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第二十三回 倫理委員会 議事録

京都民医連中央病院

日時 2007年9月11日(火) 18:30~21:00
場所 太子道診療所3階多目的ホール
出席者 外部委員 小原委員長、原副委員長、勝村委員、立岩委員、広瀬委員、村井委員
内部委員 内田委員、東委員、吉中委員
事務局 内田、丸山
オブザーバー 清水、橋本
欠席 坂田委員、高木委員、出島委員

議事

小原 第23回倫理委員会を始めます。まだ来られていない方も間もなく来ていただけると思います。当日資料の議事順に従って、まず「治験の取り組について」を扱い、続いて「心肺蘇生術中止の手順(案)の継続審議」を扱いたいと思います。それでは、治験のことについてご説明いただきますか。

吉中 それでは形態だけを少しお話しして、後は担当していただく斉田先生に説明していただきます。資料Bに「治験審査委員会議事録」というものがありますが、これは前回の倫理委員会でご審議・ご確認いただいた治験について、その後の経緯を報告して、継続を承認したというものです。

2ページ目にあるように、重症筋無力症のステロイド非抵抗性患者を対象とした二重盲験の臨床試験ですが、実際に参加された方は1人です。審議内容には安全性情報報告というものがありまして、1週間毎に治験会社であるアステラス製薬の方から国際的な有害事象の報告書が当院の医療安全室にも届き、そこで保管してチェックしてもらいながら治療しています。重大な事象と言いましても、この薬は移植等の免疫抑制剤として多く使われていますので、そういった中身の報告がほとんどです。質疑応答の中で、「死亡例の記載が多数あるという説明が必要ではないか」という意見がありましたが、「適用症例が違うといったことも含めて、きちんと知らせていこう」ということに落ち着き、結果として審議・採決で承認することになりました。

治験審査委員会は1ヵ月に1回程度のペースで開くことにしていて、次回は10月の1日に予定しています。現在、重症筋無力症の薬は注射薬しかないのですが、FTY720という経口剤についての治験に取り組みたいということで、次回にその審議を予定しており、今日の倫理委員会でもこのFTY720の治験についての審議をお願いしたいということです。具体的な内容は斉田先生に説明していただきます。

斉田 FTY720が対象とするのは、多発性硬化症という国が神経難病に指定している病気です。国が指定している約50の難病の半分近くが神経関係の病気ですが、神経関係が多い理由は、神経は再生機能が非常に乏しいため、障害が積み重なる進行性の疾患が多いからです。欧米人は日本人の人口あたり15倍ぐらいの頻度で多い病気で、日本では患者が少ないため、科学的根拠のあるデータを取ることが難しく、治療方法を開発するのに難渋していますが、原因に免疫が絡んだ自己免疫疾患というグループに入る病気ですので、欧米では有効な薬が次々と見付けだされています。現在では6種類の免疫抑制剤が数十ヵ国で認められ、かなりの人が利用されていますが、日本ではその内のもっとも古い2種類だけが承認され、その差がだんだん広がりつつあります。

日本で承認されているのはインターフェロンβというグループ内の若干の違いがある2種類で、長期にわたって患者さんが自己注射をすることと、インターフェロンにはかなりの副作用が伴う頻度が非常に高く、重篤ではないものの、怠い、辛どい、注射をしている部位に潰瘍ができたりして、それ以上は打てなくなることもあり、また、ウツ傾向の患者さんには使えません。効果についても再発率を30%に抑える程度ですが、これが唯一の治療法ですから、かなりの患者さんが使っています。さらに、リスポンダ・ノンリスポンダがあるようで、使っていても効果がみられないだけでなく、使う以前よりも再発しやすくなり、障害がどんどん進行するような患者さんもおられます。このようにインターフェロンでは上手くいかずに中止した患者さんや、元々使えないような患者さんも多いのですが、別の良い治療薬を選ぶことは欧米ではできても、日本では全くできない状況です。

そういう流れの中でFTY720というのが開発されているのですが、欧米の6種類も全て注射薬なのに対して、これは飲み薬です。しかも1日に1回飲むだけで、効果はインターフェロンの約2倍あると、昨年、New England Journal of Medicineという雑誌に発表されています。

私が持っているこの写真は冬虫夏草で、地中に潜っている蝉の背中に生えた一種のキノコですが、中国ではいろんな癌の民間薬として、最近は非常に高価で売られているそうです。その中の特定の冬虫夏草から抽出した物質を合成したものがFTY720です。三菱化成に開発の元々の特許があるのですが、多発性硬化症のような疾患の経験がなく、国際的に開発する能力がないということで、スイスのノバルティスファーマにライセンスを提供し、日本においてはその2社が合同で治験をしようとしています。

海外では200人を対象とした3群の試験が行われて、現在は4年目に入っていますが、そのデータが先っきの雑誌で発表され、飲んでいない人に比べて60~70%も再発率を抑制する効果があり、しかも飲み薬であるということで、非常に期待されています。ただ、現時点のデータだけでは世界中のどの国も承認していませんので、1年前から第2次として、偽薬との比較試験やインターフェロンとの比較試験などの3つの大きな治験が始まっています。いずれも全世界を巻き込んだような多国にわたる共同治験で、いずれも約1200人ですから、合計約3600人の患者さんで登録を打ち切り、ほぼ投薬が行き渡った段階です。日本はそのいずれにも参加できなかったのですが、それは特定の国で遅れが出ると全世界で開発が遅れるので、治験開発能力がないと思われている日本は、海外から仲間にしてもらえなかったのです。先日、韓国に行きましたら、韓国は既に参加されていました。

それで日本では、今回、180人を対象とした二重盲検試験を予定し、1/3の患者さんには薬剤が当たらず、2/3の患者さんには2種類の用量の実薬のどちらかを飲んでいただくという、3つのグループに分かれていただく案になっています。薬の量としては、海外でも全く同じ量で3群試験が進行しています。ただ、海外では2年間行われますが、日本では2年間の試験にすると患者数を集めることが困難ということで、期間は半年にしています。韓国の場合はわずか30人の目標が、14人しか参加しておらず、これだけでは全く科学的なデータにはなりませんが、世界的な治験の一部分として参加して解析するというやり方なんです。日本の場合は、日本人の特殊な体質というものが影響して反応や副作用も違う可能性があるから、日本独自の治験を必ずやるというのが今のところのあらゆる疾患の原則です。

問題は副作用ですが、これまでの2年間のデータと、別個に進行している移植患者さんへの開発データから分かっている副作用が幾つかあります。1番目は、初回投与の1日だけ徐脈が出ることが1割程度ありますが、それほど重大な問題はなく、50以下の脈の方には参加していただかないことと、全員の心臓に24時間ホルターを着けて最初の1日の心電図を記録することが治験の条件になっていますから、適切に処理できると考えています。

2番目の副作用としては、気管支を収縮させる効果が少しありまして、喘息があるような患者さんには気になることですから、具体的に問題が起きたことは今までにはないですが、やはり何かが起きる可能性があるということで、呼吸機能については厳密に定期的に調べ、もし、咳が出るとか、肺の問題のサインが少しでも出れば、CTを撮って呼吸器専門医の診断を受けるという条件が付いています。

3番目は、糖尿病のある方に網膜浮腫が起きることがあるということが以前から分かっていましたが、それ以外にも多発性硬化症の患者さんで6人ぐらいに網膜浮腫が起きたことが報告されています。ただ、薬を中止したら全員が元に戻りましたから、発見が遅れないようにする仕組みが必要ということで、3ヵ月に1回は必ず眼科医に行っていただき、軽度の網膜浮腫でも検出できるOCTという最新鋭の専門の機械で検査してもらうことが条件になっています。この機械は大学病院でも持っていないところもありますが、当院の場合、1000万近くする機械を治験期間中は貸していただけることになっています。中止すれば元に戻るということですから、適切に対応すればそれほど重大な問題にはならないだろうと考えています。

