倫理委員会

Home > 倫理委員会・臨床研究 > 倫理委員会 > 議事録・議事要旨 > 第二十一回 倫理委員会 議事録

第二十一回 倫理委員会 議事録

京都民医連中央病院

日時 2007年4月17日(火) 18:30~21:00
場所 京都アスニー3階第4研修室A
出席者 外部委員 小原委員長、原副委員長、勝村委員、立岩委員、広瀬委員、村井委員
内部委員 吉中委員、東委員、出島委員、高木委員、内田委員、坂田委員
事務局 岸本、丸山、内田
オブザーバー 橋本、清水
欠席  

議事

東  今日は欠席の委員が多いので、私が進行をさせていただきます。議題に挙げられているのは、「(1)府立医大泌尿器科からの協力依頼について」「(2)治験に係る体制の整備について」と、継続審議の「(3)心肺蘇生停止の手順(案)」の3件ですが、(1)と(2)はどのように進めましょうか。(1)は特に急ぎではないのですか。

吉中 いや、急いでおられますが、今回は報告させていただくだけで結構です。

東  では一応、報告をお願いします

吉中 (1)の京都府立大学の分は、冒頭に「前立腺がんの治療について」と書かれた資料のP17以降に、実施計画許可申請書があります。これは府立医大の三木教授が研究の申請をされた時のもので、府立医大の倫理委員会に諮られ、既にスタートしていますが、関連病院である当院にも協力をお願いしたいということです。

内容は実施計画の概要に書かれています。「76歳以上の高・中分化型組織を有する限局性前立腺癌の保存的治療の選択肢としての内分泌療法(ホルモン療法)の有用性を、癌制御、QOLおよびコストの点から比較・検討する目的で、LH-RHアゴニストの単独群と酢酸クロルマジノン(CMA)単独群による無作為の比較試験を実施したい」ということで、再燃例には追加して各々の薬を投与したり、MAB療法を組み合わせることも検討することになります。LH-RHアゴニストというのは内科的去勢術とも言われますが、患者が希望した場合には、LH-RHアゴニストの代わりに外科的去勢術を実施する場合もあり得るということです。簡単にまとめますと、比較的良性であまり進行していない高齢者の方の前立腺癌に対し、この2つの治療を検討したいという趣旨です。

P8に実施計画が載っていますが、詳しく説明する前に、前立腺癌や治療の現状を理解していただくためにインターネットで調べた資料が、P1~P6にありますので、こちらからご覧ください。

まず、P2に「前立腺癌とはどんなものか」という説明があります。前立腺は男性生殖器の一部で栗の実ぐらいの大きさがあり、膀胱の下にあって尿道を取り囲んでおり、後が直腸に接しているため、直腸の壁越しに指で触れることができますが、役割はあまりハッキリしていません。アメリカなどでもよく研究されていますが、ここには癌ができることは多く、80歳代の男性なら小さな癌は大概あるということで、中には骨に転移したりする悪いものもありますが、多くは経過が良いので、普通は5年なのに、10年生存率も調べています。

P1に移ります。前立腺癌ができた場合の選択肢としては、何も治療せず定期的なPSAの検査、つまり腫瘍マーカを使った血液検査だけを行う経過観察、前立腺全摘除を行う手術療法、外から行う外照射法や針を刺して行う組織内照射法による放射線療法などもありますが、いちばん多く選択されているのが内分泌療法(ホルモン療法)です。内分泌療法には、外科的去勢術の精巣摘除術以外に、薬物療法としてLH-RHアゴニストや抗男性ホルモン剤、女性ホルモン剤があります。抗癌剤による化学療法は、その他の治療として若干あるだけで、一般の癌とはかなり様相が違う治療になります。

P3は「どのような区分けで治療法を選んでいるか」ですが、軽度のⅠから、転移がみられるⅣまでの病期の内、今回の対象になっているのは病期のⅠとⅡで、癌が前立腺内に留まっていて根治可能と考えて治療を行います。しかしT1aと書かれている早期のものは、高齢者の場合には治療を行わずに経過観察するのが一般的で、経過観察の利点は手術や治療によって生じる可能性がある副作用を避けられる点があり、定期的にPSA値の検査を行い、経過を見守っていくことになります。

少し進んだ癌については、手術・放射線・内分泌による治療が行われ、前立腺摘除術は全身状態が良好な70歳ぐらいまでの患者さんが対象となり、内分泌療法は高齢者では単独で行われることが多いということです。前立腺癌の予後は良いので、リスクのある選択は避けるようにしていますから、結局、高齢者の場合は前立腺摘除術はせずに、内分泌療法だけを行うというのが一般的だということが、前提の認識になるわけです。

それでP5の「内分泌療法とは」にある表の薬物療法の項目を見ていただければ、LH-RHアゴニストや女性ホルモン剤による男性ホルモンの分泌を抑える治療と、抗男性ホルモンによる男性ホルモンの作用発現を抑える治療に大きく分けられ、このどちらかで治療されるということです。

P6の図はややこしいですが、テストステロンが男性ホルモンの代表的なもので、これが作用することで癌細胞が増殖します。男性ホルモンの作用発現を抑えるというのは、その作用の全体をブロックすることです。しかし、テストステロンは精巣や副腎から作られてきますので、この上流部分を抑えるのが、男性ホルモンの分泌を抑える治療になります。通常はこのどちらかを選択しますが、LH-RHアゴニストと抗男性ホルモン剤のどちらが良いかは、科学的な証拠がないのでなかなか言えず、現場の裁量で使い慣れた方を選んでいるようです。

