んでも分かる文章の方が良いと思うので、やっぱりP14の5.2の構成は分かりにくいと思うのです。

 小原 それは抜本的に変えていただいた方が良いと思います。

 勝村 だからここに書くべきは、「心肺停止になった時に、心肺停止になった理由が指示した時の医学的要件と同じである」という意味の文を入れるということで良いのですね。

 原 「前の○のところを再確認」か、少し裏返すような形にするのと、手順の問題で言うと、条件を満たしているということは、やっぱりドクターが確認しないと仕方がないのでしょうね。そして、「その間、ナースなんかがとりあえず蘇生処置をすることは差しつかえない」ということも書いておくかどうかですね。

 坂田 「今回の蘇生はACLSに限って」ということが最初に付いているので、BLSをやるかやらないかに言及しない方が良いのではないかなと思うのです。

 原 いや、「やるべき」とまでは書く必要がないですが、「やっても構わない」は良いのではないですか。

 小原 それを書いた方が良いですか。

 原 現場で困るのではないですか。

 井上 逆に言うと、現場は「見つけたら、すぐにBLSをやるように」と指導をしているのですね。そうしないと、助かる命地が助からないので、「すぐにやろう」ということです。

 小原 ということは、書かなくても臨床的には大丈夫ということですね。

 井上 基本的に今はやっているかなという感じです。

 小原 原さんは、「それでも書いた方が良い」という意見ですか。

 原 書いた方が分かり良いと思います。「やれ」とまで書くことは状況にもよるので別問題ですが、「条件を満たすかを確認するまでの間は、ナースなどがすること自体は差しつかえない」と書くのは良いと思います。

 小原 分かりました。そのへんは現状との摺り合わせをした上で、表現を考えてください。

 吉中 P14の6.4の「院長の任務」の1)は、6.3にもあたりますけど、医療安全委員会には院長も出るので、報告は医療安全委員長にしていただいた方が良いと思います。

 北村 院長を通らなくて良いということですか。

 東 現在、医療安全委員長は、実は院長なんです。

 北村 それを一緒にした方が良いのですね。

 原 それが常に一緒とは限らないでしょ。

 吉中 一緒であっても分けて、医療安全委員長にした方が良い。

 北村 報告は医療安全委員長にするのですね。はい。

 吉中 それで、医療安全委員会で判定などをして、順送りする形にして、必要な対策をとるということです。

 北村 ここで1点、確認したいのは、最初に言いましたが、今までの議論では「医師が決めて良いんだ」という話だったのを、今回は「患者の同意がない限りは指示が出せない」ということに下のですが、それで良いのかということですが。

 小原 どうでしょう。実はこの点もだいぷ議論してきました。その時には「医学的には無益なことをすべきではないだろう」ということを踏まえた上で、議論が落ち着いたと思うのですけど、もちろん、その時も「患者の意向はどうでも良い」ということではなかったと思うのですよ。ただ、優先順位としては、医療チームの判断を優先した方が良いということで、「同意が取れるのであれば、当然、取っておく方が良い」ということは確認していたと思います。この文章では、変更された点というのはどこにあたりますか。

 北村 今までは患者向け文書の話でしたが、ガイドラインではそもそも今の前提、「患者の同意がないとDNAR指示が出せない」という構成になっております。つまり、事前条件に患者の同意要件というのを入れています。

 小原 患者が意思表示できない場合であれば、当然、DNAR指示を出さないということですね。

 北村 指示は出せない。中止の判断はここでは取り扱っていませんから、「とりあえず全部、開始しましょう」ということですね。

 小原 ということは、患者がもう意識のない状態で運び込まれた場合は、当然、事前確認できていませんから、無益だと思ってもやるということですか。

 北村 はい。ガイドラインの対象は入院中の患者に限定していますが、基本的にはそうですね。何も指示がなくて、患者の意思が確認できない場合は、とにかく最初はやりましょうということです。で、やっていく中で「そろそろ良いのではないか」という医学的判断はできると思いますので、中止することはあり得るとは思います。

 小原 そこは、これまでの議論とスタンスが変わってくる可能性もあるので、時間をかけた方が良いでしょう。

 原 同意が得られない場合はやると…? 「本人が『やってくれ』と言っていた場合はやりましょう」というのは良いですね。ただ、「家族がやってくれ」といった場合…、これは両方の状況がありますよね。

 東 「やってくれ」と言われるのと、「やらないでくれ」と言われる場合では、かなり違いますよね。普通、危惧されるのは、本当はやらないといけないのに「やらないでくれ」と言われる場合ですよね。そういう場合は無視するわけですよね。

 原 医学的に可能性のある場合は、それで良いわけでしょ。

 東 ですよね。逆にこちらが「しませんよ」と同意を求めるのは、医学的な根拠を持って話をするのだから大きな問題はないのですが、それに同意してもらえなかったらDNARはできないということも、それはそれで仕方がないので、同意を求めること自体は問題なさそうですね。