4番目には、約400人の患者さんの内の2名がメラノーマ(黒色肉腫)という皮膚の癌になったと報告されています。その患者さんたちはいずれも皮膚ですので自覚症状はなかったのですが、皮膚に変化が見られるということで皮膚生検をしたところ、黒色肉腫の非常に初期であるという診断がつき、直ちに皮膚の切除を行って完全に治癒しました。黒色肉腫は転移があれば非常に予後が悪いのですが、今のところ早期に発見できて適切に処置されているので、死亡例はありません。他にこういうことがどの程度あるのかを調べていたのですが、昨日にちょうど東京で、FDAが作った海外の副作用の審査委員会の意見書を説明する会がありまして、FDAの意見書では「黒色肉腫が2名に出たけれども、治験を継続することは適切である」という判断をしています。その根拠には、欧米人は日本人の15倍ぐらい皮膚癌の頻度が高く、また、ほとんどの場合は早期に発見されるので予後が非常に良いということがあるようです。日本でも3人の皮膚科の教授に意見を聞いたようですが、3人の方はいずれも「現状ではこの薬物が癌を起こしているとは言い難い」という話でした。

しかし元々、理論的にFTY720は、血液中を回っているリンパ球を故郷であるリンパ節へ引っ張り込むというホーミング効果が知られています。元々、リンパ球の95%はリンパ節にそのままいて、5%が血液中を回っているというものです。脳の中に入って悪いことをするようなリンパ球などを減らせることで効果が起きていると考えられているのですが、もしかすれば癌などに対する抵抗力に役立っているようなリンパ球も減らしてしまって、発癌率が高まるという可能性もあり得ると考えられますので、黒色肉腫が薬剤に無関係とも関係があるとも言い難く、十分な注意をして今後の治験を進めることになっています。

多発性硬化症の他の治療薬としてタイサブというのが2年前からアメリカで承認されていますが、その時のプラセボ群の患者さんでも4人ぐらいが黒色肉腫が見いだされています。計算式に当て嵌めると0.06%で、その時と今回の今回の頻度はほぼ変わりなく、投薬されていない患者さんでも同じような頻度で起こるということなら、特に増えているという証拠にはならないのではないかということも報告されていました。

ただ、黒色肉腫の報告があったために、当初は計画していなかったのですが、急遽、世界的な治験と日本の治験の全てにおいて、年に1回は皮膚科の医師が診察することと、その間には皮膚科医師の指導に基づいて神経内科の医師が注意して診て、もし大きくなるようサインが少しでもあれば皮膚科に診てもらうというやり方で、FDAでは承認され、日本でも同じやり方をしようと厚生労働省と相談し、了承されたと聞いています。

副作用についてはそういうことですが、いずれにしても最長で4年間であり、しかも200人程度の患者さんしか使っていませんから、より稀な副作用が起きない保証はありません。そういうことも患者さんに情報を全て提供しながら治験を進めることになっています。もちろん、現在はインターフェロンという治療薬もありますが、インターフェロンのことをよく知らずに治験を希望される患者さんや、「注射が嫌だ」とこちらを希望される患者さんもおられますから、他の治療薬との比較だとか、万が一やめた時は他の治療が受けられるといった情報を十分に説明して、自分の意志で参加を決めていただくことになっています。

現在、この病院の私の患者さんの中では約30人の方が参加を希望しておられますが、私が口頭で説明しているだけで、同意書を書いてもらったわけでもないので、最終的に同意書を得る場合には、資料に基づいた完璧な説明をしなくてはいけません。一部の患者さんにはかなり再発が起きており、インターフェロンが使えないという状況の患者さんもおられまして、「早く始めて欲しい」という希望もありますが、実は「6月ぐらいにスタートできるかも知れない」という情報がありましたので、待っておられる患者さんもあります。

すみません、多発性硬化症についてほとんどお話ししませんでした。筋萎縮性側索硬化症やパーキンソン病、アルツハイマーなどは、脳の中の特定の場所に病巣ができて、速度は違ってもだんだん程度がきつくなっていきます。ところが多発性硬化症は、脳や脊髄に多数の病巣ができるのですが、患者さん毎に病巣の出る場所が非常にランダムで、患者さんによって症状が違い、診断が非常に難しい理由になっています。また、予測が難しく、今年は非常に悪くなったから、来年も必ず悪くなるとは限らず、病気の進行が止まるということもあり得ます。ただ平均しますと、15年ぐらいで杖が1本必要になり、20~30年経つとほとんどの人が車イスあるいは寝たきりという状況になるという病気です。それから視力障害が出たり、また、脳に一定以上の病巣ができると、脳萎縮により知能の低下や言語障害なども起きてきます。インターフェロンでも脳萎縮の進行をかなり止めることが分かっていますが、効果がだんだんなくなってくるということがあり、FTY720はまだ4年ぐらいしかデータがないので、長期に使った時にどの程度の効果があるのかは分かりませんが、インターフェロンの2倍の効果ということから、進行にしっかりとブレーキを掛けてくれる役割ができるのではないかと期待されています。

小原 ありがとうございました。今はFTY720の効果や副作用などを中心にお話しいただきましたが、それ以外のことも含めてご自由に質問をなさってください。

これは日本で初めてやる治験になるわけですね。今は約30名の方が希望されているということですが、治験を実際に始める場合、何人の患者数を予定されているのですか。

斉田 全国で180名で、特に「この病院で何名」という割り当てはありません。

小原 で、全国でどれくらいの病院が関わることになるのですか。

斉田 40くらいの病院がありますが、私が前にいた宇多野病院、あるいは現在ではこの病院が多分、全国で患者数はいちばん多いと思います。

村井 患者さんが移って来られたのですか。

斉田 はい。その他に新しい患者さんも結構おられます。全国で1万2000人ぐらいおられるのですが、宇多野病院で私は500~600人の患者さんを診ていまして、患者数が100人を超える病院は北大・九大・東北大学と宇多野病院の4つしかなく、あとはいろんな病院に分散しています。ただ、一定数の患者さんが集まらないと治験はできないのですが、そういう病院が非常に少なく、1人しか参加されないという病院もこの治験ではあります。

原 D2201というのは、海外の終わった分のことですか。

斉田 これはNew England Journalという雑誌に載った分のデータです。これは半年間の試験として一度終えた時の分で、その後に延長して、現在は4年間になっています。この半年間は3群に分かれていただいたのですが、2つの用量、1.25mgと5mgの群の効果に差があまりなく、多く使っても利点がないので5mgの方をやめ、むしろ、低い方よりさらに少ない量でも十分に効果がある可能性はあり得るいうことで、現在は1.25mgとその半分の量、そしてゼロのグループに分けて、世界的に行われています。

原 世界的に行われているというのは、資料のどこかに出ていますか。

斉田 その資料はなく、ここにあるのは日本でやろうとしているものと、既に終わった分のデータだけです。

原 その後のD1201、D1201E1というのが今回の分ですか。

斉田 そうです。これが日本における分です。この治験はブラインド試験で、患者さんにも医者にも3つの内のどれか分からない状況ですが、6ヵ月の治験が終わった段階で希望される方には実薬を飲んでいただけます。欧米の場合は2年間続きまして、そこから実薬に移ります。ただ、向こうはスタートして既に1年経っていますので、結果としてはほぼ日本と同じぐらいになるのかなと思います。