そこで、完全に手術などを選択することのない76歳以上の方に限って、治療する側にもどちらか分からないようにした無作為の方法で効果を比較することにより、「どちらの有用性が高い」、あるいは「両方を併用した方が良い」といった結果を出し、高齢の方への最適な治療法を定めたいという趣旨です。

新しい治療法ではありませんので、説明文書も通常の内容ですが、無作為というところに、患者さんのご協力を得ないといけない部分があります。一応、患者さんが不利益を被らないように治療の修正などもいろいろとできるようになっています。また、P11以降に「実施計画書に記載すべき事項」と「説明文書」も載っています。

当院の泌尿器科から出されていますのは、「患者さんの同意が得られる場合は、府立医大のこの研究に協力してもよろしいか」ということで、資料の書類関係は全て府立医大のものですが、研究計画の内容は同じものです。

一応、診療部門の科長会議の了解はいただいており、倫理委員会でもご意見をいただいて、ご承認いただきたいのですが、今日は成立状況が厳しいかとは思います。

東  新薬の試験などではなく、市販されている薬の中で何がいちばん効果があるのか、差はないのかということを比べてみようという意味ですね。どうでしょうか、内容についてのご意見などはありますか。

出島 現時点での治療成績が分からないです。

吉中 それは調べてみないと分かりませんが、治療成績がどの治療によるかという判断が難しいので、単体で比べて良い方を選択しようということだと思います。

東  今日はこの案件をどのように扱いましょうか。

吉中 今日は前川先生が所用で来られませんでしたが、登録期間が昨年の12月から平成20年の11月30日までになっていまして、その後もずっと診ていくという形になりますので、一刻を争うという感じでもありません。

立岩 府立医大ではもう始めているのですか。

吉中 始めています。

立岩 説明文書はP12~P15ですね。同じ内容の試験だから、説明文書自体も同じもので良いのかも知れませんが、この内容は難しく、76歳以上の方がサッと読んで頭に入るのかなという感じがかなりします。例えば最初に①~④の治療法が書かれていますが、結局は1)2)の比較で、前者と後者がどう対応しているのか分かりにくい。

吉中 1)が①と②で、2)が③ですね。

東  これをそのまま説明しても分かりにくいので、もう少し分かりやすくする工夫が必要だと思います。LH-RHアゴニスト単独群と酢酸クロルマジノン単独群とを比べるのですが、患者が希望した場合は外科的去勢術を行いますから、外科的去勢術も比較の対象になるのですか。

吉中 そういうことですね。

東  そうすると3つの治療群ができる可能性があるね。

吉中 そこは良く分からないですね。去勢と抗男性ホルモンによる治療を比べるということで、去勢の方には2つありますが、多分、外科的去勢術は少ないですよね。一応、それを排除していないということと、時間が経って癌が大きくなるということがあれば、さらに追加投与するとか、両方を投与することもあるとなっていますが、これはおそらく実際の治療と同じように行われ、その場合でも効果が比べられるようにすると書かれているので、そういう統計処理をするのでしょうね。

東  去勢術として薬を使った場合と手術した場合をひとまとめにするということですね。実際に使われている薬での比較なので問題はないと思いますが、説明文書をもう少し分かりやすくするということはやっていただきたいと思います。これは倫理委員会の承認が必要なのですか。

吉中 どう取り扱ったら良いのか迷ったのですが、以前に寺尾先生から出された潰瘍性大腸炎の臨床試験も審議していただいたので、同じようにしようと思いました。患者さんにきちんとお分かりいただいて協力していただくためには、分かりやすさが重要なので、一読して分かるような説明文書にしたいと思います。

東  この倫理委員会では治験等の課題は、リスクを伴う内容かどうかということで、なかなか結論が出しづらいですが、大きな異議がなければ、取りあえず現場の責任において一定のルールに従って行うということですね。

吉中 これは治験とは違います。

東  臨床研究ですね。

立岩 P13の「あなたに対して行う治療法は、試験参加に同意した後に決まりますが」という文面は、「1)と2)の効果がどう違うかを調べるために、ランダムに割り振って様子をみます」ということですが、一読しただけでは、どちらが選ばれるのかは完全にランダムに決められるということが、素人に理解することはちょっと厳しいように思います。ただ、1)と2)のやり方は違うので、どちらをするのかは事後的には分かりますね。

吉中 そのへんも普通の薬の比較とは違いますね。

東  完全な二重盲験ではないのですね。

吉中 日常生活に与える影響ということなどを考えると、主観的評価が入りますから、無作為に選ぶということですね。

広瀬 もちろん、自分で選択できないのですね。

出島 ただ、決まってから「嫌だ」ということもできますね。

吉中 「こっちが良い」と考えるのだったら、これには同意しないですね。ただ、どっちを選ぶという根拠もそれほどないから、「飲み薬の方が良い」といった選び方をされているのでしょうね。

