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病院報 2015年秋号 Vol.49

今知りたい 乳がんの話

乳腺外科 科長
名嘉山 一郎

10月はピンクリボン月間でした。いつもの年なら京都タワーがライトアップされ、関連行事が始まり、ぼちぼち乳がん検診ムードが高まってくる頃です。ところが今年は、9月の末から乳腺外来は大混雑しています。最初は無我夢中で何がナンダかという感じでしたが、10月になってようやくその訳が分かりました。

北斗晶さんの乳がんの告白、そして切なる気持ちで記されたブログでした。マスコミの力も手伝って多くの女性の皆さんがご自身の乳房に目を向け、その症状に耳を傾けて下さるようになったのです。理由がどうであれ、一度は検診に行こう、診察を受けてみようと思って頂けたことで、少なからず乳がんで命を落とされるリスクは減らせると思います。まず北斗晶さんの勇気に敬意を表し、これからの完治への道のりが順調に進むことを願ってやみません。

 

せっかくの機会ですので北斗晶さんのブログから、この間受診された皆さんが気にされていた内容を4つ挙げて検討してみます。

  • 毎年検診を受けても見落とされる?
  • 『痛み』は乳がんのサイン?
  • 生存率50%っていうほど乳がんは恐ろしい病気?
  • 乳がんは遺伝する病気?

 

毎年検診を受けても見落とされる?

自分に合った検診方法を見つけよう!

毎年検診を受けていたのに乳がんが見つかった! このように検診と検診の間で見つかる乳がんを『中間期乳がん』と呼びます。残念ながらごくわずかな頻度でみられるのは事実です。現在、京都市で行われているのと同じマンモグラフィと視触診を合わせた検診に関するデータがあります。宮城県で、1997 年から2002年までに視触診・マンモグラフィ併用検診を受診した23万6839人の方のデータです。感度(異常ありとした方の中で本当に乳がんを見つけられる率)は92〜95%で、特異度(異常なしとした方の中できちんとがんでない人を見つけられる率)は89〜93%と非常に高い精度を誇っています。このうち中間期乳がんが見つかったのは56例(0.02%)でした。ただ40歳代では若干感度が低いとの報告があり、乳腺超音波検査と合わせて検診をすすめることも検討されています。

若い方や、乳腺が発達している方はマンモグラフィでは乳房の中が白く写り、乳腺の中の様子がよく分からないことが多いのです。そこで超音波を使って細かく調べる方法が向いています。アメリカでは約半数の州で、マンモグラフィで濃く白く写り、その範囲が広い方には、マンモグラフィ検診だけだと見落とされる可能性を考えてマンモグラフィ以外の検診方法を検討するようにお知らせする法律(Breast Density Notification Law)を定めています。マンモグラフィにも乳腺超音波検査にも得手・不得手がありどちらが優れているということはありません。まずは検診を受け、きちんとご自身の乳腺の状態を知り、自分に合った検診の受け方についてアドバイスを受けましょう。

 

 

「痛み」は乳がんのサイン?

乳房チェックのチャンスです!

この間、一番多いのは痛みがあるから心配になって来られた方です。幸いなことにこの方々からは今のところ乳がんは見つかっていません。『痛み』が乳がん発見のきっかけになるのは6〜9%です。乳がんは主に痛みのない『乳房のしこり』が代表的な症状としてあげられ、乳がん発見のきっかけとなる症状全体の約80%を占めます。その他の症状として乳頭から血の混じった液が出る、皮膚のひきつれ、くぼみなどが現れることもありますが、ほとんどの場合、しこり以外に目立った症状はありません。

痛みの原因の多くは、肋間神経・肋間筋などの胸の壁由来の痛み、排卵から生理までの期間に乳房が張ることによる周期的な痛みなどです。かといって痛いから乳がんではない、と言うのも間違いです。きちんと原因を知ることによって不安をなくし、自分の乳房からでるサインにより正確に反応できるようになります。イギリスの教科書では診察を受けて安心することで痛みの70%は改善するとまで書かれています。痛みの対処法も原因によって色々あります。ご自身の乳房チェックのチャンスと考えて受診して頂くことをお勧めします。

 

生存率50%っていうほど乳がんは恐ろしい病気?

早期発見なら90%以上です!

この数字で乳がんは怖い!と思われた方が多くいらっしゃいます。おそらくこれは手術の後、何もしなかったときの数字ではないかと推察します。2004年度の乳癌学会の統計では、左上の表のようになっています。これは手術の後、放射線治療やお薬での治療をうけた上でのデータです。ステージ2までであれば90%以上の方が命を落とされることなく治療を続けられているということですね。やはり早期発見が大切であることが改めてわかります。またお薬の発達や再発後も諦めずに化学療法を行うことでステージ3、4といった進行がんでの治療成績も向上しています。乳『がん』という病名にひるまず、ご自身の乳房と向き合っていきましょう。

 

乳がんは遺伝する病気?

85%は遺伝するとは言えません。

北斗晶さんのブログ初日のところで、乳がんは遺伝だと聞いていた、身内に乳がんはいないのに、と書かれています。確かにお身内の方で乳がんにかかった方が多いほど乳がんのリスクは高くなります。しかし実際、乳がんのうち遺伝性乳がんといわれるものは15%程度です。そのうち原因となる遺伝子が明らかにされている代表格が、アンジェリーナ・ジョリーさんで有名になった遺伝性乳がん卵巣がん症候群です。BRCA1/2という遺伝子に異常がみつかります。

遺伝性乳がんを心配するケースは、

  • 40歳未満で乳がんを発症した人がいる
  • 年齢を問わず卵巣がんを発症した人がいる
  • 男性で乳がんを発症した人がいる
  • 父方・母方どちらか一方の家系で2人以上乳がんや卵巣がんを発症した人がいる

などが挙げられます。ご自身の未来を明るくするためにも受診をお勧めします。

 

終わりに

北斗晶さんのブログを読んで身につまされたことが2つあります。一つ目は、自分が向き合っている乳がん患者さまお一人おひとりも北斗晶さんが体験しておられる様々な感情、怖い、切ない、苦しい、さびしい、などの辛い思いを乗り越えて、乳がんと闘っておられることを再確認しました。いろいろな思いに寄り添えるようスタッフ共々心して参ります。

二つ目は、医療者側と患者さま側との情報共有の大切さです。病名告知から始まり、手術、放射線治療、お薬の治療と矢継ぎ早に、治療内容の選択が迫られることがしばしばあります。私たちはできるだけ患者さまの『いつも通り』を第一に考え、お気持ちに寄り添いながらより良い選択ができるようお手伝いして参ります。そして私たち医療者側が患者さまの思いを正しく理解しているか、納得できるだけの答えを返せているかを教えて下さい。手をたずさえて乳がんと闘っていきましょう。

 

乳腺外科へのお問い合せは

病院代表:075-822-2777

 

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