小原 その段階では既に実薬が認可されているということですか。

斉田 いや、認可ではなく追加治験としてで、副作用データなども全て同じような厳密さで継続して取り、希望があれば認可されるまで続けます。今は、治験にはだいたいそういう条件を厚労省が付けます。

原 用量を減らしたデザインで行うということですが、これが外国でやっている第3相と同じ量ですか。

斉田 そうです。1.25mgと、その半分よりちょっと少ない量ですね。海外でもまだ始まったばかりなので、副作用についての情報は来ますが、効果についての発表は何もないです。

小原 治験の最中にFTY720を飲んでいる方は、インターフェロンとの併用はできないわけですか。

斉田 はい。海外ではインターフェロンとの比較試験もスタートしていますが、日本で行うにはもっと参加者を増やさないと差を示すことが困難だということもあります。

小原 ただ患者さんの何パーセントかは、インターフェロンを使っている人はいるわけですよね。

斉田 はい。それは3ヵ月前にやめるというのが条件です。3ヵ月ぐらいは効果が持続するというデータがありますので、ウォッシュアウト期間というのを設けています。ですから、インターフェロンをやめざるを得ない人や、使っていてもあまり効果がないと考えられるような方が対象です。

原 海外の3相治験は3種類あるとおっしゃいましたが、プラセボとの比較やインターフェロンとの比較と、もう1つはどんな試験ですか。

斉田 もう1つは、スタートした後に網膜浮腫の問題とメラノーマの問題が新しく出てきまして、FDAが「副作用チェックをより厳しくしたいので、プラセボ試験を2倍にせよ」と注文を付けたのですが、1200人の比較試験は既に始まっており、途中でデザインは変えられないので、新たに別のデザインのプラセボ試験を組んだのです。日本の分はそれにいちばん近い検査内容です。

原 評価は再発率ということになるのですか。

斉田 日本のように6ヵ月で評価しようとしますと、本当の意味での臨床評価は困難というのがこの分野での常識でして、1年から2年はやらないと評価は不可能なんです。

小原 しかし、「インターフェロンの2倍の効果がある」と言う場合には、何を基準にしているのですか。

斉田 欧米では6ヵ月で、MRIの造影病巣だけでなく、再発の頻度も有意差は出ています。ただ、日本でやった時に、6ヵ月では3群での有意差は出るかも出ないかも知れません。より確実なのはMRI造影での新病巣出現の頻度の差で、これを日本では結論を出すための指標にします。これをサロメートマーカーと言いますが、本当は第2指標でして、本来は障害の進行が遅れるとか、再発の頻度が低くなるということが評価基準です。そういうデータは海外のデータとのメタアナリシスをやることで、有意差が出なくても同じ傾向であることを証明しようということですが、日本の患者数の限界ということから、そういう形でやるしかないのです。

小原 国際的に治験をしていく場合に、人種差というのは結構、出るものですか。例えば欧米での治験で安全性が確認されたものをアジア人種に適用した場合に、特有の副作用が出やすいといったことはあるのですか。

斉田 かなりあり得ます。いちばん有名なのは4~5年前に承認されたリューマチの薬で、欧米の400~500人の治験でも、日本の100人の治験でも1例も出なかったのに、その後に発売したら、日本では間質性肺炎が100人に1人に起きまして、しかも、200人に1人が亡くなったのです。欧米ではそれが全く起きなかったので、これはやはり人種差だろうと思います。これがいちばん悪い例ですが、たまにそういうことがあります。

小原 神経系統の病気の時に、それがより出やすいとか出にくいということはありますか。

斉田 それはないですね。血液を調べたりとか、いろんな変化について同等かどうかという検査は必ずやるわけですが、それらでは検出できないようなことが起こる可能性はやはりあります。欧米で承認されても自動的に承認しないで、必ず独自に治験するというのはアジアの国では日本だけなんです。でもそのために、欧米の標準薬が日本に入ってこれないのです。特に難病の場合は患者数が少ないので治験が組みにくく、そこらをどうコンプロマイスして、もっとも現実的な薬剤開発につなげるかが課題です。

小原 安全かつ迅速にするにはどうしたら良いかということですね。

斉田 その安全も、データが非常にない中でやらざるを得ないわけですね。永久に止めるわけにはいけませんから。インターフェロンの場合、この病気に関しては効果も副作用も欧米人とほぼ同じでした。

原 海外の第Ⅱ相では、評価項目は病巣総数で見ているのですね。

斉田 造影病巣というのは、活動している新しい病巣のことです。

原 新しい病巣の数ですか。それから、次のページの年間再発率とはどういうことですか。

斉田 これは、臨床的に麻痺が起きたといったことで、MRIとは必ずしも一致しない別のイベントです。

原 そのどちらで有効性を見ているのですか。

斉田 治験としてはMRIの造影病巣をプライマリーエンドポイントとしているのですね。スタートする前に「プライマリーエンドポイントをこれにします」と宣言をすれば、それはもう替えられません。年間再発率にも有意差が出たのですが、これはセカンダリーエンドポイントになっていました。この治験で5mgと1.25mgの効果の面で差がなく、副作用だけが多かったということですので、多い方はやめにしたということです。

原 病巣の数の方で見た場合、平均14.8個といった数値が出ていますが、どのように有効性を見るのですか。

斉田 これはプラセボですね。これに対して8.4個に抑えられましたということです。

原 半分ぐらいに減らしたということですね。

吉中 次のページのグラフはそれを経月的に見たやつですね。

斉田 P4の上の段は、新病巣を加算していって、だんだんと差が大きくなってきたということです。その下は、造影病巣が1度も出なかった患者さんの割合の推移ですね。先ほどインターフェロンの2倍弱と言ったのは、年間再発率が-55%も抑制されているのに対して、インターフェロンでは-30%ぐらいだからです。

原 放っておくと77%ぐらいの人が再発するという意味ですね。これは基本的に免疫抑制剤の一種なんですか。

斉田 一応、そのように分類されていますが、全く新しい薬で、ハッキリしているのはリンパ球の数を減らすということです。その結果として若干、風邪を引きやすくなりますが、それほど重篤な感染例はありません。末梢血中のリンパ球が減るのですが、抗体のレベルは変わらないということで、抗体というのは形質細胞というのが付くのですが、それが変わらないのです。ただ、それほど顕著に免疫抑制はしないので、移植の方ではあまりに役に立たないということでギブアップしていますね。

立岩 主な有害事象という一覧がありますが、それは今おっしゃったようなメカニズムで説明できそうですか。

斉田 いいえ、例えば脈が減ったり、気管収縮はリンパ球への効果とは全く別で、理由も分かっていません。

吉中 これは因果関係を無視して、起きたことを挙げているだけです。

斉田 この中では、網膜浮腫はおそらく何らかの関係があると思われます。ただ、欧米の新しい治験では、開始前のスクリーニングで既に網膜浮腫が7人も出て、治験に参加できなかったので、多発性硬化症ではこの薬剤と関係なしにある程度は起こりうるということです。糖尿病の患者さんは起きやすいことが分かっていますから、糖尿のある方は参加していただけません。

原 癌の類はこんな短期間ではあまり発生しないでしょうが、長期の場合は少し考えなければいけませんね。

斉田 多くの免疫抑制剤がある程度は癌を発生させると言われています。ただ、そのほとんどの場合、多数の薬剤を複合的に利用しているので、どの薬剤が起こしたかの結論はなかなか出せませんが、大量に使っている患者さんは癌の発生が少し多いということは間違いないようです。

小原 インターフェロンは使い始めてかなり長期になりますが、その点については同じことが言えるのですか。

斉田 インターフェロンは多発性硬化症においては最長で17年ぐらい利用されていますか、特に癌が増えるというデータはないですね。肝炎の場合はそれほど長期に連用はしません。