東  「こういう場合はこう」と説明するより、「実際にはこういう方法ですよ」という書き方の方が、確かに分かりやすいです。

勝村 1)か2)を患者が選んだ場合、研究データには使えなくなるのですか。それはなぜですか。

東  使えると思いますね。

吉中 いや、使えないでしょう。P8の実施計画の「試験デザイン」に「以下の2群に無作為に割り付け、比較検討する」となっています。

出島 割り付けられた後に「こっちは嫌」と言いますと、研究対象から外れるということですね。

東  そうですね、どちらかを選んでいる方は、最初から研究に同意しませんね。

勝村 本当にどちらが良いのか分からなくて、無作為にするのなら良いのだけど、例えば「初期ならこちらが良い」とか、なんとなくそういうのはないのですか。

吉中 一般的には、医療指針的に治療を決めなければいけない状況に来ているので、その根拠を作るような研究をしたいという趣旨です。根拠がなければ、「より安い方が合理的だ」といった考え方が入ったりするかも知れません。P9の選択基準に癌のステージや悪性度などの4項目が載っていますが、それらを組み合わせて、「こういう場合はこちらを治療の第1選択にした方が良い」といったことを編み出そうという戦略だと思います。しかし、試験を実施して、統計解析などをして出てくる結果なので、今は予測をつけられないと思います。ただ、泌尿器科の中で「この場合はこっちの方が良い」といった印象があるかどうかは、私も分かりません。

勝村 P12の3番に「QOLを含めて比較する」とありますが、それほど考え方が大きく違う2つなんですか。

出島 「早期なので手術および放射線療法は必要ない」と考えた中の、保存的治療の2つを比べるのです。

勝村 それでは外科的単独治療というのはないのですか。

出島 癌を取るのではなく、睾丸を取る手術はあります。

勝村 それは無作為の選択肢には入っていないのですか。

吉中 患者さんが選ぶことはできますが、基本には入っていません。

東  研究目的には書いていませんが、「高齢者は前立腺癌になっても結構長生きできるので、高い薬や手術を選ばなくても、そこそこ同等の効果が得られるのではないか」という、高齢者社会向けのイメージもあります。

吉中 「化学的去勢術のLH-RHアゴニストに対して酢酸クロルマジノンの有用性を比べる」と一応書いていますね。で、去勢術というのは男性の生殖機能を完全に奪いますので、そこは必ずQOLの観点に入っていると思います。ですから、酢酸クロルマジノンの方が良ければ、こちらが推奨される可能性があります。

勝村 参加した人が振り分けられるのは、何と何ですか。

吉中 LH-RHアゴニストの注射か、酢酸クロルマジノンの内服薬の1日2回服用というのがベースで、LH-RHアゴニストを使うのではなく外科的去勢術を希望される方は、そちらも可能です。

勝村 外科的と書いてあるのは例外的なんですね。

吉中 今は外科的去勢術は滅多にないですね。希望というより、いろんな条件があってやる場合はありますが。

東  結構、ウチなんかはやっていると思いますよ。高い注射を続けるより、その方が1回で済むので。

勝村 参加して、たまたま1)に決められた人の中で、「外科的去勢術を希望する人は申し出てください」ということで、2)になった人は選べないということですね。

吉中 そこで選べば、研究からは脱落ですね。

勝村 一般論として、臨床研究と治験はどう違うのですか。

吉中 治験は薬の発売に向けた試験ということです。

勝村 前に委員会で審議したものは?

吉中 臨床研究です。前回のは、薬としては保険適用されているけど、使い方の対象になっていなかった使用法の研究でした。

勝村 今回のは、どちらも保険適用された使い方の比較研究ですね。

吉中 そうです。実は今はややこしくて、ジェネリックでAという薬をBという化学構造の同じ薬に代えた時に、Bの製薬メーカーがある症状を対象に入れていなかったら、それも保険適用にならないので、そういうことが錯綜して病院は困っています。

東  今日に出された疑問などを返させてもらって、もう少し患者さんに理解しやすい説明文書を作成していただきましょう。

立岩 1)になった場合に①外科的去勢と②化学的去勢の選別をどうするのかは、計画書にはハッキリと①を選ぶ場合の条件が書かれていますが、説明文書では良く分からない。一般の男性は去勢という言葉自体に結構ビビルので、外科的去勢と言われたら、「えっ」という感じが残ると思います。だから、そういった面も含めて、1)2)に関しては計画書に書かれていることを入れた方が良いと思います。また、去勢と抗男性ホルモンの違いは、先ほどの説明で僕はなんとなく分かりましたが、資料のP6の図をもっと分かりやすくしたようなものを説明文書に入れるか、捕捉で付けるようなことを考えても良いのではないかと思います。

東  これは我々が読んでも難しく、実施計画書を読んで初めて分かりましたが、計画書は患者さんには渡りませんね。次回にもう一度、これらを含めて議論いただくということでよろしいですか。それでは議事(2)の「治験に係る体制の整備について」移りますが、これはどのように進めましょうか。

吉中 これはご報告ですが、治験の実施に係る規定を病院で定めました。規定案P1の「目的」に「治験または製造販売後臨床試験を実施」と書いてありますが、薬の開発ならびに製造販売後の臨床試験がターゲットになっていて、これらは薬事法で詳細に定められていることです。大きな病院では、院内に倫理委員会と並行して、治験審査委員会といった治験に係る組織をだいたい持っており、当院で倫理委員会をスタートする時にもご相談しましたが、「治験審査委員会があるに超したことはないが、実際にやってないのなら決めても意味はない」ということで、倫理委員会のターゲットから外し、しかも指針も決めなかったという経緯があります。

ところが、薬のことがずっと焦点になっていることもありますが、直接的には、国立宇多野病院の院長が定年退職され、「当院で仕事をさせて欲しい」という話になり、多発性硬化症という難病の薬の治験に携わってきた彼が「経口薬の開発が予測されているので、その治験をやりたい」と希望されたという経緯もあり、また、今までに私たちがやってきたものも、臨床的に日の目を見ようとすると、この枠を避けて通るわけにはいかないという状況になっていますので、当院としても法に則って規定を定めて治験を議論したいという趣旨で、基本的な骨格を定めたということです。