 原 だからこの条件では、本人や家族が消極的という場合の問題は別に発生しないですよね。問題になってくるのは、「やらなくても良い」と思われるようなケースで、「やらなかったから」と家族が言う場合で、「それでクレームを付けられたりすることを怖れて、今まではガンガンやっていましたが、これはいかがなものでしょうか」というのが元々の出発点ですよね。そうすると、本人意向で同意を得ている場合は良いのだけど、それ以外の場合は、現実的にはどうなんでしょうかね。

 小原 多分、これを話し始めると簡単に20分、30分、経ちそうなので、次回に改めて、そのことも含めて議論したいと思うのですね。次回には、今日に出たいくつかのポイントを修正したものを出していただき、また、患者向け文書との整合性を丹念にチェックすることも大事だと思いますから、患者向け文書もセットで出していただいて、それもやりたいと思います。そういう形で継続ということでよろしいか。

 原 若干、意見だけ言っておいていいですか。一つは、患者向け文書との整合性の問題は若干あるのですけど、対象としては、「進行性の病気に罹患している」というのはちょっと限定しすぎで、「進行性の病状」ぐらいでも良いのかなという感じがするのですが、あまりいい加減にそれで良いとも言えないのですけど。具体的にはCOPDというのは一応、進行性の病状ですか。多いのは脳血管障害後遺症とかですか。これの病状は進行するかも知れませんが、進行性の病気ではないですよね。

 小原 より広義の範囲を使った方が良いということですね。

 原 広義の対象にした方が良いのかなという気はいたしますよね。特に高齢者の場合は。それと後、簡単なことですけど、ガイドラインの最後の方に注釈的に「これは治療方針の話と混同してはいけませんよ」ということをハッキリと書いておいた方が良いと思いますね。だから、「DNAR指示が出ていることは、治療の手控えを~」とか、ないしは「延命治療の手控えを意味するものではない」ということ。

 立岩 「進行性」という記述は僕も気になりますね。このことを言う場合に、「進行性であるということがいかなる意味で必要条件なのか」というか、「なぜ必要なのか」というのが、ちょっと考えてみると分からなくなるとこがありますね。「では、どうせよ」という話はないのですが、素朴に考えて「どうなんだ」という話。

 吉中 「進行性」という限定を入れること自体?

 立岩 そうですね。基本的には「心肺が止まって戻らない」というイメージではないですか。そういう意味で言えば、その時のその人の心肺の状態が問題なのですけどね、「進行性」「進行性じゃない」という、それ以前の状態にどういう意味合いがあるのか。つまり、「病が進行的である」ということ自体が、その人の心肺の状態の回復を不可能にしているという話なのか、そこのところがちょっと明確ではないような気がします。

 小原 だから、病状の中身に拘わらず、「死期が迫っている」という条件がここではいちばん大事な要件だと思いますね。それに加えて「進行性」という中身まで記述する必要があるかということですね。ここもご検討いただけますか。

 原 多分、除外する意味でこういう定義を付けたと思うのですけど。老衰なんかの人は入らないということがあるのだけど、ついでに入っても良いような気もしますね。

 小原 議論は尽きませんが、一応ここで打ち切らせていただきまして、たいへんですが次回にまとめて議論したいと思います。それでは最後の「(3)その他」の「治験審査委員会の報告」について、ご説明をお願いします。

 

議事(3)「治験審査委員会報告」

 吉中 事前資料のBでは、11月の分から載っていますが、P1~2にはFTY720という新しい薬、P3~5にはGGSの報告が載っています。基本的には大きな問題はないということで、継続が承認されているということです。当院で実際に起きている状況というのはありませんけど、世界的には、因果関係が明らかでないということで継続されていますが、例えばP2に菌状息肉症という疾患が認められているということが報告されており、欧州に報告が多いような感じがしています。

 小原 ヨーロッパでは、実際にもう使われているのですか。

 吉中 いえ、FTY720は全くの新薬で、欧州の方は継続投与の段階に入っています。

 小原 日本よりちょっとだけ進んでいるという感じですか。

 吉中 だいぶ早く、日本の場合は半年投与から順番に継続投与に移っていくという段階です。エントリーは20人ぐらいで、FTYでは当院が日本の半分ぐらいを占めています。

 原 P9に過剰投与、「治験実施計画書からの逸脱に関する報告書」とありますが、それは病院内のことですか。

 吉中 これはウチの病院の話ではない。これはGGSですから、既存薬を多発性硬化症に転用するという話です。

 小原 治験審査に関しては、今、ご報告いただきましたように、大きな問題は特にないということでしたが、それでよろしいですか。それでは、本日に予定されていた議題は全て終了いたしましたので、次回日程の提案をよろしくお願いします。

 内田 今日は2月第1週の予定で入れていましたので、次回は4月2日になりますが、いかがでしょうか。

 小原 はい。では、次回は4月2日ということで予定をお願いします。では、長時間にわたり、どうもありがとうございました。

 


(入力者注)※ 文章は全体を通して、話し言葉を書き言葉に改めたり、意味の通じにくい言葉を言い換えたり、同じ発言の繰り返しを省くなどの推敲を行い、かなり要約した形になっていますが、発言者の意図を正確に伝えることを最優先にしています。また、患者名を特定される可能性のある情報など、秘密保持義務に触れる怖れのある発言は曖昧な表現に変えたり、伏せ字にしています。

 

 

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