村井 マウスで悪性リンパ腫が出たと書いてありますが、どのくらいの期間で出たのですか。

斉田 すみません、そのデータを私は持っていません。だいたい免疫抑制剤関係はどの薬も、悪性リンパ腫を非常に起こしやすいですね。私は個人的には経験がないですが、シクロスポリンといういちばん代表的なものや、フロムラフティ(FK506)という藤沢薬品が作った薬も、悪性リンパ腫が少し増えると言われています。

原 タクロリムスの軟膏についてそういう記事を書いたことがあるのですが、藤沢は「関係ない」というスタンスで強く主張していました。

斉田 「否定はできないが、積極的に証明もされていない」という意味でしょうけれども、多分、バックグラウンドのデータが不十分で、比較はなかなか難しいです。

原 そうではありますが、アトピーの軟膏による悪性リンパ腫の疑惑でも、皮膚科学会の中心的なドクターの一部が非常に意図的な動きを見せていました。でも、とりあえずは比較研究をするのは当然だろうと思います。

吉中 この薬品の場合も時々悪性リンパ腫は出るのですか。

斉田 ただ、欧米人は日本人よりも悪性リンパ腫がだいぶ多いのですね。日本ではそれほど経験はないですね。

原 ただ、免疫抑制すれば癌が増えるかも知れないということを、患者サイドは一般的に認識しないでしょう。

斉田 どの免疫抑制剤でも一応の説明はしています。

原 アトピーとかで使う場合はしていないと思います。

吉中 移植などで使う時はしますが、そういう病気の場合はしないです。

斉田 皮膚に塗る場合は、そういうことは言わないかも知れませんが、注意書きには書いてありますね。

原 必ず書いてありますが、そんなことは使う人が長いスパンで注意しなければいけないので、やはり本人や家族が知っておかないといけません。

東 息子に僕があの薬をしばらく出して使わせていたのですが、薬局から「皮膚科の診察をきちんと受けてください」と注意されました。

広瀬 副作用と思われる病気になった時に、薬との因果関係が分からなければ、補償してもらえるのか、自分でお金を払わなければいけないのか、問題になるのではないですか。

斉田 私も長年、治験をやっていても、個人的にはそういうことになった経験はないのですが、これには主治医判定がかなり重視され、主治医が「因果関係を否定できない」と判定すれば、だいたい補償の対象になります。

村井 この治験で悪性黒色腫になった事例は補償されているのですか。

斉田 これはスペインの事例ですが、補償がどうなったかは知りません。多分、治験ですから、経費は治験の範囲の中でやっているのではないかなと推定しますが、腫瘍は切除して治ったと言っていますから、その後の大きな問題にはなっていないと思います。後遺症などがあれば当然、補償問題になるでしょうね。

原 他の病院では、治験が承認されて始まっているところはあるのですか。

斉田 先週や今週に承認された病院はあるかも知れませんが、まだどこも開始段階になっていないと思います。

小原 参加予定の病院の多くでゴーサインが出て、ある一定の人数を確保してから同時に開始するのですか。

斉田 いえ、ある程度は足並みを揃えようとはしますが、会社側の書類がつい最近で、夏休みもありましたので、9月に入ってからあちこちで動き出したという段階です。本当は6月に始めるつもりが、網膜浮腫と黒色肉腫という問題があったので、委員会を作ったり改訂版を出したりという作業があって遅れたのです。期間としては来年度いっぱいで終わるという目標で、180人の方に集まっていただく予定です。

小原 会社としては「すみやかに」ということですね。

斉田 開始が可能な状況にやっとなったわけですね。

東 なぜ日本では6ヵ月が限界なのですか。

斉田 6ヵ月なら、プラセボに当たってもその後で実薬がもらえるので我慢できても、1年経ったら、やはり患者さんの多くが付いてこないですね。

東 欧米は2年ですが、やはりキャラクターが違うのですか。

斉田 その理由は国によっていろいろあるでしょうが、欧米では医療費の問題も絡んでいるかも知れませんよ。

原 何かの上積みという併用は、全くなしになるのですか。

斉田 検査の全てとこの薬剤はもちろん無料で、入院費や多発性硬化症で特異的に使う薬もだいたいカバーすると思いますし、再発時もカバーしますが、無関係な薬剤は患者さん負担ですから、保険と並立ですね。

小原 FTY720を使いたいと希望されている患者さんというのは、インターフェロンなどの効果も十分に望めず、ワラにもすがるような気持ちの人たちが多いということですね。

斉田 多くはそうですが、一部には注射そのものへの恐怖心で嫌がる人があってインターフェロンが使えない人もいます。

小原 そういう人なら、本物が当たりたいという思いはあるわけですが、そこは何ともし難いわけですね。

村井 賠償保険額は少ないですね、100万しかない。

斉田 これはCHFですからスイスフランで単位が違い、これに相当する額の日本円という意味です。

勝村 治験をする立場からすると2年ぐらいは見たいけど、プラセボに当たった患者のことを考えると半年が限度ということですね。

斉田 やったら良いというわけでは決してなく、科学的に厳密なデータを出すという観点からはそうですが、患者さんの立場に立てば難しいですね。

勝村 だから、アメリカなどでは患者の立場に立っていないのではないかと素朴に思うわけです。

斉田 確信の持てるデータという意味では、多発性硬化症という疾患ではそれぐらいやらざるを得ないだろうと思います。短期間だけでは、「本当に2年間にわたって効果が続くの?」とか、いろんな疑問が残ったままに、なし崩しで使ってしまうことになるので、2年ぐらいは必要です。ただ最近は大抵、2年の治験でも1年経った時点でインテリンアナリシスという中間解析をやりまして、ここで圧倒的に良ければ中断するということもよく行われています。ただ、中間の1年と言っても、患者さんのエントリーがバラバラですから、現実には2年目に入っている人もかなり多いですね。サイエンスだけを考えれば、日本でも以前は3年ぐらいは行い、私もこの病気の経口薬で3年間やったことがありますが、当時は治療薬が全くなかったのに対して、今はインターフェロンがありますので、倫理的には難しいですね。でも世界的には2年間でやっていますね。利用する立場からすれば、そういうデータがあれば安心して使えると思います。

小原 国際的に先行した2年という前提があるので、日本では6ヵ月に短縮できるのですね。

斉田 そうです。海外のデータも日本に提出するという条件になっています。

小原 それを一般的に見て、海外で十分な期間の治験がされている場合、ローカルなデータ収集はもっと短い期間でオッケーという合意は国際的にあるのですか。

斉田 いや、それを問題にするのは日本だけみたいです。アメリカで承認されたらヨーロッパはそのデータだけで承認し、逆にヨーロッパで承認されればアメリカはそのデータをFDAで審査して承認する場合もあります。

小原 ヨーロッパにしてもアメリカにしても、現在は白人だけでなく黄色人種からいろんな人種がいますが、人種別の副作用のデータはほとんどないですね。

斉田 それは日本だけに唯一あります。

小原 それでは、欧米で大規模な治験を行う場合、人種的なバランスは配慮されているのですか。

斉田 いいえ。これは疾患によって違いますが、多発性硬化症の場合、95%ぐらいは白人が参加しているというのがほとんどです。そして、人種間で分析したというデータの公表はされませんが、聞けば出してきます。日本の厚労省は、白人・非白人のデータだけは提出させています。

小原 人種差による問題が無視しても良いぐらいに小さければ、そのやり方で良いと思うのですが、実際にいろんな問題が起きているにもかかわらず、白人が治験者の95%を占めているのなら、「それ以外の人種は少々犠牲になっても構わない」という考えだと受け取りますよね。

斉田 主として白人の欧米はそこまで考慮していませんから、日本や他の国が主体的にどう考えるかですね。

小原 日本のやり方は確かに一歩遅れているように見えますけども、非常に真面目な慎重さを持っているとは思うのですよ。ただ、東アジアを見ても、それがあまり共用されていないということですね。

斉田 それは経済的なコスト負担に耐えられない国がほとんどですし、一定のサイズの国でないと人口の問題もありますから。本当は、アジア人の国はもっとアジア人のデータで分析しなければいけないのですが。

小原 FTY720の治験を当病院ですることに関して、他にご意見・ご質問はあるでしょうか。

原 CROというのは何ですか。

斉田 CROというのは、Critical Research Coordinator

勝村 第三者的委員会?