そして目次にありますように、「治験の実施に係る総則」から「院長の業務」「治験審査委員会の業務」「治験事務局および治験審査委員会事務局の業務」「治験責任医師の業務」「治験薬の管理」まで、いろいろなことが定められています。それから、記録の保存も非常に重要ですので、この規定も定めています。これらは、基本的に細かく定められた法令に従っています。

このような基本文書を定めて、臨床試験についてきちんとした体制を作り、実施できる準備を進めているということで、「こういうところを加味した方が良い」といったご意見がありましたらお伺いしたいと思います。

現在は、従来型のメーカーが主導する治験と、医師が主導する治験の2枠があります。医師の方は日本医師会等がバックアップしており、当院も一応登録していますが、実際にはなかなかたいへんで、治験コーディネーターという資格者の協力を得ないと難しく、治験コーディネーターを派遣するメーカーもたくさんあります。

以前の潰瘍性大腸炎の試験の時には、かなり法制度の壁があって、薬の費用は誰かが払わなければいけないことで、当院で買って提供したということや、被害が生じた時の補償体制がなかったのですが、治験制度にキッチリと則る場合には、費用と被害対策については整備されているとご理解ください。資金については、メーカー等が主導の場合、契約した病院は必要な経費を計上してメーカーから支給を受け、治験の諸費用を賄っていきますが、その範囲では不明朗なことはありません。

ちょっと議論しましたのは、ちょうどタミフルの問題で、メーカーから研究費を貰った人が第三者委員会の委員長をやっていることの是非が問われましたが、一般的には十把一からげに見られがちな状況はあっても、事の性質は少し違うので、そこのところを分かりやすく説明できるような努力はしました。

病院の機構としては臨床研究部を設置し、病院内でも二重研究や評価をしたりできるようにしまして、その研究部長の寺内専門委員の下に治験審査委員会が成立します。治験を進めるにあたっては、中心事項については病院で決裁しますが、倫理委員会にもご報告いたします。

東  治験ということでは、当院はこれまであまり参加してこなかったのですが、具体的に目指すということになると、かなり綿密にやらないといけないということです。これまでとは違い、治験では全く認可されていない薬を使うことが主になります。規定の中身や治験全般についてでもよろしいので、何かご意見がありましたらお願いします。

吉中 もちろん、この前の潰瘍性大腸炎で使った抗生物質を、潰瘍性大腸炎に適用することを認めてもらう研究なども、これに入ります。

立岩 この規定案はずいぶん詳細なものですが、これには下敷きとなる標準的なものでもあるのですか。

吉中 厚労省の省令関係で細かく規定され、大きく変えようのないものですが、不十分な部分を追加するようなことはできます。

立岩 今のところ、標準的なものをほぼそのまま使っているというような状況ですか。

吉中 いちばん最初の案は、幾つかの大学病院のものをチェックした上、民医連の立川のものに準拠して編集したもので、次に、宇多野病院で運用されていた中身を入れ、さらに治験コーディネーターのアドバイスを受けて、利害関係に関することなどを手直ししました。このように取り決めましたが、滑らないようにすることとか、チェック項目をどんな確度でした方が良いのかというあたりで、共通する部分が少しあります。

東  この規定が適用になった場合は、治験審査委員会が最高決定機関になるわけですから、例えば倫理委員会に治験を諮ることはなくなるわけですね。

吉中 適宜ご報告するということは残した方が良いとは思いますが、以前の議論の経過も考え、一から審査していただくことにはしませんでした。

東  倫理委員会との関係についての規定はこの中に入っていませんね。例えば、治験審査委員会が著しく歪められてしまうことはないとは言えませんが、そういう場合に、倫理委員会がどう関与するかといったことは、どこにも書いてありませんね。これでは、治験は審査委員会内で完結するという話ですが、そこのところをハッキリさせた方が良いですね。

吉中 「その都度、報告する」とかいうことは入れた方が良いと思います。

東  手続き上のことなどで問題が起きるとか、「やっている中身そのものが怪しい」といった意見が出ることもあるかも知れませんが、それを言ったら切りがないので、基本的には治験審査委員会が責任を持つということで良いと思いますが、倫理委員会に報告するというのなら、その根拠を決めておかないといけませんね。

吉中 「院長の業務に係る規定」の中に、「倫理委員会に報告する」という規定を入れるのが現実的ですね。

東  いかがですか。「もう任せてしまいましょう」みたいなこともありかとは思いますが、「別の組織でもう一回していますよ」みたいなことも良いかも知れませんね。

広瀬 例えば、理解できていないのに承諾してしまったといったことも起こり得ますが、治験に参加する患者さんが承諾された過程というものを、倫理委員会でチェックするといったことは要らないのですか。

東  ただそれは、倫理委員会よりも治験審査委員会に引っかかるという話ですね。

吉中 それは規定に定められているので、それに基づいて行うわけですが、例えば「説明文書はどのようになっていますか」といった意見を言うことはあって良いと思います。実際の治験業務そのものは、月単位でキッチリと会議をして行っていく仕組みになっており、実務に関わろうとすると、委員会的なスタンスでは難しいので、倫理委員会にはスーパーバイザー的な役割を期待しています。

広瀬 「認可されていない薬を使うことになる」ということを聞くと、怖いなという感じがします。

吉中 認可されていない薬にも段階があって、企業的な治験は行わないということで、臨床的利益が予期されないようなものはせず、最終段階の審査になります。ただ、そういうことなしに薬は世の中に出られないので、避けて通れません。それだけに、ここをちゃんとやらなければいけないのです。

今回、具体的に想定されている治験は、多発性硬化症という難病の内服薬の治験についてということで、世界的に準備されていて、日本では斎田先生というグループが中心にされているのですが、日本の場合はどうしてもちょっと遅れるそうです。治験の場合は大学病院等が中心になりますが、実際には患者さんが集まらず、例えば100例の予定が10例しかなかったということもあって、契約する製薬企業的には、日本に対しては気持ちが引けているそうですが、そういう部分を何とかクリアしたいという思いもあります。多発性硬化症は現在、肝臓の薬などとは別種のインターフェロンが治療薬で、患者さんは家で自己注射をしていますから、それを内服薬にすることができたらと、患者さんたちは期待しています。それから、保健婦さんたちがかなり積極的にこの薬の情報を言っておられて、どんな内容かは分かりませんが、そういう人たちとのネットワークが関西で広がっています。

立岩 今、具体的にあり得る治験は多発性硬化症ということですが、それ以外の対象はまるきり予測ができないことなのか、例えば何年に何件ぐらいはありそうだとか、治験審査委員会が立ち上がった後の業務の忙しさだといった予測はいかがですか。

吉中 少なくとも同時に3つも4つもということは想定していないです。希望としては、潰瘍性大腸炎の件のようなものを治験に載せることができないかとは思います。ただ、制度がガチガチに決まる前のことですが、系列の吉祥院病院では痔の消痔霊という漢方系統の治験をやっていて、最近に保険収載されましたが、それに民医連系病院が加わって行ってきたという経緯はあります。

立岩 数年に1件ぐらいポツポツぐらい治験が現れたりという感じですか。

吉中 いちばん可能性のあるのは、斎田先生の下では別の治験も進んでいまして、それは宇多野病院で終結しそうなの良いのですが、一つだけではなく他の部分も来る可能性はあるのではないかとは思います。

立岩 それも多発性硬化症に関係するものですか。

吉中 臨床研究者としては世界的に有名な人なので、どうしてもそういう話が舞い込むことが多いようです。

立岩 現在、この病院で多発性硬化症の患者さんはどれくらいおられますか。

吉中 現在はあまりいないのですが、先生が移ってくれば、患者さんも皆、移って来るというのは予想されます。関係が長いですから、つながりができているみたいですね。

立岩 多発性硬化症の患者さんは全国的には何千人という単位ですか。

吉中 難病指定されていますが、もっと多いです。宇多野病院は国立病院関係の難病センターになっているので、かなり広域のいろんなところから患者さんが来られています。逆に言えば、あまり診てもらえるところが少ないということなんでしょう。

立岩 その方たちは基本的に入院されているのですか。

吉中 通院です。

出島 スタッフなども関わっている、しっかりした患者会があり、参加している人だけで数千人はおられます。

立岩 インターフェロンというのは効くのですか。

出島 免疫系が基因なのでおそらく効くだろうという推定され、それがかなり効いてきている状況だと思います。

吉中 私が学生の頃は、治療しようのないわけの分からない病気がありましたが、これもその一つでした。

立岩 アメリカには40万人がいると書いてありますね。

東  日本にその半分、20万人もいるとは思えませんね。

出島 20万人もいると、難病の特定疾患から外されますね。

東  「5万人ぐらいから外す」と言っていますね。

吉中 診断されていない例も、結構多いのではないですか。

出島 日本で特定疾患患者としての診断を受けている人は5万人以下でしょう。

東  治験を言ってくるのは、その医師の権威か、患者さんをたくさん抱えている医師がいるとかで、潰瘍性大腸炎の件の寺尾医師は、患者さんをたくさん抱えていたからそういうことができたのね。そしてもう一つは、大学の関連病院のような形で、大学の治験の一貫として行うか、そのどちらかでしょうね。それ以外に、個人的に治験依頼がどんどんくるということはそうないと思います。今回は、その道で有名な先生が移られるということで、具体的な話になるきっかけになったのだと思います。

立岩 日本では1万2千人ですね。

東  診断が難しいケースもあって、病院を回っても、専門医に行き当たらなかった方もおられるでしょうね。

吉中 今はMRIで、見る人が見たら分かるのですがね。

立岩 特定疾患でもALSなどは、薬が現れては消えという話で、結局何も効かなかったという状況になっていますね。

出島 アメリカやイギリス等では、患者会が積極的に治験を応援する形で進んでいますから、推薦されている上から10種類の内、日本で使われているのは4~5種類ですが、日本で使われていないもので治験後にものすごく効果が出ているものもあります。

吉中 日本ではサポート態勢がない。

出島 欧米では企業だけが治験を出しているわけではないですからね。

吉中 そういう意味では、医師主導臨床試験がもう少しサポートされると、もっと有用な薬を供与できることになりますが、やはり手続きは煩雑だし、お金はないし、大学の医師でもなかなかできないというのが現実です。

勝村 難病に対する治療薬の開発には、治験が必要なんですが、ちょっと油断すると危ないので、すごく慎重にやらなければいけません。先週の土曜日にサリドマイドのシンポジウムがあって、多発性骨髄腫の治療にサリドマイドを使いたいという人や製薬企業と厚労省が対峙していましたが、患者側は最低限だけ使わせて欲しいという感じなのに、製薬企業の姿勢がすごく露骨で「なんでもいいから早く認めよ」という態度でした。