吉中 そうです。それをすぐ入らせて。

勝村 その会社に病院がお金を支払うのですね。

小原 他はいかがでしょうか、今日の時点でこれに対してゴーサインを出すかどうかということの白黒をハッキリさせなければいけないのですが。

斉田 それとは別に、「何かご相談ください」みたいなものを付けるのも一つかも知れませんね。サインをどうするかだから。

勝村 中央病院には「何でも相談窓口」はあるのですか。

東 医療相談室というのがありますが、ここにおられます。何のことでもかかってきます。ある程度は振り分ける必要があるので、これについては誰かがやらないといけませんね。

清水 それこそ抱えきれないほどたいへんで、私だけではとてもできません。知識を持ちつつ的確に接しられる方をきちんと考えてあげないと、普通の相談とはちょっと変わってきますから。

小原 それでは結論を出しましょうか。

原 課題的な意味では、私は決議しても結構ですけど、ただ形式的なんですが、採決をされるのなら当事者の方は外していただいた方がよろしいと思います。

小原 厳密にやりますか。それではお願いします。これまであまり厳密にしてこなかったのですが、大事なことですからね。挙手でやりますか。

村井 今まで中央病院で、承認前の治験をやったきたのですか。承認後ならありますね。

吉中 前回にやったタクロリムスは適用確保ですから、承認前というのは初めてです。

小原 それだけに厳密にやる意味はありますね。

原 どんな被害が起きるか分からない部分があるから当然でしょうね。

小原 「賛成」か「反対」か、あるいは「どちらでもない」も一応ありにします。では、治験を行うことに対して賛成の方、挙手をお願いします。

吉中 私も入っているのですか。治験審査委員会はダメですが、倫理委員会もダメだという噂がありまして。

小原 現在はこのメンバーに入っていますが。

原 この場の採決的には入らない方が良いかも知れません。

小原 では一応、採決には入っていないということで。賛成の方、お願いします。では反対の方。では、それ以外の方はどちらでもないということですね。

広瀬 ちょっと怖い部分もあるのですが、それは天に運を任せるのですかね。

小原 具体的に言うと副作用のことですね。今、説明されたように、それは当然あり得ると思います。ただし、その危険性よりも患者が得られるメリットの方が大きいということを期待しての治験ですから。

原 この病院でやる場合に、注文を付けても良いとは思います。

村井 確かに免疫抑制剤の場合、承認された薬でもいろんな副作用がありますからね。

吉中 日常管理的には、治験審査委員会が1ヵ月に1回は開かれ、必ずそこで「治験を継続するか、ストップするか」の判断をするという仕組みになっています。

村井 だから手続きで言うと、臨床症状の厳密な管理をしてもらうということですね。

吉中 はい。健康チェックは必ず付きますし…。

広瀬 そういう約束事もキッチリと守っていただかないとね。

小原 当然、その報告はキチッと出されると思うのですけども…。

村井 検査のインターバルも重要で、僕のやった事件では検査のインターバルが長すぎてダメでした。

原 それはフォローアップの方向をまた考慮していただいてからということで。

吉中 それは次回の委員会でご報告します。

小原 そうですね。時間もだいぶかけましたので、結論的には賛成多数で承認したということで議決したいと思います。じゃぁ呼んでください。

原 これは治験そのものですが、今の国のガイドラインで見ると、臨床研究の関係では院長は含まれているのですよ。だから、テーマ毎に分けるということも、運用上の方法だと思います。

小原 それはまた後日にお話ししましょう。今の決定をお知らせします。賛成多数で承認されました。ただし、やはり副作用の不安もありますので、報告をきちんと出して欲しいということも、要望としてありました。

斉田 分かりました。よろしくお願いします。

小原 では、最初の議題を終えまして、2つ目の議題の方へ移っていきたいと思います。「心肺蘇生術中止の手順」は4回目ぐらいの継続審議で、大詰めになってきましたが、この案のご説明をよろしくお願いします。

吉中 今日は坂田師長と出島医師が出席していませんので、私の方からご説明いたします。当日資料に日本医師会生命倫理懇談会の「終末期医療に関するガイドライン」と、厚生労働省の「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」が入っていますから、いろんな議論もハッキリすると思います。

そろそろ成文化して定めていかないといけませんが、まず審議していただきたいのはA資料のP2で、これまでの議論を踏まえて出島案として整理して5月30日に出されたものです。これは立岩さんに起草していただいたものを整理したもので、患者さんに対して当院の基本的なスタンスを説明するという内容です。また、P1には修正箇所の理由と説明が書かれていますので、ご参照ください。もう一つは、「実際にこういう立場を表明して対応しますよ」という時に、「何らかの点検が要るのではないか」ということで、坂田師長から出されたのがP3~P4の文書ですが、それを前回の議論を受けて整理したものが、当日資料のP22の「DNARについての手順」です。さらに、これに基づいて同意書が必要かどうかということです。以上です。

小原 ありがとうございました。かなりまとまってきたと思いますが、決定すべきことは2つあると思います。患者さんに渡す文書の確定の部分と、手順の確定の部分ですね。そして、曖昧な議論のまま残されているのが同意書が必要かどうかということですね。この同意書というのは、P2の文書に対するものですか。

吉中 いいえ。P2は「私たちはこう考えています」という病院側のスタンスを表明する文書ですが、私がイメージする同意書というのは、P2の中身を少し要約し、選択肢をつけて署名欄を付けるという格好になります。

小原 同意書そのものは資料としてはないのですね。

吉中 それはございません。必要ということになれば、次回あたりにそれを示したいと思います。

小原 では順番にいきたいと思います。まず患者向けの説明文は、これまで議論を重ねてきて、最終的に資料AのP2の文書に落ち着いてきているのですが、いかがでしょうか。

吉中 P1の下から2番目の変更理由に、「家族が心臓の動いている間に到着できるために蘇生を続けることは、死者への冒涜ではないかという議論もあるようなので、難しいです」とありますが、このへんが少し引っかかります。「こういう場合は心肺蘇生をして欲しくない」というご本人の表明があるケースでも、実際の末期の場合にはこういう局面は起こりえますが、ご家族としては「死に場に会えなかった」という気持ちも当然あります。

小原 それはこれまでも議論に挙がってきましたし、そういう場面が多いということも聞いてきましたので、ちょっと考える必要はありますね。

村井 それは「いわゆる脳死状態だけども心肺機能だけは維持する」という感じですか。

吉中 心肺蘇生を行う場合は、脳死に至らないようにするのが目的です。今、問題になっている段階は、「脳死になっていないかも知れないし、なっているかも知れないが、とりあえずご家族が来るまでは心臓だけが動いている」ということで、死亡宣告を待つということです。

小原 ですから、そこには医学的な合理性はないのだが、あくまでも儀礼的にやるという現状もあるわけです。

吉中 基本的な考え方としては、適切な心肺蘇生を行っている限りは、脳に十分な酸素が行きますので、脳死に陥らないと考えるわけです。ただ、待っているだけの場合には、気管内挿管をするわけにもいかない面もあるで、本当に助けようと思ってやっているのでなく、儀礼的にやっているというパターンも結構あります。