吉中 この治験も、当の先生と直接に話してもらった方が、多分、いちばん良い案が作れると思いますね。

東  進める側の人は「早くやれ」という立場になるし、一方では「キチッとやろう」という立場の人がいて、利害関係みたいなものが出てきますね。

勝村 患者側も「欲しい」と思う人と「危ない」と思う人がいるので、そこだけで話をすればよいバランスがとれそうなのに、企業論理が入ったらゼロか全てかの話になって、バランスをとることに協力してくれないイメージがあります。だからちょっと気をつけないといけません、

東  いったん動き出したら、「細かいことは良いじゃないか」となりそうですね。

当院も実際にはこういう形で治験への動きを始めていますが、院長の権限で倫理委員会にも関与していただくことも含めて、規定に手直しを加え、本質から外れないようにしていくということでよろしいでしょうか。

立岩 一点、よろしいでしょうか。治験審査委員会の構成のところで「外部の人を1名は置く」という書き方をしていますが、内部というのは現実的には病院のスタッフを想定していて、「5名以上で少なくとも1名」という場合は、「総勢5名の中の1名」ですね。

吉中 具体的には7名を考えていて、2名ぐらいは外から入っていただこうと思いますが、成立しなければいけませんから、現実に可能な態勢をとりたいということです。よくある大学の教授などに座っていただいても、滅多に来られないということなら委員会が開けないので、そういう方はやめたいと思います。

立岩 「過半数かつ5名以上」が定足数になり、その全員一致が原則ということですね。

勝村 P11の<審査事項>の1.には1)~8)の項目がありまして、最初の方は科学的ですが、後半は「被験者にお金をどう払う」「健康被害をどう補償する」「誇大広告はないか」「治験に係る費用をどう受け取るか」というように、だんだん現実的な内容になりまして、まずいことも起きそうな微妙な話がいっぱいあります。P13に「報告書を作成する」とありますが、少なくともそれを倫理委員会にも出してもらった方が良いのではないですか。それでは遅いか。

東  それを確認するということは必要かも知れませんね。

吉中 治験審査委員会の議事録もあります。また「被験者に対する支払い」なども、交通費の支給などと、全て詳細に定められています。

勝村 マニュアル化されているのなら、そんなに心配しなくても良いですね。

立岩 では、構成・成立要件とか採決の規定も、だいたい条文的な決まり事ですか。

吉中 はい。「最低5人といっても、5人では全員出席の必要があるし、あまり多過ぎて成立しないので、7人か9人あたりがいちばん良い」といったことは、いろいろと契約したサポート機関から教えてもらっています。

立岩 そういうサポート業がビジネスにもなっているわけですか。

吉中 新聞にも有力市場として取りあげられていて、京大医学部には統計学を教えている医療疫学の教室があって、治験審査関係のスペシャリストを育てていますが、どこの医療機関もそのような人を雇うだけの余力がないので、そう人は治験審査をサポートする会社に就職するというような話です。

勝村 それは民間の会社ですか。

吉中 おそらく製薬企業などが何らかの形で設立して動かしているとは思います。従来は製薬企業がやっていたことを、外部化してやっているような面もありますね。途中のお金の流れを透明にして、袖の下で大学に流すというようなことはないということです。

東  行政の基本的なところを全部踏まえてやっていますから、厚労省などの役人も何か絡んでいそうですね。

時間も限りがありますので、一応ご報告ということで、今後も具体的な話も含めて報告させていただきたいと思います。では、(3)の「心肺蘇生術中止の手順」に移りますが、新たな資料の説明をお願いします。

内田 資料Aは、日本医学会総会で行われた粂和彦・熊本大助教授の講演の朝日新聞記事ですが、当院の出生前診断に対する方針が取りあげられていますので、ご紹介しました。資料Bは、厚労省が終末期医療のガイドライン案を出したことに対する記事を集めたものです。それから、3月中旬に全日本民医連の医療倫理委員会活動交流集会が行われ、当院からは坂田師長が参加しましたが、その時の問題提起が資料C、坂田師長の報告書が資料Dです。また、本日配付の資料が「DNARの手順No1」で、今日はこれを基にご検討いただくことになります。

東  前回までにいろいろと議論いただきましたので、今日はある程度までまとめるという形でよろしいですか。

吉中 前回、私は出席できなかったので、坂田さんが作ってくれたのと東先生のメモを見て、私が勝手に作り上げたのがP1の基本文書「No1」で、立岩先生の文章のP9「当院では…」からP10「…対処したいと考えております」を引用し、不完全な修正ですが、病院的に見直したものです。P12以降の各病院のガイドラインは、私は見ていないので、全体を統括して上手く言うことができませんが、坂田さんの案のモデルでもあると思いますので、参考にしてください。

東  前回は、立岩先生がホームページに出された文章をご説明いただき、「具体的にこういうような文章はいかがですか」とご提案いただきました。その時の議論の流れは、まず「病院の姿勢をハッキリさせる」ということですが、「最初からやりませんよ」という話ではなく、「治療はしっかりとやりますよと宣言した上で、しかし、ある限定した条件の下で、その治療が患者さんや当院にとってあまり意味がないことはやりませんよという形で、具体的な話を提示する」という話が出ました。さらに「病院が患者さんに最初に渡す入院の案内などと一緒に、当院の立場をハッキリと知ってもらえるものを作って渡すのが良いのではないか」という意見があり、吉中先生が立岩先生の文章を基に「心肺蘇生を中止することについての基本的な病院の立場」を作成しました。

吉中 承諾書に付ける説明文書ではなく、もう少し基本的な病院のスタンスとして打ち出したわけですね。

東  「基本的に中止する」のではなく、「余程のことがない限りしっかりと治療します」ということを肝に銘じておかないと、どんどん「やめてしまいましょう」みたいな話に流れてしまう危険性すらあるという話でした。

勝村 最初の5行には「省略することはしません」ということも書いていますが、その次の8行で「あえて心肺蘇生を行うことはいたしません」と書かれ、「病院としてはしません」宣言になっていて、「しかし、やりたいという人がいればゆっくり話もするし、希望に添います」という趣旨だったのですね。

吉中 私は立岩先生の文章を読んでいて、そういう趣旨になっていると思い、前回の議論でその趣旨への反対意見があったとも聞いていないので、それを踏襲しました。

勝村 ただ、下から4行目で「患者様の意思を確認し」としてしまうと、全員に聞かなければいけなくなってしまいます。だからそうではなく、「ウチの病院はこうだ」というのを取りあえず読んでもらって、「いや、トコトンやってくれ」と言われた場合のみ、相談を受けるということで良いと思います。

立岩 「こう言ってみたが、これで良いのかな」と、そのへんに迷いがあるわけですよね。

東  手順6)にありますが、現実に「イザ」となった時には当然、そういう話のやり取りがあるわけですから、最初のスタンスは「相談して決めます」というのではなく、「やっても駄目だと思う時にはしませんという基本的な方針をハッキリ出した方が良い」ということで、「でも、トコトンやってくれという方も排除しませんよ」というニュアンスだったと記憶しています。

出島 そうすると、最後の段落の「…あらかじめご相談いたします」の1行を抜いて、「ご希望・不安・疑問などがありましたら…」というところだけを残せば、筋道としてはスッキリしますね。

吉中 これを読むと、「私たちは許容するよ」ということを踏まえてご家族にお話しし、DNARと書いているという、現場で結構あるケースと、良く合っています。ただ読みようによっては、きちんと心肺蘇生をしてもらうためには、そのことを強く言っておかなければいけないな」、あるいは「一筆、書かなければいけないのか」と受け取られかねないということも感じました。行を替えて「ご相談いたします」と書いたのは、「医療者の方から積極的に提示しよう」という意味合いを生かすには、こちらから「あらかじめご相談したい」と言っておいた方が良いと思ったからです。

東  実際には、次ページのDNARの手順のⅢに、「患者の意思と家族の同意が必要条件である」とありますから、当然、説明をして同意を得るという手続きが入りますし、同意なしにやらないということはできないでしょう。だから、私たちの考えをハッキリと言うことで良いと思いますが、ただ、「ご本人やご家族の思いもあるでしょうから、現実問題となった時には相談も受けるし、心肺蘇生をやらない時にはキチッとした同意をしていただくことが必要です」というニュアンスも伝われば良いと思います。それがこの文章では、最後のところに若干の問題があるということですか。

勝村 前回、「現実的にはどの段階で説明するのが良いのか」という話をしたと思いますが、「もうアカンという時には聞けないし、その少し前に聞くのは非常に深刻になるから、入院してすぐに聞けば良いかと言えば、すぐに退院するつもりの元気な時に聞かれたらビックリするだろうということで、入院のしおりに当たり前のように書いておこう」という手法論だったと思います。そして、「それを読んで何か相談があれば言ってください」というスタンスだったと思います。

吉中 そういう趣旨なら、「あらかじめご相談します」というのではなく、「DNARの手順のところに、DNARを考慮できる場面を限定する」ということと、「医療者の立場を明記するか、むしろ医療者の方で判断してアプローチして行うが、だけど最後に、実際にやるためには同意が必要だ」というように、医療者側の主体的行為の方をやや前面に置いた印象で整理していきたいです。ご本人・家族の意思とかが最初の方にくると、「どちらが良いですか」というようなイメージになるので、それは消した方が良いのではないかな。

「インフォームドコンセントとか、今の医療の幻想部分に乗っかるのは止めた方が良い」というような話をしたことがありますが、建前みたいなものを強調してやってしまうと、できもしないのに、一応、手順どおりの対応をしてしまうというような感じのガイドラインになってしまいます。「希望するならやりますよ」というぐらいのことを明記しているだけで、病院の立場を表明している医療機関はあまりないのではないですか

立岩 「患者の意思を尊重します」というようなことが前面になってきていますね。

勝村 「止めてくれ」と希望されない限り、基本はやるということでしたから、「希望するならやりますよ」というのは、何を希望するのかが逆転しましたね。

吉中 基本はやる側だったのですが、今回は「止めておいた方が良いな」ということを皆が意識していて、「医者としてはそう思っても、意思表明はせずに、患者さんの同意を患者さんの意思表明とさせてもらうことによって、代弁してもらおう」という面があります。その同意も、こっちから持ちかけるみたいな感じですが、これまではそんなことをあまり言わなかったですね。

坂田 患者さんや家族の方から「最期はこうしたい」と持ちかけられます。

吉中 で、話を持ちかける時には、死ぬまでを想定されていて、「こういう状態になったら、もうやらないでください」と望まれる方もおられるということです。

立岩 最後の段落の「あらかじめ」という副詞だけを取ってしまえば一応、筋は通ると思うのですけど、今日は欠席の方が多いので、正式に決めるのは次回ということにして、それまで頭を冷やして考えても良いでしょう。

東  キチッと完成するような案にしておいた方が良いと思います。例えば標題も要りますし、「心肺蘇生をしないことについての私たちの考え」とか、どういう立場の文書かはハッキリした方が良いですね。