小原 ですから、それを積極的に文章として残した方が良いのかどうかということですね。

吉中 今の臨床での心肺停止という考え方は、呼吸はしていないのは観察すれば分かりますが、心臓が動いているかどうかは厳密には分からず、脈拍で判断するというパターンで診ていますが、入院されている場合は心電図モニターが着けられるので、心臓が電気的に反応しているかどうかは分かります。

P2の成文では、一応は配慮した文章になっていて、「心肺蘇生術を最期まで行う場合もあります」ということで「ご家族も~」となっていますが、最後の方で「最期の時に臨まれるご本人の負担に配慮しつつも、ご本人が望まれるのであれば、あるいはご本人が許容されるのであれば、心肺の動きを維持すべく処置することもいたします」となっているので、「それではご本人の意思を確認するのかどうか」ということにつながると思うのです。

小原 最後の文章には「よほどご本人が望まれない限りは必要ない」というニュアンスも入っていますが、本来、医学的には必要性が認められないことを状況によってはするのですから、これが条件だということですね。あるいは、ご家族が事前に「どういう場合であっても心肺蘇生をやってくれ」と言っている場合には、するということですね。

吉中 ご本人が心肺蘇生を拒絶する意思を示していない場合の選択肢になりますね。

広瀬 家族と本人の意思が合っていない時もありますが。

吉中 ご本人は「心肺蘇生をして欲しくない」と意思表示をしているのに、ご家族が希望されている場合には、ご本人の方を尊重するように考えるということだと思います。

小原 ただし、ご本人とご家族の意思が食い違った場合のことは、ここには書かれていないですね。

原 論理的には読めますけどね。

小原 ニュアンスとしては当然、本人主義ということは分かるのですが、おそらく、いちばん切羽詰まった状況におかれた時に問題になりやすいのはそこの部分で、本人の意思と家族の意思が食い違う場合、あるいは本人の意思が確認されていなかった場合にどうするのかということですね。

原 明示する必要があるのなら、「ご本人が望まれない場合は、ご家族が希望してもやりません」といった一文を付け加えるということでしょうか。

小原 そういうことを入れた方が良いのかどうか、考える必要はありますね。

吉中 その上の「心肺蘇生術を行わない場合もあります」という文章の中には、「ご本人の了解を得て」という文言が入っていません。これは、「実際の日常医療の場面ではご本人が原則ということはハッキリしているのだが、一方で、こういう医療の局面もあるのだろう」というようなことを書いておられると、私は受け止めていたのです。でも、抜けていると拙くないかなとも思ってしまうのですが、どうでしょうか。

原 基本的に2番目の部分に書いてあるのは、「『とにかくやるのが原則なんだ』という立場はやめることにした」ということではないですか。それで、「『やらない場合にはサインをください』という考え方を採る必要はないではないか」という方向の話をしてきたと思います。

吉中 1番の「最後まできちんと治療します」のところは「最善を尽くす」ということで、主に「呼吸器外しなどはしません」という意思表示ですが、これは議論としてはこれで良いですね。その上で、それではない2番のような局面もあって、「私たちはそれも受け止めていますよ」というメッセージをするということですかね。

原 2番目は「メッセージをする」というより、私のイメージとしては、ガイドラインのようなものを作るいちばんの理由と同様に、医療者は「何でも蘇生術をやらないと責められる」みたいなことを懸念されているのですよ。ただ、一般感覚からすれば、医学的に可能性がある場合にはやるのは当然で、逆に可能性がない場合は負担を与えるだけなのでやらない方が普通だと思うから、「回復しない人に何でもかんでもする」という考え方を採る必要はないわけです。

吉中 「数時間の間に死を迎えると判断できる場合はしません」ということですよね。

村井 その前提としては心肺停止ということがあるのですね。ところがこの文章では「回復困難な病状になられる患者様があります」とあるだけで、定義がボワーとしていて分かりにくいですね。「心肺停止に陥った場合にどうするか」ということではないですか。「DNARについての手順」の方では、「心肺停止時の延命が短時間・限定的であることが予見される」とありますが、それを分かるようにする必要があると思います。

原 これは、前の文書からそのあたりの表現を削っているのですね。

東 この文章全体に何か違和感があるのですが、「数時間の後に亡くなっていくかも知れない人には何もしませんよ」というのは、「重篤な状態から心肺停止した時に蘇生させたとしても、それは長続きしないですよ」ということを元々は言っていたのを、省略しすぎたのです。「亡くなっていく人に何もしない」というイメージはなくさなければいけません。

広瀬 厚生省の考えは、無駄な心肺蘇生をしない方向に向かっているのですね。でも、「ウチはそればっかりではなく、して欲しい人にはしますよ」ということではなかったのですか。

小原 いや、おそらく「しない」という方向ではなくて、「仮にしなかったとしても、医者がいたずらに訴訟に持ち込まれたりしないような試みを作りたい」というのが厚労省の基本路線としてあると思うのですよ。それを恐れるあまり、蘇生しまくるという無駄があることは事実ですよね。

村井 一時持ち直すというのがどの程度までかというのは、意識が戻るのもあれば、意識までは戻らない持ち直しもあって、しかもそのまま亡くなる場合もあるので、そのへんは書かれた方が良いでしょう。

東 難しいですね、戻らないと思っていても戻る場合があるのでね。

村井 意識が戻るかも知れないと思えば…。

原 だから、病気にもよるでしょう。

広瀬 完全に戻るようにならない場合にはどのように言ったら良いのでしょうか。

東 だから、「本当にどうしようもないよ」というニュアンスがもう少し要るのですね。

吉中 「病気の進行や全身状態の悪化のため、回復困難な病状になられる患者様があります。このような場合、一見安定しても、急に呼吸・血圧・脈拍などが悪化して回復しない状況になることを予見できることがあります」とありますが、回復しない状況というのは心肺停止ですから、「一見安定していても心肺停止をきたすことがあります」ということでしょう。

原 「心肺停止に至る」ですね。

吉中 「予見できる」の部分は関係ないですね。後は、心肺停止になったらどうするかということですが、「蘇生しても数時間の間に死を迎えると判断できる場合には行いません」ということですね。

村井 だから、「回復困難な病状」のところと、「心肺停止の状況から蘇生させても数時間の間に死を迎える」という判断のところの2点を、もう少し平たい文章にしたら分かりやすくなりますね。

小原 いずれにしても第2項目の最初の方は、あまりにも一般的な意味になりすぎていますので、心肺停止とか、そこからの心肺蘇生ということの状況をもう少しきちんと付け加えても良いですね。

吉中 その前に、「ご本人の意思をどのように考えるか」というところはいかがですか。

小原 本人と家族の意思の関係で、本人の意思確認についての記述をどこかに盛り込んだ方が良いでしょうか。

吉中 日常会話の中でなら尋ねることは結構ありますがね。

橋本 ありますね。ただ、それを克明に残しているかとか、記録に残っているかと言われるとありませんし、どこまで含まれているのかが分かりません。

小原 確かに「元気な時にやらなければいけない」と言う人は多いですね。

村井 厚労省や医師会のガイドラインにも、「意見が合わない場合はどうしたら良い」とは書いてないですね。

広瀬 「数時間の間に死を迎えると医療者が判断して、そして心肺停止した場合は」というイメージですかね。

原 一旦、心肺停止してからでしょ。そこの文言を言い換えますと、例えば「呼吸・血圧・脈拍などが悪化して心肺停止に至ることもあります」で、「尽くしたいと考えていますが」というのもこの文脈なら要らない気がするのですが、その次に「呼吸や脈拍が一時的に回復しても数時間の間に死を迎えると判断できる場合は」というような流れになります。