出島 各段落に小見出しが付くと分かりやすいと思います。

東  「私たちの基本姿勢はこれです」といった小見出しを付けても良いですね。でも、これは難しいですね。

立岩 ただ、今は救急でも亜急性の部門でも「早めに止めておきましょう」という流れの方が全般的に強いと思いますが、こういう文章もその流れとあまり変わりませんから、もう少し駄目押しというか、「この病院としては命を救うためにはサボりませんよ」といった姿勢を宣言的に表明した方が、かえって良いかも知れませんね。そのへんが考えどころです。

勝村 この問題は難しいから、皆でいろいろと考え、最初に文書を渡すという手法に行き着こうとしていますが、一般的に見れば、「説明書に書いていたでしょう」と言われて治療を止められるみたいな、こういうやり方を採られることは怖いと感じるのではないですか。

立岩 何か危ない感じがしますね。

広瀬 「いたしません」という表現はちょっときつい感じがします。「しないでおこうと思いますが、でも、して欲しい人にはキチッと技術的処置をいたします」というように、もう少し柔らかくした方が良いと思います。

出島 最初の5行の勢いがもっと強くないと、2段めが強く響いてしまうのですね。

東  だから最初の5行の後に、「ともすれば、医療費が無駄だといったいろいろな周囲の事情で、早く治療を停止するといった風潮になりかねない」「こういうことに対して我々はこう思っています。だから、最期まで我々が持っているものをキチッと提供するというのが本来の我々の立場である」といった意見をもう少しハッキリと言っても良いわけですね。それから、「危ない感じがする」と言われると少しビビリますし、「あえて心肺蘇生をいたしません」と言うと、「あの病院はいたしませんと言い切っているで」と言われそうですね。

広瀬 患者は、これを入院のしおりで貰うと怖いですね。

勝村 人それぞれで、読解力や考え方によって違うでしょう。

橋本 「最後までやるよ」という最初の5行はすごくスッキリしているね。

勝村 「医療費の抑制や無駄を省くためではない」と言っても、やらない理由は「体に相当強い刺激と負担を与える」ぐらいしか書いていないわけですね。

出島 「あえて」という3文字を抜くだけで、だいぶ柔らかくなりますけどね。

東  「無意味な」を付けてはいけませんか。

広瀬 「負担をかけるからやらない」という理由でしたが、「でも死んでいるから分からない」と誰かが言われたように、既に死んでいるのですね。

出島 ここは「体に負担」ということです。

広瀬 この部分を先に持っていったらいけないのですか。

吉中 そういうように、「…予見できることがあります。その時に…処置は体に負担を与えることになります」といった表現も試みましたが、障りがあると思いました。

立岩 資料Cの倫理委員会活動交流集会でも「いろいろ出ています」という話ですが、最後の方に「前提として、患者の権利を守るという視点が重要で、経済的理由から治療の差し控えが誘導されないよう、注意を払っていく必要があります」というような文言はあります。

勝村 これは心臓が止まった時の話なんですが、脳死になった時も同じような論調で捉えられています。これでは、脳死になったらすぐに臓器移植に使われかねませんね。

東  しっかりとした条件に限定する必要はありますね。

吉中 最初の5行の病院の立場を示す部分は、一般的な方針を述べるだけではなく、「こういうこともあるから」ということを、補強する意味で入れるというのは、分かりやすいかも知れませんね。

東  最初の段落は「そういうことは当てはまらない」みたいな感じで補強して、しっかりと病院の立場を述べるのが大切ですね。第2段落では、「こういう条件の中には、無益な心肺蘇生をしないケースもあり得る」というように、非常に限定された状況の中での話であるということを、少し具体的な話を入れたりして強調しても良いですね。そして第3段落は「しかし、きちんとした対応をしますよ」ということで、最後は具体的に「必要があれば相談に応じますよ」ということですね。

出島 第2段落の「最善を尽くしたいと考えていますが」という言い方は、「最善ではない」というイメージを持ってしまいますが、「確実に死を迎えると判断できる時に心肺蘇生を行わない」ことは、実は医療者にとっては最善なんですよ。つまり、最善を尽くすことの一つが、この状況では心肺蘇生術をしないことです。

吉中 これをなぜ入れたかと言うと、「心肺蘇生をしませんよ」と言うだけではなく、最初の段落を強調したいという思いがあったのです。最善という言葉はあまり良くないかも知れませんが、医務の一つに「最善と思われることを為すべき」というのがありますから、それを入れただけです。

出島 「最善を尽くします。」と読点で切っても、逆説になりますか。

吉中 だから、「私たちはあくまでも行うべき医療行為を省略することはない」といった言い方をして、「最善」という言葉を使わない方が良いのですよ。

東  8時55分になりましたので、もう時間はありません。基本的にはこの流れで良いと思いますが、誤解を招かないように、あるいは我々が強調したい部分をもっと補強した文章に練り直させていただきたいと思います。また、手順についても、具体的な疑問点などが少し残っていますから、それらの結論も次回に出すとして、できれば次回にまとめ上げるということで、今回は終わりたいと思います。よろしいでしょうか。最後に次回の日程ですが、2ヵ月後の第1木曜日でしたら6月7日ですので、一応、この日を第1候補にして、調整していただきたいと思います。今日はどうもありがとうございました。

 

ページの先頭へ

京都民医連中央病院

〒604-8453 京都市中京区西ノ京春日町 16-1
電話:075-822-2777 ファクス:075-822-2575