吉中 これを作ろうとした意味は、病院の立場を基本的に表明して、それを「了解しました」というふうにするというのが一つの考え方にあります。要するに、一人一人から「あなたはどっちを選びますか」という同意書をもらうのではなく、「そういう病院の基本的な姿勢について了解しました」というやり方もあると思います。

村井 「病院の医療の考え方や方針を医師から聞いた」という確認も同意書ですよ。

小原 同じ同意書でも、「イエスかノーか」という形にしてしまうと、医療側も出しにくいし、受け取った方も非常に辛いところがありますから、そうではない形の方が良いと思いますね。

村井 だから原則的には「そういう状態の場合は心肺蘇生を行いません」という方針を受け入れるということで、医師の判断でもちろん例外もあるということも前提にして、第3項目の状態がなければ第2項目までで大丈夫ですよということで、そういう方針に同意してもらうという同意書は取れると思いますよ。だって心肺停止の状態だったら、本人の意思の確認は当然できませんから、最終的には医療者の判断に任せることになりますね。

小原 通常は医療者側の判断に従うということで良いと思うのですが、「医学的に無駄であったとしても、私はとにかく最期まで心肺蘇生を続けて欲しい」という強い意思を持っている人に対しては、それをきちんと受け止めて対応するということが必要だと思うのですよ。

原 そこに希望を書けるようにすることは可能だと思います。そこまで強い意志でなくても良いですが。

村井 「無駄である」ということは書かないとしても、「心肺蘇生をしてください」ということですね。

小原 「状況の如何に拘わらずして欲しいのだ」という選択肢は、おいておいた方が良いと思うのですね。

原 「医学的に回復が可能な場合は当然やる。それが見込めない場合はどうしますか」という話ですから、現実は「基本的にはやりませんよ。ただ、ご本人の希望があればやりますよ」ということです。「あんたらの考えは信用できない」という考えもあるかも知れない。そこで、「この説明が分かりました」とか…。

村井 「説明を受けた上で、私はこの基本方針に同意します」「私はどんな状態であっても最期まで心肺蘇生を続けて欲しい」という2つぐらいの選択肢を設けて、そこに丸印をして署名をもらうということですね。

原 選ぶ必要はないのではないでしょうか。

村井 でも、「無駄と分かっていても最期までやる」という意思を確認しておく必要があります。

原 意思表示が可能なようにしておく必要があるとは思うのですが、「趣旨を理解しました」というような署名をもらうことで良いのではないでしょうか。

村井 でも、「して欲しい」場合はどうしますか。

小原 だからそこは、きちんとそれを明示する箇所をおいておかなければ、それなしに単に「これに同意しました」というのでは、その意思が読めないですよね。

原 それでは選択肢を作るのですか。

小原 同意書のレベルはまだ雛形もありませんから、次回にするとして、とりあえずこの説明文の全体の骨子を今回に固めた方が良いと思います。問題になっているのは、患者と家族の意思がぶつかった場合にどうするのかということを書くべきかということと、もう一つは最初に問題になった3番目の項目です。これは2番目の項目と牽制し合っている関係にあり、原則は2番目のことを言っているのだが3番目のこともあるというように、拮抗している面があります。ですから、3番目をどの程度で書くのかということです。

村井 だから、3番目の内容を付けたら、本人から同意をもらっても良いでしょう。本人が同意していても、家族が第3項目による心肺蘇生を希望したら、同意を無視して行うことになってしまうでしょう。

小原 ご本人が家族に配慮して、家族が来るまでは続けて欲しいと意思表示をしていれば、矛盾なく通るのですが、本人のDNARの意思を無視して家族の意思を優先すれば、そういうことになりますね。しかし2番目の方がより大きな原則ですから、その兼ね合いで言うと、ちょっと合わないところがありますね。

原 いや、「本人の意思より家族の意向を優先するという考え方には立たない」と書いてあるので、もし、今のご意見のように読めてしまうのなら、付け加えた方が良いかなと思います。

村井 「尊重すべきだと思います」と言い切ってしまうから、何か誘導しているように思えるのですよ。

立岩 今の議論はP3の3)の方向ですね。P2に関しては内容的には一義的ではあるわけですね。「望まれるのであれば、あるいは許容されるのであれば」で、条件の形になっていますから、文章として言っていることはハッキリしていていますが、P3の「DNAR決定の条件」のところの「3)患者に意思決定能力はないが、家族が同意している」という条件は、P2には出てきていない話ですね。それをどう考えるかでしょう。

村井 だから本人の意思の表明の仕方が、第2項目のところで「私はこの原則でよろしいです」と書いておかないといけません。それで選択肢を作るとすれば、本人が「家族が蘇生術を望んでも蘇生して欲しくない」という選択肢と、「私は蘇生術をして欲しくないが、家族が望んだらやってもらっても良いですよ」という選択肢と、「何が何でも蘇生術をやってください」という3つの選択肢になって、分かりにくい感じがしますね。

原 分かりにくくはないとは思うのですが、2つ目は「家族に任せる」ということですね。ただ、本当は「本人意思がハッキリしない」という場合がもっと難題ですね。

村井 そうだったら「家族に任せる」の方がスッキリしますね。

小原 原さんがおっしゃっているのは本人の意識がもうない場合でしょ。

原 いや、本人が判断できる場合でも「家族に任せる」という選択肢は十分にありますから、本人の意思の選択ならこの3つで良いですね。

東 「自分には分からないから、イザとなった時には家族に相談して」という人もあるかも知れないね。

小原 ただ、それを文書化するのは難しいですね。

原 難しいですね。一応の本人の意向を考えるのだったら、やって欲しいという方向と、やって欲しくない方向があり得るので、その両方で「だけども家族に任せるわ」というのを入れたら4つに分かれ、「どっちでもない」というのも入れたら5つになっちゃう。

小原 「家族に任せる」というのは非常に明確な意思ですから、これは入れても良いと思いますし、すごくユニークだと思いますね。というのは、ここにある立派なガイドラインにはそういう項目はなく、患者と家族の意思のどちらを優先するかの二者択一的な論理ですからね。それを超えて、「最期は家族に任せます」という意思決定は非常に現実的ですよね。決めきれない人に「決めてもらわなければ困るんや」みたいな、抑圧的な文書になるとダメだと思うのですよ。

東 それこそ「最期を看取りたい」というのは患者さんの意思より家族の意思の方が強いわけでしょ。だから、逆に僕らが聞かれたら、「家族がそう思うのなら、そうしてあげて」という話になっても不思議ではないね。

小原 第3項目の「見届けたいという思いを尊重する」という表現をここに入れてしまうと、語るべきことが曖昧になってしまう気がするので、この表現のところはなくした方が良いのではないかと思うのですね。

原 とりあえず「尊重すべき」という言葉を省いて、「見届けたいとおっしゃる場合もあります」とするだけで良いですね。

小原 そうですね。「尊重すべき」となってしまうと、これが非常に強く出ますからね。

原 「本当の最期まで」という表現も少し妙ですし、「これを維持すべく」というのもどうでしょうね。

村井 本当の最期というのは、死と判定されるまででしょう。

原 いや、これは蘇生でしょ。「心肺蘇生術を最大限に」とかそういうかな。

東 「ご臨終」と言うまでやるのも、いつまでやるかは難しい話ですよ。永遠にやるのも問題になりますから。

小原 通常、何をもってやめる判断にするのですか。

東 やり出すと止められないから、「家族が来られるまでやりましょうか」という話になることが多く、来られた時が大きな節目になります。

小原 そして、「見込みがないから止めても良いですか」と、家族に同意を取って止めるのですか。

東 「良いでしょうか」とは言いませんが、家族が来られた時に「もうだいぶやっていますけど、これで終わります」と一応、断りを入れます。

勝村 既に家族が来ていて、「もう一人が来るまで待ってください」ということもありますね。

吉中 そういうこともありますし、いろんなケースがあります。

東 あまりにも遠いところ、例えば「四国から来る」という話しだと説得することもあり得ると思います。

勝村 家族が誰もいなかったら、誰に言うのですか。

東 電話で「急変されてこういう状態になっていますから、すぐ来てください」と連絡して、「30分ぐらいで行きます」と応えられたら、「それまで蘇生をやりましょうか」という形ですが、こういうことは多いですね。

広瀬 かなり長い時もあるのですか。

東 ありましたね。「ちょっと遠くから行くので」「とりあえずやっておきます」というやり取りで、何時間も続けることになったことがあります。

勝村 肋骨が折れるのではないですか。

東 これは形式的な話で、もう死んでいるわけですが、医師として「まだご臨終を宣言していませんよ」というだけです。今は、2時間もやることはなくなってきましたが、20分や30分ならそういうことが行われています。

吉中 ただ、心肺蘇生をずっとやっているわけではなく、どこかで判断するわけで、1分やって静脈が出るとか、呼吸が回復するということを必ず評価しながらやるのですが、だんだん何をしても戻らないことが明らかになってきます。本当にやろうと思うのなら、人工呼吸器につないで薬漬けにすれば心臓を動かすことはできます。ただ、そこまでいきそうになると、今度は「反する」という話が出てきますから、今は基本的にやりません。

だから「心肺蘇生を続ける」と言っても、その中身はACLSではなくBLSということで、街中で倒れている時に一般の人が行う心臓マッサージと人工呼吸がありますが、そのレベルを続けるというようなイメージですね。待つだけなら挿管もしないですから、人工呼吸の方は十分にしていない時もありますね。挿管して、レスピレーターにつながないでバッグを使う場合もありますね。

東 本当に病気が重くて、もう亡くなることが分かっているような状況では、そこまでは普通はやりませんが、その状況の前の微妙な時期に急変した時は、そこまでやる可能性はあります。

小原 時間がかなり迫ってきましたが、今日に全てをまとめることは到底できませんので、何が課題として残っているかということだけ、確認したいと思います。まず、同意書があった方が良いという方向で良いですね。

吉中 病院の立場を説明するという点では一貫していますが、患者さん側から見ると、Aの場合、Bの場合と分かれてしまい、包括同意は難しいですから、選択肢を記した同意書が要るのではないかなという気がしました。

原 選択肢を作るのかなぁ。

東 同意書というのはご本人が同意するのですか。今は一般的に同意書ではなく、「何かあった時には何もしませんけど、よろしいですか」と、口頭で同意を得ているのは家族ですよ。そういう状況になった時には荷が重いですから、実際には同意書を誰に使うのかという話は、まだ難しい部分がありますね。

橋本 悪い状態になって意思表示ができなくなった時に、そういう確認をしますから。

東 そういう同意書なのか、「本人の意思」という話がいっぱい入っているので、少し違う同意書ですか。

村井 こういうものは本人が意思表示できる時に出してもらえば良いのですけどね。

東 本当はね。でも、必ずしもそういう状況ばかりではないというのがありますからね。

村井 意思表示ができる場合と、できなくなった場合と分かれますからね。

勝村 厚労省のガイドラインは5月となっていますね。まだ議論が続いていると聞いたのですが、確定ですか。

原 一応、出たという話にはなっていますが、実用になるかと言うと、「勝手に決めるのはやめとけ」という意味ぐらいの内容です。

立岩 「終わりだ」という話にはなっていないと思いますよ。決定プロセスという話だから、「どういう場合は」という話はなく、「そこはこれからで、まだやっていません」という認識のようです。

内田 P16の解説では「『終末期医療の決定プロセスのあり方に関する検討会』において議論された内容をとりまとめたものです」とあります。

原 でも、ガイドラインは策定されましたよ。

内田 あぁそうか。その前に「厚生労働省において、初めてガイドラインが策定されました」とあります。

小原 プロセスに関しては一応これが決定版だと思いますが、終末期医療全体に関しては、まだまだやらなければいけないことはたくさんありますからね。厚労省のことはおいといて、本題について聞きたいのですが。

原 基本的な議論としては「家族にだけ聞くのは不正常な流れだから、本人に病院の方針を伝えつつ、本人の意向を聞くという方向でやりましょう」という流れで来たと思います。だから、「きちん治療します」ということで、最初から「諦めます」といったニュアンスにはしないということでした。

小原 だから、同意書は家族ではなく、当然、ご本人からということになると思うのですが、説明書はご本人と家族の両方に同じものが行くことになると思うのですね。これまではご本人を差しおいて家族に行くみたいなことがあったように思いますが、そういうことはなしになると思います。

説明文は、論点がかなり詰まってきましたので、今日議論した点をフィードバックする形で文書を作っていただき、これに添った形での同意書案を出していただければ、次回にはまとめられるのではないかと思います。

原 第4項目の「担当の医師」というのは医師に限定するのですか。医師以外でも良いような気もしますが。

小原 でも患者から見た窓口はハッキリしていた方が良いですね。

吉中 現実的には医師とナースの方が良いですね。

小原 では、次回にはまとまることを期待して、そういう方向で作成をお願いします。この議題は一応閉めまして、最後の議題の「倫理委員会についてのアンケート」の中間報告について、ご説明をお願いします。

清水 医療安全大会という、医療の安全に対する十分な知識を学習して医療現場に生かそうという趣旨の会合があるのですが、9月の第2木曜に開かれる今年のテーマは医療倫理なので、「医療倫理に対してどの程度の関心を持っているか」「当院の倫理委員会のことを知っているか」といったことに関して、全職員を対象にアンケートを取りました。現在、内部職員は500人ほどいますのが、今現在でその半分ぐらいの200人強から回答を得ました。それを集計したのがP23の表です。結果の報告については医療安全大会の方で行います。

村井 このアンケート結果はどういうことに生かそうとされているのですか。

東 これは、「倫理委員会の認知度が低いのではないか」と、「ここでこんなに白熱した議論をしていて、遠くの方ではすごい話題になっているのに、足もとの職員の間では話題にもならないので、認知度を調べてみたいな」ということがきっかけなんですね。そのついでに「医療倫理への考えについて」の簡単な質問も取ってみたのです。その結果、思ったよりは認知されているけど、キチッと伝わっていないということですね。

小原 50名ぐらいの人は、設置されていることすら分かっていないのですから、かなり多いと思います。

東 もっと多いと思っていたのですね。そのへんをどうやってこの中で広報していくかということについては、今回のテーマに採り上げることも一つの手段ですが、折角、本当に実り多い答申を出していただいていることについて、もっともっと生かしてもらいたいと思います。

吉中 終末期医療・DNARはやはり関心度が高いですね。

東 安全大会の時に一応まとめますので、分かりやすい表などにして、できたら次の倫理委員会で報告します。

小原 以上でよろしいですか。では、今日の審議事項はこれで終わりましたので、次回の開催日の調整をしたいと思います。

内田 最近は火曜日開催が多いのですが、第4火曜日の11月27日はいかがですか。よろしいですね。

原 レジュメの部分があまり検討できていないですね。

内田 前回は他の2つの議題で時間切れになって審議ができなかったのと、前々回は9時終了の会場のために十分な審議ができませんでした。

原 あくせくと同じことを議論しているような感じになっています。

小原 他にはもうよろしいですか。では、本日の倫理委員会を終わります。どうもありがとうございました。

 

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